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この章で選ぶ H^\hat H と当てる道具:Kohn–Sham の1電子のハミルトニアンと自己無撞着ループ

2026年10月15日19分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第10章 実際のバンド計算:密度汎関数理論
目次
  1. 出発点の全体のハミルトニアン
  2. Kohn–Sham の1電子のハミルトニアン
  3. 当てる道具:自己無撞着ループ
  4. 全エネルギー
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第10章 §2.10.1 ★★★ 全電子の H^\hat H を、密度に依存する有効ポテンシャルの中の1電子の H^KS\hat H_{\mathrm{KS}} に書き換え、密度とポテンシャルを互いに合うまで回す

第2部のここまでの章では、周期ポテンシャルの中の1電子の問題を、tight-binding の飛び移り tt やほぼ自由な電子の Fourier 成分 VGV_{\bm{G}} という、外から与えたパラメータで解いてきた。第2部第9章の終わりには Si と GaAs のバンド図を読んだが、その図は多くの軌道を残した計算から借りたもので、どう計算されたかは述べなかった。この章ではその計算の手順を扱う。実在の物質のバンド図の大半は、密度汎関数理論(DFT)の Kohn–Sham 方程式を平面波の基底で解いて作られている。

DFT の定理の側、すなわち基底状態の密度が外部ポテンシャルを決めるという Hohenberg–Kohn の定理、密度についての変分原理を作り直す Levy–Lieb の制約付き探索、相互作用のない電子の問題へ書き換える Kohn–Sham の構成は、近似の数理 第9章の密度汎関数理論の節で証明とともに扱った。この章ではそれらを結果として引き、導き直さない。そのうえで、計算を実際に回すときに決めなければならない4つのこと、すなわち自己無撞着ループの回し方、基底(平面波)と擬ポテンシャルとカットオフと k\bm{k} 点、交換相関汎関数の選び方、そして得られた固有値をバンドとして読むときの注意(バンドギャップ問題)を順に述べる。

2.10.1節で Kohn–Sham の1電子のハミルトニアンを選び、自己無撞着ループと混合の安定性を扱う。1次元の小さな模型で、ループを実際に数値で回す。2.10.2節で平面波の基底と擬ポテンシャルを導入し、カットオフと k\bm{k} 点の数による収束を確かめる。2.10.3節で一様電子気体から局所密度近似(LDA)を作り、勾配近似(GGA)と混成汎関数へ進む。2.10.4節で、Kohn–Sham の固有値が準粒子のエネルギーでないことから、ギャップが実験より小さく出る理由を述べる。2.10.5節で何を削ったかを書き出して近似の裏付けの札を置き、2.10.6節で実験の量と授業で習った形に対応させ、2.10.7節でまとめる。

前の章から使う結果は次の4つである。第2部第4章で、周期ポテンシャルの中の1電子の固有状態が Bloch の定理で波数 k\bm{k} をラベルに持つことを示した。第2部第5章で、ほぼ自由な電子の Brillouin 域の境界に幅 2∣VG∣2\lvert V_{\bm{G}}\rvert のギャップが開くことを見た。第2部第7章で、ギャップ EgE_{\mathrm g} の半導体の真性キャリア密度が ni∝e−Eg/(2kBT)n_{\mathrm i}\propto\mathrm{e}^{-E_{\mathrm g}/(2 k_{\mathrm B} T)} となることを出した。第5部第1章で、一様電子気体の交換エネルギーと Thomas–Fermi の遮蔽を求めた。この章は第2部の中に置くが、第5部第1章の結果を先回りして借りる。

出発点の全体のハミルトニアン

第1部第1章で書いた固体の全体のハミルトニアンから出発する。原子核の位置 RI\bm{R}_I は止め(Born–Oppenheimer 近似)、電子 NN 個だけを量子力学で扱う。

H^=∑i=1N[−ℏ22m∇i2+vext(ri)]+12∑i≠je24πϵ0∣ri−rj∣,vext(r)=−∑IZIe24πϵ0∣r−RI∣(2.10.1)\hat H=\sum_{i=1}^{N}\Bigl[-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla_i^2+v_{\mathrm{ext}}(\bm{r}_i)\Bigr]+\frac12\sum_{i\ne j}\frac{e^2}{4\pi\epsilon_0\lvert \bm{r}_i-\bm{r}_j\rvert },\qquad v_{\mathrm{ext}}(\bm{r})=-\sum_I\frac{Z_Ie^2}{4\pi\epsilon_0\lvert \bm{r}-\bm{R}_I\rvert }\tag{2.10.1}

