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出てくるもの1:グラフェンのバンドと Dirac コーン

2026年10月15日13分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第9章 2次元・3次元の実例:グラフェンの Dirac コーンと Si・GaAs のバンド図
目次
  1. バンドの全体の形
  2. K のまわりの展開:Dirac コーン
  3. 状態密度
  4. 副格子の対称性を崩すとギャップが開く
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第9章 §2.9.2 ★★★ 2本のバンドは K と K′' でだけ接し、そのまわりでエネルギーが波数に比例する。状態密度はエネルギーに比例して 00 に落ちる

バンドの全体の形

図 2.9.2 に、式 (2.9.8) のバンドを Γ\Gamma→K→M→Γ\Gamma の経路に沿って描いた。下のバンドは Γ\Gamma で −3t-3t と最も低く、K で 00 まで上がる。M では −t-t になり、ここでバンドは経路に沿って極値を取らないが、M に垂直な方向では極大になる鞍点である。K と K′' を除くとどこでも ∣f∣>0\lvert f\rvert >0 なので、2本のバンドが接するのはこの2点だけである。下のバンドは満ちていて上のバンドは空なので、Fermi 準位はちょうど接点にある。金属のように Fermi 面が広がっているわけでも、絶縁体のようにギャップがあるわけでもない。Fermi 面が2点に縮んだこの状態をゼロギャップ半導体または半金属と呼ぶ。

図

図 2.9.2 グラフェンの π\pi バンド(式 (2.9.8)、εa=0\varepsilon _{\mathrm a}=0)を Γ\Gamma→K→M→Γ\Gamma に沿って描いたもの。横軸は経路に沿った波数の長さ。点線が tight-binding 模型の厳密なバンド、実線は K のまわりの1次の展開 ±ℏvF∣q∣\pm\hbar v_{\mathrm F}\lvert \bm{q}\rvert である。2本のバンドは K で接し、そのまわりで直線になる。

K のまわりの展開:Dirac コーン

K の近くで k=K+q\bm{k}=\mathrm K+\bm{q}(∣q∣a≪1\lvert \bm{q}\rvert a\ll1)と書き、ff を q\bm{q} の1次まで展開する。f(K)=0f(\mathrm K)=0 なのでf(K+q)≈∑jeiK⋅δj iq⋅δjf(\mathrm K+\bm{q})\approx\sum_j\mathrm{e}^{\mathrm{i}\mathrm K\cdot\bm{\delta}_j}\,\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{\delta}_j で、例題 2.9.1 の位相を入れて計算すると

f(K+q)≈−3a2 (qx−iqy)(2.9.9)f(\mathrm K+\bm{q})\approx-\frac{\sqrt3a}{2}\,(q_x-\mathrm{i} q_y)\tag{2.9.9}

となる。これを式 (2.9.7) に入れると、K のまわりの Bloch ハミルトニアンは

HK(q)=ℏvF(0qx−iqyqx+iqy0)=ℏvF (qxσx+qyσy),vF=3 ta2ℏ=3taCC2ℏ(2.9.10)H_{\mathrm K}(\bm{q})=\hbar v_{\mathrm F}\begin{pmatrix}0& q_x-\mathrm{i} q_y\\ q_x+\mathrm{i} q_y&0\end{pmatrix}=\hbar v_{\mathrm F}\,(q_x\sigma_x+q_y\sigma_y),\qquad v_{\mathrm F}=\frac{\sqrt3\,ta}{2\hbar}=\frac{3ta_{\mathrm{CC}}}{2\hbar}\tag{2.9.10}

となる。ここの Pauli 行列 σx,σy\sigma_x,\sigma_y は電子のスピンではなく、A と B の副格子の2成分に作用する。この2成分の自由度を擬スピンと呼ぶ。固有値は

ε±(K+q)=±ℏvF∣q∣(2.9.11)\varepsilon _\pm(\mathrm K+\bm{q})=\pm\hbar v_{\mathrm F}\lvert \bm{q}\rvert\tag{2.9.11}

