この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第2章 §2.2.7 ★★★ π電子だけ・隣どうしだけを残すと、分子の問題はグラフの隣接行列の対角化になる。安定さは占有準位の和、色は HOMO–LUMO の差、どちらも削ったものの分だけ調整の定数 に頼る
この章では、平面の共役分子の π電子に Hückel のハミルトニアン を選んだ。σ と π の分離は鏡映の対称性による厳密な操作で、残りの削り方(1つの軌道への射影・重なりの無視・隣だけの飛び移り・一様な ・電子間相互作用の無視)によって、問題は分子のグラフの隣接行列 の固有値問題になった。
当てた道具は対角化と対称性である。直鎖では両端を固定した定在波 、環では平面波 が閉じた形の解を与え、2部グラフの分子では準位が について上下対称に並び、中性の分子の π電子密度はどの炭素でも になる。
出てきたものは3つある。非局在化エネルギーはブタジエンで 、ベンゼンで である。環が閉殻になるのは π電子が 個のときで(Hückel 則)、シクロブタジエンは縮退した準位が半分だけ埋まる。直鎖の HOMO–LUMO の差は で、鎖が長いほど小さくなり、無限の鎖では になる。
実験と比べると、水素化熱から決めた ではベンゼンの吸収が近赤外に来てしまい、無色という事実と合わない。Hückel 法の は合わせる量ごとの調整の定数であり、これは電子間相互作用の効果を定数の値に含めた C 型の近似の性格である。 によらない予言(系列の中の順番・縮退と Hückel 則)は信頼することができる。
次の章(第2部第3章)では、環の炭素の数 を大きくし、準位が から の帯に詰まっていく様子と、番号 が波数 になることを見る。長い鎖で HOMO–LUMO の差が実際には にならない理由は、第2部第8章 の Peierls 転移で扱う。
総合問題 ヘキサトリエンとベンゼン:鎖を閉じると何が変わるか ★★★
オリジナル炭素6個の直鎖ヘキサトリエン と、炭素6個の環ベンゼンを、Hückel 法で比べる。どちらも π電子は6個である。
- (1) ヘキサトリエンの6つの準位を求め、 と非局在化エネルギー(エチレン3個分との差)を求めよ。(使う道具:2.2.2節の直鎖の解)
- (2) ヘキサトリエンの両端の炭素を結んでベンゼンにすると、 はいくら下がるか。(使う道具:2.2.3節)
- (3) ヘキサトリエンの結合の次数 , , と、各炭素の π電子密度を求め、ベンゼンの値(、密度 )と比べよ。(使う道具:2.2.2節の準位の対の定理・2.2.3節の結合の次数)
- (4) 2つの分子の HOMO–LUMO の差を比べ、水素化熱で決めた を使ったときの波長を求めよ。その結果について 2.2.5節の議論から何が言えるか。(使う道具:2.2.3節・2.2.5節)
- (5) ベンゼンの炭素の1つを窒素に替える(ピリジン)。窒素のサイトのエネルギーを ()とし、飛び移りは変えない。1次の摂動で、縮退した HOMO の対がどう分裂するかと、 の変化を求めよ。 のとき、厳密に対角化した値と比べよ。(使う道具:第1部第1章・第2部第1章 の種類の違う2原子の結合軌道、量子力学の縮退のある1次の摂動論)
解答
(1) 式 (2.2.7) で とすると で、準位は , , である。6個の電子は低い3つを埋めて
エチレン3個分 との差、つまり非局在化エネルギーは である。
(2) ベンゼンは なので、 下がる。結合を1本足したことで、非局在化エネルギーが2倍以上()に増える。環では縮退した対がちょうど埋まる(6は で )ことがこの安定化の理由である。
(3) を について使い、 を計算すると
である(対称性から , )。構造式の二重結合(1–2, 3–4, 5–6)は 1 より小さく、単結合(2–3, 4–5)は 0 より大きい。真ん中の二重結合 3–4 は端の二重結合より π結合の性格が弱い。直鎖は2部グラフで固有値 を持たないので、準位の対の定理から各炭素の π電子密度は である。ベンゼンでは6本すべてが で、直鎖の交互の不揃いが環を閉じると消える。
(4) ヘキサトリエンの差は 、ベンゼンは である。 では、ヘキサトリエンが (波長 )、ベンゼンが ()である。どちらも可視光より長い波長を予言するが、2つの分子はともに無色で吸収は紫外にあり、水素化熱の で吸収を予言することはできない(2.2.5節)。 によらない予言は「ヘキサトリエンの方がベンゼンより長い波長を吸収する」という順番で、差の比 は に依存しない。
(5) 摂動は (窒素を炭素1とする)である。縮退した HOMO の対()を実数の軌道 と にとり、炭素1を に置く。 は で なので、2行2列の摂動行列は対角で、要素は と である。したがって縮退は分裂し、窒素に重みを持つ が 下がり、窒素に節を持つ は1次では動かない。これは種類の違う2原子で、サイトのエネルギーの低い原子に重みを持つ軌道が下がるのと同じ仕組みである。
の1次の変化は、占有軌道の窒素での重みの和に を掛けたもので、 である(ベンゼンの密度 )。 では1次の値は 、厳密な対角化では である。分裂した HOMO の対は、1次で と 、厳密には と で、1次の摂動は小数第3位まで合う。 の準位は窒素に節があるため厳密にも動かない。
ほかの巻では
- 近似の数理 第12章:総合問題 (5) で使った縮退のある1次の摂動を、ゾーン境界の2×2の問題として一般に扱った所が読める
木下の勉強ステータス
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