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何を削ったか

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第9章 2次元・3次元の実例:グラフェンの Dirac コーンと Si・GaAs のバンド図
目次
  1. グラフェンの模型で削ったもの
  2. Si・GaAs のバンド図で削ったもの
  3. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第9章 §2.9.4 ★★ グラフェンは π\pi 軌道だけ・最近接だけを残し、Si・GaAs は多軌道の計算を有効質量の放物線にまとめた。削った項のうちギャップを開くものと開かないものを分ける

グラフェンの模型で削ったもの

式 (2.9.1) は、全体のハミルトニアン(第1部第1章)から次のものを削って得た。

第一に、σ\sigma 結合を作る 2s2s・2px2p_x・2py2p_y 軌道を削った。σ\sigma の結合軌道と反結合軌道は Fermi 準位から数 eV 離れているので、Fermi 準位の近くの性質には入ってこない。2pz2p_z 軌道は面の反転で符号を変え、σ\sigma の軌道は変えないので、平らなグラフェンでは π\pi と σ\sigma が対称性で混ざらない。この削り方は、面が平らである限り、エネルギーの離れ具合だけでなく対称性にも支えられている。カーボンナノチューブのように面が曲がると、この対称性が崩れて π\pi と σ\sigma が混ざる(総合問題で触れる)。

第二に、2番目以降に近い原子への飛び移りを削った。同じ副格子の6個の次近接への飛び移り t′t' を戻すと、対角要素に −t′(∣f∣2−3)-t'(\lvert f\rvert ^2-3) が加わる(例題 2.9.6)。この項は A と B に同じ形で入るので、K での縮退は解けず、Dirac 点のエネルギーが 3t′3t' だけずれて電子と正孔の対称性が崩れるだけである。ギャップを開くのは、A と B を区別する項(2.9.2節の質量項)か、時間反転を破る項に限られる。

第三に、スピンと軌道の相互作用を削った。この相互作用を戻すと K と K′' でそれぞれ逆の符号の質量項が生じてギャップが開くことを Kane と Mele が示したが(C. L. Kane and E. J. Mele (2005), Phys. Rev. Lett. 95, 226801)、炭素は軽い原子なのでそのギャップはごく小さく、普段の温度では見えない。このギャップがトポロジーの意味を持つことは第5部で扱う。

第四に、原子軌道の重なり積分(第2部第1章で ss と書いた量)を 00 とした。重なりを戻すと固有値問題が一般化固有値問題になり、上下のバンドの対称性が崩れるが、K での接し方は変わらない。第五に、電子どうしの相互作用を平均に置き換えた。グラフェンでは Dirac 点の近くで状態密度が 00 に落ちるので遮蔽が弱く、相互作用が vFv_{\mathrm F} をわずかに大きくすることが知られている。この巻ではその効果を扱わない。

Si・GaAs のバンド図で削ったもの

Si と GaAs のバンド図は、ここでは自分で対角化せず、多くの軌道を残した計算と実験から借りた。そのうえで、伝導帯の下端と価電子帯の上端の近くだけを式 (2.9.17) の放物線(有効質量)にまとめた。この「端の近くを放物線にまとめる」操作が、第4部の半導体と輸送の章で毎回使う近似になる。外場や不純物の作るポテンシャルが格子間隔に比べてゆっくり変わるなら、電子は放物線のバンドを持つ自由な粒子として振る舞う。もう1つ、バンド図の計算の多くは密度汎関数理論(DFT)の局所密度近似で作られている。この近似は Kohn–Sham 方程式の固有値でギャップを測るので、交換相関エネルギーの粒子数についての微分の不連続を落とし、ギャップを実験より小さく出す傾向がある(J. P. Perdew and M. Levy (1983), Phys. Rev. Lett. 51, 1884、L. J. Sham and M. Schlüter (1983), Phys. Rev. Lett. 51, 1888)。バンド図からギャップの値を読むときは、それが実験の値か、どの計算の値かを確かめる必要がある。

