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素励起:2次の部分を対角化して b^†\hat b^\dagger を取り直す

2026年10月17日14分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第6部 第4章 物性の言葉:フォノン・マグノン・フォトン・電子と正孔・Hubbard 模型
目次
  1. 粒子数を保つ2次形式は、モードを取り直せば独立な振動子になる
  2. フォノン:原子のずれの基準振動
  3. フォトン:電磁場のモード
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第6部 第4章 §6.4.1 ★★★ 固体の「粒子」は、2次のハミルトニアンを対角化したモードの生成演算子が作る励起であり、フォノンとフォトンはその最も簡単な例である

第6部の型(出発点の要請 → 基本の対象 → 基準との同値 → 共通例題 → 得意な問題 → 限界)のうち、この章は「得意な問題」を受け持つ。第1章で振動子の代数をモードごとに並べて Fock 空間を作り、第2章でそれが基準(第1部)の NN 粒子の量子力学と同値であることを両向きに示した。第3章ではボース粒子とフェルミ粒子の代数の違い(交換子と反交換子)を扱う。この章では新しい公理を1つも足さず、それらの道具を固体の問題に当てる。

固体物理の文献は、フォノン・マグノン・フォトン・正孔といった「粒子の名前」で書かれている。これらはどれも、ある基底状態を真空と見なしたときの生成演算子 b^†\hat b^\dagger が作る励起である。この章の中心にある操作は2つある。1つ目は、ハミルトニアンの2次の部分を対角化して新しい生成消滅演算子を取り直すことである(6.4.1 節)。2つ目は、どの状態を真空に取るかを選び直すことである。全部のスピンがそろった状態を真空に取るとマグノンが現れ(6.4.2 節)、電子が詰まった Fermi の海を真空に取ると正孔が現れる(6.4.3 節)。量子物理工学の講義で「ハミルトニアンの一番大きい項の固有状態で表示する」と言われる表示の選び方は、第二量子化の言葉では真空の選び方になる。

後半では、電子どうしの Coulomb 反発を第2章の2体演算子の公式で Wannier 基底に書き直し、同じサイトの項だけを残した Hubbard 模型を作る(6.4.4 節)。その平均場近似から、量子物理工学の第1回で扱われた Stoner 条件 UN0>1UN_0>1 が出る(6.4.5 節)。6.4.6 節の橋の節では、ここで使った物性の言葉が基準の波動関数の言葉でどう書けるかを並べる。

この章では演算子に帽子を付ける(全巻の記法の既定どおり)。スピン演算子 S^j\hat{\bm{S}}_j は ℏ\hbar を単位にした無次元の量とし、[S^x, S^y]=iS^z\left[\hat S^x,\,\hat S^y\right]=\mathrm{i}\hat S^z、S^±=S^x±iS^y\hat S^\pm=\hat S^x\pm\mathrm{i}\hat S^y とする(『ハミルトニアンの選び方で固体を考える』第5部と同じ流儀)。格子のサイトの数は NsN_{\mathrm s} と書き、電子の数 NN と分ける。

粒子数を保つ2次形式は、モードを取り直せば独立な振動子になる

ボース粒子のモードが MM 個あり、生成消滅演算子 a^i,a^i†\hat a_i,\hat a_i^\dagger(i=1,…,Mi=1,\dots,M)が [a^i, a^j†]=δij\left[\hat a_i,\,\hat a_j^\dagger\right]=\delta_{ij} を満たすとする。ハミルトニアンが

H^=∑i,j=1Mhij a^i†a^j,hij=hji∗(6.4.1)\hat H=\sum_{i,j=1}^{M}h_{ij}\,\hat a_i^\dagger\hat a_j,\qquad h_{ij}=h_{ji}^*\tag{6.4.1}

の形をしているとき、これを粒子数を保つ2次形式と呼ぶ。第2章で示したとおり、これは1体の演算子 ∑kh(k)\sum_k h^{(k)} を Fock 空間に移したものである(第6部第2章)。行列 hh はエルミートなので、ユニタリ行列 UU で h=Udiag⁡(ε1,…,εM)U†h=U\operatorname{diag}(\varepsilon _1,\dots,\varepsilon _M)U^\dagger と対角化できる。

命題 6.4.1(2次形式の対角化 ★★★)

b^α≔∑iUiα∗a^i\hat b_\alpha\coloneqq\sum_iU_{i\alpha}^*\hat a_i とおくと、[b^α, b^β†]=δαβ\left[\hat b_\alpha,\,\hat b_\beta^\dagger\right]=\delta_{\alpha\beta}、[b^α, b^β]=0\left[\hat b_\alpha,\,\hat b_\beta\right]=0 が成り立ち、

