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何の実験の量で確かめるか(つなぎ:半古典運動へ)

2026年10月15日9分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第9章 2次元・3次元の実例:グラフェンの Dirac コーンと Si・GaAs のバンド図
目次
  1. バンドを直接見る:角度分解光電子分光
  2. 有効質量を測る:サイクロトロン共鳴
  3. 光の吸収率:
  4. つなぎ:外場の中のバンドの電子(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章へ)
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第9章 §2.9.5 ★★ バンドは光電子分光で直接見え、有効質量はサイクロトロン共鳴で、Dirac コーンは n\sqrt n に比例する質量と光の吸収率 πα\pi\alpha で確かめられる

バンドを直接見る:角度分解光電子分光

固体に紫外線や X 線を当てると、光電効果で電子が飛び出す。飛び出した電子のエネルギーと飛ぶ向きを測ると、エネルギーの保存と、表面に平行な波数の保存から、固体の中での電子の ε\varepsilon と k\bm{k} の組が分かる。これを角度分解光電子分光(ARPES)と呼ぶ。埋まった状態しか見えないので、Fermi 準位より下のバンドを直接描くことができる。グラフェンでは K のまわりで直線に交わる2本のバンドが測られ、Dirac コーンが確かめられている(A. Bostwick, T. Ohta, T. Seyller, K. Horn and E. Rotenberg (2007), Nature Physics 3, 36)。

有効質量を測る:サイクロトロン共鳴

磁場 B\bm{B} の中の電子は、バンドの等エネルギー面と磁場に垂直な面の交線に沿って k\bm{k} 空間を回る。放物線のバンドなら、回る角振動数は ωc=eB/mc\omega_{\mathrm c}=eB/m_{\mathrm c} で、ωc\omega_{\mathrm c} に合う周波数のマイクロ波を当てると吸収が起こる(サイクロトロン共鳴)。これで質量 mcm_{\mathrm c} を測ることができる。Si の楕円体の谷では、磁場が谷の軸と角度をなすと質量が変わり、

mc=det⁡mb⋅m b(b=B/B, m=diag(ml,mt,mt) を谷の軸の座標で書いた質量テンソル)(2.9.18)m_{\mathrm c}=\sqrt{\frac{\det m}{\bm{b}\cdot m\,\bm{b}}}\qquad(\bm{b}=\bm{B}/B,\ m=\mathrm{diag}(m_l,m_t,m_t)\ \text{を谷の軸の座標で書いた質量テンソル})\tag{2.9.18}

となる。磁場を結晶軸に沿って回すと、6個の谷が違う mcm_{\mathrm c} を示し、その角度依存から mlm_l と mtm_t が分かれて決まる。Dresselhaus・Kip・Kittel の値 (2.9.17) はこうして得られた。

グラフェンでは、例題 2.9.2 で見たように mc=ℏkF/vF∝nm_{\mathrm c}=\hbar k_{\mathrm F}/v_{\mathrm F}\propto\sqrt n となる。Novoselov らは磁場中の抵抗の振動の温度変化から mcm_{\mathrm c} を求め、n\sqrt n に比例することと vF≈106 m s−1v_{\mathrm F}\approx10^6\,\mathrm{m\,s^{-1}} を確かめた(K. S. Novoselov et al. (2005), Nature 438, 197)。同じ年に、Hall 伝導度の量子化の段が通常の整数でなく半整数にずれることが2つの組から報告され(上の論文と Y. Zhang, Y.-W. Tan, H. L. Stormer and P. Kim (2005), Nature 438, 201)、Dirac コーンの電子が K のまわりを1周すると擬スピンが1回転して位相 π\pi を拾うことの証拠になった。この位相(Berry 位相)は第5部第5章で扱う。

光の吸収率:πα\pi\alpha

Dirac コーンには長さの尺度もエネルギーの尺度も無い(ℏvF\hbar v_{\mathrm F} だけがある)。このため、下のコーンから上のコーンへの光の遷移による吸収率は光の周波数によらず、自由空間に置いたグラフェン1枚が垂直に入る光を吸う割合は微細構造定数 α=e2/(4πε0ℏc)\alpha=e^2/(4\pi\varepsilon _0\hbar c) だけで πα≈2.3%\pi\alpha\approx2.3\% と決まる。Nair らは可視光でこの値を測った(R. R. Nair et al. (2008), Science 320, 1308)。吸収率の導出は光の遷移の確率を使うので、第4部第6章で行う。

つなぎ:外場の中のバンドの電子(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章へ)

この節で使ったサイクロトロン共鳴の議論は、「バンドの電子は外場の中で k\bm{k} と r\bm{r} を変数とする古典力学の粒子のように動く」という半古典運動を前提にしている。バンド εn(k)\varepsilon _n(\bm{k}) をハミルトニアンとし、(r,ℏk)(\bm{r},\hbar\bm{k}) を正準変数として Hamilton 方程式を書くと

r˙=1ℏ∇kεn(k),ℏk˙=−e(E+r˙×B)(2.9.19)\dot{\bm{r}}=\frac1\hbar\nabla_{\bm{k}}\varepsilon _n(\bm{k}),\qquad \hbar\dot{\bm{k}}=-e\bigl(\bm{E}+\dot{\bm{r}}\times\bm{B}\bigr)\tag{2.9.19}

