量子力学の様々な構成方法 第6部 第1章 §6.1.3 ★★★ 間隔を 0 にすると場の演算子 ϕ^(x) が現れ、状態はモードごとの個数の組で指定される。これが Fock 空間
連続の極限
前節の輪で、間隔 a を小さくし、長さ L=Na を固定したまま N を大きくする。各原子のずれを位置 x=ja の関数とみなしてϕ^(ja)=u^j、運動量の密度を π^(ja)=p^j/a とおく。線密度 μ=M/a と音速 v=aK/M を固定すると、∑ja→∫dx、(u^j+1−u^j)/a→∂xϕ^ で
H^=∫0Ldx[2μπ^(x)2+2μv2(∂xϕ^(x))2](6.1.12)
になる(p^j2/(2M)=aπ^2/(2μ)、2K(u^j+1−u^j)2≈a⋅2Ka(∂xϕ^)2、μv2=Ka)。交換関係 [u^j,p^l]=iℏδjl は [ϕ^(ja),π^(la)]=iℏδjl/a になり、δjl/a は a→0 で Dirac のデルタになるので
[ϕ^(x),π^(y)]=iℏδ(x−y),[ϕ^(x),ϕ^(y)]=[π^(x),π^(y)]=0(6.1.13)
を得る。これは古典の弦のラグランジアン密度 2μ(∂tϕ)2−2μv2(∂xϕ)2 から π=μ∂tϕ を作り、Poisson 括弧 {ϕ(x),π(y)}=δ(x−y) に正準量子化の規則を当てたものと同じである。場の正準量子化を一般の場で行う手続きは解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第2章にあり、ここでは原子の列の極限として同じ式に着いた。
展開 (6.1.11) も極限をとれる。NM=μL なので係数は ℏ/(2μLωk) になり、
ϕ^(x)=k=0∑2μLωkℏ(a^keikx+a^k†e−ikx),π^(x)=k=0∑(−i)2Lℏμωk(a^keikx−a^k†e−ikx)(6.1.14)
(重心のモードは省いた)。k=2πn/L(n=±1,±2,…)で、ka≪1 のモードでは ωk=v∣k∣ である(図 6.1.1 の直線)。格子では k が Brillouin 域の中の N 個に限られていたが、a→0 の弦ではモードが無限個になる。ハミルトニアンはH^=∑kℏωk(a^k†a^k+21) で、零点エネルギーの和 ∑kℏωk/2 は発散する。この定数は観測できるエネルギーの差に現れないので、正規順序で差し引いて H^=∑kℏωka^k†a^k とする(扱いは 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第2章と同じ)。
Fock 空間:状態を個数の組で指定する
すべての a^k で消される状態を真空 ∣0⟩ とする。各モードの数演算子 n^k=a^k†a^k は互いに交換するので同時に対角化でき、その固有状態は
∣{nk}⟩=k∏nk!(a^k†)nk∣0⟩,H^∣{nk}⟩=(k∑nkℏωk)∣{nk}⟩(6.1.15)
である。有限個の nk だけが 0 でない状態 ∣{nk}⟩ を基底とし、その線形結合を(ノルムについて)完備にしたヒルベルト空間をFock 空間と呼ぶ。名前は V. Fock に由来する。

図 6.1.2 モードごとの梯子と Fock 空間の状態。各列が1つのモード k の振動子で、横線が nk=0,1,2,3 の準位を表す。赤い点はそのモードの今の準位。状態 ∣nk1=2,nk3=1⟩ は「波数 k1 の量子が2個、k3 の量子が1個ある」と読める。
a^k† を真空に当てた状態 a^k†∣0⟩ のエネルギーは ℏωk である。弦の全運動量 P^=−∫π^∂xϕ^dx は正規順序で ∑kℏka^k†a^k になる(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第2章の場の運動量と同じ計算)ので、この状態は運動量 ℏk を持つ。エネルギー ℏωk と運動量 ℏk を持ち、a^k† で生まれ a^k で消える塊を、弦の振動の量子と呼ぶ。結晶の格子振動ではこれがフォノンで、電磁場ではフォトンである(物性での名前の一覧は 第6部第4章、光子は 光学と量子エレクトロニクス 第30章)。
量子が2個ある状態 a^k†a^q†∣0⟩ を考える。[a^k†,a^q†]=0 なのでa^k†a^q†∣0⟩=a^q†a^k†∣0⟩ で、「1個目が k、2個目が q」と「1個目が q、2個目が k」は同じ状態である。状態は個数の組 {nk} だけで決まり、どの量子がどれかという区別はどこにも書かれていない。同じモードに何個でも入れる。この2つの性質は、量子を粒子とみなしたときの Bose 統計そのものである。Fock 空間では対称化を後から課す必要が無い。N 個の同種粒子の波動関数を対称化した空間と Fock 空間の N 粒子の部分が同じものであることは、第6部第2章で示す。
例題 6.1.3 両端を固定した弦の状態を数える ★★
オリジナル長さ L の弦の両端を固定すると、モードは sin(nπx/L)(n=1,2,…)で、角振動数は ωn=nω1(ω1=πv/L)である。
- (1) 真空からの励起エネルギーが 4ℏω1 の状態をすべて、個数の組 {n1,n2,…} で書き出せ。いくつあるか。
- (2) 励起エネルギー Mℏω1 の状態の数は、整数 M を正の整数の和に分ける方法の数(分割数 p(M))に等しいことを説明し、M=10 の場合の数を答えよ。
解答
(1) 条件は ∑nnnn=4 である。モード n に量子が nn 個あると nnn だけ寄与する。書き出すとn4=1/n3=1,n1=1/n2=2/n2=1,n1=2/n1=4 の5つである。
(2) 個数の組 {nn} は「n という部品を nn 個使って M を作る」ことと1対1に対応する。量子に番号が付いていない(前の段落の Bose 統計)ので、部品の並べ方は数えない。したがって状態の数は M を順序を問わずに正の整数の和に分ける方法の数 p(M) である。p(4)=5 は (1) と一致し、p(10)=42 である(verify_ch6-01.py で数え上げを確かめた)。量子を区別できる粒子として数えると、(1) の n2=1,n1=2 は「どの量子が n=2 にいるか」で3通りに増え、答えが変わる。
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