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無限自由度:表現が分かれる

2026年10月17日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第8部 第3章 Stone–von Neumann の定理の外側:無限自由度の CCR と CAR
目次
  1. 無限個の振動子の CCR 代数と積状態
  2. 巨視的な平均の補題
  3. 表現が分かれることの証明
  4. 有限の大きな系との関係
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第8部 第3章 §8.3.4 ★★★ 振動子を無限個並べると、振動数を全部変えた真空は元の Fock 空間に入らない。巨視的な平均が表現ごとに違う値をとることで、ユニタリ同値でないことを証明する

無限個の振動子の CCR 代数と積状態

共通例題①の振動子を番号 k=1,2,3,…k=1,2,3,\dots で無限個並べる。相空間 V\mathsf V は、z=(ak,bk)k≥1z=(a_k,b_k)_{k\ge1} のうち有限個の kk を除いて 00 のもの全体とし、s(z,z′)=∑k(akbk′−bkak′)\mathsf s(z,z')=\sum_k(a_kb'_k-b_ka'_k)(有限和)とする。CCR 代数 W(V)\mathfrak W(\mathsf V) は、各 kk の Weyl 演算子 Wk(a,b)W_k(a,b) をすべて含み、番号の違う WkW_k と WlW_l は可換である(s\mathsf s が番号ごとに分かれているから)。

各番号の状態を φk\varphi_k としたとき、積状態 φ=⨂kφk\varphi=\bigotimes_k\varphi_k を

φ(∏kWk(zk))≔∏kφk(Wk(zk))(8.3.12)\varphi\Bigl(\prod_kW_k(z_k)\Bigr)\coloneqq\prod_k\varphi_k\bigl(W_k(z_k)\bigr)\tag{8.3.12}

で定める(zz は有限個の成分しか持たないので右辺は有限積)。全部の番号で振動数 ω\omega の基底状態をとったものを φω\varphi_\omega と書く。φω\varphi_\omega の GNS 表現が、第二量子化の Fock 表現(第6部第2章)である。

この代数の上には、振動数 ω′\omega' の基底状態を全部の番号でとった積状態 φω′\varphi_{\omega'} もある。1個の振動子なら φω′\varphi_{\omega'} は ω\omega の表現の中の正規状態だった。無限個ではどうか。もし φω′\varphi_{\omega'} が ω\omega の Fock 空間のベクトル ∣0′⟩| 0' \rangle で表せるなら、その最初の NN 個の番号への制限との重なりは (8.3.10) の NN 乗

∣⟨0∣0′⟩N∣=(cosh⁡r)−N/2→N→∞0(8.3.13)\lvert \langle 0 | 0' \rangle _N\rvert =(\cosh r)^{-N/2}\xrightarrow{N\to\infty}0\tag{8.3.13}

である(図 8.3.1)。1個ずつは 11 に近い重なりでも、無限個掛ければ 00 になる。∣0′⟩| 0' \rangle は ∣0⟩| 0 \rangle と直交するだけでなく、∣0⟩| 0 \rangle から有限個の番号だけを動かして作れるどのベクトルとも直交する。この直観を、次の補題と定理で正確にする。

図

図 8.3.1 振動数 ω\omega の真空と ω′\omega' の真空の、NN 個の振動子での重なり (cosh⁡r)−N/2(\cosh r)^{-N/2}(r=12ln⁡(ω′/ω)r=\tfrac12\ln(\omega'/\omega))を対数目盛で描いたもの。どの比でも NN に比例して下がり、N→∞N\to\infty で 00 になる。ω′/ω=4\omega'/\omega=4 では N=62N=62 で 10−310^{-3} を切る。

巨視的な平均の補題

補題 8.3.4(巨視的な平均は数になる ★★★)

1つの番号の有界な観測量 AA をとり、その番号 kk の写しを AkA_k と書く。各番号の状態が同じ φ1\varphi_1 である積状態 φ\varphi の GNS 表現 (Hφ,πφ,ξφ)(\mathcal{H}_\varphi,\pi_\varphi,\xi_\varphi) で、

MN≔1N∑k=1Nπφ(Ak)(8.3.14)M_N\coloneqq\frac1N\sum_{k=1}^N\pi_\varphi(A_k)\tag{8.3.14}

