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この章で選ぶ HH:水素分子イオンと2つの 1s1s 軌道

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 原子2個:結合軌道と反結合軌道
目次
  1. 電子のハミルトニアン
  2. 残す軌道を2つに決める
  3. 重なり積分を計算する
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第1章 §2.1.1 ★★★ H2+\mathrm{H}_2^+ の電子のハミルトニアンを、2つの原子の 1s1s 軌道が張る2次元の部分空間に限る

第2部は、原子が2個並んだときの電子の準位から始めて、原子を NN 個に増やすと準位が帯(バンド)になるところまでを一から組み立てる。この章はその最初の一歩で、電子が1個だけの分子である水素分子イオン H2+\mathrm{H}_2^+ を扱う。H2+\mathrm{H}_2^+ は、電子どうしの斥力が無いのでBorn–Oppenheimer 近似の電子の問題が厳密に解ける。そのため、2つの原子軌道だけを残す近似(LCAO)の答えを厳密解と並べて、削ったものの大きさを数値で確かめることができる。

2.1.1節では H2+\mathrm{H}_2^+ の電子のハミルトニアンを書き、2つの 1s1s 軌道が張る2次元の部分空間を選ぶ。2.1.2節では、その部分空間に固有値問題を射影する道具(Rayleigh–Ritz の方法)を当て、軌道が直交しないために重なり ss の入った一般化固有値問題になることを示す。2.1.3節で積分を実際に計算し、結合軌道と反結合軌道のエネルギーを原子間距離 RR の関数として求める。2.1.4節では、この2つの準位に電子を2個・3個・4個と詰め、H2\mathrm{H}_2 が結合してHe2\mathrm{He}_2 が結合しない理由を重なりの式から出す。2.1.5節で何を削ったかを整理して裏付けの札を置き、深い井戸の極限で LCAO が正しくなることを1次元の模型で確かめる。2.1.6節で化学の Hückel 法と量子力学の2準位系の書き方に対応させ、2.1.7節でまとめる。

この章では、数値を出すとき長さを Bohr 半径 a0=0.529 A˚a_0=0.529\,\text{\AA}、エネルギーを Hartree エネルギー Eh=e2/(4πε0a0)=27.2 eVE_{\mathrm h}=e^2/(4\pi\varepsilon_0a_0)=27.2\,\mathrm{eV} で測る原子単位を使う。式は原子単位で書き、結果を eV と Å に直して添える。

電子のハミルトニアン

陽子 aa と陽子 bb を距離 RR だけ離して止め、そのまわりを電子1個が動く。陽子を止めてよいのは、陽子が電子の約1836倍重く、第1部第1章の Born–Oppenheimer 近似が使えるからである。電子から陽子 aa、bb までの距離を rar_a、rbr_b とすると、電子のハミルトニアンは

H^=−ℏ22m∇2−e24πε0ra−e24πε0rb⟹H^=−12∇2−1ra−1rb(原子単位)(2.1.1)\hat H=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2-\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0r_a}-\frac{e^2}{4\pi\varepsilon_0r_b} \qquad\Longrightarrow\qquad \hat H=-\frac12\nabla^2-\frac{1}{r_a}-\frac{1}{r_b}\quad(\text{原子単位})\tag{2.1.1}

である。分子の全エネルギーは、H^\hat H の固有値 Eel(R)E_{\mathrm{el}}(R) に陽子どうしの斥力 1/R1/R を足した

E(R)=Eel(R)+1R(2.1.2)E(R)=E_{\mathrm{el}}(R)+\frac1R\tag{2.1.2}

で、これが陽子の運動にとってのポテンシャルになる。E(R)E(R) が R→∞R\to\infty の値(水素原子と裸の陽子、−12Eh-\frac12E_{\mathrm h})より低い谷を持てば、分子は結合する。

残す軌道を2つに決める

RR が大きいとき、電子は陽子 aa か bb のどちらかのそばにいて、水素原子の基底状態 1s1s にある。そこで、2つの陽子のまわりの 1s1s 軌道

ϕa(r)=1πe−ra,ϕb(r)=1πe−rb(2.1.3)\phi_a(\bm{r})=\frac{1}{\sqrt\pi}\mathrm{e}^{-r_a},\qquad \phi_b(\bm{r})=\frac{1}{\sqrt\pi}\mathrm{e}^{-r_b}\tag{2.1.3}

を選び、電子の状態をその線形結合 ψ=caϕa+cbϕb\psi=c_a\phi_a+c_b\phi_b に限る。これが LCAO(原子軌道の線形結合)である。無限次元の関数空間のうち、ϕa\phi_a と ϕb\phi_b が張る2次元の部分空間 V2=span⁡{ϕa,ϕb}V_2=\operatorname{span}\{\phi_a,\phi_b\} だけを残すので、第V巻(近似の数理)の言葉では A 型(射影)の近似にあたる(近似の数理 第4章)。

ϕa\phi_a と ϕb\phi_b はどちらも規格化されているが、互いに直交しない。2つの軌道の重なりを

s(R)=⟨ϕa, ϕb⟩=∫ϕaϕb d3r(2.1.4)s(R)=\langle \phi_a,\,\phi_b\rangle =\int\phi_a\phi_b\,\mathrm{d}^3r\tag{2.1.4}

