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この章のまとめ

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第2章 π電子と Hückel 法

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第2章 §2.2.7 ★★★ π電子だけ・隣どうしだけを残すと、分子の問題はグラフの隣接行列の対角化になる。安定さは占有準位の和、色は HOMO–LUMO の差、どちらも削ったものの分だけ調整の定数 tt に頼る

この章では、平面の共役分子の π電子に Hückel のハミルトニアン H=εaI−tAH=\varepsilon _{\mathrm a}I-tA を選んだ。σ と π の分離は鏡映の対称性による厳密な操作で、残りの削り方(1つの軌道への射影・重なりの無視・隣だけの飛び移り・一様な tt・電子間相互作用の無視)によって、問題は分子のグラフの隣接行列 AA の固有値問題になった。

当てた道具は対角化と対称性である。直鎖では両端を固定した定在波 εj=εa−2tcos⁡(jπ/(N+1))\varepsilon _j=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos(j\pi/(N+1))、環では平面波 εm=εa−2tcos⁡(2πm/N)\varepsilon _m=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos(2\pi m/N) が閉じた形の解を与え、2部グラフの分子では準位が εa\varepsilon _{\mathrm a} について上下対称に並び、中性の分子の π電子密度はどの炭素でも 11 になる。

出てきたものは3つある。非局在化エネルギーはブタジエンで 0.472 t0.472\,t、ベンゼンで 2t2t である。環が閉殻になるのは π電子が 4n+24n+2 個のときで(Hückel 則)、シクロブタジエンは縮退した準位が半分だけ埋まる。直鎖の HOMO–LUMO の差は 4tsin⁡(π/(2(N+1)))≃2πt/(N+1)4t\sin(\pi/(2(N+1)))\simeq2\pi t/(N+1) で、鎖が長いほど小さくなり、無限の鎖では 00 になる。

実験と比べると、水素化熱から決めた t≈0.78 eVt\approx0.78\,\mathrm{eV} ではベンゼンの吸収が近赤外に来てしまい、無色という事実と合わない。Hückel 法の tt は合わせる量ごとの調整の定数であり、これは電子間相互作用の効果を定数の値に含めた C 型の近似の性格である。tt によらない予言(系列の中の順番・縮退と Hückel 則)は信頼することができる。

次の章(第2部第3章)では、環の炭素の数 NN を大きくし、準位が εa−2t\varepsilon _{\mathrm a}-2t から εa+2t\varepsilon _{\mathrm a}+2t の帯に詰まっていく様子と、番号 mm が波数 kk になることを見る。長い鎖で HOMO–LUMO の差が実際には 00 にならない理由は、第2部第8章 の Peierls 転移で扱う。

総合問題 ヘキサトリエンとベンゼン:鎖を閉じると何が変わるか ★★★

オリジナル炭素6個の直鎖ヘキサトリエン CH2=CH−CH=CH−CH=CH2\mathrm{CH_2{=}CH{-}CH{=}CH{-}CH{=}CH_2} と、炭素6個の環ベンゼンを、Hückel 法で比べる。どちらも π電子は6個である。

  1. (1) ヘキサトリエンの6つの準位を求め、EπE_\pi と非局在化エネルギー(エチレン3個分との差)を求めよ。(使う道具:2.2.2節の直鎖の解)
  2. (2) ヘキサトリエンの両端の炭素を結んでベンゼンにすると、EπE_\pi はいくら下がるか。(使う道具:2.2.3節)
  3. (3) ヘキサトリエンの結合の次数 p12p_{12}, p23p_{23}, p34p_{34} と、各炭素の π電子密度を求め、ベンゼンの値(p=2/3p=2/3、密度 11)と比べよ。(使う道具:2.2.2節の準位の対の定理・2.2.3節の結合の次数)
  4. (4) 2つの分子の HOMO–LUMO の差を比べ、水素化熱で決めた t=0.78 eVt=0.78\,\mathrm{eV} を使ったときの波長を求めよ。その結果について 2.2.5節の議論から何が言えるか。(使う道具:2.2.3節・2.2.5節)
  5. (5) ベンゼンの炭素の1つを窒素に替える(ピリジン)。窒素のサイトのエネルギーを εa−δ\varepsilon _{\mathrm a}-\delta(δ>0\delta>0)とし、飛び移りは変えない。1次の摂動で、縮退した HOMO の対がどう分裂するかと、EπE_\pi の変化を求めよ。δ=0.5 t\delta=0.5\,t のとき、厳密に対角化した値と比べよ。(使う道具:第1部第1章・第2部第1章 の種類の違う2原子の結合軌道、量子力学の縮退のある1次の摂動論)
解答

(1) 式 (2.2.7) で N=6N=6 とすると 2cos⁡(jπ/7)=1.802, 1.247, 0.445, −0.445, −1.247, −1.8022\cos(j\pi/7)=1.802,\ 1.247,\ 0.445,\ -0.445,\ -1.247,\ -1.802 で、準位は εa∓1.802 t\varepsilon _{\mathrm a}\mp1.802\,t, εa∓1.247 t\varepsilon _{\mathrm a}\mp1.247\,t, εa∓0.445 t\varepsilon _{\mathrm a}\mp0.445\,t である。6個の電子は低い3つを埋めて

Eπ=6εa−2(1.802+1.247+0.445)t=6εa−6.988 t.E_\pi=6\varepsilon _{\mathrm a}-2(1.802+1.247+0.445)t=6\varepsilon _{\mathrm a}-6.988\,t .