で、エネルギーが波数の大きさに比例する。(qx,qy,ε)(q_x,q_y,\varepsilon ) の3次元で描くと、上下2つの円錐が頂点で接する形になる。これを Dirac コーンと呼ぶ。名前は、質量 00 の相対論的な粒子のエネルギー E=c∣p∣E=c\lvert \bm{p}\rvert と同じ形で、式 (2.9.10) が2次元の質量 00 の Dirac 方程式(光速 cc を vFv_{\mathrm F} に置き換えたもの)の形をしていることによる。K′' のまわりでは f(K′+q)≈3a2(qx+iqy)f(\mathrm K'+\bm{q})\approx\frac{\sqrt3a}{2}(q_x+\mathrm{i} q_y) となり、HK′=ℏvF(−qxσx+qyσy)H_{\mathrm K'}=\hbar v_{\mathrm F}(-q_x\sigma_x+q_y\sigma_y) という、qxq_x の符号が反転したもう1つの Dirac コーンになる。K と K′' は逆格子ベクトルでつながらない別の点なので、電子の状態はスピンの2つと谷(K・K′')の2つで、各 q\bm{q} に4つずつある。

群速度 ∇kε/ℏ\nabla_{\bm{k}}\varepsilon /\hbar は、上のバンドで大きさが vFv_{\mathrm F} に固定され、向きが q\bm{q} の向きになる。普通の放物線のバンドでは速度がエネルギーとともに増すが、Dirac コーンではエネルギーによらない。有効質量を ℏ2/m∗=∂2ε/∂q2\hbar^2/m^*=\partial^2\varepsilon /\partial q^2 で定義すると、円錐の側面では 22 階微分が 00 なので有効質量は無限大になり、頂点では定義できない。「質量 00 の粒子のように動く」という言い方は、運動量と速度の関係が光子と同じ形であることを指している。

この1次の展開は ∣q∣a\lvert \bm{q}\rvert a が小さいときに限って正しい。∣q∣a=0.2\lvert \bm{q}\rvert a=0.2 で線形からのずれは 3%3\% ほどで、∣q∣\lvert \bm{q}\rvert が大きくなると等エネルギー線は円から三角形に歪む(三角歪み)。エネルギーで言えば、∣ε∣≲t\lvert \varepsilon \rvert \lesssim t の範囲、つまり ±1 eV\pm1\,\mathrm{eV} 程度までが Dirac コーンとして扱える。電気伝導や光学で問題になるエネルギーはこの範囲に収まる。

状態密度

Dirac コーンの近くの状態密度を求める。1つの谷・1つのスピンについて、面積 AA の試料で ∣q∣<Q\lvert \bm{q}\rvert <Q に入る状態の数は AπQ2/(2π)2A\pi Q^2/(2\pi)^2 で、Q=∣ε∣/(ℏvF)Q=\lvert \varepsilon \rvert /(\hbar v_{\mathrm F}) を入れてエネルギーで微分し、谷とスピンの4倍を掛けると、単位面積あたりの状態密度は

D(ε)=2∣ε∣πℏ2vF2(2.9.12)D(\varepsilon )=\frac{2\lvert \varepsilon \rvert }{\pi\hbar^2v_{\mathrm F}^2}\tag{2.9.12}

となる。2次元の放物線のバンドでは状態密度がエネルギーによらない定数だった(第2部第6章)のに対し、Dirac コーンでは ∣ε∣\lvert \varepsilon \rvert に比例して接点で 00 に落ちる。図 2.9.3 に、式 (2.9.8) から数値で求めた状態密度と、式 (2.9.12) を並べた。∣ε∣<0.4t\lvert \varepsilon \rvert <0.4t では両者が 8%8\% 以内で一致する。∣ε∣=t\lvert \varepsilon \rvert =t では状態密度が対数的に発散する。これは M 点の鞍点による van Hove 特異点で、第2部第6章で2次元の鞍点が対数発散を与えることを見た。

図

図 2.9.3 グラフェンの π\pi バンドの状態密度(単位胞あたり・両スピン、1/t1/t 単位)。点線は Brillouin 域を 1200×12001200\times1200 の点で数えた数値(幅 0.1t0.1t の区間で平均)、実線は Dirac コーンの式 (2.9.12) を単位胞の面積 3a2/2\sqrt3a^2/2 を掛けて tt 単位にした 0.735∣ε∣/t0.735\lvert \varepsilon \rvert /t。∣ε∣=t\lvert \varepsilon \rvert =t の山は M 点の van Hove 特異点である。