H^=∑α=1Mεα b^α†b^α(6.4.2)\hat H=\sum_{\alpha=1}^{M}\varepsilon _\alpha\,\hat b_\alpha^\dagger\hat b_\alpha\tag{6.4.2}

になる。フェルミ粒子({c^i,c^j†}+=δij\{\hat c_i,\hat c_j^\dagger\}_+=\delta_{ij})でも、交換子を反交換子に置き換えて同じことが成り立つ。

証明

[b^α, b^β†]=∑i,jUiα∗Ujβ[a^i, a^j†]=∑iUiα∗Uiβ=(U†U)αβ=δαβ\left[\hat b_\alpha,\,\hat b_\beta^\dagger\right]=\sum_{i,j}U_{i\alpha}^*U_{j\beta}\left[\hat a_i,\,\hat a_j^\dagger\right]=\sum_iU_{i\alpha}^*U_{i\beta}=(U^\dagger U)_{\alpha\beta}=\delta_{\alpha\beta} である。[b^α, b^β]=0\left[\hat b_\alpha,\,\hat b_\beta\right]=0 は [a^i, a^j]=0\left[\hat a_i,\,\hat a_j\right]=0 から明らかである。逆に解くと a^i=∑αUiαb^α\hat a_i=\sum_\alpha U_{i\alpha}\hat b_\alpha なので

∑i,jhija^i†a^j=∑α,β(∑i,jUiα∗hijUjβ)b^α†b^β=∑α,β(U†hU)αβb^α†b^β=∑αεαb^α†b^α\sum_{i,j}h_{ij}\hat a_i^\dagger\hat a_j=\sum_{\alpha,\beta}\Bigl(\sum_{i,j}U_{i\alpha}^*h_{ij}U_{j\beta}\Bigr)\hat b_\alpha^\dagger\hat b_\beta=\sum_{\alpha,\beta}(U^\dagger hU)_{\alpha\beta}\hat b_\alpha^\dagger\hat b_\beta =\sum_\alpha\varepsilon _\alpha\hat b_\alpha^\dagger\hat b_\alpha

となる。フェルミ粒子では、計算の中の交換子をすべて反交換子に読み替えれば、同じ行が成り立つ。

この命題の意味は、相互作用が2次である限り、多粒子の問題が1粒子の行列 hh の対角化に帰着するということである。新しい演算子 b^α†\hat b_\alpha^\dagger が作る励起を素励起と呼ぶ。素励起は「元の粒子」とは別の線型結合であり、どのモードに重みがあるかは UU の列ベクトルで決まる。固体の文献で「フォノン」「マグノン」と呼ぶものは、この b^α†\hat b_\alpha^\dagger にほかならない。

粒子数を保たない2次形式(a^ia^j\hat a_i\hat a_j や a^i†a^j†\hat a_i^\dagger\hat a_j^\dagger を含むもの)は、ユニタリ行列でなく Bogoliubov 変換(a^\hat a と a^†\hat a^\dagger を混ぜる線型変換)で対角化する。反強磁性体のマグノンや超伝導の準粒子がこの例で、手順は 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第2章と ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部第3章にある。この章では粒子数を保つ場合だけを使う。

例題 6.4.1 結合した2つのモード ★★

オリジナル2つのボースのモード a^,b^\hat a,\hat b が

H^=ℏω0(a^†a^+b^†b^)+ℏg(a^†b^+b^†a^)(g>0)\hat H=\hbar\omega_0(\hat a^\dagger\hat a+\hat b^\dagger\hat b)+\hbar g(\hat a^\dagger\hat b+\hat b^\dagger\hat a)\qquad(g>0)

で結合している(たとえば隣り合う2つの共振器の光のモード)。

  1. (1) 命題 6.4.1 で対角化し、量子が1個の準位と2個の準位を求めよ。
  2. (2) 時刻 00 に a^†∣0⟩\hat a^\dagger| 0 \rangle を用意した。時刻 tt に量子が b^\hat b のモードにいる確率を求めよ。
解答

