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この章で選ぶ H^\hat H:原子 NN 個の輪の Hückel 模型

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第3章 原子 N 個の輪:準位が帯になる
目次
  1. 模型
  2. 数値で対角化して並べる
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第3章 §2.3.1 ★★★ 原子1個に軌道1つ、隣どうしだけをホッピング tt でつないだ輪の H^\hat H を選び、NN を増やして数値で対角化すると準位が幅 4t4t の区間に詰まっていく

第2部第1章では原子2個の結合軌道と反結合軌道を 2×22\times2 の行列で求め、第2部第2章では同じ考え方を π電子の分子(エチレン・ブタジエン・ベンゼン)に広げた。この章では原子の数 NN をどんどん増やす。原子を一列に並べると両端の原子だけが特別になるので、まず端の無い形、つまり NN 個の原子を輪に並べた分子を考える。ベンゼンは N=6N=6 の輪であり、この章の模型はその NN を 100100 にも 10810^{8} にもしたものである。

この章で示すことは3つある。1つ目は、NN が大きくなると準位の数は NN 個に増えるが、準位の広がる範囲は幅 4t4t の区間から外へ出ず、その区間を準位がすき間なく埋めていくことである。これが帯(バンド)である。2つ目は、輪を1つ回す並進の対称性を使うと、N×NN\times N の行列が数 kk ごとの 1×11\times1 の問題に分かれ、固有値がε(k)=εa−2tcos⁡(ka)\varepsilon (k)=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos(ka) という1本の式にまとまることである。この kk は並進の固有値のラベルとして現れるが、隣の原子との位相の差・帯の底での波の波数・群速度を決める量という3つの意味を持つ。3つ目は、輪の境界条件は人工的な仮定であるが、端のある鎖と比べると N→∞N\to\infty で同じ帯を与えるので、固体の内部の性質を計算する限り使ってよいことである。

第1部第1章では輪の固有値の式だけを、巻の地図を示すために先に借りた。ここではそれを導き、数値で確かめ、物理の意味を一つずつ読み取る。2.3.1節で模型を選び、2.3.2節で並進と離散 Fourier 変換という道具を当てる。2.3.3節と2.3.4節が出てくるもので、それぞれ帯と状態密度、kk の正体と端のある鎖である。2.3.5節で何を削ったかと何の実験の量で確かめるかを述べ、2.3.6節で授業で習った形と並べ、2.3.7節でまとめる。一般の周期ポテンシャルで同じことを言う Bloch の定理は第2部第4章で扱う。

模型

同じ種類の原子 NN 個(N≥3N\ge3)を、隣どうしの間隔 aa で輪に並べる。原子 jj(j=1,…,Nj=1,\dots,N)には軌道を1つだけ残し、それを ∣j⟩| j \rangle と書く。異なる原子の軌道は直交する(⟨j∣l⟩=δjl\langle j | l \rangle =\delta_{jl})と仮定する。原子 jj の軌道にいる電子のエネルギーを εa\varepsilon _{\mathrm a}、隣の原子へ移る行列要素を −t-t(t>0t>0)とし、隣でない原子の間の行列要素は 00 とする。電子どうしの相互作用は入れず、電子1個の問題を解く。輪なので原子 NN の隣は原子 11 であり、番号を ∣N+1⟩≔∣1⟩| N+1 \rangle \coloneqq| 1 \rangle、∣0⟩≔∣N⟩| 0 \rangle \coloneqq| N \rangle と巡回させて読む。このとき H^\hat H は

H^=∑j=1N[εa∣j⟩⟨j∣−t(∣j⟩⟨j+1∣+∣j+1⟩⟨j∣)](2.3.1)\hat H=\sum_{j=1}^{N}\Bigl[\varepsilon _{\mathrm a}| j \rangle \langle j |-t\bigl(| j \rangle \langle j+1 |+| j+1 \rangle \langle j |\bigr)\Bigr]\tag{2.3.1}

