tecktom.com

当てる道具:永年方程式と対称性

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第2章 π電子と Hückel 法
目次
  1. 永年方程式
  2. 直鎖:両端の固定された波
  3. 環:周期境界の波
  4. 2部グラフの分子:準位の上下対称
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第2章 §2.2.2 ★★★ Hückel 法は小さな実対称行列の対角化である。直鎖と環には閉じた形の解があり、2部グラフの分子では準位が εa\varepsilon _{\mathrm a} について上下対称に並ぶ

永年方程式

π軌道を ∣ψ⟩=∑jcj∣j⟩| \psi \rangle =\sum_jc_j| j \rangle と書いて H^π∣ψ⟩=ε∣ψ⟩\hat H_\pi| \psi \rangle =\varepsilon | \psi \rangle に入れ、⟨l∣\langle l | を掛けると、重なりを無視しているので

∑j(Hlj−ε δlj)cj=0,det⁡(H−εI)=0(2.2.5)\sum_{j}(H_{lj}-\varepsilon \,\delta_{lj})c_j=0,\qquad \det(H-\varepsilon I)=0\tag{2.2.5}

を得る。右の条件を化学では永年方程式と呼ぶ。これは第V巻で述べた A 型(射影)の近似、つまり 2pz2p_z 軌道の張る NN 次元の部分空間に問題を射影した Rayleigh–Ritz の方程式と同じものである(近似の数理 第4章)。重なりを残すと右の条件は det⁡(H−εS)=0\det(H-\varepsilon S)=0(Slj=⟨l∣j⟩S_{lj}=\langle l | j \rangle)という一般化固有値問題になるが、Hückel 法では S=IS=I とする。

NN が数個なら行列式を展開して解けるが、分子の対称性を使うと行列が小さなブロックに分かれ、手で解ける大きさになる。直鎖と環ではブロックが 1×11\times1 まで小さくなり、閉じた形の解が得られる。

直鎖:両端の固定された波

炭素が NN 個1列に並んだ直鎖(1−2−⋯−N1-2-\cdots-N)では、方程式 (2.2.5) は内側の炭素で

εacn−t(cn−1+cn+1)=ε cn(n=1,…,N)(2.2.6)\varepsilon _{\mathrm a}c_n-t(c_{n-1}+c_{n+1})=\varepsilon \,c_n\qquad(n=1,\dots,N)\tag{2.2.6}

となる。両端の炭素には外側の隣が無いので、架空の c0=cN+1=0c_0=c_{N+1}=0 を置けば両端も同じ式で書くことができる。

命題 2.2.1(直鎖の Hückel 準位 ★★★)

炭素 NN 個の直鎖の π軌道は j=1,…,Nj=1,\dots,N で番号付けられ、

εj=εa−2tcos⁡jπN+1,cj,n=2N+1sin⁡jnπN+1(n=1,…,N)(2.2.7)\varepsilon _j=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos\frac{j\pi}{N+1},\qquad c_{j,n}=\sqrt{\frac{2}{N+1}}\sin\frac{jn\pi}{N+1}\quad(n=1,\dots,N)\tag{2.2.7}

である。準位はすべて縮退せず、εa−2t\varepsilon _{\mathrm a}-2t と εa+2t\varepsilon _{\mathrm a}+2t の間に入る。

証明

cn=sin⁡(nθ)c_n=\sin(n\theta) と置くと、加法定理から cn−1+cn+1=2cos⁡θ sin⁡(nθ)c_{n-1}+c_{n+1}=2\cos\theta\,\sin(n\theta) なので、式 (2.2.6) は ε=εa−2tcos⁡θ\varepsilon =\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos\theta で満たされる。c0=sin⁡0=0c_0=\sin0=0 は自動的に成り立ち、cN+1=sin⁡((N+1)θ)=0c_{N+1}=\sin((N+1)\theta)=0 から θ=jπ/(N+1)\theta=j\pi/(N+1) を得る。j=1,…,Nj=1,\dots,N で cos⁡θ\cos\theta は相異なる NN 個の値をとるので、N×NN\times N の行列の固有値がすべて尽くされる。規格化は ∑n=1Nsin⁡2(jnπ/(N+1))=(N+1)/2\sum_{n=1}^N\sin^2(jn\pi/(N+1))=(N+1)/2 から従う。

jj 番目の軌道は、両端を固定した弦の jj 番目の定在波を炭素の位置で拾ったものである。j=1j=1 は節が無く、全部の結合で隣どうしが同符号で足し合わさるのでもっとも低い。jj が1つ増えるごとに節が1つ増える。

