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出てくるもの1:境界でのギャップ・定在波・有効質量

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 ほぼ自由な電子:ブラッグ反射でギャップが開く
目次
  1. 2つの平面波の行列
  2. 境界の状態は定在波:どちらが下になるか
  3. Bragg 反射としての読み方
  4. ギャップの端の有効質量
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第5章 §2.5.2 ★★★ Brillouin 域の境界では2つの平面波が縮退し、VGV_G がそれらを混ぜて幅 2∣VG∣2\lvert V_G\rvert のギャップを開く。境界の状態は定在波で、群速度は 00、端の近くの有効質量は ∣VG∣\lvert V_G\rvert に比例して小さい

2つの平面波の行列

kk が境界 G/2G/2 の近くにあるとき、エネルギーの近い2つの平面波 eikx\mathrm{e}^{\mathrm{i} kx} と ei(k−G)x\mathrm{e}^{\mathrm{i}(k-G)x} だけを残すと、中心方程式 (2.5.6) は

(ε(0)(k)VGVG∗ε(0)(k−G))(ckck−G)=ε(ckck−G)(2.5.9)\begin{pmatrix}\varepsilon ^{(0)}(k)&V_G\\ V_G^*&\varepsilon ^{(0)}(k-G)\end{pmatrix}\begin{pmatrix}c_k\\ c_{k-G}\end{pmatrix}=\varepsilon \begin{pmatrix}c_k\\ c_{k-G}\end{pmatrix}\tag{2.5.9}

になる(第1行の非対角要素は G=0, G′=GG=0,\ G'=G の VG′−G=VGV_{G'-G}=V_G、第2行は V−G=VG∗V_{-G}=V_G^*)。固有値は

ε±(k)=ε(0)(k)+ε(0)(k−G)2±(ε(0)(k)−ε(0)(k−G)2)2+∣VG∣2(2.5.10)\varepsilon _\pm(k)=\frac{\varepsilon ^{(0)}(k)+\varepsilon ^{(0)}(k-G)}{2}\pm\sqrt{\Bigl(\frac{\varepsilon ^{(0)}(k)-\varepsilon ^{(0)}(k-G)}{2}\Bigr)^2+\lvert V_G\rvert ^2}\tag{2.5.10}

である。境界から離れて ∣ε(0)(k)−ε(0)(k−G)∣≫∣VG∣\lvert \varepsilon ^{(0)}(k)-\varepsilon ^{(0)}(k-G)\rvert \gg\lvert V_G\rvert となれば、平方根を展開して2次摂動 (2.5.7) の該当する項に戻る。境界 k=G/2k=G/2 ではちょうど対角要素が等しく、

ε±(G2)=ε(0)(G2)±∣VG∣,εg=ε+−ε−=2∣VG∣(2.5.11)\varepsilon _\pm\Bigl(\frac G2\Bigr)=\varepsilon ^{(0)}\Bigl(\frac G2\Bigr)\pm\lvert V_G\rvert ,\qquad \varepsilon _{\mathrm g}=\varepsilon _+-\varepsilon _-=2\lvert V_G\rvert\tag{2.5.11}

となる。2つのバンドの間には、どの kk の状態も無いエネルギーの範囲が開く。これをバンドギャップと呼ぶ。ギャップの大きさは、その境界を作る逆格子ベクトル GG の Fourier 成分の大きさだけで決まる。第1の境界 k=π/ak=\pi/a のギャップは 2∣V2π/a∣2\lvert V_{2\pi/a}\rvert、第2の境界(Γ 点の 4εX4\varepsilon _{\mathrm X} の縮退)のギャップは 2∣V4π/a∣2\lvert V_{4\pi/a}\rvert である。ポテンシャルに含まれない Fourier 成分の境界ではギャップが開かない(2×22\times2 の近似の範囲で。高い次数では別の成分の組み合わせで開く)。

図

図 2.5.1 V(x)=2V1cos⁡(2πx/a)V(x)=2V_1\cos(2\pi x/a)、V1=−0.2εXV_1=-0.2\varepsilon _{\mathrm X} のバンド(第1 Brillouin 域に畳んだ図)。灰色の破線は空格子 (2.5.3)、点線は平面波31本の行列を数値で対角化した厳密な値、実線は2つの平面波の近似 (2.5.10)。k=±π/ak=\pm\pi/a で幅 2∣V1∣=0.4εX2\lvert V_1\rvert =0.4\varepsilon _{\mathrm X} のギャップが開き、バンドは境界に水平に入る。Γ 点の 4εX4\varepsilon _{\mathrm X} の縮退は、V4π/a=0V_{4\pi/a}=0 のため 2×22\times2 の範囲では解けず、高い次数の小さなギャップだけが開く。

境界の状態は定在波:どちらが下になるか

境界 k=π/ak=\pi/a(G=2π/aG=2\pi/a)での固有ベクトルを求める。結晶が反転対称 V(−x)=V(x)V(-x)=V(x) を持てば VGV_G は実数なので、そう仮定する。式 (2.5.9) の第1行に ε=ε(0)+s∣VG∣\varepsilon =\varepsilon ^{(0)}+s\lvert V_G\rvert(s=±1s=\pm1)を入れると ck−G=s sgn(VG) ckc_{k-G}=s\,\mathrm{sgn}(V_G)\,c_k となる。k=π/ak=\pi/a、k−G=−π/ak-G=-\pi/a なので、固有状態は

