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Gleason の定理:言明と3つの帰結

2026年10月17日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第9部 第2章 Gleason の定理:射影の上の確率は密度行列で決まる
目次
  1. 言明
  2. 帰結1:Born の規則は導ける
  3. 帰結2:分散のない状態は無い
  4. 帰結3:状態は有限個の確率で決まる
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

量子力学の様々な構成方法 第9部 第2章 §9.2.2 ★★★ 定理の言明。Born の規則・分散のない状態の不在・有限個の確率による状態の決定が、ここから出る

言明

定理 9.2.2(Gleason の定理 ★★★)

H\mathcal{H} を可分な実または複素ヒルベルト空間で、dim⁡H≥3\dim\mathcal{H}\ge3 とする。このとき、非負の frame function はすべて正則である。すなわち、重み WW の非負の frame function ff に対して、正の自己共役なトレース族の演算子 T^\hat T(Tr⁡T^=W\operatorname{Tr}\hat T=W)がただ1つあって、f(x)=⟨x∣T^∣x⟩f(x)=\langle x | \hat T | x \rangle となる。とくに、L(H)\mathcal L(\mathcal{H}) の上の状態 μ\mu はすべて、ある密度行列 ρ^\hat\rho(ρ^≥0\hat\rho\ge0, Tr⁡ρ^=1\operatorname{Tr}\hat\rho=1)で

μ(P^)=Tr⁡(ρ^P^)(9.2.4)\mu(\hat P)=\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat P)\tag{9.2.4}

と書ける。

Gleason のこの論文は、Mackey が提起した「射影の束の上の確率測度をすべて求めよ」という問いに答えたものである。仮定 dim⁡H≥3\dim\mathcal{H}\ge3 を外すことはできない(9.2.5節)。

逆向きの「Tr⁡(ρ^P^)\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat P) は状態である」は、第9部第1章で確かめた。P^≥0\hat P\ge0 なので Tr⁡(ρ^P^)=Tr⁡(ρ^1/2P^ρ^1/2)≥0\operatorname{Tr}(\hat\rho\hat P)=\operatorname{Tr}(\hat\rho^{1/2}\hat P\hat\rho^{1/2})\ge0、互いに直交する射影の和に対してトレースは足し算になる。

ρ^\hat\rho がただ1つに決まることは、有限次元なら次の計算でわかる(無限次元でも同じ考えで行列要素が決まる)。2つの密度行列 ρ^,σ^\hat\rho,\hat\sigma がすべての単位ベクトルで ⟨x∣ρ^∣x⟩=⟨x∣σ^∣x⟩\langle x | \hat\rho | x \rangle =\langle x | \hat\sigma | x \rangle を与えるとき、D^=ρ^−σ^\hat D=\hat\rho-\hat\sigma はエルミートで、すべての xx で ⟨x∣D^∣x⟩=0\langle x | \hat D | x \rangle =0 を満たす。D^\hat D の固有ベクトルを xx に入れると固有値が 00 なので、D^=0\hat D=0 である。実ヒルベルト空間では、T^\hat T を実対称に限れば同じ議論が成り立つ。

帰結1:Born の規則は導ける

純粋状態 ρ^=∣ψ⟩⟨ψ∣\hat\rho=| \psi \rangle \langle \psi | では、(9.2.4) は μ(P^a)=⟨ψ∣P^a∣ψ⟩\mu(\hat P_a)=\langle \psi | \hat P_a | \psi \rangle、1次元の射影 P^a=∣a⟩⟨a∣\hat P_a=| a \rangle \langle a | なら ∣⟨a∣ψ⟩∣2\lvert \langle a | \psi \rangle \rvert ^2 である。第1部第2章が公理 Q3 として置いた Born の規則は、命題の束(Q1・Q2 の射影の構造)と加法性・非文脈性から出てくる。確率が振幅の「2乗」になる理由は、frame function が2次形式に限られることにある。

帰結2:分散のない状態は無い

第9部第1章で、すべての命題で値が 00 か 11 になる状態を分散のない状態と呼んだ。古典の純粋状態はこれである。隠れた変数の理論は、量子の状態の背後に分散のない状態があり、量子の確率はその混合だと考える。Gleason の定理から、3次元以上ではこの考えが(非文脈性を仮定する限り)成り立たないことが出る。

系 9.2.3(分散のない状態の不在 ★★★)

dim⁡H≥3\dim\mathcal{H}\ge3 なら、L(H)\mathcal L(\mathcal{H}) の上に分散のない状態は無い。

証明

分散のない状態 μ\mu があったとすると、Gleason の定理から f(x)=μ(∣x⟩⟨x∣)=⟨x∣ρ^∣x⟩f(x)=\mu(| x \rangle \langle x |)=\langle x | \hat\rho | x \rangle と書ける。右辺は xx の連続関数で、単位球面 S(H)S(\mathcal{H}) は連結である(dim⁡H≥2\dim\mathcal{H}\ge2 なら球面は弧でつながる)。連続関数が 00 と 11 の2つの値しかとらないなら、連結な集合の上では定数でなければならない(中間値の定理)。f≡0f\equiv0 なら基底の和が 0≠10\neq1、f≡1f\equiv1 なら和が dim⁡H≥3\dim\mathcal{H}\ge3 で 11 にならない。どちらも (9.2.3) に反する。