(1) 1粒子の行列は h=ℏ(ω0ggω0)h=\hbar\begin{pmatrix}\omega_0&g\\g&\omega_0\end{pmatrix} で、固有値は ℏ(ω0±g)\hbar(\omega_0\pm g)、固有ベクトルは (1,±1)/2(1,\pm1)/\sqrt2 である。c^±=(a^±b^)/2\hat c_\pm=(\hat a\pm\hat b)/\sqrt2 とおくと H^=ℏ(ω0+g)c^+†c^++ℏ(ω0−g)c^−†c^−\hat H=\hbar(\omega_0+g)\hat c_+^\dagger\hat c_++\hbar(\omega_0-g)\hat c_-^\dagger\hat c_- で、独立な2つの振動子の和になる。量子1個の準位は ℏ(ω0−g)\hbar(\omega_0-g) と ℏ(ω0+g)\hbar(\omega_0+g)、2個の準位は (n+,n−)=(0,2),(1,1),(2,0)(n_+,n_-)=(0,2),(1,1),(2,0) に対応する 2ℏω0−2ℏg2\hbar\omega_0-2\hbar g、2ℏω02\hbar\omega_0、2ℏω0+2ℏg2\hbar\omega_0+2\hbar g である。

(2) a^†=(c^+†+c^−†)/2\hat a^\dagger=(\hat c_+^\dagger+\hat c_-^\dagger)/\sqrt2 なので、時間発展は

e−iH^t/ℏa^†∣0⟩=12(e−i(ω0+g)tc^+†+e−i(ω0−g)tc^−†)∣0⟩=e−iω0t(cos⁡(gt) a^†−isin⁡(gt) b^†)∣0⟩\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\hat Ht/\hbar}\hat a^\dagger| 0 \rangle =\tfrac{1}{\sqrt2}\bigl(\mathrm{e}^{-\mathrm{i}(\omega_0+g)t}\hat c_+^\dagger+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}(\omega_0-g)t}\hat c_-^\dagger\bigr)| 0 \rangle =\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_0t}\bigl(\cos(gt)\,\hat a^\dagger-\mathrm{i}\sin(gt)\,\hat b^\dagger\bigr)| 0 \rangle

であり、b^\hat b にいる確率は sin⁡2(gt)\sin^2(gt) である。量子は周期 π/g\pi/g で2つのモードを行き来する。これは共通例題②の Rabi 振動で離調 Δ=0\Delta=0 とした形 sin⁡2(Ωt/2)\sin^2(\Omega t/2) と同じ式で、Ω=2g\Omega=2g に当たる。量子が1個の部分空間は2次元なので、2準位系そのものになっている。量子2個以上の準位も (1) の和で書けることは、2次形式の特徴である(verify_ch6-04.py で Fock 空間を打ち切った行列と照合した)。

フォノン:原子のずれの基準振動

結晶の原子のずれを調和近似で扱うと、ハミルトニアンは原子のずれと運動量の2次形式になる。第1章では1次元の原子の輪でこれを Fourier 変換し、H^=∑kℏωk(a^k†a^k+12)\hat H=\sum_k\hbar\omega_k(\hat a_k^\dagger\hat a_k+\frac12) と書いた(第6部第1章)。3次元の結晶では、基本格子に rr 個の原子があると、波数 k\bm{k} ごとに 3r3r 本の枝 ss ができて

H^ph=∑k,sℏωs(k)(a^ks†a^ks+12)(6.4.3)\hat H_{\mathrm{ph}}=\sum_{\bm{k},s}\hbar\omega_s(\bm{k})\Bigl(\hat a_{\bm{k}s}^\dagger\hat a_{\bm{k}s}+\frac12\Bigr)\tag{6.4.3}

となる。ここでの対角化は、運動量と位置の両方を含むので命題 6.4.1 より少し広いが、各基準振動が独立な調和振動子になるという結論は同じである(古典の基準振動は ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部第1章)。a^ks†\hat a_{\bm{k}s}^\dagger が作る量子をフォノンと呼び、運動量 ℏk\hbar\bm{k}(逆格子ベクトルの分だけの不定性を持つ結晶運動量)とエネルギー ℏωs(k)\hbar\omega_s(\bm{k}) を運ぶ。

フォノンの数を保存する法則は無い。H^ph\hat H_{\mathrm{ph}} は各モードの数演算子と交換するが、非調和項(ずれの3次以上)を入れると a^a^a^†\hat a\hat a\hat a^\dagger のような項が現れ、フォノンが生まれたり消えたりする。このため熱平衡のフォノンの分布には化学ポテンシャルが入らず、各モードの平均の個数は共通例題①の ⟨n⟩=1/(eβℏω−1)\langle n \rangle =1/(\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1) そのものになる。粒子数が保存するボース粒子との違い(化学ポテンシャルのある Bose 分布)は 第6部第5章で扱う。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 原子のずれが原子間の距離に比べて小さい(調和近似。非調和項を落とす) | 証明 条件付き(結晶の存在を仮定し、振幅 →0\to0・有限の時間区間で。結晶化そのものは3次元で未解決) | 行き先 近似の数理 第13章

