tecktom.com

出てくるもの2:kk の正体と端のある鎖

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第3章 原子 N 個の輪:準位が帯になる
目次
  1. 隣の原子との位相の差
  2. と は同じ状態
  3. 帯の底の :有効質量を持つ自由粒子の波数
  4. と波束の速さ
  5. 端のある鎖
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第3章 §2.3.4 ★★★ kk は隣の原子との位相の差であり、2π/a2\pi/a だけ違う kk は同じ状態を表す。帯の底では kk は質量 m∗m^* の自由粒子の波数になり、dε/dk\mathrm{d}\varepsilon /\mathrm{d} k は波束の速さを決める。端のある鎖も N→∞N\to\infty で同じ帯を与える

隣の原子との位相の差

固有状態 (2.3.7) の原子 jj での振幅は eikja/N\mathrm{e}^{\mathrm{i} kja}/\sqrt N で、大きさはどの原子でも同じ 1/N1/\sqrt N である。電子は輪全体に一様に広がり、原子ごとに違うのは位相だけで、隣へ進むたびに位相が kaka だけ進む。kk の第一の意味は、この「原子1つあたりの位相の進み」を長さ aa で割ったものである。

この見方で ε(k)\varepsilon (k) の形が読める。k=0k=0 ではすべての原子が同じ位相で、隣どうしの軌道が強め合う。これは2原子の結合軌道を全体に広げた状態で、エネルギーはいちばん低い。ka=πka=\pi では隣どうしの符号が逆で、すべての結合が反結合になり、エネルギーはいちばん高い。その間の kk では、隣への行列要素 −t-t が右隣と左隣の位相の因子 e±ika\mathrm{e}^{\pm\mathrm{i} ka} と組になり、和の −2tcos⁡ka-2t\cos ka がエネルギーになる。cos⁡ka\cos ka は、隣どうしの軌道がどれだけ同じ符号で重なっているかの割合と読める。帯の底は結合的、天井は反結合的で、帯の中の状態はその中間である。

kk と k+2π/ak+2\pi/a は同じ状態

kk を 2π/a2\pi/a だけずらすと、ei(k+2π/a)ja=eikjae2πij=eikja\mathrm{e}^{\mathrm{i}(k+2\pi/a)ja}=\mathrm{e}^{\mathrm{i} kja}\mathrm{e}^{2\pi\mathrm{i} j}=\mathrm{e}^{\mathrm{i} kja} なので、どの原子での振幅も変わらない。波動関数は原子の上でしか値を持たないので、2つの kk は区別できない(図 2.3.3)。kk は 2π/a2\pi/a を法としてだけ意味を持ち、Brillouin 域の中だけを考えれば足りる。連続の空間を進む波なら波数の違う波は必ず区別できるが、とびとびの点で測る限り、点の間隔より細かく振動する波は粗い波と見分けがつかない。信号処理で標本化の折り返し(エイリアシング)と呼ぶ現象と同じものである。

図

図 2.3.3 ka=π/3ka=\pi/3 の波(実線)と ka=π/3+2πka=\pi/3+2\pi の波(点線)。原子の位置(黒丸)では値が完全に一致するので、原子の上にしか値を持たない tight-binding の状態としては同じものである。

帯の底の kk:有効質量を持つ自由粒子の波数

帯の底 k≈0k\approx0 のまわりで ε(k)\varepsilon (k) を展開すると、

ε(k)≈εa−2t+ta2k2=εa−2t+ℏ2k22m∗,m∗≔ℏ22ta2(2.3.14)\varepsilon (k)\approx\varepsilon _{\mathrm a}-2t+ta^2k^2=\varepsilon _{\mathrm a}-2t+\frac{\hbar^2k^2}{2m^*},\qquad m^*\coloneqq\frac{\hbar^2}{2ta^2}\tag{2.3.14}

