量子力学の様々な構成方法 第6部 第1章 §6.1.5 ★★★ 調和振動子は「1つのモード」そのもので、自由粒子の伝播関数は Schrödinger 場の2点関数として出てくる
① 調和振動子:場のモード1つ=共通例題①
6.1.2 節・6.1.3 節の格子振動では、各モード k が共通例題①の調和振動子そのものである。したがってスペクトルE=∑kℏωk(nk+21) も、熱平衡の値もモードごとに①の答えを並べればよい。①の熱平衡(第4部第4章)から、温度 T でモード k に入っている量子の平均個数は
⟨n^k⟩=eβℏωk−11,β=kBT1(6.1.22)
で、全体の平均エネルギーは ⟨H^⟩=∑kℏωk(⟨n^k⟩+21) である。異なるモードは独立なので、密度行列は各モードのe−βH^k/Zk のテンソル積になり、分配関数は Z=∏kZk、Zk=1/(2sinh(βℏωk/2)) である。式 (6.1.22) を「量子」から見直すと、エネルギー ℏωk の Bose 粒子の化学ポテンシャル 0 の Bose 分布になっている。この読み方と、粒子数が保存する系の Bose 分布・Fermi 分布は 第6部第5章で扱う。
Schrödinger 場で外部ポテンシャルを V=mω2x2/2 にとると、モードは①の固有関数 φn、モードの振動数は εn/ℏ=ω(n+21) になる。ここには2種類の「振動子」が現れることに注意する。1つは粒子が感じる調和ポテンシャルで、その準位の番号 n がモードの名前になる。もう1つは各モードが場の振動子であることで、その準位の番号(個数 nn)が「準位 n にいる粒子の数」になる。粒子1個の部分ではH^a^n†∣0⟩=ℏω(n+21)a^n†∣0⟩ で、命題 6.1.1 のとおり①のスペクトルがそのまま戻ってくる。
③ 自由粒子の伝播:場の2点関数
V=0 の Schrödinger 場を全空間で考える。モードは平面波で、ψ^(x)=∫2πdka^(k)eikx、[a^(k),a^†(k′)]=2πδ(k−k′)、H^=∫2πdkεka^†(k)a^(k)、εk=ℏ2k2/(2m) である(箱の離散の k から ∑k→L∫dk/(2π)、a^(k)=La^k と移った形)。Heisenberg 描像ではdtda^(k)=[a^(k),H^]/(iℏ)=−i(εk/ℏ)a^(k) なので a^H(k,t)=a^(k)e−iεkt/ℏ、したがって
ψ^H(x,t)=∫2πdka^(k)ei(kx−εkt/ℏ)
である。平面波のモードが1つずつ、自分の振動数で位相を回しているだけである。
点 xi に粒子を1個つくり、時間 t の後に点 xf で消す振幅、つまり場の2点関数を計算する。a^(k)∣0⟩=0 から
⟨0∣ψ^H(xf,t)ψ^†(xi)∣0⟩=∫2πdkeik(xf−xi)−iℏk2t/(2m)(6.1.23)
である。この積分は振動するだけで絶対収束しないので、t を t−i0(わずかに虚の方向へずらす)として Gauss 積分にする。α=iℏt/(2m) とおいて平方完成すると ∫dke−αk2+ikΔ=π/αe−Δ2/(4α)(Δ=xf−xi)で、
⟨0∣ψ^H(xf,t)ψ^†(xi)∣0⟩=2πiℏtmexp(2ℏtim(xf−xi)2)=K(xf,t;xi,0)(6.1.24)
を得る(−Δ2/(4α)=imΔ2/(2ℏt))。これは共通例題③の伝播関数そのものである。命題 6.1.1 で ψ^†(x)∣0⟩ が ∣x⟩ に対応することを使えば、左辺は ⟨xf∣e−iht/ℏ∣xi⟩ に等しく、基準で書いた伝播関数と同じものを場の言葉で計算したことになる。経路積分で同じ答えを出す計算は 第3部第3章にある。
波束の広がりも場の演算子で書ける。全粒子の位置の和と全運動量
X^=∫dxxψ^†ψ^,P^=∫dxψ^†(−iℏ∂x)ψ^
について、交換関係 (6.1.18) から [X^,H^]=iℏP^/m、[P^,H^]=0 が出る(P^ は平面波のモードで∫2πdkℏka^†a^ と対角になり、H^ と交換する)。Heisenberg 方程式を解くと
X^H(t)=X^+mP^t(6.1.25)
で、これは粒子数によらず Fock 空間全体で成り立つ。粒子1個の部分では X^ と P^ が1粒子の x^ と p^ になるので、初めの位置と運動量の相関が無いとき(⟨x^p^+p^x^⟩=2⟨x^⟩⟨p^⟩)分散は
σ(t)2=σ02+m2(Δp)2t2=σ02+(2mσ0ℏt)2(6.1.26)
になる。最後の等号は最小不確定の Gauss 波束 Δp=ℏ/(2σ0) の場合で、共通例題③の答えと一致する。
例題 6.1.5 電子1個の波束の広がり ★★
オリジナル電子(me=9.109×10−31kg)1個を、位置の標準偏差 σ0=1nm の最小不確定の Gauss 波束として Schrödinger 場に置く(∣Φ⟩=∫dxψ0(x)ψ^†(x)∣0⟩)。ℏ=1.0546×10−34Js とする。
- (1) 粒子数の密度 ⟨Φ∣ψ^H†(x,t)ψ^H(x,t)∣Φ⟩ が ∣ψ(x,t)∣2(ψ は1粒子の Schrödinger 方程式の解)に等しいことを示せ。
- (2) 幅が 2σ0 になる時刻 t∗ と、10σ0 になる時刻を求めよ。
解答
(1) ψ^H(x,t)∣Φ⟩ を計算する。ψ^H(x,t)ψ^†(y)∣0⟩=[ψ^H(x,t),ψ^†(y)]∣0⟩ で、この交換子は c 数で、(6.1.23) と同じ計算により K(x,t;y,0) に等しい。よってψ^H(x,t)∣Φ⟩=∫dyK(x,t;y,0)ψ0(y)∣0⟩=ψ(x,t)∣0⟩ で、ψ(x,t) は ψ0 を伝播関数で運んだ1粒子の波動関数である。ノルムの2乗をとれば ⟨Φ∣ψ^H†ψ^H∣Φ⟩=∣ψ(x,t)∣2 になる。
(2) 式 (6.1.26) で σ(t)=2σ0 とおくと ℏt/(2mσ0)=σ0、つまり
t∗=ℏ2meσ02=1.0546×10−342×9.109×10−31×(10−9)2s=1.73×10−14s
である。σ=10σ0 は (t/t∗)2=99 から t=99t∗=1.72×10−13s になる。1 nm に絞った電子は 0.2 ps たたないうちに 10 nm に広がる。長い時間では σ≈ℏt/(2mσ0) で時間に比例し、初めに狭く絞るほど速く広がる。
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