である。これは第1部第1章の tight-binding 模型を輪の上で書いたものと同じで、化学では Hückel 法と呼ぶ。Hückel 法の記号との対応は2.3.6節で述べる。

基底 ∣1⟩,…,∣N⟩| 1 \rangle ,\dots,| N \rangle で行列に書くと、対角に εa\varepsilon _{\mathrm a}、その1つ上と1つ下に −t-t が並び、さらに右上の隅と左下の隅にも −t-t が入る:

H=(εa−t0⋯0−t−tεa−t⋯000−tεa⋱⋮⋮⋱⋱⋱000⋱εa−t−t0⋯0−tεa).(2.3.2)H=\begin{pmatrix} \varepsilon _{\mathrm a}&-t&0&\cdots&0&-t\\ -t&\varepsilon _{\mathrm a}&-t&\cdots&0&0\\ 0&-t&\varepsilon _{\mathrm a}&\ddots&&\vdots\\ \vdots&&\ddots&\ddots&\ddots&0\\ 0&0&&\ddots&\varepsilon _{\mathrm a}&-t\\ -t&0&\cdots&0&-t&\varepsilon _{\mathrm a} \end{pmatrix}.\tag{2.3.2}

隅の2つの −t-t が輪を閉じる要素で、これを 00 にすると端のある鎖になる(2.3.4節)。N=2N=2 を除いたのは、2個の輪では原子1と原子2が「右隣」と「左隣」の両方で2回つながり、行列要素が −2t-2t になって2原子分子と別のものになるからである。

εa\varepsilon _{\mathrm a} は行列全体に単位行列の εa\varepsilon _{\mathrm a} 倍を足すだけなので、すべての固有値を εa\varepsilon _{\mathrm a} だけずらし、固有ベクトルは変えない。以下では必要に応じて εa=0\varepsilon _{\mathrm a}=0 と置き、エネルギーを tt を単位に測る。

数値で対角化して並べる

一般の NN で固有値を式で求める前に、いくつかの NN で行列 (2.3.2) を数値で対角化し、固有値を縦に並べてみる(図 2.3.1)。N=3N=3 では −2t-2t と tt(2重)の2つの準位、N=6N=6 ではベンゼンでおなじみの −2t,−t,t,2t-2t,-t,t,2t の4つの準位があり、NN が増えるたびに準位の数が増える。ところが、どの NN でもいちばん低い準位はちょうど εa−2t\varepsilon _{\mathrm a}-2t にあり、いちばん高い準位は εa+2t\varepsilon _{\mathrm a}+2t を超えない。準位は幅 4t4t の区間から出ずに数だけが増えるので、隣り合う準位の間隔は狭くなり、N=60N=60 ではほとんど区間を塗りつぶす。

図

図 2.3.1 輪の Hückel 模型 (2.3.2) を数値で対角化した固有値(横棒。縮退した準位は1本で描いた)。薄い帯は区間 [εa−2t,εa+2t][\varepsilon _{\mathrm a}-2t,\varepsilon _{\mathrm a}+2t] である。NN を増やすと準位の数は増えるが、準位はこの区間から出ず、区間を埋めていく。

図 2.3.1 から読み取れることを言葉にしておく。原子1個なら準位は εa\varepsilon _{\mathrm a} の1つである。原子2個をつなぐと、第2部第1章のとおりεa∓t\varepsilon _{\mathrm a}\mp t の結合軌道と反結合軌道に分かれる。原子を増やすと、分かれ方は大きくなり続けるのでなく、±2t\pm2t で頭打ちになる。頭打ちになる理由は、1つの原子がつながる相手が両隣の2個しかないことにある。どの状態でも、原子1個あたりで得をするホッピングのエネルギーは「隣への行列要素 tt」と「隣の数 22」の積を超えられない。この上限を式にすると次の不等式になる。任意の規格化された状態 ∣ψ⟩=∑jcj∣j⟩| \psi \rangle =\sum_jc_j| j \rangle について、Cauchy–Schwarz の不等式 ∣∑jcj∗cj+1∣≤∑j∣cj∣2=1\lvert \sum_jc_j^*c_{j+1}\rvert \le\sum_j\lvert c_j\rvert ^2=1 から