副格子の対称性を崩すとギャップが開く

K でバンドが接したのは、A と B の副格子が同じ原子で、対角要素が等しかったからである。A と B の原子が違うと、対角要素に差 Δ\Delta が付き、K のまわりの行列は

HK(q)=Δ2σz+ℏvF(qxσx+qyσy),ε±=±(Δ2)2+ℏ2vF2∣q∣2(2.9.13)H_{\mathrm K}(\bm{q})=\frac{\Delta}{2}\sigma_z+\hbar v_{\mathrm F}(q_x\sigma_x+q_y\sigma_y),\qquad \varepsilon _\pm=\pm\sqrt{\Bigl(\frac{\Delta}{2}\Bigr)^2+\hbar^2v_{\mathrm F}^2\lvert \bm{q}\rvert ^2}\tag{2.9.13}

となる(エネルギーの原点は A と B の準位の平均に取った)。K でのギャップは Δ\Delta で、帯の端の近くでは ε+≈Δ/2+ℏ2∣q∣2/(2m∗)\varepsilon _+\approx\Delta/2+\hbar^2\lvert \bm{q}\rvert ^2/(2m^*)、m∗=Δ/(2vF2)m^*=\Delta/(2v_{\mathrm F}^2) という放物線になる。σz\sigma_z の項は相対論の質量の項と同じ形なので、質量項と呼ぶ。ホウ素と窒素が交互に並んだ六方晶窒化ホウ素(hBN)はこの例で、約 6 eV6\,\mathrm{eV} のギャップを持つ絶縁体である(K. Watanabe, T. Taniguchi and H. Kanda (2004), Nature Materials 3, 404)。第2部第8章の SSH 模型では、結合の長さが交互に変わると1次元の鎖にギャップが開いた。蜂の巣格子では、副格子の準位の差が同じ役目を果たす。グラフェンのギャップが 00 に保たれているのは、A と B が同じ炭素原子であることと、空間反転と時間反転の対称性がそろっていることによる。

例題 2.9.2 グラフェンの Fermi 速度とサイクロトロン質量 ★★★

オリジナルt=2.8 eVt=2.8\,\mathrm{eV}、a=0.246 nma=0.246\,\mathrm{nm} とする。

  1. (1) 式 (2.9.10) の vFv_{\mathrm F} を求めよ。
  2. (2) ゲート電圧で電子を面密度 n=1.0×1016 m−2n=1.0\times10^{16}\,\mathrm{m^{-2}}(1012 cm−210^{12}\,\mathrm{cm^{-2}})だけ足した。Fermi 波数 kFk_{\mathrm F}(K から測る)と Fermi エネルギー εF\varepsilon _{\mathrm F} を求めよ。計算を簡単にするため、ここからは vF=1.0×106 m s−1v_{\mathrm F}=1.0\times10^6\,\mathrm{m\,s^{-1}} とする。
  3. (3) 磁場中の円軌道の周期から決まる質量 mc=εF/vF2=ℏkF/vFm_{\mathrm c}=\varepsilon _{\mathrm F}/v_{\mathrm F}^2=\hbar k_{\mathrm F}/v_{\mathrm F}(2.9.5節)を電子の質量 mem_{\mathrm e} の単位で求め、nn とどう変わるかを述べよ。
解答

(1) vF=3×2.8×1.602×10−19×0.246×10−92×1.0546×10−34≈9.06×105 m s−1v_{\mathrm F}=\dfrac{\sqrt3\times2.8\times1.602\times10^{-19}\times0.246\times10^{-9}}{2\times1.0546\times10^{-34}}\approx9.06\times10^{5}\,\mathrm{m\,s^{-1}}。光速の約 1/3301/330 である。