ここで vextv_{\mathrm{ext}} は電子1個が原子核から受ける位置エネルギーで、この章では「ポテンシャル」をすべてエネルギーの単位で書く。第2部のこれまでの章は、この式の電子間の反発を、何らかの平均の周期ポテンシャルに置き換えたものを出発点にしていた。この章で問うのは、その平均のポテンシャルを、模型のパラメータとしてではなく式 (2.10.1) から決める方法である。

Kohn–Sham の1電子のハミルトニアン

近似の数理 第9章の結果を、この巻の記号(SI)に書き直して引く。基底状態のエネルギーは電子密度 n(r)n(\bm{r}) の汎関数として

E[n]=Ts[n]+∫vext(r)n(r) d3r+EH[n]+Exc[n],EH[n]=12∬e2 n(r)n(r′)4πϵ0∣r−r′∣ d3r d3r′(2.10.2)E[n]=T_{\mathrm s}[n]+\int v_{\mathrm{ext}}(\bm{r})n(\bm{r})\,\mathrm{d}^3r+E_{\mathrm H}[n]+E_{\mathrm{xc}}[n],\qquad E_{\mathrm H}[n]=\frac12\iint\frac{e^2\,n(\bm{r})n(\bm{r}')}{4\pi\epsilon_0\lvert \bm{r}-\bm{r}'\rvert }\,\mathrm{d}^3r\,\mathrm{d}^3r'\tag{2.10.2}

と書け、正しい密度でこれが最小になる。TsT_{\mathrm s} は同じ密度を持つ相互作用のない電子の運動エネルギー、EHE_{\mathrm H} は密度を古典的な電荷の雲とみなした静電エネルギー(Hartree エネルギー)で、残りをすべてまとめたものが交換相関エネルギー ExcE_{\mathrm{xc}} である。ExcE_{\mathrm{xc}} はこの式で定義されるので、ここまでは近似を含まない。n=∑i∣ψi∣2n=\sum_i\lvert \psi_i\rvert ^2 と軌道で書いて変分をとると、次の1電子の固有値問題が得られる。

H^KSψnk=εnkψnk,H^KS=−ℏ22m∇2+veff(r),veff=vext+vH+vxc(2.10.3)\hat H_{\mathrm{KS}}\psi_{n\bm{k}}=\varepsilon _{n\bm{k}}\psi_{n\bm{k}},\qquad \hat H_{\mathrm{KS}}=-\frac{\hbar^2}{2m}\nabla^2+v_{\mathrm{eff}}(\bm{r}),\qquad v_{\mathrm{eff}}=v_{\mathrm{ext}}+v_{\mathrm H}+v_{\mathrm{xc}}\tag{2.10.3}

vH(r)=∫e2 n(r′)4πϵ0∣r−r′∣ d3r′,vxc(r)=δExcδn(r),n(r)=∑nkσfnk∣ψnk(r)∣2(2.10.4)v_{\mathrm H}(\bm{r})=\int\frac{e^2\,n(\bm{r}')}{4\pi\epsilon_0\lvert \bm{r}-\bm{r}'\rvert }\,\mathrm{d}^3r',\qquad v_{\mathrm{xc}}(\bm{r})=\frac{\delta E_{\mathrm{xc}}}{\delta n(\bm{r})},\qquad n(\bm{r})=\sum_{n\bm{k}\sigma}f_{n\bm{k}}\lvert \psi_{n\bm{k}}(\bm{r})\rvert ^2\tag{2.10.4}

fnkf_{n\bm{k}} は占有数(絶縁体では満ちたバンドで 1、空のバンドで 0)である。結晶では veffv_{\mathrm{eff}} が格子の周期を持つので、第2部第4章の Bloch の定理がそのまま当たり、固有状態は nn と k\bm{k} でラベルされる。これが、この章で選ぶ H^\hat H である。見た目は第2部の1電子の問題と同じだが、ポテンシャル veffv_{\mathrm{eff}} が解くべき軌道から作った密度 nn に依存する点だけが違う。

この書き換えで何が得られ、何が残ったかを確かめておく。得られたものは、3N3N 変数の多体の波動関数の代わりに、3変数の1電子の方程式を NN 本解けばよくなったことである。運動エネルギーの大部分 TsT_{\mathrm s} を軌道で正確に扱うので、原子の殻構造や化学結合が正しく出る。残ったものは、ExcE_{\mathrm{xc}} の形が分からないことだけである。全エネルギーの中で ExcE_{\mathrm{xc}} は運動エネルギーや静電エネルギーより1桁ほど小さく、その小さな部分だけを近似すればよい、というのが Kohn と Sham の書き換えの要点である(W. Kohn and L. J. Sham (1965), Phys. Rev. 140, A1133)。