と書く(重なり積分)。R→∞R\to\infty で s→0s\to0、R→0R\to0 で s→1s\to1 である。この章では重なり積分を小文字の ss で書き、エントロピーや作用の SS と区別する。

重なり積分を計算する

2つの点からの距離 rar_a、rbr_b が出てくる積分は、回転楕円体座標

ξ=ra+rbR∈[1,∞),η=ra−rbR∈[−1,1],φ∈[0,2π)(2.1.5)\xi=\frac{r_a+r_b}{R}\in[1,\infty),\qquad \eta=\frac{r_a-r_b}{R}\in[-1,1],\qquad \varphi\in[0,2\pi)\tag{2.1.5}

で計算できる。体積要素は d3r=R38(ξ2−η2) dξ dη dφ\mathrm{d}^3r=\frac{R^3}{8}(\xi^2-\eta^2)\,\mathrm{d}\xi\,\mathrm{d}\eta\,\mathrm{d}\varphi である。ra+rb=Rξr_a+r_b=R\xi なので

s=1π∫e−Rξ R38(ξ2−η2) dξ dη dφ=R34∫1∞e−Rξ(2ξ2−23)dξ.s=\frac1\pi\int\mathrm{e}^{-R\xi}\,\frac{R^3}{8}(\xi^2-\eta^2)\,\mathrm{d}\xi\,\mathrm{d}\eta\,\mathrm{d}\varphi =\frac{R^3}{4}\int_1^\infty\mathrm{e}^{-R\xi}\Bigl(2\xi^2-\frac23\Bigr)\mathrm{d}\xi .

∫1∞ξ2e−Rξdξ=e−R(1/R+2/R2+2/R3)\int_1^\infty\xi^2\mathrm{e}^{-R\xi}\mathrm{d}\xi=\mathrm{e}^{-R}(1/R+2/R^2+2/R^3) と ∫1∞e−Rξdξ=e−R/R\int_1^\infty\mathrm{e}^{-R\xi}\mathrm{d}\xi=\mathrm{e}^{-R}/R を入れて整理すると

s(R)=e−R(1+R+R23)(2.1.6)s(R)=\mathrm{e}^{-R}\Bigl(1+R+\frac{R^2}{3}\Bigr)\tag{2.1.6}

を得る。重なりは RR について指数関数的に小さくなる。指数の速さ e−R\mathrm{e}^{-R} は、1s1s 軌道の裾 e−r\mathrm{e}^{-r} がそのまま現れたものである。

例題 2.1.1 反転対称性で係数を決める ★★

オリジナル2つの陽子の中点を原点に置き、反転 P^:r↦−r\hat P:\bm{r}\mapsto-\bm{r} を考える。

  1. (1) P^\hat P が H^\hat H と交換すること、P^ϕa=ϕb\hat P\phi_a=\phi_b であることを示せ。
  2. (2) (1) を使って、V2V_2 の中の P^\hat P の固有状態を求め、規格化せよ。
  3. (3) R=2a0R=2a_0 のとき、重なり ss と、(2) の2つの規格化の係数を数値で求めよ。
解答

(1) 反転で陽子 aa と陽子 bb の位置が入れ替わるので、ra↔rbr_a\leftrightarrow r_b となる。∇2\nabla^2 は反転で変わらず、1/ra+1/rb1/r_a+1/r_b も入れ替えで変わらないので、P^H^P^−1=H^\hat P\hat H\hat P^{-1}=\hat H、すなわち [P^, H^]=0\left[\hat P,\,\hat H\right]=0 である。また ϕa(−r)\phi_a(-\bm{r}) は陽子 bb を中心とする 1s1s 軌道なので P^ϕa=ϕb\hat P\phi_a=\phi_b である。

(2) P^\hat P は V2V_2 を V2V_2 に移し、その中で ϕa↔ϕb\phi_a\leftrightarrow\phi_b と入れ替える。固有値 ±1\pm1 の固有状態は ϕa±ϕb\phi_a\pm\phi_b である。∥ϕa±ϕb∥2=1+1±2s=2(1±s)\lVert \phi_a\pm\phi_b\rVert ^2=1+1\pm2s=2(1\pm s) なので、規格化した状態は

ψ±=ϕa±ϕb2(1±s)\psi_\pm=\frac{\phi_a\pm\phi_b}{\sqrt{2(1\pm s)}}

である。H^\hat H と P^\hat P が交換するので、V2V_2 の中の近似固有状態は、固有値問題を解く前から ψ+\psi_+ と ψ−\psi_- に決まる。

(3) 式 (2.1.6) で R=2R=2 とおくと s=e−2(1+2+4/3)=133e−2≈0.586s=\mathrm{e}^{-2}(1+2+4/3)=\frac{13}{3}\mathrm{e}^{-2}\approx0.586 である。規格化の係数は 1/2(1+s)=1/3.173≈0.5611/\sqrt{2(1+s)}=1/\sqrt{3.173}\approx0.561、1/2(1−s)=1/0.827≈1.1001/\sqrt{2(1-s)}=1/\sqrt{0.827}\approx1.100 になる。ψ−\psi_- は2つの軌道の差を取るので重なりの分だけ打ち消し合い、規格化の係数が大きくなる。

木下の勉強ステータス

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