になる。これは長さ NaNa の輪の上を動く質量 m∗m^* の自由粒子のエネルギーと同じ形で、自由粒子の波数もちょうど k=2πν/(Na)k=2\pi\nu/(Na) に量子化される。帯の底の状態は隣どうしの位相の差が小さく、波長が原子の間隔よりずっと長い。そのような波から見ると原子の並びはほとんど連続体で、電子は「隣へ跳ぶ」のでなく「なめらかに進む」ように振る舞う。tt が大きいほど隣へ移りやすく、m∗m^* は軽くなる。m∗m^* は帯の曲がり方 d2ε/dk2\mathrm{d}^2\varepsilon /\mathrm{d} k^2 の逆数で、記法の正本の有効質量 (m∗−1)=ℏ−2∂2ε/∂k2(m^{*-1})=\hbar^{-2}\partial^2\varepsilon /\partial k^2 の1次元の場合である。自由電子の質量 mm とは別の量で、tt と aa だけで決まる。

dε/dk\mathrm{d}\varepsilon /\mathrm{d} k と波束の速さ

kk の近い状態を重ね合わせて波束を作ると、波束は群速度

v(k)=1ℏdεdk=2taℏsin⁡(ka)(2.3.15)v(k)=\frac1\hbar\frac{\mathrm{d}\varepsilon }{\mathrm{d} k}=\frac{2ta}{\hbar}\sin(ka)\tag{2.3.15}

で進む(波の群速度は dω/dk\mathrm{d}\omega/\mathrm{d} k で、量子力学では ω=ε/ℏ\omega=\varepsilon /\hbar)。帯の底 k=0k=0 と天井 k=π/ak=\pi/a では v=0v=0 で、電子は進まない。これらの kk では ∣k⟩| k \rangle と ∣−k⟩| -k \rangle が同じ準位に縮退し、実数の定在波を作れる。ka=πka=\pi では、右へ進む波が原子の列で反射されて左へ進む波と同じ強さで重なっている。これは原子の列による Bragg 反射の1次元版で、ほぼ自由な電子の側から見た同じ現象を第2部第5章で扱う。速さは帯の中央 ka=π/2ka=\pi/2 で最大の 2ta/ℏ2ta/\hbar になる。

ℏk\hbar k を運動量のように扱ってよいか、外から力を加えたとき ℏk\hbar k がどう変わるかは、ε(k)\varepsilon (k) をハミルトニアンとみなす半古典運動の話で、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章で扱う。ℏk\hbar k が結晶運動量と呼ばれ、2πℏ/a2\pi\hbar/a の分だけずれてよい形で保存することは第2部第4章で述べる。

例題 2.3.4 有効質量と最大の速さを数で見る ★★

オリジナルt=1 eVt=1\,\mathrm{eV}、a=0.25 nma=0.25\,\mathrm{nm} の輪(または十分長い鎖)を考える。ℏ=1.0546×10−34 J s\hbar=1.0546\times10^{-34}\,\mathrm{J\,s}、m=9.109×10−31 kgm=9.109\times10^{-31}\,\mathrm{kg}、1 eV=1.602×10−19 J1\,\mathrm{eV}=1.602\times10^{-19}\,\mathrm J とする。

  1. (1) 帯の底の有効質量 m∗m^* を電子の質量 mm との比で求めよ。
  2. (2) 群速度の最大値を求めよ。
  3. (3) 帯の幅を Wb=4tW_{\mathrm b}=4t に保ったまま aa を半分にすると、m∗m^* と最大の速さはどう変わるか。
解答

(1) m∗/m=ℏ2/(2ta2m)m^*/m=\hbar^2/(2ta^2m)。ℏ2/m=1.221×10−38 J m2=7.62×10−20 eV m2\hbar^2/m=1.221\times10^{-38}\,\mathrm{J\,m^2}=7.62\times10^{-20}\,\mathrm{eV\,m^2} なので、m∗/m=7.62×10−20/(2×1×(0.25×10−9)2)=0.610m^*/m=7.62\times10^{-20}/(2\times1\times(0.25\times10^{-9})^2)=0.610。この帯の底の電子は、真空の電子より少し軽い粒子として振る舞う。

(2) vmax⁡=2ta/ℏ=2×1.602×10−19×0.25×10−9/1.0546×10−34=7.60×105 m s−1v_{\max}=2ta/\hbar=2\times1.602\times10^{-19}\times0.25\times10^{-9}/1.0546\times10^{-34}=7.60\times10^{5}\,\mathrm{m\,s^{-1}}。光速の 0.25%0.25\% 程度である。

(3) m∗∝a−2m^*\propto a^{-2} なので4倍重くなり、vmax⁡∝av_{\max}\propto a なので半分になる。帯の幅が同じでも、kk の範囲 2π/a2\pi/a が2倍に広がるので帯は kk の方向に引き延ばされ、曲がりが緩く傾きも小さくなるからである。