は、N→∞N\to\infty で c 1c\,1(c≔φ1(A)c\coloneqq\varphi_1(A))に強収束する。つまり Hφ\mathcal{H}_\varphi のすべてのベクトル η\eta で ∥(MN−c)η∥→0\lVert (M_N-c)\eta\rVert \to0。

証明

まず η=ξφ\eta=\xi_\varphi で示す。φ\varphi は積状態なので、番号の違う k≠lk\ne l ではφ((Ak−c)∗(Al−c))=φ1(A−c)‾ φ1(A−c)=0\varphi\bigl((A_k-c)^*(A_l-c)\bigr)=\overline{\varphi_1(A-c)}\,\varphi_1(A-c)=0 である。したがって

∥(MN−c)ξφ∥2=1N2∑k,l=1Nφ((Ak−c)∗(Al−c))=1N2∑k=1Nφ1((A−c)∗(A−c))=φ1(∣A−c∣2)N→0.(8.3.15)\lVert (M_N-c)\xi_\varphi\rVert ^2=\frac{1}{N^2}\sum_{k,l=1}^N\varphi\bigl((A_k-c)^*(A_l-c)\bigr)=\frac{1}{N^2}\sum_{k=1}^N\varphi_1\bigl((A-c)^*(A-c)\bigr)=\frac{\varphi_1(\lvert A-c\rvert ^2)}{N}\to0 .\tag{8.3.15}

次に η=πφ(B)ξφ\eta=\pi_\varphi(B)\xi_\varphi で、BB が最初の LL 個の番号の元だけで作られている場合を考える。k>Lk>L なら AkA_k と BB は可換なので、N>LN>L で

(MN−c)πφ(B)ξφ=1N∑k=1Lπφ((Ak−c)B)ξφ+πφ(B) 1N∑k=L+1Nπφ(Ak−c) ξφ.(M_N-c)\pi_\varphi(B)\xi_\varphi=\frac1N\sum_{k=1}^{L}\pi_\varphi\bigl((A_k-c)B\bigr)\xi_\varphi+\pi_\varphi(B)\,\frac1N\sum_{k=L+1}^{N}\pi_\varphi(A_k-c)\,\xi_\varphi .

第1項のノルムは L⋅2∥A∥∥B∥/NL\cdot2\lVert A\rVert \lVert B\rVert /N 以下、第2項のノルムは (8.3.15) と同じ計算で ∥B∥φ1(∣A−c∣2)/N\lVert B\rVert \sqrt{\varphi_1(\lvert A-c\rvert ^2)/N} 以下で、どちらも 00 に行く。このような η\eta の全体は Hφ\mathcal{H}_\varphi で稠密である(有限個の番号の元の全体は代数で稠密だから)。最後に、∥MN−c∥≤2∥A∥\lVert M_N-c\rVert \le2\lVert A\rVert が NN によらないので、任意の η\eta に対して、近い稠密なベクトル η′\eta' を選び ∥(MN−c)η∥≤∥(MN−c)η′∥+2∥A∥∥η−η′∥\lVert (M_N-c)\eta\rVert \le\lVert (M_N-c)\eta'\rVert +2\lVert A\rVert \lVert \eta-\eta'\rVert と評価すれば、全体で強収束する。

補題の中身は確率論の大数の法則そのものである。積状態では番号の違う観測量が独立な確率変数のようにふるまい、その標本平均 MNM_N の分散が 1/N1/N で減る。極限 c 1c\,1 は表現空間の上で数として作用し、どのベクトルの上でも同じ値をとる。こういう極限を巨視的な観測量と呼ぶ。有限自由度には巨視的な観測量が無いので、この補題は無限自由度に特有のものである。

表現が分かれることの証明

定理 8.3.5(積状態の表現の非同値 ★★★)

各番号の状態がそれぞれ同じ φ1\varphi_1、φ1′\varphi_1' である2つの積状態 φ\varphi、φ′\varphi' について、1つの番号の観測量 AA で φ1(A)≠φ1′(A)\varphi_1(A)\ne\varphi_1'(A) となるものがあれば、GNS 表現 πφ\pi_\varphi と πφ′\pi_{\varphi'} はユニタリ同値でない。さらに φ′\varphi' は πφ\pi_\varphi の正規状態でない(Hφ\mathcal{H}_\varphi のどの密度行列 ρ^\hat\rho でも φ′(C)=Tr⁡(ρ^ πφ(C))\varphi'(C)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\,\pi_\varphi(C)) と書けない)。

