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当てる道具:部分空間への射影と重なりのある固有値問題

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 原子2個:結合軌道と反結合軌道
目次
  1. Rayleigh–Ritz の方法
  2. 直交化すると tight-binding の形に戻る
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第1章 §2.1.2 ★★★ 部分空間 V2V_2 に固有値問題を射影すると Hc=ESc\mathsf H\bm{c}=E\mathsf S\bm{c} になる。得られる固有値は厳密な固有値の上界である

Rayleigh–Ritz の方法

部分空間 V2V_2 の中で最もよい近似固有状態を選ぶ規則は、Rayleigh 商

R[ψ]=⟨ψ∣H^∣ψ⟩⟨ψ∣ψ⟩(2.1.7)\mathcal R[\psi]=\frac{\langle \psi | \hat H | \psi \rangle }{\langle \psi | \psi \rangle }\tag{2.1.7}

を V2V_2 の中で停留させることである。ψ=caϕa+cbϕb\psi=c_a\phi_a+c_b\phi_b(係数は実数にとってよい)を入れ、行列要素

Hij=⟨ϕi∣H^∣ϕj⟩,Sij=⟨ϕi∣ϕj⟩(i,j=a,b)(2.1.8)H_{ij}=\langle \phi_i | \hat H | \phi_j \rangle ,\qquad \mathsf S_{ij}=\langle \phi_i | \phi_j \rangle \qquad(i,j=a,b)\tag{2.1.8}

を使うと、R=∑ijciHijcj/∑ijciSijcj\mathcal R=\sum_{ij}c_iH_{ij}c_j\big/\sum_{ij}c_i\mathsf S_{ij}c_j である。cic_i で微分して 00 とおくと

Hc=E Sc,H=(HaaHabHabHaa),S=(1ss1)(2.1.9)\mathsf H\bm{c}=E\,\mathsf S\bm{c},\qquad \mathsf H=\begin{pmatrix}H_{aa}&H_{ab}\\H_{ab}&H_{aa}\end{pmatrix},\quad \mathsf S=\begin{pmatrix}1&s\\s&1\end{pmatrix}\tag{2.1.9}

を得る。ここで c=(ca,cb)T\bm{c}=(c_a,c_b)^{\mathsf T} で、2つの原子が同じなので対角成分は等しい。S\mathsf S が単位行列でないので、これは一般化固有値問題である。固有値は det⁡(H−ES)=0\det(\mathsf H-E\mathsf S)=0、すなわち (Haa−E)2=(Hab−Es)2(H_{aa}-E)^2=(H_{ab}-Es)^2 の解で、この巻の記号でホッピングを Hab=−tH_{ab}=-t と書くと

E+=Haa−t1+s,E−=Haa+t1−s(2.1.10)E_+=\frac{H_{aa}-t}{1+s},\qquad E_-=\frac{H_{aa}+t}{1-s}\tag{2.1.10}

になる。E+E_+ の固有ベクトルは ca=cbc_a=c_b(結合軌道 ψ+\psi_+)、E−E_- は ca=−cbc_a=-c_b(反結合軌道 ψ−\psi_-)で、例題 2.1.1 で反転対称性から決めたものと一致する。s=0s=0 とおくと第1部第1章の2サイトの tight-binding の Haa∓tH_{aa}\mp t に戻る。

この手順は、第V巻の Galerkin 法を固有値問題に当てたものである(近似の数理 第4章)。そこで示された性質のうち、この章で使うのは次の2つである。

定理 2.1.1(Rayleigh–Ritz の上界性)

H^\hat H が下に有界で、その低い方から数えた固有値を E1≤E2≤⋯E_1\le E_2\le\cdots とする。nn 次元の部分空間で一般化固有値問題 (2.1.9) を解いて得た固有値をE~1≤⋯≤E~n\tilde E_1\le\cdots\le\tilde E_n とすると、E~k≥Ek\tilde E_k\ge E_k(k=1,…,nk=1,\dots,n)が成り立つ。部分空間を広げると E~k\tilde E_k は増えない。

証明は 近似の数理 第4章にある(Courant–Fischer の min-max 原理から出る)。H2+\mathrm{H}_2^+ では、H^\hat H が反転と交換するので、偶の状態と奇の状態に分けて定理を当ててよい。V2V_2 の偶の部分は ψ+\psi_+ の1次元、奇の部分は ψ−\psi_- の1次元なので、E+E_+ は厳密な偶の基底状態のエネルギー以上、E−E_- は厳密な奇の最低の状態のエネルギー以上になる。

