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回る容器と荷電した凝縮体

2026年10月17日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第7部 第3章 量子流体:渦の量子化と Gross–Pitaevskii 方程式の流体形
目次
  1. 剛体回転はできない
  2. Feynman の規則
  3. 荷電した凝縮体:磁束の量子
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第7部 第3章 §7.3.5 ★★ 渦なしの流体は剛体のようには回れない。回る容器の中では渦が格子を作って平均として剛体回転をまね、荷電した凝縮体では同じ量子化が磁束の量子 h/2eh/2e になる

剛体回転はできない

角速度 Ω\Omega で回る円柱の容器に普通の流体を入れると、粘性によって流体は最後に容器と一緒に剛体のように回る。その速度場 v=Ω ez×r\bm{v}=\Omega\,\bm{e}_z\times\bm{r} は渦度 ∇×v=2Ω ez\nabla\times\bm{v}=2\Omega\,\bm{e}_z を持ち、凝縮体の渦なしの条件と両立しない。凝縮体が回転に応じる方法は、渦を入れることだけである。

回る容器と一緒に回る座標系では、エネルギーの代わりに E′=E−ΩLzE'=E-\Omega L_z(LzL_z は凝縮体の全角運動量の zz 成分)を最小にする状態が実現する。容器の中心に巻き数1の渦を1本入れると、全粒子が角運動量 ℏ\hbar を持つ(ψ∝eiφ\psi\propto\mathrm{e}^{\mathrm{i}\varphi} は L^z=−iℏ∂φ\hat L_z=-\mathrm{i}\hbar\partial_\varphi の固有値 ℏ\hbar の状態)ので、長さ ZZ の容器では Lz=ℏ n0πR2ZL_z=\hbar\,n_0\pi R^2Z の角運動量が加わる。渦が入ると E′E' が下がるのはEv−ΩLz<0E_{\mathrm v}-\Omega L_z<0 のときで、(7.3.20) を使うと

Ω>Ωc1=ℏmR2ln⁡Rξ(7.3.22)\Omega>\Omega_{\mathrm c1}=\frac{\hbar}{mR^2}\ln\frac R\xi\tag{7.3.22}

である(対数の中の定数は主要項の精度で落とした)。Ωc1\Omega_{\mathrm c1} より遅い回転では凝縮体は全く回らず、容器だけが回っている。

Feynman の規則

回転を速くすると渦が増えていく。多数の渦が一様に並んだとき、渦の間隔より大きな半径 rr の円で循環をとると、円の中の渦の本数 NvN_{\mathrm v} に比例して NvκN_{\mathrm v}\kappa になる。これが剛体回転の循環 2πr⋅Ωr2\pi r\cdot\Omega r と等しくなるように渦が入ると E′E' が最小になる(粗く見た流れが容器と同じ角速度で回るとき、流れの運動エネルギーから ΩLz\Omega L_z を引いた値が最も小さい)。

命題 7.3.3(Feynman の規則 ★★)

角速度 Ω\Omega で回る凝縮体が粗く見て剛体回転をまねるとき、単位面積あたりの渦(巻き数1)の本数は

nv=2Ωκ=2mΩh(7.3.23)n_{\mathrm v}=\frac{2\Omega}{\kappa}=\frac{2m\Omega}{h}\tag{7.3.23}

である。

証明

半径 rr の円 CC の上の循環は、Stokes の定理から CC の中の渦度の面積分で、渦度は各渦の芯に κ δ(2)\kappa\,\delta^{(2)} の形で集中しているので ΓC=κ nvπr2\Gamma_C=\kappa\,n_{\mathrm v}\pi r^2 となる。剛体回転の速度場では ΓC=2πr⋅Ωr=2Ωπr2\Gamma_C=2\pi r\cdot\Omega r=2\Omega\pi r^2 である。両者が等しいことから nv=2Ω/κn_{\mathrm v}=2\Omega/\kappa を得る。

渦の密度は質量と回転の速さだけで決まり、液体の性質によらない。渦は互いの流れに乗って運ばれ、等しい間隔の三角格子を作る。原子気体の凝縮体では、回転させた凝縮体を罠から放して膨らませると、密度の写真に渦の芯が黒い点として並んで写る。J. R. Abo-Shaeer、C. Raman、J. M. Vogels、W. Ketterle は、100 本を超える渦が三角格子に並んだ写真を撮った(Science 292, 476 (2001))。

例題 7.3.5 回るヘリウムの容器の中の渦 ★★

オリジナル半径 R=1 cmR=1\,\mathrm{cm} の円柱の容器に超流動 4{}^4He を入れて回す。渦の芯の大きさを 0.1 nm0.1\,\mathrm{nm} と置く。

  1. 最初の渦が入る角速度 Ωc1\Omega_{\mathrm c1} を (7.3.22) で見積もれ(ξ\xi に芯の大きさを使う)。
  2. Ω=1 rad/s\Omega=1\,\mathrm{rad/s} で回すと、渦は 1 cm21\,\mathrm{cm^2} あたり何本入り、間隔はどれくらいか。
解答