証明

ユニタリ UU があって、すべての CC で Uπφ(C)U−1=πφ′(C)U\pi_\varphi(C)U^{-1}=\pi_{\varphi'}(C) だったとする。C=AkC=A_k の平均をとれば UMNU−1=MN′UM_NU^{-1}=M'_N で、補題 8.3.4 により左辺は U(c 1)U−1=c 1U(c\,1)U^{-1}=c\,1 に、右辺は c′ 1c'\,1 に強収束する。極限は一意なので c=c′c=c' となり、仮定に反する。

正規状態の主張も同じ形である。φ′(C)=Tr⁡(ρ^ πφ(C))\varphi'(C)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\,\pi_\varphi(C)) と書けたとすると、ρ^=∑jpj∣ηj⟩⟨ηj∣\hat\rho=\sum_jp_j| \eta_j \rangle \langle \eta_j | と分解してφ′(MN)=∑jpj⟨ηj, MNηj⟩→∑jpjc=c\varphi'(M_N)=\sum_jp_j\langle \eta_j,\,M_N\eta_j\rangle \to\sum_jp_jc=c(各項は補題で cc に収束し、∣⟨ηj, MNηj⟩∣≤∥A∥\lvert \langle \eta_j,\,M_N\eta_j\rangle \rvert \le\lVert A\rVert なので和と極限を交換できる)。一方 φ′\varphi' は積状態なので φ′(MN)=c′\varphi'(M_N)=c' がどの NN でも成り立つ。c≠c′c\ne c' なので矛盾する。

振動数を変えた真空に当てる。番号ごとの観測量として A=V(b)=eibx^/ℏA=V(b)=\mathrm{e}^{\mathrm{i} b\hat x/\hbar} をとると、基底状態の特性関数からφ1(A)=exp⁡(−b2/(4mℏω))\varphi_1(A)=\exp(-b^2/(4m\hbar\omega))、φ1′(A)=exp⁡(−b2/(4mℏω′))\varphi_1'(A)=\exp(-b^2/(4m\hbar\omega')) で、ω≠ω′\omega\ne\omega' なら異なる。したがって ω\omega の Fock 表現と ω′\omega' の Fock 表現は、同じ CCR 代数の表現でありながらユニタリ同値でなく、φω′\varphi_{\omega'} は ω\omega の Fock 空間のどの密度行列でも書くことはできない。(8.3.9) の Bogoliubov 変換を全部の番号に同じ rr で施す写像は CCR 代数の ∗*自己同型だが、(8.3.8) のようにユニタリで実装することはできない。

一般の Bogoliubov 変換がいつユニタリで実装できるかは D. Shale が答えた1D. Shale (1962), “Linear symmetries of free boson fields”, Trans. Amer. Math. Soc. 103, 149.下の脚注へ。番号ごとに rkr_k の違うスクイーズの場合、条件は ∑ksinh⁡2rk<∞\sum_k\sinh^2r_k<\infty、つまり「新しい真空に含まれる古い量子の総数 (8.3.11) の和が有限」である。重なり ∏k(cosh⁡rk)−1/2\prod_k(\cosh r_k)^{-1/2} が正であるための条件 ∑kln⁡cosh⁡rk<∞\sum_k\ln\cosh r_k<\infty も、rk→0r_k\to0 のとき ln⁡cosh⁡rk≈rk2/2≈sinh⁡2rk/2\ln\cosh r_k\approx r_k^2/2\approx\sinh^2r_k/2 なので同じものになる。同じ rr を全部の番号に施すと、総数は Nsinh⁡2rN\sinh^2r で発散する。

