何を削ったか・何の実験の量で確かめるか
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第5章 §2.5.5 ★★ 電子どうしの相互作用と内殻の電子を「弱い有効ポテンシャル」1つにまとめ、平面波を数本で打ち切った。弱さの根拠は擬ポテンシャルで、ギャップは光の吸収で測る
削ったもの
この章の は、1個の電子が弱い周期ポテンシャル を感じるという形だった。実在の金属からこの に至るまでに、3つのものを削っている。
1つめは電子どうしの相互作用である。 にはイオンのポテンシャルだけでなく、他の伝導電子が作る平均のポテンシャル(遮蔽)が含まれている。電子どうしの相互作用を平均のポテンシャルに置き換える近似は第2部全体の前提で、その交換と相関の部分は、密度汎関数法では密度の関数で置き換えて方程式を閉じる。
2つめは内殻の電子と、イオンの近くの強いポテンシャルである。裸のイオンの Coulomb ポテンシャルは原子核の近くで と深く、とても「弱い」とは言えない。それでも NFE が単純な金属でよく当たる理由は、価電子の波動関数が内殻の軌道と直交しなければならないことにある。直交の条件は、価電子にとってはイオンの芯の近くに斥力のように働き、深い引力をほとんど打ち消す。打ち消した後に残る弱い有効ポテンシャルを擬ポテンシャル(pseudopotential)と呼ぶ。この見方は J. C. Phillips と L. Kleinman(1959、Phys. Rev. 116、287)が直交化平面波の方法から導いた。この章の は、裸のイオンの Fourier 成分でなく、この擬ポテンシャルの Fourier 成分である。擬ポテンシャルを実際の物質でどう決めるかは原理から一意に決まらず、実験値に合わせて調整する形になる。
3つめは平面波の数である。中心方程式は本来無限次元の行列だが、この章では境界の近くで2本(2次元の M 点では4本)に打ち切った。これは平面波の張る有限次元の部分空間へ を射影する Rayleigh–Ritz の近似で、打ち切った固有値は真の固有値の上界になり、本数を増やすと単調に下がる(次の例題)。
そのうえで、残した問題を「 が小さい」として摂動で解いた。これが極限の近似で、小さいパラメータは と、結ぶ2つの平面波のエネルギーの差との比である。Brillouin 域の境界ではこの差が になるので、そこだけ縮退のある摂動に切り替えた。
近似の裏付け
型 B(極限) | 小さいもの (縮退の無い所)、(境界の近くで2本を残した後) | 証明 条件付き(縮退から離れた では正則摂動。境界の近くは縮退のある摂動に切り替える前提。 について一様な誤差の評価の正確な前提は要確認。2次元以上でギャップが有限個しか残らないことは滑らかな について証明済み〔Parnovski 2008〕) | 行き先 近似の数理 第7章・近似の数理 第12章
近似の裏付け
型 A(射影) | 小さいもの 有限本の平面波 が張る部分空間 | 証明 証明済み(近似の固有値が上界で単調に下がり、本数を増やせば収束することは Rayleigh–Ritz で証明されている。収束の速さは の滑らかさで決まり、δ 関数のような特異な では遅い) | 行き先 近似の数理 第4章
近似の裏付け
型 C(閉じる) | 小さいもの 内殻との直交と電子間の交換相関を、弱い有効ポテンシャル(擬ポテンシャル)で置き換える(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第9章
例題 2.5.6 平面波を打ち切ったときの収束の速さ ★★
オリジナル帯の底( の最低準位)を、平面波 (、全部で 本)で打ち切った行列で求める。
- (1) δ 関数の列(、厳密な値 )では、3本で 、5本で 、9本で 、17本で 、33本で 、65本で 、129本で (単位 )になる。誤差は本数とともにどう減るか。
- (2) 余弦のポテンシャル(例題 2.5.2、)では、3本で 、5本で 、7本で である。(1) との違いを、ポテンシャルの Fourier 成分から説明せよ。
解答
(1) どの近似値も厳密な値 より上にあり、本数を増やすと単調に下がる。これは Rayleigh–Ritz の上界性の通りである。誤差は 3本で 、129本で で、本数を2倍にするごとに約半分になる(65本→129本で比は 1.99)。誤差は本数の逆数に比例して減る。
(2) 余弦のポテンシャルは5本でもう7桁まで収束している。違いは の減り方にある。余弦では は にしか無く、遠い平面波は直接には結ばれないので、打ち切りの誤差は高い次数の摂動でしか入らず急速に小さくなる。δ 関数では がすべての で同じ大きさで、遠い平面波も同じ強さで結ばれる。波動関数は で折れ目(導関数の跳び)を持ち、その折れ目を平面波で表すには高い波数まで要る。近似の数理 第4章で見た「収束の速さは真の解の滑らかさで決まる」の1次元の具体例である。実際のバンド計算で裸の Coulomb ポテンシャルを使わず擬ポテンシャルを使う理由の1つは、ここにある。
何の実験の量で確かめるか
ギャップの大きさ を直接に見る方法は、光の吸収である。単純な多価金属のアルミニウム(fcc、格子定数 )では、Bragg 面の両側でほぼ平行に走る2本のバンドの間で、エネルギー の光が多くの で同時に吸収される。N. W. Ashcroft と K. Sturm(1971、Phys. Rev. B 3、1898)は、Al の光吸収の 1.5 eV 付近の山をこの平行なバンドの間の遷移として説明した。この山の位置を と読むと になる。比べる相手として、 面の境界での自由電子のエネルギーは で、比は にすぎない。Al の価電子にとって周期ポテンシャルは本当に弱く、NFE の前提が実験の量で裏付けられる。
もう1つの方法は、角度分解光電子分光(ARPES)で を直接に描くことである。NFE が当たる金属では、測ったバンドは空格子の放物線の上に乗り、Brillouin 域の境界の近くだけで放物線から外れて水平に入る。さらに、Fermi 面の形(第4部の de Haas–van Alphen 効果で測る)は、自由電子の Fermi 球を境界で切って次の域へ折り込んだ形にほぼ一致する。これは 2.5.4 節の「Fermi 円が境界をはみ出す」の3次元版である。
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