ψ∝eiπx/a±e−iπx/a,すなわちψc∝cos⁡πxa,ψs∝sin⁡πxa(2.5.12)\psi\propto\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi x/a}\pm\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi x/a},\qquad\text{すなわち}\quad \psi_{\mathrm c}\propto\cos\frac{\pi x}{a},\qquad\psi_{\mathrm s}\propto\sin\frac{\pi x}{a}\tag{2.5.12}

の2つで、右へ進む波と左へ進む波が等量混ざった定在波である。定在波は正味の流れを運ばない。実際、式 (2.5.10) を kk で微分すると境界で 00 になり、群速度 v=ℏ−1 dε/dkv=\hbar^{-1}\,\mathrm{d}\varepsilon /\mathrm{d} k は 00 である。バンドは境界に水平に入る(図 2.5.1)。

どちらの定在波が下になるかは、電子の密度がどこに集まるかで決まる。原子核の位置を x=nax=na に取り、イオンが電子を引き付ける(イオンの上で VV が低い)とする。∣ψc∣2∝cos⁡2(πx/a)\lvert \psi_{\mathrm c}\rvert ^2\propto\cos^2(\pi x/a) はイオンの上に山を持ち、∣ψs∣2∝sin⁡2(πx/a)\lvert \psi_{\mathrm s}\rvert ^2\propto\sin^2(\pi x/a) はイオンの上に節を持つ。規格化した密度 2cos⁡2(πx/a)=1+cos⁡(2πx/a)2\cos^2(\pi x/a)=1+\cos(2\pi x/a) の上で VV を平均すると、V=2VGcos⁡(Gx)+⋯V=2V_G\cos(Gx)+\cdots のうち cos⁡(Gx)\cos(Gx) の成分だけが残って ⟨V⟩c=VG\langle V \rangle _{\mathrm c}=V_G、同様に ⟨V⟩s=−VG\langle V \rangle _{\mathrm s}=-V_G となる。イオンが引き付けるポテンシャルでは VG<0V_G<0 なので、ψc\psi_{\mathrm c} が VG=−∣VG∣V_G=-\lvert V_G\rvert だけ下がり、ψs\psi_{\mathrm s} が ∣VG∣\lvert V_G\rvert だけ上がる。ギャップの下の端は「イオンの上に電子が乗る状態」、上の端は「イオンの間に電子がいる状態」である。ギャップの大きさ 2∣VG∣2\lvert V_G\rvert は、この2つの状態が感じるポテンシャルの差そのものである。

Bragg 反射としての読み方

境界の条件 (2.5.8) は、波長 λ=2π/k\lambda=2\pi/k の電子の波が格子で反射されるときの Bragg の条件と同じである。1次元で波が格子に垂直に入射すると(第1部第3章の Bragg の式で θ=90∘\theta=90^\circ)、隣り合う原子で反射された波の行路差は 2a2a で、2a=nλ2a=n\lambda のとき強め合う。これは k=nπ/ak=n\pi/a と同じ条件である。この条件の上では、右へ進む波 eikx\mathrm{e}^{\mathrm{i} kx} が格子で次々に反射されて左へ進む波 e−ikx\mathrm{e}^{-\mathrm{i} kx} を作り、反射波どうしが強め合うので、2つの波が対等に混ざった定在波が固有状態になる。条件から外れた kk では、反射された波どうしの位相がそろわず打ち消し合うので、波はほとんど反射されずに進む。自由電子の放物線から大きく外れるのは境界の近くだけ、というのはこのためである。X 線の回折(第1部第3章)では Bragg の条件は「どの方向に散乱が出るか」を決めたが、結晶の中の電子では「どのエネルギーで波が進めなくなるか」を決める。

ギャップの端の有効質量

境界からのずれ Δk≔k−G/2\Delta k\coloneqq k-G/2 が小さいとして、式 (2.5.10) を展開する。λ0≔ε(0)(G/2)\lambda_0\coloneqq\varepsilon ^{(0)}(G/2) と書くと、

ε(0)(k)+ε(0)(k−G)2=λ0+ℏ2Δk22m,ε(0)(k)−ε(0)(k−G)2=ℏ2GΔk2m\frac{\varepsilon ^{(0)}(k)+\varepsilon ^{(0)}(k-G)}{2}=\lambda_0+\frac{\hbar^2\Delta k^2}{2m},\qquad \frac{\varepsilon ^{(0)}(k)-\varepsilon ^{(0)}(k-G)}{2}=\frac{\hbar^2G\Delta k}{2m}

