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何を削ったか:1回散乱・静止した格子・孤立原子の重ね合わせ

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1部 第3章 回折:X 線・電子線・中性子で周期を測る
目次
  1. 多重散乱を捨てた(運動学的回折)
  2. 格子を止めた(Debye–Waller 因子)
  3. 結晶の電子密度を孤立原子の重ね合わせにした
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第1部 第3章 §1.3.5 ★★★ 回折の理論で捨てた3つを数え、どこで破れるかを実験の量で示す。熱振動は Debye–Waller 因子として戻せる

式 (1.3.1) を選んだときと、式 (1.3.3) を出したときに捨てたものは、大きく3つある。

多重散乱を捨てた(運動学的回折)

第1 Born 近似は、散乱された波がもう一度散乱される寄与を捨てた。Laue 条件を満たす方向では、すべての単位胞からの散乱波が同じ位相で足し合わさるので、散乱波の振幅は結晶の厚さに比例して大きくなる。厚さが増して散乱波が入射波と同じ大きさに近づくと、散乱波がもう一度散乱されて入射方向へ戻る寄与が無視できなくなり、1回散乱の近似は破れる。この近似を運動学的回折、多重散乱まで含めた理論を動力学的回折と呼ぶ。入射波のエネルギーが散乱波へ移りきる厚さを消衰距離と呼び、結晶の厚さがそれより十分薄ければ運動学的回折を使うことができる。電子線は振幅が X 線より3桁大きいので消衰距離が短く、電子顕微鏡の像や電子回折の強度は、ほとんどの場合に動力学的回折で解析する。

多重散乱は消滅則も破る。ある反射 G1\bm{G}_1 で散乱された波が、さらに G2\bm{G}_2 で散乱されると、合わせて G1+G2\bm{G}_1+\bm{G}_2 の方向に出る。この和が構造因子 0 の反射に当たっていても、2段の経路で強度が現れる。Si の (222)(222) が弱く見える理由の1つはこれで、Renninger が見いだしたので Renninger 効果と呼ばれる(M. Renninger (1937), Z. Phys. 106, 141)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 結晶の厚さ/消衰距離 →0\to0(1回散乱の Born 近似) | 証明 要確認(孤立した弱いポテンシャルでの Born 級数の収束と、厚さの極限としての運動学的回折の正当化は、前提を原論文で確かめていない) | 行き先 近似の数理 第7章

格子を止めた(Debye–Waller 因子)

実際の原子は平衡位置 R+dj\bm{R}+\bm{d}_j のまわりで u\bm{u} だけ揺れている。位置を R+dj+u\bm{R}+\bm{d}_j+\bm{u} に置き換えると、式 (1.3.4) の位相に e−iq⋅u\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{u}} が付く。Bragg の方向の鋭いピークの強さは、各原子の位相因子を熱平均した振幅で決まる。原子が調和振動子の熱平衡にあるとき、q⋅u\bm{q}\cdot\bm{u} は平均 0 の Gauss 分布に従う(量子力学でも、調和振動子の熱平衡状態で q⋅u^\bm{q}\cdot\hat{\bm{u}} が生成消滅演算子の1次式であることから同じ結論が出る)。Gauss 分布の特性関数の公式から

⟨e−iq⋅u⟩=e−⟨(q⋅u)2⟩/2,I(G)=I静止(G) e−⟨(G⋅u)2⟩=I静止(G) e−G2⟨ux2⟩(1.3.16)\langle \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{u}} \rangle =\mathrm{e}^{-\langle (\bm{q}\cdot\bm{u})^2 \rangle /2},\qquad I(\bm{G})=I_{\mathrm{静止}}(\bm{G})\,\mathrm{e}^{-\langle (\bm{G}\cdot\bm{u})^2 \rangle }=I_{\mathrm{静止}}(\bm{G})\,\mathrm{e}^{-G^2\langle u_x^2 \rangle }\tag{1.3.16}

となる。最後の等号は立方晶で揺れが等方的(⟨ux2⟩=⟨uy2⟩=⟨uz2⟩\langle u_x^2 \rangle =\langle u_y^2 \rangle =\langle u_z^2 \rangle、異なる成分の相関なし)とした。e−G2⟨ux2⟩\mathrm{e}^{-G^2\langle u_x^2 \rangle } を Debye–Waller 因子と呼ぶ。