環:周期境界の波

炭素 NN 個が輪になった環では、炭素 NN の隣に炭素 11 がある。序章(第1部第1章)で示したとおり、環を1つずらす並進がハミルトニアンと交換するので、固有ベクトルは並進の固有ベクトル(平面波)にとれ、

εm=εa−2tcos⁡2πmN,cm,n=1Ne2πimn/N(m=0,1,…,N−1)(2.2.8)\varepsilon _m=\varepsilon _{\mathrm a}-2t\cos\frac{2\pi m}{N},\qquad c_{m,n}=\frac{1}{\sqrt N}\mathrm{e}^{2\pi\mathrm{i} mn/N}\qquad(m=0,1,\dots,N-1)\tag{2.2.8}

となる。mm と N−mN-m は同じエネルギーを持つので、m=0m=0(と NN が偶数のときの m=N/2m=N/2)以外の準位は2重に縮退する。縮退した対 mm, N−mN-m の和と差をとれば、実数の軌道 cos⁡(2πmn/N)\cos(2\pi mn/N) と sin⁡(2πmn/N)\sin(2\pi mn/N) が得られる。N→∞N\to\infty での振る舞いは次の章で扱う。

2部グラフの分子:準位の上下対称

炭素を2色に塗り分け、どの結合も異なる色の炭素をつなぐようにできる分子を交互炭化水素と呼ぶ。グラフの言葉では骨格が2部グラフであることで、直鎖はすべて、環は NN が偶数のときだけこれに当たる。印を付けた組(∗*)と付けない組に分ける。

定理 2.2.2(準位の対の定理 ★★★)

交互炭化水素の Hückel 準位は εa\varepsilon _{\mathrm a} について上下対称に並ぶ。すなわち εa−tλ\varepsilon _{\mathrm a}-t\lambda が準位なら εa+tλ\varepsilon _{\mathrm a}+t\lambda も準位で、対になる軌道の係数は、∗* の組では同じで、他方の組では符号だけが反対である。さらに εa\varepsilon _{\mathrm a} にちょうど一致する準位が無く、π電子が NN 個のとき、すべての炭素の π電子密度は 11 である。

証明

∗* の炭素で +1+1、他の炭素で −1-1 をとる対角行列を Σs\Sigma_{\mathrm s} とする(Σs2=I\Sigma_{\mathrm s}^2=I)。Σs\Sigma_{\mathrm s} の対角成分を σj=±1\sigma_j=\pm1 と書くと (ΣsAΣs)jl=σjσlAjl(\Sigma_{\mathrm s}A\Sigma_{\mathrm s})_{jl}=\sigma_j\sigma_lA_{jl} で、Ajl≠0A_{jl}\neq0 なのは異なる組の間だけなので、そのとき σjσl=−1\sigma_j\sigma_l=-1 である。したがって ΣsAΣs=−A\Sigma_{\mathrm s}A\Sigma_{\mathrm s}=-A である。Ac=λcA\bm{c}=\lambda\bm{c} なら A(Σsc)=−ΣsAc=−λ(Σsc)A(\Sigma_{\mathrm s}\bm{c})=-\Sigma_{\mathrm s}A\bm{c}=-\lambda(\Sigma_{\mathrm s}\bm{c}) となり、Σsc\Sigma_{\mathrm s}\bm{c} は固有値 −λ-\lambda の固有ベクトルである。これが前半である。

後半を示す。λ=0\lambda=0 が無ければ固有値は正と負の対に分かれ、NN は偶数で、NN 個の電子は λ>0\lambda>0 の N/2N/2 個の軌道をちょうど埋める。占有軌道への射影 Po=∑λ>0c cTP_{\mathrm o}=\sum_{\lambda>0}\bm{c}\,\bm{c}^{\mathsf T} と、空の軌道への射影 Pu=∑λ<0c cTP_{\mathrm u}=\sum_{\lambda<0}\bm{c}\,\bm{c}^{\mathsf T} は、前半から Pu=ΣsPoΣsP_{\mathrm u}=\Sigma_{\mathrm s}P_{\mathrm o}\Sigma_{\mathrm s} の関係にあり、対角成分が等しい。固有ベクトルは完全系をなすので Po+Pu=IP_{\mathrm o}+P_{\mathrm u}=I で、対角成分はどちらも 1/21/2 である。炭素 jj の電子密度 qj=2(Po)jjq_j=2(P_{\mathrm o})_{jj} は 11 になる。

