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何を削ったか・何の実験の量で確かめるか

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第1章 原子2個:結合軌道と反結合軌道
目次
  1. 削ったもの
  2. 何の実験の量で確かめるか
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第1章 §2.1.5 ★★ 削ったのは 1s1s 以外の関数(A 型)と電子どうしの斥力の揺らぎ。深い井戸の極限では2軌道の近似が正しくなり、分裂は井戸の間のトンネルで決まる

削ったもの

この章で削ったものは3つある。1つ目は原子核の運動で、これは 第1部第1章の Born–Oppenheimer 近似の札で扱った。2つ目は、2つの 1s1s 軌道が張る部分空間の外にある関数すべてである。1s1s の広がりを変えること(ζ\zeta)、2p2p のように陽子の方向へ伸びた軌道を混ぜること(分極)、2s2s 以上の軌道を削っている。部分空間を広げれば Rayleigh–Ritz の上界は下がり続ける。たとえば e−ζr\mathrm{e}^{-\zeta r} の ζ\zeta を変分のパラメータに加えると、最もよい値は ζ=1.24\zeta=1.24、Re=2.00a0R_{\mathrm e}=2.00a_0、De=2.35 eVD_{\mathrm e}=2.35\,\mathrm{eV} で、厳密な 2.79 eV2.79\,\mathrm{eV} に近づく。3つ目は、電子が2個以上ある分子での電子どうしの斥力のうち平均からの揺らぎで、2.1.4節で見たとおり、H2\mathrm{H}_2 の解離の極限を誤らせる。

2つの軌道だけを残す近似がいつ正しくなるかを、1次元の模型で調べる。深さの等しい2つの井戸

V(x)=−ℏ2κ0m[δ(x−d2)+δ(x+d2)](2.1.17)V(x)=-\frac{\hbar^2\kappa_0}{m}\Bigl[\delta\Bigl(x-\frac d2\Bigr)+\delta\Bigl(x+\frac d2\Bigr)\Bigr]\tag{2.1.17}

を考える。井戸1つだけなら束縛状態は ϕ(x)=κ0 e−κ0∣x∣\phi(x)=\sqrt{\kappa_0}\,\mathrm{e}^{-\kappa_0\lvert x\rvert } の1つで、エネルギーは εa=−ℏ2κ02/(2m)\varepsilon _{\mathrm a}=-\hbar^2\kappa_0^2/(2m) である。以下、長さを 1/κ01/\kappa_0、エネルギーを ∣εa∣\lvert \varepsilon _{\mathrm a}\rvert で測る。厳密解は、井戸の間で cosh⁡(κx)\cosh(\kappa x) または sinh⁡(κx)\sinh(\kappa x)、外で e−κ∣x∣\mathrm{e}^{-\kappa\lvert x\rvert } の形で、井戸の位置で導関数が −2κ0ψ-2\kappa_0\psi だけ跳ぶ条件から

κ=1±e−κd(E=−κ2, 上の符号が偶、下の符号が奇)(2.1.18)\kappa=1\pm\mathrm{e}^{-\kappa d}\qquad(E=-\kappa^2,\ \text{上の符号が偶、下の符号が奇})\tag{2.1.18}

を得る。一方、2つの井戸のまわりの ϕ\phi だけを残す LCAO では、2.1.3節と同じ計算で

s=e−d(1+d),Haa=−1−2e−2d,Hab=−s−2e−d(2.1.19)s=\mathrm{e}^{-d}(1+d),\qquad H_{aa}=-1-2\mathrm{e}^{-2d},\qquad H_{ab}=-s-2\mathrm{e}^{-d}\tag{2.1.19}

となり、式 (2.1.10) が使える。図 2.1.3 に2つを並べる。

図

図 2.1.3 1次元の2つの井戸 (2.1.17) の準位。実線は LCAO、点線は厳密解 (2.1.18)。灰色の線は井戸1つの準位。間隔が井戸の束縛状態の広がり 1/κ01/\kappa_0 の数倍を超えると、実線と点線は図の上で区別できなくなる。

間隔 dd が大きいとき、式 (2.1.18) を κ=1±e−d+⋯\kappa=1\pm\mathrm{e}^{-d}+\cdots と解くと、偶と奇の分裂は 4e−d4\mathrm{e}^{-d} に近づく。LCAO の分裂 2t′2t' も同じ 4e−d4\mathrm{e}^{-d} に近づき、相対誤差は d→∞d\to\infty で 00 になる。分裂の大きさ e−κ0d\mathrm{e}^{-\kappa_0 d} は、電子が一方の井戸から他方へ、古典的には入れない領域をトンネルする振幅で、井戸の間の距離に指数関数的に依る。tight-binding 模型のホッピング tt は、このトンネルの振幅を表している。井戸が深く離れている極限(トンネルの作用が ℏ\hbar に比べて大きい極限)では、トンネル分裂の指数の速さを決める距離(Agmon 距離)まで含めて、2つの軌道だけを残す近似が正しくなることが証明されている。

ただし前の係数まで LCAO が正しいとは限らない。H2+\mathrm{H}_2^+ では、厳密な分裂は R→∞R\to\infty で 4Re−R−14R\mathrm{e}^{-R-1} に近づくのに対し(Herring(1962)、Rev. Mod. Phys. 34、631 が表面積分の方法で導いた形。この章の検算では R=20a0R=20a_0 で比が 1.021.02 になることを数値で確かめた)、LCAO の分裂は 43Re−R\frac43R\mathrm{e}^{-R} に近づき、比は e/3≈0.906\mathrm{e}/3\approx0.906 にとどまる。厳密な波動関数は、陽子の間の領域でもう一方の陽子にも引かれるので、1s1s 軌道の裾 e−r\mathrm{e}^{-r} より遅く減衰する。1s1s 軌道はこの効果を含まないので、トンネルの振幅を少し小さく見積もる。指数は正しく、係数が1割ずれる。1次元の δ の井戸では井戸の外の裾がもう一方の井戸から力を受けないので、この差が出ない。