∣⟨ψ∣H^−εa∣ψ⟩∣=t ∣∑j=1N(cj∗cj+1+cj+1∗cj)∣≤2t(2.3.3)\lvert \langle \psi | \hat H-\varepsilon _{\mathrm a} | \psi \rangle \rvert =t\,\Bigl|\sum_{j=1}^{N}\bigl(c_j^*c_{j+1}+c_{j+1}^*c_j\bigr)\Bigr|\le2t\tag{2.3.3}

であり、固有値はすべて [εa−2t,εa+2t][\varepsilon _{\mathrm a}-2t,\varepsilon _{\mathrm a}+2t] に入る。準位の数は原子の数 NN に等しいので、NN 個の準位がこの決まった幅に押し込まれ、間隔は NN に反比例して狭くなる。これが「準位が帯になる」ことの中身である。

例題 2.3.1 3個と4個の輪を手で対角化する ★★

オリジナルεa=0\varepsilon _{\mathrm a}=0 とする。

  1. (1) N=3N=3 の輪の行列の特性多項式を求め、固有値を求めよ。
  2. (2) N=4N=4 の輪について、固有ベクトルの候補 (1,1,1,1)(1,1,1,1)、(1,−1,1,−1)(1,-1,1,-1)、(1,0,−1,0)(1,0,-1,0)、(0,1,0,−1)(0,1,0,-1) がそれぞれ固有ベクトルであることを確かめ、固有値を求めよ。
  3. (3) (1)(2) のいちばん低い固有値が、不等式 (2.3.3) の下限 −2t-2t にちょうど等しくなる理由を述べよ。
解答

(1) 行列は対角が 00、それ以外の成分がすべて −t-t の 3×33\times3 行列である(3個の輪ではどの2個も隣どうし)。det⁡(xI−H)\det(xI-H) を展開すると

det⁡(xtttxtttx)=x3−3t2x+2t3=(x+2t)(x−t)2\det\begin{pmatrix}x&t&t\\t&x&t\\t&t&x\end{pmatrix}=x^3-3t^2x+2t^3=(x+2t)(x-t)^2

で、固有値は −2t-2t(1重)と tt(2重)である。

(2) HH をベクトルに当てると、成分 jj は −t(cj−1+cj+1)-t(c_{j-1}+c_{j+1})(番号は4で巡回)になる。(1,1,1,1)(1,1,1,1) では各成分が −2t-2t 倍になり、固有値 −2t-2t。(1,−1,1,−1)(1,-1,1,-1) では両隣の和が成分の −2-2 倍なので、固有値 +2t+2t。(1,0,−1,0)(1,0,-1,0) では成分1の両隣(成分2と4)が 00、成分2の両隣(成分1と3)の和が 1+(−1)=01+(-1)=0 となり、すべての成分で両隣の和が 00 なので固有値 00。(0,1,0,−1)(0,1,0,-1) も同様に固有値 00。固有値は −2t,0,0,2t-2t,0,0,2t である。

(3) 等号が成り立つのは、Cauchy–Schwarz の不等式で cj+1=cjc_{j+1}=c_j がすべての jj で成り立つとき、つまりすべての原子に同じ振幅で広がった状態のときである。輪では番号が巡回しても矛盾が起きないので、この状態 (1,1,…,1)/N(1,1,\dots,1)/\sqrt N が実際に存在し、固有値 −2t-2t を持つ。端のある鎖では両端の原子の隣が1個しかないので、同じ議論で等号は成り立たず、いちばん低い固有値は −2t-2t より少し上になる(2.3.4節)。

木下の勉強ステータス

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