この定理は Coulson と Rushbrooke が示した(C. A. Coulson and G. S. Rushbrooke (1940), Proc. Cambridge Philos. Soc. 36, 193)。固体の言葉では、2部格子の上の最近接 tight-binding 模型でバンドが εa\varepsilon _{\mathrm a} について対称になる性質と同じものであり、第2部第8章 の SSH 模型で「カイラル対称性」として再び現れる。

例題 2.2.2 アリル(炭素3個の直鎖) ★★

オリジナル炭素3個の直鎖 CH2=CH−CH2\mathrm{CH_2{=}CH{-}CH_2}(アリル)の π系を考える。

  1. (1) 式 (2.2.7) から3つの準位と軌道を求め、行列 HH を直接対角化した結果と一致することを確かめよ。
  2. (2) 真ん中の準位の軌道は、真ん中の炭素で係数が 00 になる。これを準位の対の定理から説明せよ。
  3. (3) π電子が2個(陽イオン)、3個(ラジカル)、4個(陰イオン)のときの EπE_\pi を求め、エチレン1個と孤立した pzp_z 軌道1個の和と比べた安定化を求めよ。
解答

(1) N=3N=3 では cos⁡(jπ/4)=1/2,0,−1/2\cos(j\pi/4)=1/\sqrt2,0,-1/\sqrt2 なので、ε1=εa−2 t\varepsilon _1=\varepsilon _{\mathrm a}-\sqrt2\,t、ε2=εa\varepsilon _2=\varepsilon _{\mathrm a}、ε3=εa+2 t\varepsilon _3=\varepsilon _{\mathrm a}+\sqrt2\,t である。係数は 2/4sin⁡(jnπ/4)\sqrt{2/4}\sin(jn\pi/4) から

c1=12(1,2,1),c2=12(1,0,−1),c3=12(1,−2,1).\bm{c}_1=\tfrac12(1,\sqrt2,1),\qquad \bm{c}_2=\tfrac{1}{\sqrt2}(1,0,-1),\qquad \bm{c}_3=\tfrac12(1,-\sqrt2,1).

直接には det⁡(H−εI)=(εa−ε)[(εa−ε)2−2t2]=0\det(H-\varepsilon I)=(\varepsilon _{\mathrm a}-\varepsilon )\bigl[(\varepsilon _{\mathrm a}-\varepsilon )^2-2t^2\bigr]=0 で、同じ3つの根を得る。

(2) 炭素1と3を ∗* の組、炭素2を他の組とすると2部グラフである。∗* の組が2個、他の組が1個で数が違うので、行列 AA の階数は高々 2×12\times1 の非対角ブロックの階数の2倍、つまり2で、固有値 00 が少なくとも1つある。対の定理の写像 Σs\Sigma_{\mathrm s} はこの軌道を自分自身へ移すので Σsc2=±c2\Sigma_{\mathrm s}\bm{c}_2=\pm\bm{c}_2 で、c2\bm{c}_2 は片方の組だけに値を持つ。Ac2=0A\bm{c}_2=0 を炭素1で読むと c2,2=0c_{2,2}=0 で、実際に真ん中の係数は 00 である。

(3) 陽イオン(2個)は Eπ=2εa−22 tE_\pi=2\varepsilon _{\mathrm a}-2\sqrt2\,t、ラジカル(3個)は 3εa−22 t3\varepsilon _{\mathrm a}-2\sqrt2\,t、陰イオン(4個)は 4εa−22 t4\varepsilon _{\mathrm a}-2\sqrt2\,t である。エチレン1個(2εa−2t2\varepsilon _{\mathrm a}-2t)に孤立した pzp_z 軌道(電子 0,1,20,1,2 個で 0,εa,2εa0,\varepsilon _{\mathrm a},2\varepsilon _{\mathrm a})を足したものと比べると、3つとも安定化は (22−2)t≈0.828 t(2\sqrt2-2)t\approx0.828\,t で同じである。増えた電子は εa\varepsilon _{\mathrm a} の非結合軌道に入り、エネルギーを変えないからである。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

← AI生成教科書『虎の巻』の記事一覧へ