この議論を最初に隠れた変数の問題として書いたのは Bell である(J. S. Bell (1966), Reviews of Modern Physics 38, 447–452)。Bell は同じ論文で、Gleason の定理に頼らずに 00 と 11 の値をとる点どうしが近づけないことを直接示し、さらに仮定の中の非文脈性こそが疑うべき所だと指摘した。この連続性の議論は無限に多くの基底を使う。有限個の基底だけで同じ矛盾を出すのが Kochen–Specker の定理で、第9部第3章 で扱う。

帰結3:状態は有限個の確率で決まる

dim⁡H=d\dim\mathcal{H}=d なら、密度行列は d2−1d^2-1 個の実数で決まる(エルミートで d2d^2 個、トレース1の条件で1つ減る)。Gleason の定理から、frame function の無数の値も d2−1d^2-1 個の値で決まる。具体的には、正規直交基底 {ei}\{e_i\} と、i≠ji\neq j の組について

uij=ei+ej2,vij=ei+iej2u_{ij}=\frac{e_i+e_j}{\sqrt2},\qquad v_{ij}=\frac{e_i+\mathrm{i} e_j}{\sqrt2}

をとると、f(uij)=12(ρii+ρjj)+Re⁡ρijf(u_{ij})=\frac12(\rho_{ii}+\rho_{jj})+\operatorname{Re}\rho_{ij}、f(vij)=12(ρii+ρjj)−Im⁡ρijf(v_{ij})=\frac12(\rho_{ii}+\rho_{jj})-\operatorname{Im}\rho_{ij} である(⟨v∣ρ^∣v⟩=12(ρii+ρjj+iρij−iρji)\langle v | \hat\rho | v \rangle =\frac12(\rho_{ii}+\rho_{jj}+\mathrm{i}\rho_{ij}-\mathrm{i}\rho_{ji}) と i(ρij−ρij∗)=−2Im⁡ρij\mathrm{i}(\rho_{ij}-\rho_{ij}^*)=-2\operatorname{Im}\rho_{ij} による)。したがって

ρii=f(ei),ρij=[f(uij)−f(ei)+f(ej)2]−i[f(vij)−f(ei)+f(ej)2](9.2.5)\rho_{ii}=f(e_i),\qquad \rho_{ij}=\Bigl[f(u_{ij})-\tfrac{f(e_i)+f(e_j)}{2}\Bigr]-\mathrm{i}\Bigl[f(v_{ij})-\tfrac{f(e_i)+f(e_j)}{2}\Bigr]\tag{9.2.5}

で密度行列がすべて復元できる。これは状態トモグラフィーの最も素朴な形で、Gleason の定理は「この有限個の確率を測れば、ほかのすべての命題の確率が予言できる」ことを保証する。

例題 9.2.2 9つの確率から3準位の密度行列を組む ★★

オリジナル3準位系の状態を測ったところ、f(e1)=12f(e_1)=\frac12, f(e2)=13f(e_2)=\frac13, f(e3)=16f(e_3)=\frac16, f(u12)=f(v12)=1324f(u_{12})=f(v_{12})=\frac{13}{24} で、u13,v13,u23,v23u_{13},v_{13},u_{23},v_{23} の値はすべて対角成分の平均に等しかった。

  1. (1) (9.2.5) で ρ^\hat\rho を組め。
  2. (2) 組んだ ρ^\hat\rho が半正定値であることを確かめよ。
  3. (3) 測っていない命題 ∣e2⟩⟨e2∣| e_2 \rangle \langle e_2 | の補命題 1^−∣e2⟩⟨e2∣\hat 1-| e_2 \rangle \langle e_2 | の確率と、u12u_{12} の直交補 u12′=(e1−e2)/2u'_{12}=(e_1-e_2)/\sqrt2 の確率を予言せよ。
解答

(1) ρ12=(1324−512)−i(1324−512)=18−i8\rho_{12}=\bigl(\frac{13}{24}-\frac{5}{12}\bigr)-\mathrm{i}\bigl(\frac{13}{24}-\frac{5}{12}\bigr)=\frac18-\frac{\mathrm{i}}{8}。ほかの非対角成分は 00。よって

ρ^=(121−i801+i81300016).\hat\rho=\begin{pmatrix}\frac12&\frac{1-\mathrm{i}}{8}&0\\[2pt]\frac{1+\mathrm{i}}{8}&\frac13&0\\[2pt]0&0&\frac16\end{pmatrix}.

(2) 左上の 2×22\times2 のブロックの行列式は 12⋅13−∣1−i8∣2=16−132=1396>0\frac12\cdot\frac13-\lvert \frac{1-\mathrm{i}}{8}\rvert ^2=\frac16-\frac{1}{32}=\frac{13}{96}>0、対角成分も正なので、このブロックは正定値。右下の 16\frac16 も正。よって ρ^≥0\hat\rho\ge0、トレースは 11。

(3) μ(1^−∣e2⟩⟨e2∣)=1−13=23\mu(\hat 1-| e_2 \rangle \langle e_2 |)=1-\frac13=\frac23。f(u12′)=12(ρ11+ρ22)−Re⁡ρ12=512−18=724f(u'_{12})=\frac12(\rho_{11}+\rho_{22})-\operatorname{Re}\rho_{12}=\frac{5}{12}-\frac18=\frac{7}{24}。f(u12)+f(u12′)=1324+724=56=f(e1)+f(e2)f(u_{12})+f(u'_{12})=\frac{13}{24}+\frac{7}{24}=\frac56=f(e_1)+f(e_2) で、e3e_3 に直交する平面の中の和が保たれている。

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