ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第9章 §2.9.6 ★★ 教科書に載るグラフェンの分散の式・有効質量の式・直接遷移と間接遷移の説明を、この章の Bloch ハミルトニアンと並べる
グラフェンの分散の式
学部の固体物理の教科書では、グラフェンの π バンドを座標軸を決めたうえで
ε±(k)=±t1+4cos23kyacos2kxa+4cos22kxa(2.9.20)
と書くことが多い。この章の式 (2.9.8) で k⋅a1=kxa、k⋅a2=2kxa+23kya を入れ、cos(k⋅a2)+cos(k⋅(a2−a1))=2cos23kyacos2kxa、3+2coskxa=1+4cos22kxa を使うと式 (2.9.20) になる(例題 2.9.9)。式 (2.9.20) は答えの形だけを示しているのに対し、この章の形は 2×2 の行列 (2.9.7) を経由している。行列の形の利点は、K で f=0 となることが3つの位相の打ち消し合いとして見えること、質量項 σz や次近接の項を行列の要素として足せること、固有ベクトル(擬スピン)が得られることの3つである。グラフェンの格子定数の取り方は教科書によって違い、炭素どうしの距離 aCC を a と書く本もある。その場合は式 (2.9.20) の a が 3aCC に置き換わり、vF=3taCC/(2ℏ) と書かれる。
有効質量の式と直接・間接遷移
授業では有効質量を、1次元のバンド E(k) の曲率として
m∗1=ℏ21dk2d2E
と定義し、半導体の伝導帯を E=Ec+ℏ2k2/(2m∗) と書く。3次元のこの章の言葉では、これは帯の端でのバンドの2階微分のテンソル (m∗−1)ij=ℏ−2∂2ε/∂ki∂kj で、立方対称な Γ の非縮退な端では定数倍の単位行列になり、Si の Δ 線上の谷のように対称性の低い点では楕円体 (2.9.17) になる。授業の「有効質量 m∗」が1つの数で済むのは、前者の場合に限られる。
直接遷移と間接遷移は、授業では「E-k 図の上で、光の遷移は垂直な矢印、フォノンを伴う遷移は斜めの矢印」と説明される。この章では、矢印が垂直になる理由を光子の波数が Brillouin 域の 10−3 程度しかないこととして数で確かめ(例題 2.9.5)、斜めの矢印の横の長さを Si の谷の位置 0.85×2π/a として与えた。
例題 2.9.9 教科書の分散の式を導く ★★
オリジナル
- (1) 式 (2.9.8) の ∣f∣2 が式 (2.9.20) の根号の中に等しいことを示せ。
- (2) 式 (2.9.20) で k=(4π/(3a),0) を入れ、根号の中が 0 になることを確かめよ。
- (3) k=(0,ky) の線の上で ∣f∣ を ky の関数として書き、Γ から ky 方向に進んだときに ∣f∣=0 となる点があるかを調べよ。
解答
(1) k⋅a2=2kxa+23kya、k⋅(a2−a1)=−2kxa+23kya なので、和積の公式から2cos(k⋅a2)+2cos(k⋅(a2−a1))=4cos23kyacos2kxa。残りは 3+2coskxa=3+2(2cos22kxa−1)=1+4cos22kxa で、足すと式 (2.9.20) の根号の中になる。
(2) ky=0、kxa/2=2π/3 で cos(2π/3)=−1/2 なので、1+4⋅1⋅(−21)+4⋅41=1−2+1=0。
(3) kx=0 では ∣f∣2=5+4cos23kya≥1 で、∣f∣ は 1 以上に保たれ、0 にならない。ky 方向は Γ から M(b2/2)へ向かう方向で、M で ∣f∣=1 になる。Dirac 点は六角形の角にしかなく、辺の中点 M では2本のバンドが 2t だけ離れている。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com