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの 各原子の 1s1s 軌道が張る2次元の部分空間 V2V_2 | 証明 証明済み(上界であることと、部分空間を広げれば下がること。Rayleigh–Ritz)。誤差の大きさは部分空間が厳密解をどれだけ近似できるかで決まり、H2+\mathrm{H}_2^+ の ReR_{\mathrm e} 付近では DeD_{\mathrm e} が 37%37\% ずれる | 行き先 近似の数理 第4章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの e−κ0d\mathrm{e}^{-\kappa_0d}(井戸の間隔が軌道の広がりより十分大きい・深い井戸) | 証明 証明済み(半古典極限で、トンネル分裂の指数の速さが Agmon 距離で決まることは Simon(1984)、Helffer–Sjöstrand(1984)で証明されている。前の係数は原子軌道のままの LCAO では一般に合わず、H2+\mathrm{H}_2^+ では比が e/3\mathrm{e}/3 になる。これは A 型の射影の札の側の誤差である) | 行き先 近似の数理 第7章・近似の数理 第12章

何の実験の量で確かめるか

LCAO が出した量のうち、実験で直接測れるものは4つある。1つ目は分子の解離エネルギーで、分光で解離の極限への準位の収束を見て決める。2つ目は結合の長さで、回転スペクトルの間隔(回転定数 ℏ2/(2μRe2)\hbar^2/(2\mu R_{\mathrm e}^2)、μ\mu は換算質量)から読む。3つ目は E(R)E(R) の谷の曲率で、分子の振動の量子 ℏω\hbar\omega として赤外吸収や Raman 散乱で測る(2.1.7節の総合問題で計算する)。4つ目は結合軌道と反結合軌道のエネルギーそのもので、光電子分光で電子を1個はぎ取るのに要るエネルギーを測ると、占有された軌道の準位が分かる。結合軌道から電子を抜くと結合が弱まって結合の長さが変わるので、光電子のスペクトルに振動の準位の列が長く並ぶ。この列の長さは、抜いた電子が結合軌道にいたか、結合にほとんど関わらない軌道にいたかを見分ける手がかりになる。

H2+\mathrm{H}_2^+ の場合、比べる相手は実験値より先に 2.1.3節の厳密解である。厳密解と実験値の差は、削った原子核の運動の補正(質量比 m/Mpm/M_{\mathrm p} の桁)と相対論の補正で、LCAO と厳密解の差(DeD_{\mathrm e} で 1 eV1\,\mathrm{eV})よりずっと小さい。LCAO の誤差は、ほぼすべて部分空間を狭めたことによる。

例題 2.1.5 2つの井戸のトンネル分裂を LCAO と厳密解で比べる ★★

オリジナル式 (2.1.17) の井戸で、間隔を κ0d=4\kappa_0d=4 とする(長さは 1/κ01/\kappa_0、エネルギーは ∣εa∣\lvert \varepsilon _{\mathrm a}\rvert の単位)。

  1. (1) 式 (2.1.19) から ss、HaaH_{aa}、HabH_{ab} を求め、LCAO の E±E_\pm と分裂 E−−E+E_--E_+ を求めよ。
  2. (2) 式 (2.1.18) を数値で解いて厳密な偶と奇のエネルギーを求め、(1) と比べよ。定理 2.1.1 が成り立っているかも確かめよ。
  3. (3) 分裂の漸近形 4e−d4\mathrm{e}^{-d} と比べよ。
解答

(1) e−4=0.018316\mathrm{e}^{-4}=0.018316 なので s=5e−4=0.09158s=5\mathrm{e}^{-4}=0.09158、Haa=−1−2e−8=−1.000671H_{aa}=-1-2\mathrm{e}^{-8}=-1.000671、Hab=−0.09158−0.03663=−0.12821H_{ab}=-0.09158-0.03663=-0.12821 である。E+=(Haa+Hab)/(1+s)=−1.12888/1.09158=−1.03417E_+=(H_{aa}+H_{ab})/(1+s)=-1.12888/1.09158=-1.03417、E−=(Haa−Hab)/(1−s)=−0.87246/0.90842=−0.96041E_-=(H_{aa}-H_{ab})/(1-s)=-0.87246/0.90842=-0.96041 で、分裂は 0.073760.07376 である。

(2) κ=1+e−4κ\kappa=1+\mathrm{e}^{-4\kappa} を反復で解くと κ=1.01710\kappa=1.01710、E=−1.03450E=-1.03450。κ=1−e−4κ\kappa=1-\mathrm{e}^{-4\kappa} からは κ=0.98017\kappa=0.98017、E=−0.96074E=-0.96074 で、分裂は 0.073760.07376 である。LCAO はどちらの準位も厳密な値より 3×10−43\times10^{-4} だけ高く、上界になっている。分裂の差は 5×10−65\times10^{-6} で、分裂の相対誤差は 7×10−57\times10^{-5} にすぎない。準位そのもののずれ(3×10−43\times10^{-4})は偶と奇でほぼ同じだけ上にずれ、分裂の計算では打ち消し合う。

(3) 4e−4=0.073264\mathrm{e}^{-4}=0.07326 で、厳密な分裂より 0.7%0.7\% 小さい。dd をさらに大きくするとこの差も 00 に近づく。

木下の勉強ステータス

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