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出てくるもの2:構造因子と消滅則

2026年10月15日6分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第3章 回折:X 線・電子線・中性子で周期を測る
目次
  1. 構造因子
  2. 消滅則
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部 第3章 §1.3.3 ★★★ Laue 条件を満たす方向でも、単位胞の中の原子の干渉で強度が0になることがある。強度から原子の並びが分かる

構造因子

Laue 条件を満たす方向 q=G\bm{q}=\bm{G} での散乱振幅は、式 (1.3.4) の単位胞の和で決まる。探り針によらない形で書くために、原子 jj が1個で散乱するときの振幅を sj(q)s_j(\bm{q}) と書く(X 線・中性子・電子での具体形は次節)。このとき

SG≔∑jsj(G) e−iG⋅dj,I(G)∝∣SG∣2(1.3.9)S_{\bm{G}}\coloneqq\sum_{j}s_j(\bm{G})\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{G}\cdot\bm{d}_j},\qquad I(\bm{G})\propto\lvert S_{\bm{G}}\rvert ^2\tag{1.3.9}

を構造因子と呼ぶ。和は単位胞の中の原子についてとる。dj\bm{d}_j を基本並進ベクトルで dj=xja1+yja2+zja3\bm{d}_j=x_j\bm{a}_1+y_j\bm{a}_2+z_j\bm{a}_3 と書き、G=hb1+kb2+lb3\bm{G}=h\bm{b}_1+k\bm{b}_2+l\bm{b}_3 とすると、位相は G⋅dj=2π(hxj+kyj+lzj)\bm{G}\cdot\bm{d}_j=2\pi(hx_j+ky_j+lz_j) という簡単な形になる。

消滅則

立方晶の結晶は、基本単位胞(体積最小の単位胞)でなく、辺の長さ aa の立方体(慣用単位胞)で記述することが多い。慣用単位胞は単純立方格子に原子を何個か置いたものとみなせるので、逆格子は G=(2π/a)(h,k,l)\bm{G}=(2\pi/a)(h,k,l) の単純立方格子になり、構造因子の中に格子点の並びの干渉が入ってくる。

面心立方(fcc)格子の慣用単位胞には (0,0,0)(0,0,0)、(0,12,12)(0,\tfrac12,\tfrac12)、(12,0,12)(\tfrac12,0,\tfrac12)、(12,12,0)(\tfrac12,\tfrac12,0) の4点がある。同じ原子(振幅 ss)が4点にあれば

Shkl=s[1+e−iπ(k+l)+e−iπ(h+l)+e−iπ(h+k)]={4s(h,k,l がすべて偶数かすべて奇数)0(偶奇が混ざる)(1.3.10)S_{hkl}=s\left[1+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi(k+l)}+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi(h+l)}+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi(h+k)}\right]= \begin{cases}4s&(h,k,l\text{ がすべて偶数かすべて奇数})\\0&(\text{偶奇が混ざる})\end{cases}\tag{1.3.10}

である。体心立方(bcc)なら (0,0,0)(0,0,0) と (12,12,12)(\tfrac12,\tfrac12,\tfrac12) の2点で、Shkl=s[1+(−1)h+k+l]S_{hkl}=s[1+(-1)^{h+k+l}] は h+k+lh+k+l が偶数で 2s2s、奇数で 0 である。

構造因子が 0 になる反射を消滅則(系統的消滅)と呼ぶ。この消滅は「その (h,k,l)(h,k,l) は本当の逆格子ベクトルではない」ことの表れである。fcc の本当の逆格子は bcc 格子で(前の章)、その点を慣用単位胞の指数で書くと、まさに h,k,lh,k,l がすべて偶数かすべて奇数の点になる。慣用単位胞という大きめの箱を使ったので、存在しない逆格子点まで数えてしまい、それを構造因子が 0 で消している、という関係である。

基本構造に2種類以上の原子があると、消滅は部分的になる。塩化ナトリウム型の結晶(fcc 格子の各点に陽イオン A を置き、(12,0,0)(\tfrac12,0,0) だけずれた所に陰イオン B を置く)では