真空をずらす場合も同じである。全部の番号を同じコヒーレント状態 ∣α⟩| \alpha \rangle にした積状態は、ω\omega の Fock 表現とユニタリ同値でない(φ1(V(b))\varphi_1(V(b)) に位相 eibxˉ/ℏ\mathrm{e}^{\mathrm{i} b\bar x/\hbar} が付くので補題の値が変わる。xˉ=2ℏ/(mω) Re⁡α\bar x=\sqrt{2\hbar/(m\omega)}\,\operatorname{Re}\alpha)。重なりは ∣⟨0∣α⟩∣2N=e−N∣α∣2→0\lvert \langle 0 | \alpha \rangle \rvert ^{2N}=\mathrm{e}^{-N\lvert \alpha\rvert ^2}\to0 である。固定した源と結合した中性スカラー場で、相互作用のある場の定常状態が自由場の定常状態の線形結合で書けないことを L. van Hove が示したのは、この型の現象である2L. van Hove (1952), “Les difficultés de divergences pour un modèle particulier de champ quantifié”, Physica 18, 145.下の脚注へ。

例題 8.3.4 振動数を4倍にした真空を巨視的な平均で見分ける ★★★

オリジナルω′=4ω\omega'=4\omega とし、各番号の観測量を A=V(b)A=V(b)、b=mℏωb=\sqrt{m\hbar\omega} とする。

  1. (1) 重なり (cosh⁡r)−N/2(\cosh r)^{-N/2} が 10−310^{-3} を切る最小の NN を求めよ。
  2. (2) c=φω(A)c=\varphi_\omega(A) と c′=φω′(A)c'=\varphi_{\omega'}(A) を求めよ。
  3. (3) ∥(MN−c)ξφ∥\lVert (M_N-c)\xi_\varphi\rVert を求め、N=104N=10^4 のとき ∣c−c′∣\lvert c-c'\rvert と比べよ。
解答

(1) 前の例題から cosh⁡r=5/4\cosh r=5/4 なので、(4/5)N/2<10−3(4/5)^{N/2}<10^{-3} は N>2ln⁡103/ln⁡(5/4)=2×6.908/0.2231=61.9N>2\ln10^3/\ln(5/4)=2\times6.908/0.2231=61.9。最小の NN は 6262 である。

(2) b2/(4mℏω)=1/4b^2/(4m\hbar\omega)=1/4 なので c=e−1/4=0.779c=\mathrm{e}^{-1/4}=0.779。ω′\omega' では b2/(4mℏω′)=1/16b^2/(4m\hbar\omega')=1/16 で c′=e−1/16=0.939c'=\mathrm{e}^{-1/16}=0.939。差は 0.1610.161。

(3) A=V(b)A=V(b) はユニタリで cc は実数なので φ1(∣A−c∣2)=1−2c2+c2=1−c2=1−e−1/2=0.393\varphi_1(\lvert A-c\rvert ^2)=1-2c^2+c^2=1-c^2=1-\mathrm{e}^{-1/2}=0.393。(8.3.15) から ∥(MN−c)ξφ∥=0.393/N\lVert (M_N-c)\xi_\varphi\rVert =\sqrt{0.393/N} で、N=104N=10^4 なら 0.00630.0063。∣c−c′∣=0.161\lvert c-c'\rvert =0.161 より2桁小さい。NN が大きいほど MNM_N は cc に集まり、c′c' の表現の MN′M'_N は c′c' に集まるので、2つの表現の区別は NN とともにはっきりする。

有限の大きな系との関係

実際の物質は有限個の自由度しかもたないので、厳密には Stone–von Neumann の定理の中にいる。それでも無限自由度の表現を使うのは、重なり (8.3.13) が NN について指数関数的に小さく、N∼1023N\sim10^{23} では2つの真空が実際上区別できない世界にいるからである。有限の NN では「同じ表現の中の、直交にきわめて近い2つのベクトル」、N=∞N=\infty では「別の表現」で、後者は前者の極限を数学的に正確にした言葉にあたる。巨視的な観測量 MNM_N のゆらぎ φ1(∣A−c∣2)/N\sqrt{\varphi_1(\lvert A-c\rvert ^2)/N} も、同じ極限の中で 00 になる。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 1/N→01/N\to0(自由度の数の逆数。有限の系を無限自由度の代数で表す熱力学極限) | 証明 条件付き(積状態と、有限個の番号の観測量・その平均に限ってこの章の補題で証明。相関のある状態一般は要確認) | 行き先 近似の数理 第13章

1 D. Shale (1962), “Linear symmetries of free boson fields”, Trans. Amer. Math. Soc. 103, 149.

2 L. van Hove (1952), “Les difficultés de divergences pour un modèle particulier de champ quantifié”, Physica 18, 145.

木下の勉強ステータス

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