(2) 状態はスピンと谷で4重なので、半径 kFk_{\mathrm F} の円の中の状態の数は単位面積あたり 4×πkF2/(2π)2=kF2/π4\times\pi k_{\mathrm F}^2/(2\pi)^2=k_{\mathrm F}^2/\pi で、これが nn に等しい。kF=πn=π×1016≈1.77×108 m−1k_{\mathrm F}=\sqrt{\pi n}=\sqrt{\pi\times10^{16}}\approx1.77\times10^{8}\,\mathrm{m^{-1}}。εF=ℏvFkF=1.0546×10−34×106×1.77×108≈1.87×10−20 J≈0.117 eV\varepsilon _{\mathrm F}=\hbar v_{\mathrm F}k_{\mathrm F}=1.0546\times10^{-34}\times10^{6}\times1.77\times10^{8}\approx1.87\times10^{-20}\,\mathrm J\approx0.117\,\mathrm{eV}。kFa=0.044k_{\mathrm F}a=0.044 なので Dirac コーンの近似は十分に正しい。

(3) mc=ℏkF/vF=1.0546×10−34×1.77×108/106≈1.87×10−32 kg≈0.0205 mem_{\mathrm c}=\hbar k_{\mathrm F}/v_{\mathrm F}=1.0546\times10^{-34}\times1.77\times10^{8}/10^{6}\approx1.87\times10^{-32}\,\mathrm{kg}\approx0.0205\,m_{\mathrm e}。放物線のバンドではサイクロトロン質量がバンドで決まる定数 m∗m^* だったが、Dirac コーンでは mc∝kF∝nm_{\mathrm c}\propto k_{\mathrm F}\propto\sqrt n と電子の密度とともに変わり、n→0n\to0 で 00 に近づく。この n\sqrt n の依存性は、グラフェンの電子が Dirac コーンにいることの直接の証拠になる(2.9.5節)。

例題 2.9.3 質量項によるギャップと有効質量 ★★

オリジナル式 (2.9.13) で Δ=1.0 eV\Delta=1.0\,\mathrm{eV}、vF=1.0×106 m s−1v_{\mathrm F}=1.0\times10^6\,\mathrm{m\,s^{-1}} とする。

  1. (1) ε+\varepsilon _+ を ∣q∣\lvert \bm{q}\rvert の2次まで展開し、帯の端の有効質量が m∗=Δ/(2vF2)m^*=\Delta/(2v_{\mathrm F}^2) になることを示せ。
  2. (2) m∗m^* を mem_{\mathrm e} の単位で求めよ。
  3. (3) Δ→0\Delta\to0 で m∗m^* がどうなるかを述べ、Dirac コーンとの関係を説明せよ。
解答

(1) ε+=Δ21+(2ℏvFq/Δ)2≈Δ2+ℏ2vF2q2Δ\varepsilon _+=\frac\Delta2\sqrt{1+(2\hbar v_{\mathrm F}q/\Delta)^2}\approx\frac\Delta2+\frac{\hbar^2v_{\mathrm F}^2q^2}{\Delta}。これを Δ2+ℏ2q22m∗\frac\Delta2+\frac{\hbar^2q^2}{2m^*} と比べて m∗=Δ/(2vF2)m^*=\Delta/(2v_{\mathrm F}^2)。

(2) m∗=1.602×10−19/(2×1012)≈8.01×10−32 kg≈0.0879 mem^*=1.602\times10^{-19}/(2\times10^{12})\approx8.01\times10^{-32}\,\mathrm{kg}\approx0.0879\,m_{\mathrm e}。

(3) Δ→0\Delta\to0 で m∗→0m^*\to0 になり、放物線の幅が 00 に縮んで円錐の頂点になる。放物線で近似できるのは ℏvFq≪Δ/2\hbar v_{\mathrm F}q\ll\Delta/2 の範囲だけで、この範囲が Δ→0\Delta\to0 で消える。相対論の E=(mc2)2+(pc)2E=\sqrt{(mc^2)^2+(pc)^2} と同じ形で、Δ/2\Delta/2 が静止エネルギー m∗vF2m^*v_{\mathrm F}^2 にあたる。ギャップの小さい半導体ほど有効質量が小さいという傾向は、この関係の現れとして理解できる(2.9.3節の GaAs)。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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