この式から3つのことが読み取れる。第一に、熱振動は Bragg ピークを広げずに低くする。格子の周期は平均として保たれているので、ピークの位置と鋭さは変わらない。第二に、減り方は G2G^2 に比例するので、2θ2\theta の大きい(GG の大きい)反射ほど弱くなる。第三に、零点振動のため絶対零度でも ⟨ux2⟩>0\langle u_x^2 \rangle >0 で、因子は 1 にならない。Bragg ピークから消えた強度は無くならず、ピークの間に広がった散漫散乱になる。そこにはフォノンを1個作るか吸収する非弾性散乱が含まれ、中性子でそのエネルギーの変化まで測るとフォノンの分散関係が分かる(第3部第3章)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ⟨u2⟩/a→0\sqrt{\langle u^2 \rangle }/a\to0(振幅が格子間隔に比べて小さい調和近似。調和近似のもとで式 (1.3.16) は厳密) | 証明 条件付き(Born–Oppenheimer と調和近似が成り立つ範囲。基底状態がそもそも結晶になること自体は未解決) | 行き先 近似の数理 第7章

結晶の電子密度を孤立原子の重ね合わせにした

構造因子 (1.3.9) では、結晶の電子密度を、孤立した原子の球対称な電子密度を格子点に並べた和で置き換えた。実際の結晶では、化学結合のために価電子の一部が原子と原子の間に移る。Si では隣の原子の間の結合の中点に電荷が溜まり、その分布は球対称でない。この非球対称な部分の Fourier 成分は (222)(222) で 0 にならないので、多重散乱を避けた条件でも Si の (222)(222) は弱く残る。逆に言うと、禁制反射の弱い強度は結合電荷を測る手段になる。未知の結晶の電子密度を、分かっている孤立原子の密度で置き換えて閉じたので、この置き換えは C 型の近似であり、内部に誤差の評価を持たない。

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 結晶の電子密度を孤立原子の球対称な密度の和で置き換える(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第9章

例題 1.3.5 Einstein 模型で見積もる Debye–Waller 因子 ★★

オリジナル格子定数 a=0.3615 nma=0.3615\,\mathrm{nm} の fcc 結晶で、質量 M=63.55 uM=63.55\,\mathrm u の原子が、各方向に独立に角振動数 ω\omega の調和振動子として揺れているとする(Einstein 模型)。ℏω=kBΘE\hbar\omega= k_{\mathrm B}\Theta_{\mathrm E}、ΘE=240 K\Theta_{\mathrm E}=240\,\mathrm K とする。

  1. (1) 1方向の揺れの2乗平均が ⟨ux2⟩=ℏ2Mωcoth⁡ℏω2kBT\langle u_x^2 \rangle =\frac{\hbar}{2M\omega}\coth\frac{\hbar\omega}{2 k_{\mathrm B} T} であることを用い、T=300 KT=300\,\mathrm K での ⟨ux2⟩\sqrt{\langle u_x^2 \rangle } を求めよ。高温の近似 kBT/(Mω2)k_{\mathrm B} T/(M\omega^2) とも比べよ。
  2. (2) (111)(111)・(222)(222)・(444)(444) の反射の Debye–Waller 因子を求めよ。
解答

(1) ω=kBΘE/ℏ=3.14×1013 s−1\omega= k_{\mathrm B}\Theta_{\mathrm E}/\hbar=3.14\times10^{13}\,\mathrm{s^{-1}}、M=1.055×10−25 kgM=1.055\times10^{-25}\,\mathrm{kg}。ℏω/(2kBT)=0.4\hbar\omega/(2 k_{\mathrm B} T)=0.4 で coth⁡0.4=2.63\coth0.4=2.63。ℏ/(2Mω)=1.59×10−23 m2\hbar/(2M\omega)=1.59\times10^{-23}\,\mathrm{m^2} なので ⟨ux2⟩=4.19×10−23 m2\langle u_x^2 \rangle =4.19\times10^{-23}\,\mathrm{m^2}、⟨ux2⟩=6.47×10−12 m\sqrt{\langle u_x^2 \rangle }=6.47\times10^{-12}\,\mathrm m で、格子定数の 1.8% である。高温の近似では kBT/(Mω2)=3.98×10−23 m2k_{\mathrm B} T/(M\omega^2)=3.98\times10^{-23}\,\mathrm{m^2} で、零点振動の分だけ 5% ほど小さい。

(2) G2=(2π/a)2(h2+k2+l2)G^2=(2\pi/a)^2(h^2+k^2+l^2)。(2π/a)2=3.02×1020 m−2(2\pi/a)^2=3.02\times10^{20}\,\mathrm{m^{-2}} なので、(111)(111):G2⟨ux2⟩=0.0379G^2\langle u_x^2 \rangle =0.0379、因子 0.9630.963。(222)(222):0.1520.152、因子 0.8590.859。(444)(444):0.6070.607、因子 0.5450.545。同じ方向の反射でも、次数が上がるほど強度が大きく削られる。(444)(444) では熱振動だけで半分近くが散漫散乱へ移っている。

木下の勉強ステータス

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