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出てくるもの3:2次元ではギャップが重なる

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第5章 ほぼ自由な電子:ブラッグ反射でギャップが開く
目次
  1. 正方格子の X 点と M 点
  2. ギャップが重なる条件
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第5章 §2.5.4 ★★ 2次元以上では境界ごとのギャップがエネルギーの上でずれて重なり、全体のギャップが閉じることがある。弱い周期ポテンシャルの多価金属が金属のまま残る理由

正方格子の X 点と M 点

2次元の正方格子(格子定数 aa、逆格子ベクトル G=2πa(n1,n2)\bm{G}=\frac{2\pi}{a}(n_1,n_2))に話を広げる。ポテンシャルの Fourier 成分のうち、最も短い G=2πa(±1,0),2πa(0,±1)\bm{G}=\frac{2\pi}{a}(\pm1,0),\frac{2\pi}{a}(0,\pm1) の成分を V1V_1、その次の 2πa(±1,±1)\frac{2\pi}{a}(\pm1,\pm1) の成分を V2V_2 とし(正方形の対称性から同じ長さの成分は等しい)、他を 00 とする。中心方程式 (2.5.6) はそのまま2次元で成り立つ。

Brillouin 域は正方形 ∣kx∣,∣ky∣≤π/a\lvert k_x\rvert ,\lvert k_y\rvert \le\pi/a で、辺の中点 X=(π/a,0)=(\pi/a,0) と頂点 M=(π/a,π/a)=(\pi/a,\pi/a) を考える。X 点では平面波 (π/a,0)(\pi/a,0) と (−π/a,0)(-\pi/a,0) がエネルギー εX\varepsilon _{\mathrm X} で縮退し、それらを結ぶのは V1V_1 だけなので、1次元と同じ 2×22\times2 の問題になって εX±∣V1∣\varepsilon _{\mathrm X}\pm\lvert V_1\rvert に分かれる。M 点では4つの平面波 πa(±1,±1)\frac{\pi}{a}(\pm1,\pm1) がエネルギー 2εX2\varepsilon _{\mathrm X} で縮退する。平面波を πa(1,1),πa(−1,1),πa(1,−1),πa(−1,−1)\frac{\pi}{a}(1,1),\frac{\pi}{a}(-1,1),\frac{\pi}{a}(1,-1),\frac{\pi}{a}(-1,-1) の順に並べると、隣り合う角どうしは V1V_1、対角の角どうしは V2V_2 で結ばれ、

H=2εX 1+(0V1V1V2V10V2V1V1V20V1V2V1V10)(2.5.17)H=2\varepsilon _{\mathrm X}\,\mathbb{1}+\begin{pmatrix}0&V_1&V_1&V_2\\ V_1&0&V_2&V_1\\ V_1&V_2&0&V_1\\ V_2&V_1&V_1&0\end{pmatrix}\tag{2.5.17}

となる(1\mathbb 1 は単位行列)。固有ベクトルは (1,1,1,1)(1,1,1,1)・(1,−1,−1,1)(1,-1,-1,1)・(1,1,−1,−1)(1,1,-1,-1)・(1,−1,1,−1)(1,-1,1,-1) で、固有値は

2εX+2V1+V2,2εX−2V1+V2,2εX−V2 (2重)(2.5.18)2\varepsilon _{\mathrm X}+2V_1+V_2,\qquad 2\varepsilon _{\mathrm X}-2V_1+V_2,\qquad 2\varepsilon _{\mathrm X}-V_2\ (\text{2重})\tag{2.5.18}

である。

ギャップが重なる条件

第1のバンドの最も高い所と、第2のバンドの最も低い所を比べる。V1,V2<0V_1,V_2<0(引力のイオン)なら、第1のバンドの最大は M 点の最も低い準位 2εX+2V1+V2=2εX−2∣V1∣−∣V2∣2\varepsilon _{\mathrm X}+2V_1+V_2=2\varepsilon _{\mathrm X}-2\lvert V_1\rvert -\lvert V_2\rvert で、第2のバンドの最小は X 点の上の端 εX+∣V1∣\varepsilon _{\mathrm X}+\lvert V_1\rvert である。後者が前者より低ければ、X 点の近くの第2のバンドが M 点の近くの第1のバンドより下にあり、2つのバンドはエネルギーの上で重なる。どの方向で見てもギャップは開いているのに、全体としてはどのエネルギーにも状態がある。重なりが消える(全体のギャップが開く)のは εX+∣V1∣>2εX−2∣V1∣−∣V2∣\varepsilon _{\mathrm X}+\lvert V_1\rvert >2\varepsilon _{\mathrm X}-2\lvert V_1\rvert -\lvert V_2\rvert、つまり

3∣V1∣+∣V2∣>εX(2.5.19)3\lvert V_1\rvert +\lvert V_2\rvert >\varepsilon _{\mathrm X}\tag{2.5.19}