Shkl={4(sA+sB)(h,k,l がすべて偶数)4(sA−sB)(h,k,l がすべて奇数)0(偶奇が混ざる)(1.3.11)S_{hkl}=\begin{cases}4(s_{\mathrm A}+s_{\mathrm B})&(h,k,l\text{ がすべて偶数})\\4(s_{\mathrm A}-s_{\mathrm B})&(h,k,l\text{ がすべて奇数})\\0&(\text{偶奇が混ざる})\end{cases}\tag{1.3.11}

となる。X 線の振幅はほぼ原子の電子の数に比例するので(次節)、塩化カリウムでは K+\mathrm K^+ と Cl−\mathrm{Cl}^- がどちらも 18 個の電子を持ち、h,k,lh,k,l がすべて奇数の反射がほとんど消える。X 線で見ると、塩化カリウムは格子定数 a/2a/2 の単純立方格子のように見える。強度が原子の種類の違いを反映することの、いちばん分かりやすい例である。

例題 1.3.3 ダイヤモンド構造の構造因子 ★★★

オリジナルダイヤモンド構造は、fcc 格子の各点に2つの同じ原子を (0,0,0)(0,0,0) と (14,14,14)(\tfrac14,\tfrac14,\tfrac14) に置いたものである(Si・Ge・ダイヤモンド)。原子1個の振幅を ss とする。

  1. (1) 構造因子が Shkl=Shklfcc [1+e−iπ(h+k+l)/2]S_{hkl}=S^{\mathrm{fcc}}_{hkl}\,[1+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi(h+k+l)/2}] と分解することを示せ。
  2. (2) (111)(111)・(200)(200)・(220)(220)・(222)(222) について ∣S∣2/s2\lvert S\rvert ^2/s^2 を求めよ。
  3. (3) fcc の消滅則に加えて、ダイヤモンド構造で新しく消える反射の規則を述べよ。
解答

(1) 単位胞の8個の原子の位置は、fcc の4点 dα\bm{d}_\alpha と、それに u=(14,14,14)a\bm{u}=(\tfrac14,\tfrac14,\tfrac14)a を足した4点である。和を2段に分けるとS=∑αse−iG⋅dα(1+e−iG⋅u)S=\sum_\alpha s\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{G}\cdot\bm{d}_\alpha}(1+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{G}\cdot\bm{u}}) で、G⋅u=2π(h+k+l)/4=π(h+k+l)/2\bm{G}\cdot\bm{u}=2\pi(h+k+l)/4=\pi(h+k+l)/2 だから示す式になる。

(2) (111)(111):fcc は許され 4s4s、第2因子は 1+e−3πi/2=1+i1+\mathrm{e}^{-3\pi\mathrm{i}/2}=1+\mathrm{i} で ∣1+i∣2=2\lvert 1+\mathrm{i}\rvert ^2=2、したがって ∣S∣2=16⋅2 s2=32s2\lvert S\rvert ^2=16\cdot2\,s^2=32s^2。(200)(200):fcc は 4s4s、第2因子は 1+e−iπ=01+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi}=0 で ∣S∣2=0\lvert S\rvert ^2=0。(220)(220):第2因子は 1+e−2πi=21+\mathrm{e}^{-2\pi\mathrm{i}}=2 で ∣S∣2=64s2\lvert S\rvert ^2=64s^2。(222)(222):第2因子は 1+e−3πi=01+\mathrm{e}^{-3\pi\mathrm{i}}=0 で ∣S∣2=0\lvert S\rvert ^2=0。

(3) h,k,lh,k,l がすべて偶数で、しかも h+k+lh+k+l が 4 の倍数でない(h+k+l≡2(mod4)h+k+l\equiv2\pmod 4)反射が消える。(200)(200)・(222)(222)・(420)(420) などがこれに当たる。fcc の消滅は「慣用単位胞を使ったため」だったが、こちらの消滅は基本構造の2つの原子の干渉による本物の消滅である。ただし Si の (222)(222) は実験では弱く見える。その理由は 1.3.5 節で扱う。

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