近似の裏付け

型 A(射影) | 小さいもの 各炭素原子の 2pz2p_z 軌道1個が張る部分空間 | 証明 条件付き(深い井戸の極限でトンネル積分の形まで証明されている〔Simon 1984、Helffer–Sjöstrand 1984〕。平らな面では π\pi と σ\sigma が反転対称性で分かれる。実在の原子間距離での誤差の大きさは要確認) | 行き先 近似の数理 第4章・近似の数理 第12章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの ∣q∣a→0\lvert \bm{q}\rvert a\to0(K からの波数が Brillouin 域より十分小さい) | 証明 証明済み(模型の中では ff の Taylor 展開で、誤差は O((∣q∣a)2)\mathcal{O}((\lvert \bm{q}\rvert a)^2) と評価できる) | 行き先 近似の数理 第12章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの 外場の変化の長さに対する格子間隔の比 →0\to0(有効質量近似) | 証明 条件付き(帯の端が孤立して縮退していないとき、Bloch 波の均質化で証明されている〔Allaire–Piatnitski 2005〕。Si の価電子帯の上端のように縮退した端は、縮退したバンドを同時に残す多バンドの形が要る) | 行き先 近似の数理 第9章・近似の数理 第12章

近似の裏付け

型 C(閉じる) | 小さいもの 交換相関のエネルギーを密度の関数で置き換える(小さいパラメータなし) | 証明 C 型=内部の評価なし | 行き先 近似の数理 第9章

例題 2.9.6 次近接の飛び移りはギャップを開かない ★★

オリジナル蜂の巣格子で、同じ副格子の次近接(6個、ベクトル ±a1\pm\bm{a}_1、±a2\pm\bm{a}_2、±(a2−a1)\pm(\bm{a}_2-\bm{a}_1))への飛び移り −t′-t' を足す(εa=0\varepsilon _{\mathrm a}=0)。

  1. (1) Bloch ハミルトニアンの対角要素が −t′g(k)-t'g(\bm{k})、g(k)=∑aeik⋅a=∣f(k)∣2−3g(\bm{k})=\sum_{\bm{a}}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{a}}=\lvert f(\bm{k})\rvert ^2-3 になることを示せ。
  2. (2) K での2本のバンドのエネルギーを求め、ギャップが開かないことを示せ。
  3. (3) t′=0.1tt'=0.1t として Γ\Gamma と M での2本のエネルギーを求め、バンドの上下の対称性がどう崩れるかを述べよ。
解答

(1) 次近接の飛び移りは A から A、B から B へ起こるので、Bloch 和 (2.9.6) の対角要素に −t′∑aeik⋅a-t'\sum_{\bm{a}}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{a}} を加える。6個のベクトルが ±\pm の組になるのでg=2cos⁡(k⋅a1)+2cos⁡(k⋅a2)+2cos⁡(k⋅(a2−a1))g=2\cos(\bm{k}\cdot\bm{a}_1)+2\cos(\bm{k}\cdot\bm{a}_2)+2\cos(\bm{k}\cdot(\bm{a}_2-\bm{a}_1)) で、式 (2.9.8) と比べて g=∣f∣2−3g=\lvert f\rvert ^2-3。新しいバンドは ε±=−t′(∣f∣2−3)±t∣f∣\varepsilon _\pm=-t'(\lvert f\rvert ^2-3)\pm t\lvert f\rvert である。

(2) K では ∣f∣=0\lvert f\rvert =0 なので、2本とも −t′(0−3)=3t′-t'(0-3)=3t' で重なる。対角要素が A と B で同じなので、∣f∣=0\lvert f\rvert =0 の点で縮退が残る。ギャップは開かず、Dirac 点が 3t′3t' だけ上にずれる。

(3) Γ\Gamma で ∣f∣=3\lvert f\rvert =3 なので ε±=−6t′±3t=−3.6t, +2.4t\varepsilon _\pm=-6t'\pm3t=-3.6t,\ +2.4t。M で ∣f∣=1\lvert f\rvert =1 なので ε±=2t′±t=−0.8t, +1.2t\varepsilon _\pm=2t'\pm t=-0.8t,\ +1.2t。t′=0t'=0 では Dirac 点について上下対称だったバンドが、Dirac 点(0.3t0.3t)から測って下に 3.9t3.9t、上に 2.1t2.1t と非対称になる。電子と正孔の対称性が崩れても、Dirac コーンそのものは残る。

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