フォトン:電磁場のモード

真空中の電磁場も、ベクトルポテンシャルを箱のモードで展開すると、各モード(波数 k\bm{k} と偏光 s=1,2s=1,2)が独立な調和振動子になる。

H^F=∑k,sℏωk(a^ks†a^ks+12),ωk=c∣k∣(6.4.4)\hat H_{\mathrm F}=\sum_{\bm{k},s}\hbar\omega_k\Bigl(\hat a_{\bm{k}s}^\dagger\hat a_{\bm{k}s}+\frac12\Bigr),\qquad\omega_k=c\lvert \bm{k}\rvert\tag{6.4.4}

の形は (6.4.3) と同じで、違いは分散 ω(k)\omega(\bm{k}) と、枝の数が偏光の2本であることだけである。導出は 光学と量子エレクトロニクス 第30章にある。フォトンもフォノンと同じく個数が保存しないので、空洞の中の熱平衡では化学ポテンシャルが 0 の Bose 分布、すなわち Planck 分布に従う。

フォノンとフォトンはどちらも「古典の場の基準振動を、1つずつ共通例題①の振動子として量子化したもの」である。第二量子化の言葉では、どちらも第1章の「場の量子化」の手順をそのまま当てたものであり、違うのは古典の場がずれの場か電磁場かということだけである。

例題 6.4.2 Einstein の固体の比熱を共通例題①から出す ★★

オリジナル原子 NN 個の結晶で、3N3N 個のフォノンのモードがすべて同じ角振動数 ωE\omega_{\mathrm E} を持つとする(Einstein 模型)。

  1. (1) 共通例題①の分配関数 Z1=1/(2sinh⁡(βℏωE/2))Z_1=1/(2\sinh(\beta\hbar\omega_{\mathrm E}/2)) から、比熱 CC を x=ℏωE/(kBT)x=\hbar\omega_{\mathrm E}/( k_{\mathrm B} T) の式で求めよ。
  2. (2) θE=ℏωE/kB\theta_{\mathrm E}=\hbar\omega_{\mathrm E}/ k_{\mathrm B} として、T=θET=\theta_{\mathrm E} と T=θE/3T=\theta_{\mathrm E}/3 での C/(3NkB)C/(3N k_{\mathrm B}) を求めよ。高温の極限も求めよ。
解答

(1) モードは独立なので全体の分配関数は Z13NZ_1^{3N} で、1モードの平均エネルギーは

⟨E⟩1=−∂ln⁡Z1∂β=ℏωE2coth⁡x2=ℏωE(⟨n⟩+12),⟨n⟩=1ex−1\langle E \rangle _1=-\frac{\partial \ln Z_1}{\partial \beta}=\frac{\hbar\omega_{\mathrm E}}{2}\coth\frac{x}{2}=\hbar\omega_{\mathrm E}\Bigl(\langle n \rangle +\frac12\Bigr),\qquad\langle n \rangle =\frac{1}{\mathrm{e}^{x}-1}

である。C=3N d⟨E⟩1/dTC=3N\,\mathrm{d}\langle E \rangle _1/\mathrm{d} T を、dx/dT=−x/T\mathrm{d} x/\mathrm{d} T=-x/T を使って計算すると

C=3NkB x2ex(ex−1)2C=3N k_{\mathrm B}\,\frac{x^2\mathrm{e}^{x}}{(\mathrm{e}^{x}-1)^2}

になる。

(2) x=1x=1 で e/(e−1)2=0.9207\mathrm{e}/(\mathrm{e}-1)^2=0.9207、x=3x=3 で 9e3/(e3−1)2=0.49639\mathrm{e}^3/(\mathrm{e}^3-1)^2=0.4963 である。高温(x→0x\to0)では ex≈1+x\mathrm{e}^x\approx1+x から分母が x2x^2 になり、C→3NkBC\to3N k_{\mathrm B}(Dulong–Petit の値)に戻る。低温では C≈3NkBx2e−xC\approx3N k_{\mathrm B} x^2\mathrm{e}^{-x} と指数関数的に小さくなる。実際の固体の低温の比熱は T3T^3 に従うので、この違いは「全部のモードが同じ振動数」という仮定のためであり、音響フォノンの ω→0\omega\to0 のモードを入れると T3T^3 になる(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部第2章)。数値は verify_ch6-04.py で確かめた。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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