この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第9章 §2.9.7 ★★★ 単位胞に原子が2個あると ごとに の行列が残り、蜂の巣格子ではそれが K で になって Dirac コーンができる。3次元のバンド図は経路の断面として読み、端の位置と曲率を拾う
この章では、第2部で1次元の模型に当ててきた tight-binding と Bloch の定理を、2次元と3次元の実在の物質に当てた。
グラフェンでは、各炭素原子に 軌道を1個残し、最近接の飛び移り だけを残した模型 (2.9.1) を選んだ。蜂の巣格子は2つの副格子からなるので、副格子ごとの Bloch 和で波数ごとに の行列 (2.9.7) が残る。その非対角要素 は Brillouin 域の角 K と K で3つの位相の打ち消し合いによって になり、そのまわりでバンドは の Dirac コーンになる。 で、状態密度はエネルギーに比例して に落ちる。A と B の副格子を区別する質量項を入れるとギャップが開き、帯の端の有効質量はギャップに比例する。次近接の飛び移りのように A と B に同じ形で入る項は、Dirac 点をずらすだけでギャップを開かない。
3次元では、バンドを高い対称性の点を結ぶ経路の断面として描く。fcc の s 帯の模型でその読み方を確かめ、Si と GaAs のバンド図から、ギャップが直接か間接か、伝導帯の谷の位置と数、楕円体の有効質量を読み取った。直接か間接かは、光子の波数が Brillouin 域に比べて 程度しかないことから、光との結びつきの強さを決める。
削ったものは、 軌道、次近接以遠の飛び移り、スピンと軌道の相互作用、重なり積分、電子どうしの相互作用、そして3次元では帯の端から離れた所のバンドの形である。それを確かめる量は、ARPES で見るバンドの形、サイクロトロン共鳴で測る有効質量、グラフェンの に比例するサイクロトロン質量と光の吸収率 である。外場の中のバンドの電子の運動は 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章 の半古典運動に送り、次の第3部では、ここまで止めていた原子核の運動を戻して格子振動を扱う(第3部第1章)。
総合問題 グラフェンを巻いたナノチューブは金属か半導体か ★★★
オリジナルグラフェンを の方向に巻いて、周の長さが (、 は正の整数)の円筒にしたものを、ジグザグ型のカーボンナノチューブ と呼ぶ。周の方向には周期境界条件 が課され、筒の軸( 方向)は十分長いとする。面の曲がりによる と の混ざりは無視し、グラフェンの バンド (2.9.8)()をそのまま使う。
- (1) (使う道具:第2部第3章の輪の周期境界)許される波数が ( は整数)の線に限られることを示せ。
- (2) (使う道具:2.9.1節・2.9.2節の Dirac 点) が金属になる(ある線が K を通る)のは が の倍数のときに限ることを示せ。
- (3) (使う道具:2.9.2節の Dirac コーン) が の倍数でないとき、K に最も近い線までの距離を求め、Dirac コーンの近似でギャップが ( は筒の直径)になることを示せ。
- (4) (使う道具:2.9.2節・2.9.4節) について、、 として と を求めよ。tight-binding のバンド (2.9.8) を許される線の上で数値で調べると、ギャップは になる。2つの値が違う理由を述べよ。
- (5) (使う道具:2.9.2節の質量項・第2部第6章の van Hove 特異点・第2部第7章のバンドの埋まり方) の最も低い伝導帯の端の有効質量を Dirac コーンの近似で求めよ( を使う)。帯の端の近くの状態密度がどう振る舞うか、電子を足していない が電気を通すかを述べよ。
解答
(1) Bloch 関数 で は格子の周期を持つ。 は格子ベクトルなので で、周期境界条件は 、すなわち を要求する。したがって 。第2部第3章の 個の輪で となったのと同じで、周の方向だけが輪になり、軸の方向の は連続のまま残る。2次元の Brillouin 域は、 方向の平行な線の束に切り分けられる。
(2) K を線が通る条件は 、すなわち が整数になることで、 が の倍数のときに限る。ほかの K と同じ点(六角形の角 など)は で、条件は でやはり が の倍数。K は K の符号を変えた点なので条件は同じである。線が Dirac 点を通れば、その線の上のバンドは を横切り、満ちたバンドと空のバンドが接するので金属になる。数値で調べると ・ でギャップが 、・・ で有限になる。
(3) 許される は ごとに並ぶ。K の なので、 が の倍数でなければ の小数部分は か で、最も近い線までの距離は
である。その線の上では K に最も近い点で なので、Dirac コーンで上下のバンドの差は になる。 を入れると
となる。ギャップは直径に反比例し、太い筒ほどグラフェンに近づいてギャップが閉じる。 から見て線が だけずれていることは、2.9.2節の質量項 を持つ1次元の Dirac コーンと同じ形を与える。
(4) 、。tight-binding の厳密なバンドから求めた より約 大きい。 は小さくないので、Dirac コーンの1次の展開から外れる(2.9.2節で見た での約 のずれと同じ大きさ)。等エネルギー線の三角歪みのため、K の両側にある2本の線(K から と に並ぶ線のうち近い方)での差は向きで違う。さらに実在の細いナノチューブでは、2.9.4節で削った と の混ざりが面の曲がりで戻り、ギャップの値を変える。このとき「平らな面では対称性で分かれる」という削り方の前提が崩れている。
(5) (3) の対応から、最も低い伝導帯は で、例題 2.9.3 と同じ計算により である。、 で 。軸の方向は1次元なので、帯の端の近くの状態密度は と端で発散する。これは第2部第6章で見た1次元の van Hove 特異点で、ナノチューブの光の吸収が鋭い線になる理由である。電子を足していない では、炭素1個あたり 電子1個で下半分のバンドがちょうど満ち、Fermi 準位はギャップの真ん中にある。第2部第7章の分類に従い、 は約 のギャップの半導体で、低温では電気を通さない。同じグラフェンから、巻き方 を1つ変えるだけで金属と半導体が入れ替わる。
木下の勉強ステータス
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