エチレン3個分 6εa−6t6\varepsilon _{\mathrm a}-6t との差、つまり非局在化エネルギーは 0.988 t0.988\,t である。

(2) ベンゼンは 6εa−8t6\varepsilon _{\mathrm a}-8t なので、8t−6.988 t=1.012 t8t-6.988\,t=1.012\,t 下がる。結合を1本足したことで、非局在化エネルギーが2倍以上(0.988 t→2t0.988\,t\to2t)に増える。環では縮退した対がちょうど埋まる(6は 4n+24n+2 で n=1n=1)ことがこの安定化の理由である。

(3) cj,n=2/7sin⁡(jnπ/7)c_{j,n}=\sqrt{2/7}\sin(jn\pi/7) を j=1,2,3j=1,2,3 について使い、pjl=2∑j=13cj,ncj,n+1p_{jl}=2\sum_{j=1}^3c_{j,n}c_{j,n+1} を計算すると

p12=0.871,p23=0.483,p34=0.785p_{12}=0.871,\qquad p_{23}=0.483,\qquad p_{34}=0.785

である(対称性から p45=p23p_{45}=p_{23}, p56=p12p_{56}=p_{12})。構造式の二重結合(1–2, 3–4, 5–6)は 1 より小さく、単結合(2–3, 4–5)は 0 より大きい。真ん中の二重結合 3–4 は端の二重結合より π結合の性格が弱い。直鎖は2部グラフで固有値 00 を持たないので、準位の対の定理から各炭素の π電子密度は 11 である。ベンゼンでは6本すべてが 2/32/3 で、直鎖の交互の不揃いが環を閉じると消える。

(4) ヘキサトリエンの差は 4tsin⁡(π/14)=0.890 t4t\sin(\pi/14)=0.890\,t、ベンゼンは 2t2t である。t=0.78 eVt=0.78\,\mathrm{eV} では、ヘキサトリエンが 0.694 eV0.694\,\mathrm{eV}(波長 1786 nm1786\,\mathrm{nm})、ベンゼンが 1.56 eV1.56\,\mathrm{eV}(795 nm795\,\mathrm{nm})である。どちらも可視光より長い波長を予言するが、2つの分子はともに無色で吸収は紫外にあり、水素化熱の tt で吸収を予言することはできない(2.2.5節)。tt によらない予言は「ヘキサトリエンの方がベンゼンより長い波長を吸収する」という順番で、差の比 0.890/2=0.4450.890/2=0.445 は tt に依存しない。

(5) 摂動は V^=−δ∣1⟩⟨1∣\hat V=-\delta| 1 \rangle \langle 1 |(窒素を炭素1とする)である。縮退した HOMO の対(εa−t\varepsilon _{\mathrm a}-t)を実数の軌道 cc=13(cos⁡2πn6)n\bm{c}_{\mathrm c}=\frac{1}{\sqrt3}\bigl(\cos\frac{2\pi n}{6}\bigr)_n と cs=13(sin⁡2πn6)n\bm{c}_{\mathrm s}=\frac{1}{\sqrt3}\bigl(\sin\frac{2\pi n}{6}\bigr)_n にとり、炭素1を n=0n=0 に置く。cs\bm{c}_{\mathrm s} は n=0n=0 で 00 なので、2行2列の摂動行列は対角で、要素は −δ cc,02=−δ/3-\delta\,c_{\mathrm c,0}^2=-\delta/3 と 00 である。したがって縮退は分裂し、窒素に重みを持つ cc\bm{c}_{\mathrm c} が δ/3\delta/3 下がり、窒素に節を持つ cs\bm{c}_{\mathrm s} は1次では動かない。これは種類の違う2原子で、サイトのエネルギーの低い原子に重みを持つ軌道が下がるのと同じ仕組みである。

EπE_\pi の1次の変化は、占有軌道の窒素での重みの和に −δ-\delta を掛けたもので、−δ∑νnνcν,12=−δ q1=−δ-\delta\sum_\nu n_\nu c_{\nu,1}^2=-\delta\,q_1=-\delta である(ベンゼンの密度 q1=1q_1=1)。δ=0.5 t\delta=0.5\,t では1次の値は −0.5 t-0.5\,t、厳密な対角化では −0.549 t-0.549\,t である。分裂した HOMO の対は、1次で εa−1.1667 t\varepsilon _{\mathrm a}-1.1667\,t と εa−t\varepsilon _{\mathrm a}-t、厳密には εa−1.1672 t\varepsilon _{\mathrm a}-1.1672\,t と εa−t\varepsilon _{\mathrm a}-t で、1次の摂動は小数第3位まで合う。cs\bm{c}_{\mathrm s} の準位は窒素に節があるため厳密にも動かない。

ほかの巻では

  • 近似の数理 第12章:総合問題 (5) で使った縮退のある1次の摂動を、ゾーン境界の2×2の問題として一般に扱った所が読める

木下の勉強ステータス

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