ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第6章 §2.6.3 ★★★ 放物線のバンドの状態密度を1・2・3次元で求め、異方的な有効質量と等価な谷の数をまとめて「状態密度質量」で書く。tight-binding の帯の底も同じ形になる
自由電子の状態密度
まず空格子の第1バンドの底、つまり自由電子 ε(k)=ℏ2k2/2m を考える。等エネルギー面は半径 k=2mε/ℏ の球(2次元では円、1次元では2点 ±k)で、勾配の大きさは ∣∇kε∣=ℏ2k/m である。式 (2.6.9) の面積を d=3,2,1 でそれぞれ 4πk2、2πk、2(点の数)とすれば
D(ε)=⎩⎨⎧2π21(ℏ22m)3/2επℏ2mπ1(ℏ22m)1/2ε1(d=3)(d=2)(d=1)(ε>0)(2.6.10)
を得る。例えば d=3 では D=2⋅4πk2/((2π)3ℏ2k/m)=mk/(π2ℏ2) で、k を ε で書き直したものが1行目である。次元によって形が違うのは、半径 k の球面の面積が kd−1 に比例し、勾配が k に比例するので、D∝kd−2∝ε(d−2)/2 となるからである。
3次元で電子を εF まで詰めると、n=N(εF)=∫0εFDdε から
n=3π21(ℏ22mεF)3/2=3π2kF3,D(εF)=2εF3n(2.6.11)
が出る。2つめの式は D∝ε と n∝ε3/2 の比で、D(εF) を電子の数密度と Fermi エネルギーだけで書いたものである。
異方的な谷と状態密度質量
一般のバンドの底 k0 の近くでは、εn(k) を2次まで展開し、有効質量のテンソル(記法の正本の (m∗−1)ij=ℏ−2∂2ε/∂ki∂kj。1次元の場合は第2部第3章)の主軸に座標を取ると
εn(k0+q)≈ε0+i=1∑32miℏ2qi2
と書くことができる。qi=mi/mdqi′ と伸び縮みさせると、右辺は質量 md の等方的な放物線 ℏ2∣q′∣2/2md になり、体積要素は d3q=m1m2m3/md3d3q′ と変わる。md=(m1m2m3)1/3 と選べばこの係数は 1 なので、状態密度は
D(ε)=ν2π21(ℏ22md)3/2ε−ε0,md=(m1m2m3)1/3(2.6.12)
になる。ν は、対称性で互いに移り合う同じ形の極小(谷)の数である(Si の伝導帯は、⟨100⟩ の6つの向きに回転楕円体の谷を持つ)。md を状態密度質量と呼ぶ(記号 md は記法の正本に無い。有効質量 m∗ と区別するため)。状態密度で決まる量(比熱・キャリア密度)からは、m1,m2,m3 を別々には決められず、その幾何平均と谷の数の組み合わせ ν2/3md だけが決まる。
tight-binding の帯の底も同じ形である。単純立方格子の Γ の近くでは coskia≈1−ki2a2/2 から ε≈εa−6t+ta2k2 で、有効質量は m∗=ℏ2/(2ta2) である(輪の場合と同じ。第2部第3章)。式 (2.6.10) の m を m∗ にして vc/2=a3/2 を掛けると
Dsite(ε)≈4π2t3/2ε−(εa−6t)(単純立方格子の帯の底の近く)(2.6.13)
を得る。正方格子では同様に Dsite=2a2⋅πℏ2m∗=4πt1 の段になる。
ただし、帯の底の形がそのままバンド全体に続くことはない。1本のバンドの状態の数は1サイト・1スピンあたり 1 と決まっているので、ε で増え続ければいずれ数が合わなくなる。実際、式 (2.6.13) を帯の中心 εa まで積分すると 32⋅4π263/2≈0.248 にしかならず、帯の下半分に入るべき 0.5 に足りない。足りない分は、帯の途中で状態密度が放物線から外れて大きくなることで補われる。その外れ方を決めるのが次の節の臨界点である。
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