(1) ℏ/(mR2)=1.0546×10−34/(6.646×10−27×10−4) s−1=1.59×10−4 s−1\hbar/(mR^2)=1.0546\times10^{-34}/(6.646\times10^{-27}\times10^{-4})\,\mathrm{s^{-1}}=1.59\times10^{-4}\,\mathrm{s^{-1}}、ln⁡(R/ξ)=ln⁡(10−2/10−10)=ln⁡108=18.4\ln(R/\xi)=\ln(10^{-2}/10^{-10})=\ln10^8=18.4 なので、Ωc1=2.9×10−3 rad/s\Omega_{\mathrm c1}=2.9\times10^{-3}\,\mathrm{rad/s} である。1回転に 36 分かかるほどの遅い回転で、もう最初の渦が入る。日常の回転の速さでは、容器の中の凝縮体はほぼ必ず渦を含む。

(2) nv=2Ω/κ=2/(9.97×10−8) m−2=2.0×107 m−2n_{\mathrm v}=2\Omega/\kappa=2/(9.97\times10^{-8})\,\mathrm{m^{-2}}=2.0\times10^7\,\mathrm{m^{-2}}、つまり 1 cm21\,\mathrm{cm^2} あたり約 2000 本である。間隔はおよそ nv−1/2=0.22 mmn_{\mathrm v}^{-1/2}=0.22\,\mathrm{mm} で、芯の大きさ 0.1 nm よりはるかに大きい。渦の芯が占める面積の割合は 10−1210^{-12} の桁で、流体はほとんどの場所で渦なしのまま、渦の並びによって平均として剛体回転をまねている。

荷電した凝縮体:磁束の量子

超伝導体の電子は Cooper 対を作り、対が電荷 q=−2eq=-2e、質量 m∗=2mem^*=2m_{\mathrm e} のボース粒子として凝縮している(対ができる仕組みはハミルトニアンの選び方で固体を考える 第5部第4章)。対の凝縮体を極形式 ns eiS/ℏ\sqrt{n_{\mathrm s}}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} S/\hbar} で書くと、第7部第1章の電磁場があるときの注意のとおり、速度場は v=(∇S−qA)/m∗\bm{v}=(\nabla S-q\bm{A})/m^*、量子化条件は

∮C(m∗v+qA)⋅dl=2πℏ ℓ,ℓ∈Z(7.3.24)\oint_C(m^*\bm{v}+q\bm{A})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=2\pi\hbar\,\ell,\qquad\ell\in\mathbb{Z}\tag{7.3.24}

になる。輪の形の超伝導体の内部では、表面から十分深い所で電流が流れず v=0\bm{v}=0 なので、そこを通る閉曲線 CC をとると ∮qA⋅dl=qΦ\oint q\bm{A}\cdot\mathrm{d}\bm{l}=q\Phi(Φ\Phi は輪を貫く磁束)から

∣Φ∣=∣ℓ∣ Φ0,Φ0=2πℏ2e=h2e=2.068×10−15 Wb(7.3.25)\lvert \Phi\rvert =\lvert \ell\rvert \,\Phi_0,\qquad\Phi_0=\frac{2\pi\hbar}{2e}=\frac h{2e}=2.068\times10^{-15}\,\mathrm{Wb}\tag{7.3.25}

を得る。輪を貫く磁束は h/2eh/2e の整数倍に量子化される。B. S. Deaver と W. M. Fairbank、R. Doll と M. Näbauer が独立にこれを測り、単位が h/eh/e でなく h/2eh/2e であることを確かめた(Phys. Rev. Lett. 7, 43 (1961);同 7, 51 (1961))。分母の 2e2e は、凝縮しているのが電子1個でなく対であることの直接の証拠である。

中性の凝縮体を回す場合と見比べると、回る座標系の Lagrangian m2∣r˙+Ω×r∣2\frac m2\lvert \dot{\bm{r}}+\bm{\Omega}\times\bm{r}\rvert ^2 の正準運動量は mv+mΩ×rm\bm{v}+m\bm{\Omega}\times\bm{r} で、mΩ×rm\bm{\Omega}\times\bm{r} がちょうど qAq\bm{A} の役をする(回転の Coriolis 力が磁場の Lorentz 力と同じ形をしている)。容器の回転による「磁束」は∮m(Ω×r)⋅dl=2πmΩR2\oint m(\bm{\Omega}\times\bm{r})\cdot\mathrm{d}\bm{l}=2\pi m\Omega R^2 である。第2種超伝導体に磁場をかけたとき入る Abrikosov の渦(1本が Φ0\Phi_0 を運ぶ)は、回る容器の中の量子渦の荷電版に当たる。超伝導の秩序変数の自由エネルギー(Ginzburg–Landau 理論)からの同じ結果は解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第5部第6章 で導いた。

木下の勉強ステータス

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