端のある鎖

輪を1か所で切って、原子 NN 個の直線の鎖にする。行列 (2.3.2) の隅の2つの −t-t を 00 にしたもので、ブタジエン(N=4N=4)やヘキサトリエン(N=6N=6)の π電子の Hückel 模型である。並進対称性は無くなるが、固有ベクトルは

cj(m)∝sin⁡(mπjN+1),εm=εa−2tcos⁡(mπN+1)(m=1,…,N)(2.3.16)c_j^{(m)}\propto\sin\Bigl(\frac{m\pi j}{N+1}\Bigr),\qquad \varepsilon _m=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos\Bigl(\frac{m\pi}{N+1}\Bigr)\qquad(m=1,\dots,N)\tag{2.3.16}

と求まる。確かめるには、sin⁡\sin の加法定理 sin⁡(θ(j−1))+sin⁡(θ(j+1))=2cos⁡θsin⁡(θj)\sin(\theta(j-1))+\sin(\theta(j+1))=2\cos\theta\sin(\theta j) を使う。これで内部の原子の式 −t(cj−1+cj+1)=(εm−εa)cj-t(c_{j-1}+c_{j+1})=(\varepsilon _m-\varepsilon _{\mathrm a})c_j が満たされる。両端の原子 j=1j=1 と j=Nj=N では隣が1個しかないが、式の上では「原子 00 と原子 N+1N+1 の振幅が 00」と読めば内部と同じ式になり、sin⁡(0)=sin⁡(mπ)=0\sin(0)=\sin(m\pi)=0 がこれを満たす。

鎖の状態は、km≔mπ/((N+1)a)k_m\coloneqq m\pi/((N+1)a) の右へ進む波と左へ進む波を重ねた定在波である。kmk_m は 0<k<π/a0<k<\pi/a に間隔 π/((N+1)a)\pi/((N+1)a) で NN 個並ぶ。輪では −π/a<k≤π/a-\pi/a<k\le\pi/a に間隔 2π/(Na)2\pi/(Na) で NN 個並んでいた。輪の kk と −k-k が1組の定在波にまとまると考えると、正の kk だけ数えて間隔が半分になったことと辻褄が合う。どちらも ε=εa−2tcos⁡(ka)\varepsilon =\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos(ka) の曲線の上の点であり、kk の並ぶ密度は N→∞N\to\infty で一致する。したがって状態密度 (2.3.12) も、半分詰めた1原子あたりのエネルギー (2.3.13) も、N→∞N\to\infty では境界条件によらない。N=1000N=1000 で比べると、∣ε−εa∣<t\lvert \varepsilon -\varepsilon _{\mathrm a}\rvert <t の準位はどちらも 334334 個で、1原子あたりのエネルギーは輪で −1.27324t-1.27324t、鎖で −1.27251t-1.27251t と 10−3t10^{-3}t 以内で一致する。

境界条件の違いが現れるのは、両端の原子の割合 2/N2/N に比例する量だけである。固体の内部の性質(単位体積あたりのエネルギーや状態密度)を計算するときに、扱いやすい輪(周期境界条件)を使ってよい理由がこれである。逆に、端に特有の状態(表面準位・端の状態)は周期境界条件では見えない。1次元の鎖に端だけに局在した状態が現れる例は第2部第8章の SSH 模型で扱う。

例題 2.3.5 半分詰めの鎖の端のエネルギー ★★

オリジナルεa=0\varepsilon _{\mathrm a}=0 とし、原子 NN 個(NN は偶数)の鎖 (2.3.16) に電子 NN 個を詰めた基底状態を考える。電子間の相互作用は無視する。

  1. (1) 全エネルギーがEchain=−4t∑m=1N/2cos⁡mπN+1=2t−2tsin⁡(π/(2(N+1)))E_{\mathrm{chain}}=-4t\sum_{m=1}^{N/2}\cos\frac{m\pi}{N+1}=2t-\frac{2t}{\sin\bigl(\pi/(2(N+1))\bigr)}になることを示せ。
  2. (2) Echain+4tN/πE_{\mathrm{chain}}+4tN/\pi を N=10,50,250N=10,50,250 で求め、N→∞N\to\infty でどの値に近づくかを答えよ。
  3. (3) 同じ NN の輪(N=10,50,250N=10,50,250 はどれも 4n+24n+2 の形)の Ering+4tN/πE_{\mathrm{ring}}+4tN/\pi と比べ、輪と鎖の全エネルギーの差が何で決まるかを述べよ。
解答