のときである。ポテンシャルが弱い(NFE が当たる)ほどこの条件は満たされず、バンドは重なったままになる。

この結果が物理として意味を持つのは、電子の数と組み合わせたときである。単位胞あたり電子が2個(2価)なら、第1のバンドをちょうど埋める数である。1次元なら、第1のバンドが埋まって第2のバンドとの間にギャップがあるので絶縁体になる。ところが2次元で重なりがあると、電子は第1のバンドの M 点の近くを空けて、第2のバンドの X 点の近くに入る方がエネルギーが低い。両方のバンドが部分的に埋まり、金属になる。自由電子で言えば、2価の正方格子の Fermi 円の半径 kFk_{\mathrm F} は πkF2=(2π/a)2\pi k_{\mathrm F}^2=(2\pi/a)^2 から kFa=2π=3.54k_{\mathrm F}a=2\sqrt\pi=3.54 で、X 点(π\pi)より遠く M 点(2π=4.44\sqrt2\pi=4.44)より近い。Fermi 円が Brillouin 域の境界をはみ出し、角の部分は第1の域に残らず、第2の域にはみ出した部分の状態が埋まる。2価の Be・Mg・Ca や3価の Al が金属であるのは、3次元で同じことが起きているからである。何がギャップを閉じるかの完全な議論(バンドの埋まり方と Fermi 面)は第2部第7章で扱う。

数学の側では、2次元以上の周期ポテンシャルのスペクトルのギャップは有限個しかない、という主張が Bethe–Sommerfeld 予想として知られ、滑らかな周期ポテンシャルについて任意の次元 d≥2d\ge2・任意の格子で証明されている(L. Parnovski 2008、Ann. Henri Poincaré 9、457)。エネルギーが高くなると、自由電子の等エネルギー面は多くの境界を同時に横切り、境界ごとのギャップ 2∣VG∣2\lvert V_{\bm{G}}\rvert は高い G\bm{G} ほど小さくなるので、どこかの方向で必ずギャップが埋まる。1次元では等エネルギー面が2点しかなく、ギャップを別の方向で埋める状態が無いので、一般の周期ポテンシャルではギャップは無限個開く。

図

図 2.5.4 2次元の正方格子(V1=V2=−0.1εXV_1=V_2=-0.1\varepsilon _{\mathrm X})のバンドを Γ–X–M–Γ に沿って描いたもの(点線は平面波81本の数値の対角化)。X 点と M 点の両方でギャップが開いているが、第1のバンドの最大(M 点、1.69εX1.69\varepsilon _{\mathrm X})が第2のバンドの最小(X 点、1.10εX1.10\varepsilon _{\mathrm X})より高いので、全体としてはギャップが無い。

例題 2.5.5 2価の正方格子は金属か ★★

オリジナル2次元の正方格子で V1=V2=−0.1εXV_1=V_2=-0.1\varepsilon _{\mathrm X} とする。

  1. (1) X 点の2つの準位と、M 点の4つの準位を NFE で求めよ。
  2. (2) 第1のバンドの最大と第2のバンドの最小を比べ、単位胞あたり電子2個の結晶が金属か絶縁体かを判定せよ(平面波81本の数値では、M 点の最低準位は 1.689εX1.689\varepsilon _{\mathrm X}、X 点の上の端は 1.097εX1.097\varepsilon _{\mathrm X} である)。
  3. (3) V2=0V_2=0 として、全体のギャップが開くために要る ∣V1∣\lvert V_1\rvert を求め、その大きさで NFE が信頼できるかを論じよ。
解答

(1) X 点は εX±∣V1∣=0.9εX, 1.1εX\varepsilon _{\mathrm X}\pm\lvert V_1\rvert =0.9\varepsilon _{\mathrm X},\,1.1\varepsilon _{\mathrm X} である。M 点は式 (2.5.18) から 2+2(−0.1)+(−0.1)=1.72+2(-0.1)+(-0.1)=1.7、2−2(−0.1)+(−0.1)=2.12-2(-0.1)+(-0.1)=2.1、2−(−0.1)=2.12-(-0.1)=2.1(2重)で、1.7εX1.7\varepsilon _{\mathrm X} と 2.1εX2.1\varepsilon _{\mathrm X}(3重)である。

(2) 第1のバンドの最大は M 点の 1.7εX1.7\varepsilon _{\mathrm X}、第2のバンドの最小は X 点の 1.1εX1.1\varepsilon _{\mathrm X} で、後者の方が 0.6εX0.6\varepsilon _{\mathrm X} 低い。バンドが重なっているので、電子2個は第1のバンドを埋め切らずに第2のバンドにも入り、結晶は金属である。数値の値 1.6891.689・1.0971.097 は NFE と 0.011εX0.011\varepsilon _{\mathrm X} 以内で一致する。

(3) 条件 (2.5.19) は V2=0V_2=0 で ∣V1∣>εX/3\lvert V_1\rvert >\varepsilon _{\mathrm X}/3 である。このとき X 点の分裂 2∣V1∣2\lvert V_1\rvert は 0.67εX0.67\varepsilon _{\mathrm X} を超え、NFE の小さいパラメータ ∣V1∣/λ0=∣V1∣/εX\lvert V_1\rvert /\lambda_0=\lvert V_1\rvert /\varepsilon _{\mathrm X} は 1/31/3 を超える。例題 2.5.2 では、この比が 0.50.5 のとき2次摂動が使えなかった。全体のギャップが開くかどうかの境目は、NFE が信頼できる範囲の外にある。弱い周期ポテンシャルの2次元の結晶では、重なりは消えず金属になる、というのが NFE から言える確かな結論である。

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