である。平方根を ∣VG∣\lvert V_G\rvert のまわりで展開すると (ℏ2GΔk/2m)2+∣VG∣2≈∣VG∣+ℏ4G2Δk28m2∣VG∣\sqrt{(\hbar^2G\Delta k/2m)^2+\lvert V_G\rvert ^2}\approx\lvert V_G\rvert +\frac{\hbar^4G^2\Delta k^2}{8m^2\lvert V_G\rvert } で、ℏ4G2/(8m2)=ℏ22m⋅2λ0\hbar^4G^2/(8m^2)=\frac{\hbar^2}{2m}\cdot2\lambda_0 を使えば

ε±≈λ0±∣VG∣+ℏ2Δk22m±∗,mm±∗=1±2λ0∣VG∣(2.5.13)\varepsilon _\pm\approx\lambda_0\pm\lvert V_G\rvert +\frac{\hbar^2\Delta k^2}{2m^*_\pm},\qquad \frac{m}{m^*_\pm}=1\pm\frac{2\lambda_0}{\lvert V_G\rvert }\tag{2.5.13}

を得る。ギャップの端のバンドは放物線で、その曲がり方を有効質量 m∗m^* で表すと、上の端では m+∗=m/(1+2λ0/∣VG∣)m^*_+=m/(1+2\lambda_0/\lvert V_G\rvert ) と正で小さく、下の端では ∣VG∣<2λ0\lvert V_G\rvert <2\lambda_0 なら m−∗<0m^*_-<0(上に凸)になる。∣VG∣\lvert V_G\rvert が小さいほど、端の有効質量は小さい。ギャップが小さい半導体(InSb など)で伝導電子の有効質量が小さいのは、この関係と同じ構造(ギャップを挟んだ2つの状態の反発)による。この傾向をバンド間の行列要素で一般に言い表す方法(k⋅p\bm{k}\cdot\bm{p} 摂動)は第4部の半導体の章で扱う。

例題 2.5.3 ギャップの大きさと端の有効質量 ★★★

オリジナル例題 2.5.2 と同じ V1=V2π/a=−0.2εXV_1=V_{2\pi/a}=-0.2\varepsilon _{\mathrm X} の結晶(a=0.4 nma=0.4\,\mathrm{nm})を考える。

  1. (1) 第1の境界のギャップの大きさを εX\varepsilon _{\mathrm X} と eV\mathrm{eV} で求めよ。
  2. (2) ギャップの下の端と上の端の状態は、それぞれ cos⁡(πx/a)\cos(\pi x/a) と sin⁡(πx/a)\sin(\pi x/a) のどちらか。
  3. (3) 端の有効質量 m±∗/mm^*_\pm/m を式 (2.5.13) で求めよ。平面波31本の数値の対角化から曲率を求めると m/m∗=11.0m/m^*=11.0(上)と −9.0-9.0(下)になる。
解答

(1) 式 (2.5.11) から εg=2∣V1∣=0.4εX=0.4×2.35=0.940 eV\varepsilon _{\mathrm g}=2\lvert V_1\rvert =0.4\varepsilon _{\mathrm X}=0.4\times2.35=0.940\,\mathrm{eV} である。

(2) V(x)=2V1cos⁡(2πx/a)V(x)=2V_1\cos(2\pi x/a) は V1<0V_1<0 なので x=nax=na で最も低い。イオンの上に密度の山を持つ cos⁡(πx/a)\cos(\pi x/a) が下の端(εX−0.2εX=0.8εX\varepsilon _{\mathrm X}-0.2\varepsilon _{\mathrm X}=0.8\varepsilon _{\mathrm X})、節を持つ sin⁡(πx/a)\sin(\pi x/a) が上の端(1.2εX1.2\varepsilon _{\mathrm X})である。式で確かめると、VG<0V_G<0 のとき下の状態は ck−G=s sgn(VG)ck=(−1)(−1)ck=+ckc_{k-G}=s\,\mathrm{sgn}(V_G)c_k=(-1)(-1)c_k=+c_k で、eiπx/a+e−iπx/a∝cos⁡(πx/a)\mathrm{e}^{\mathrm{i}\pi x/a}+\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\pi x/a}\propto\cos(\pi x/a) になる。

(3) λ0=ε(0)(π/a)=εX\lambda_0=\varepsilon ^{(0)}(\pi/a)=\varepsilon _{\mathrm X} なので 2λ0/∣V1∣=2/0.2=102\lambda_0/\lvert V_1\rvert =2/0.2=10 で、

m+∗m=11+10=0.0909,m−∗m=11−10=−0.111\frac{m^*_+}{m}=\frac{1}{1+10}=0.0909,\qquad \frac{m^*_-}{m}=\frac{1}{1-10}=-0.111

である。数値の曲率 m/m∗=11.0m/m^*=11.0、−9.0-9.0 と一致する。自由電子の質量の 1/11 という軽さの原因は、ギャップ 0.4εX0.4\varepsilon _{\mathrm X} が運動エネルギーの尺度 2λ02\lambda_0 に比べて小さいことである。

ほかの巻では

  • 近似の数理 第12章:ゾーン境界のギャップ 2∣VG∣2\lvert V_G\rvert を正則摂動と縮退点の2×2で扱い、誤差の次数まで読める

木下の勉強ステータス

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