直交化すると tight-binding の形に戻る

重なりがあると、行列 (2.1.9) は第1部第1章の tight-binding の形と見かけが違う。軌道を直交化すると同じ形に戻る。S−1/2\mathsf S^{-1/2} で基底を取り替えた ϕ~i=∑jϕj(S−1/2)ji\tilde\phi_i=\sum_j\phi_j(\mathsf S^{-1/2})_{ji} は正規直交になり(Löwdin の対称直交化)、ϕ~a\tilde\phi_a は ϕa\phi_a に近く、ϕb\phi_b の成分を少し引いた軌道である。この基底でのハミルトニアンは S−1/2HS−1/2\mathsf S^{-1/2}\mathsf H\mathsf S^{-1/2} で、固有値は式 (2.1.10) と同じ E±E_\pm である。対角成分を ε′\varepsilon '、非対角成分を −t′-t' と書くと E±=ε′∓t′E_\pm=\varepsilon '\mp t' なので、

ε′=E++E−2=Haa+st1−s2,t′=E−−E+2=t+sHaa1−s2(2.1.11)\varepsilon '=\frac{E_++E_-}{2}=\frac{H_{aa}+st}{1-s^2},\qquad t'=\frac{E_--E_+}{2}=\frac{t+sH_{aa}}{1-s^2}\tag{2.1.11}

になる。tight-binding 模型のサイトのエネルギーとホッピングは、重なりのある軌道で計算した HaaH_{aa}、tt でなく、直交化した軌道での ε′\varepsilon '、t′t' と読むのが正しい。HaaH_{aa} が負で ∣Haa∣>st\lvert H_{aa}\rvert >st のとき(H2+\mathrm{H}_2^+ ではいつもそうである)t′<tt'<t で、重なりを入れると有効なホッピングは小さくなる。

例題 2.1.2 重なりを捨てると上界が破れる ★★★

オリジナルH2+\mathrm{H}_2^+ で R=2a0R=2a_0 のとき、次の2.1.3節で求める値 Haa=−0.9725H_{aa}=-0.9725、Hab=−0.6992H_{ab}=-0.6992、s=0.5865s=0.5865(原子単位)を使う。厳密な基底状態の全エネルギー(式 (2.1.2))は E=−0.6026EhE=-0.6026E_{\mathrm h} である。

  1. (1) 式 (2.1.10) の E+E_+ に 1/R1/R を足し、厳密な値と比べよ。
  2. (2) 重なりを捨てて S\mathsf S を単位行列とみなし、Haa+HabH_{aa}+H_{ab} を結合軌道のエネルギーとすると、全エネルギーはいくらになるか。定理 2.1.1 と比べて何が起きたかを述べよ。
  3. (3) 式 (2.1.11) の ε′\varepsilon ' と t′t' を求めよ。
解答

(1) E+=(Haa+Hab)/(1+s)=−1.6718/1.5865=−1.0538E_+=(H_{aa}+H_{ab})/(1+s)=-1.6718/1.5865=-1.0538 で、1/R=0.51/R=0.5 を足すと −0.5538Eh-0.5538E_{\mathrm h} である。厳密な −0.6026Eh-0.6026E_{\mathrm h} より 0.0488Eh0.0488E_{\mathrm h} 高く、上界になっている。

(2) Haa+Hab+1/R=−1.6718+0.5=−1.1718EhH_{aa}+H_{ab}+1/R=-1.6718+0.5=-1.1718E_{\mathrm h} で、厳密な基底エネルギーより 0.57Eh0.57E_{\mathrm h} も低い。定理 2.1.1 は、部分空間の中の状態の Rayleigh 商に対する主張なので、正しく規格化された状態のエネルギーは厳密な値を下回らない。Haa+HabH_{aa}+H_{ab} は、規格化されていない状態 ϕa+ϕb\phi_a+\phi_b の ⟨ψ∣H^∣ψ⟩/2\langle \psi | \hat H | \psi \rangle /2 であり、分母の ⟨ψ∣ψ⟩/2=1+s\langle \psi | \psi \rangle /2=1+s を 11 と取り違えている。その結果、変分原理の外に出て、物理的にあり得ない低いエネルギーになった。重なりが 0.590.59 もある距離では、ss を捨てた行列は使えない。

(3) ε′=(Haa+st)/(1−s2)=(−0.9725+0.5865×0.6992)/(1−0.3440)=−0.5624/0.6560=−0.8573\varepsilon '=(H_{aa}+st)/(1-s^2)=(-0.9725+0.5865\times0.6992)/(1-0.3440)=-0.5624/0.6560=-0.8573、t′=(t+sHaa)/(1−s2)=(0.6992−0.5703)/0.6560=0.1965t'=(t+sH_{aa})/(1-s^2)=(0.6992-0.5703)/0.6560=0.1965(原子単位)である。ε′−t′=−1.0538\varepsilon '-t'=-1.0538 は (1) の E+E_+ に一致する。有効なホッピング t′t' は、重なりのある軌道で計算した t=0.6992t=0.6992 の3分の1以下になる。

木下の勉強ステータス

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