(1) 下から m=1,…,N/2m=1,\dots,N/2 の準位に電子が2個ずつ入るので、Echain=2∑m=1N/2(−2tcos⁡(mθ))E_{\mathrm{chain}}=2\sum_{m=1}^{N/2}\bigl(-2t\cos(m\theta)\bigr)、θ≔π/(N+1)\theta\coloneqq\pi/(N+1) である。例題 2.3.3 の和の公式 ∑m=−MMcos⁡(mθ)=sin⁡((2M+1)θ/2)/sin⁡(θ/2)\sum_{m=-M}^{M}\cos(m\theta)=\sin\bigl((2M+1)\theta/2\bigr)/\sin(\theta/2) から∑m=1Mcos⁡(mθ)=12[sin⁡((2M+1)θ/2)/sin⁡(θ/2)−1]\sum_{m=1}^{M}\cos(m\theta)=\frac12\bigl[\sin\bigl((2M+1)\theta/2\bigr)/\sin(\theta/2)-1\bigr] で、M=N/2M=N/2 では (2M+1)θ/2=π/2(2M+1)\theta/2=\pi/2 なので分子は 11 になる。よって Echain=−2t(1/sin⁡(θ/2)−1)=2t−2t/sin⁡(π/(2(N+1)))E_{\mathrm{chain}}=-2t\bigl(1/\sin(\theta/2)-1\bigr)=2t-2t/\sin\bigl(\pi/(2(N+1))\bigr) である。

(2) N=10N=10:Echain=−12.053tE_{\mathrm{chain}}=-12.053t で、Echain+4tN/π=0.679tE_{\mathrm{chain}}+4tN/\pi=0.679t。N=50N=50:0.716t0.716t。N=250N=250:0.725t0.725t。x≔π/(2(N+1))x\coloneqq\pi/(2(N+1)) と置き、1/sin⁡x=1/x+x/6+⋯1/\sin x=1/x+x/6+\cdots を使うと

Echain=−4t(N+1)π+2t−πt6(N+1)+⋯ ,Echain+4tNπ=(2−4π)t−πt6(N+1)+⋯E_{\mathrm{chain}}=-\frac{4t(N+1)}{\pi}+2t-\frac{\pi t}{6(N+1)}+\cdots,\qquad E_{\mathrm{chain}}+\frac{4tN}{\pi}=\Bigl(2-\frac4\pi\Bigr)t-\frac{\pi t}{6(N+1)}+\cdots

で、N→∞N\to\infty で (2−4/π)t≈0.727t(2-4/\pi)t\approx0.727t に近づく。N=10N=10 の値が 0.048t0.048t 低いのは最後の項 πt/66\pi t/66 の分である。

(3) 輪の全エネルギーは例題 2.3.3 (1) の Ering=−4t/sin⁡(π/N)E_{\mathrm{ring}}=-4t/\sin(\pi/N) で、Ering+4tN/π=−0.212t, −0.042t, −0.008tE_{\mathrm{ring}}+4tN/\pi=-0.212t,\ -0.042t,\ -0.008t と−2πt/(3N)-2\pi t/(3N) のように 00 へ近づく。輪の全エネルギーは NN に比例する −4tN/π-4tN/\pi に 1/N1/N の補正が付くだけである。鎖の方は、NN に比例する部分は輪と同じ −4tN/π-4tN/\pi で、そこに NN によらない定数 (2−4/π)t(2-4/\pi)t が残る。輪と鎖の差 Echain−EringE_{\mathrm{chain}}-E_{\mathrm{ring}} は 0.891t, 0.758t, 0.733t0.891t,\ 0.758t,\ 0.733t と (2−4/π)t(2-4/\pi)t に近づき、NN を大きくしても消えない。この差は端の数で決まり、鎖の端は2つなので、端1つあたり (1−2/π)t≈0.363t(1-2/\pi)t\approx0.363t だけエネルギーが高い。1原子あたりに直すと差は (2−4/π)t/N(2-4/\pi)t/N で、N→∞N\to\infty で消える。1原子あたりの量が境界条件によらないことと、全エネルギーに端の分が残ることは両立している。

輪では結合1本あたりのエネルギーが −4t/π≈−1.273t-4t/\pi\approx-1.273t なので、鎖が結合を1本失った分をそのまま数えると 1.273t1.273t 高くなるはずである。実際の損は 0.727t0.727t と小さい。端の近くで波動関数の形が変わり、端に近い結合が内部の結合より強くなって、失った結合の一部を取り戻すからである。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