が出る。有効質量はこのハミルトニアンの2階微分で、サイクロトロン質量は k\bm{k} 空間の軌道の面積のエネルギー微分で決まる。この導出と、磁場中の軌道の量子化(Onsager の関係)は 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章 に置いた。この巻では結論の式 (2.9.19) だけを使う。Dirac コーンのように2本のバンドが接する所では、半古典運動の前提(バンドが孤立していること)が崩れる。Berry 曲率による補正を含めた扱いは 第5部第5章 で行う。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 外場の変化の長さに対する格子間隔の比 →0\to0(ゆっくり変わる外場) | 証明 条件付き(バンドがギャップで孤立していること。空間断熱摂動論で Berry 補正を含めて証明されている〔Panati–Spohn–Teufel 2003〕。Dirac 点のようにギャップが閉じる所では破れる) | 行き先 近似の数理 第7章・近似の数理 第12章

例題 2.9.7 Si のサイクロトロン共鳴の磁場 ★★

オリジナルSi の伝導帯の谷 (2.9.17) に、周波数 24 GHz24\,\mathrm{GHz} のマイクロ波を当てる。磁場は [001][001] 方向(zz 方向)に向ける。

  1. (1) 6個の谷のうち、軸が zz に沿う2個と、xx・yy に沿う4個のそれぞれについて、式 (2.9.18) から mcm_{\mathrm c} を求めよ。
  2. (2) それぞれの共鳴が起こる磁場 B=2πfmc/eB=2\pi fm_{\mathrm c}/e を求めよ。
  3. (3) 磁場を [110][110] 方向に向けると、軸が zz に沿う谷の mcm_{\mathrm c} はいくらになるか。
解答

(1) 軸が zz の谷では b\bm{b} が軸に平行なので b⋅mb=ml\bm{b}\cdot m\bm{b}=m_l、mc=mlmt2/ml=mt=0.19 mem_{\mathrm c}=\sqrt{m_lm_t^2/m_l}=m_t=0.19\,m_{\mathrm e}。磁場に垂直な面の切り口が円になるので、軽い質量だけが出る。軸が xx の谷では b\bm{b} が軸に垂直なので b⋅mb=mt\bm{b}\cdot m\bm{b}=m_t、mc=mlmt=0.98×0.19 me≈0.432 mem_{\mathrm c}=\sqrt{m_lm_t}=\sqrt{0.98\times0.19}\,m_{\mathrm e}\approx0.432\,m_{\mathrm e}(yy も同じ)。

(2) B=2π×24×109×0.19×9.109×10−31/1.602×10−19≈0.163 TB=2\pi\times24\times10^9\times0.19\times9.109\times10^{-31}/1.602\times10^{-19}\approx0.163\,\mathrm T、および mc=0.432 mem_{\mathrm c}=0.432\,m_{\mathrm e} で 0.370 T0.370\,\mathrm T。2本の共鳴線が現れ、強さは谷の数に比例して 1:21:2 になる。

(3) 軸が zz の谷に対して b=(1,1,0)/2\bm{b}=(1,1,0)/\sqrt2 は軸に垂直なので、mc=mlmt≈0.432 mem_{\mathrm c}=\sqrt{m_lm_t}\approx0.432\,m_{\mathrm e} である。式 (2.9.18) は、半古典運動 (2.9.19) を数値で積分して1周の時間 2πmc/(eB)2\pi m_{\mathrm c}/(eB) を測った値と一致する(verify_ch2-09.py で3つの向きについて確かめた)。

例題 2.9.8 グラフェンは何層まで数えられるか ★

オリジナルグラフェン1枚が光を吸う割合を πα\pi\alpha とし、層どうしの相互作用と反射を無視する。

  1. (1) πα\pi\alpha を有効数字3桁で求めよ(α=1/137.036\alpha=1/137.036)。
  2. (2) 2層を通った光の透過率を求めよ。
  3. (3) 光学顕微鏡で層の数を数えるとき、透過光の何が層の数を教えるかを述べよ。
解答

(1) π/137.036≈0.0229\pi/137.036\approx0.0229、すなわち 2.29%2.29\% である。

(2) (1−0.0229)2≈0.955(1-0.0229)^2\approx0.955。1層ごとに透過が約 2.3%2.3\% ずつ減る。

(3) 吸収率が物質の細かい性質(tt や aa)によらず πα\pi\alpha で決まるので、透過光の暗さの段の数がそのまま層の数になる。ただし層が重なると層の間の飛び移りでバンドが変わり(2層では Dirac コーンが放物線に変わる)、可視光の範囲では πα\pi\alpha からのずれが小さいことを前提にしている。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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