当てる道具:自己無撞着ループ

式 (2.10.3) は、veffv_{\mathrm{eff}} が分からないと解けず、解けないと nn が分からず、nn が分からないと veffv_{\mathrm{eff}} が作れない。そこで、入力のポテンシャルを仮に決めて解き、出てきた密度からポテンシャルを作り直し、入力と出力が一致するまで繰り返す(図 2.10.1)。これを自己無撞着場(SCF)の計算と呼ぶ。

図

図 2.10.1 Kohn–Sham の自己無撞着ループ。入力のポテンシャルから出力の密度を作り、それから作ったポテンシャル voutv_{\mathrm{out}} が入力と一致するまで回す。出力をそのまま次の入力にすると発散することが多いので、混合の係数 α\alpha で少しずつ近づける。

出力をそのまま次の入力にする(α=1\alpha=1)と、ループはたいてい収束しない。理由は線形化して見ると分かる。正しい解 v∗v^* からのずれ δvin\delta v_{\mathrm{in}} が小さいとき、出力のずれはそれに比例し、δvout=J^ δvin\delta v_{\mathrm{out}}=\hat{\mathcal J}\,\delta v_{\mathrm{in}} と書ける。J^\hat{\mathcal J} は「ポテンシャルを少し変えたとき、電子が動いて作り直されるポテンシャルがどれだけ変わるか」を表す線形の写像である。電子どうしは反発するので、ポテンシャルの谷を深くすると電子が集まり、その電子の作る Hartree ポテンシャルは谷を浅くする向きに加わる。このため J^\hat{\mathcal J} の固有値 λ\lambda は負になる。混合を入れると、次のずれは

δvinnew=[1−α(1−J^)]δvin(2.10.5)\delta v_{\mathrm{in}}^{\mathrm{new}}=\bigl[1-\alpha(1-\hat{\mathcal J})\bigr]\delta v_{\mathrm{in}}\tag{2.10.5}

となる。固有値 λ\lambda の向きのずれは毎回 1−α(1−λ)1-\alpha(1-\lambda) 倍される。λ<0\lambda<0 なので 1−λ>11-\lambda>1 で、α=1\alpha=1 のときこの倍率は λ\lambda そのものになる。∣λ∣>1\lvert \lambda\rvert >1 の向きがあれば α=1\alpha=1 では発散し、収束させるにはすべての固有値について ∣1−α(1−λ)∣<1\lvert 1-\alpha(1-\lambda)\rvert <1、すなわち 0<α<2/(1−λmin⁡)0<\alpha<2/(1-\lambda_{\min}) が要る。1−J^1-\hat{\mathcal J} は、外から入れたポテンシャルが電子の応答でどれだけ弱められるかを表すので、固体の誘電関数(第5部第1章の εr\varepsilon _{\mathrm r})と同じものである。混合の係数の上限は、その系の誘電関数のいちばん大きな値で決まる。

例題 2.10.1 金属の大きな単位胞では混合の係数を小さくしなければならない ★★

オリジナルずれ δv\delta v を平面波 eiq⋅r\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{q}\cdot\bm{r}} に分け、1−J^1-\hat{\mathcal J} を Thomas–Fermi の誘電関数 εr(q)=1+qTF2/q2\varepsilon _{\mathrm r}(q)=1+q_{\mathrm{TF}}^2/q^2(第5部第1章)で近似する。qTF=1.81×1010 m−1q_{\mathrm{TF}}=1.81\times10^{10}\,\mathrm{m^{-1}}(銅)とする。

  1. (1) 一辺 LL の立方体の単位胞で、ずれの波数は q≥2π/Lq\ge2\pi/L に限られる。いちばん大きい倍率を最も小さくする混合の係数 α∗\alpha^* と、そのときの倍率 rr を εmax⁡=εr(2π/L)\varepsilon _{\max}=\varepsilon _{\mathrm r}(2\pi/L) で表せ(qq の大きい側では εr→1\varepsilon _{\mathrm r}\to1 とする)。
  2. (2) L=1 nmL=1\,\mathrm{nm} と L=4 nmL=4\,\mathrm{nm} について εmax⁡\varepsilon _{\max}、α∗\alpha^*、rr と、ずれを 10−610^{-6} 倍にするのに要る反復の数を求めよ。
  3. (3) 混合を波数ごとに α(q)=α q2/(q2+qTF2)\alpha(q)=\alpha\,q^2/(q^2+q_{\mathrm{TF}}^2) と変える(Kerker の前処理)と、倍率が qq によらず 1−α1-\alpha になることを示せ。
解答

(1) 波数 qq の成分の倍率は 1−αεr(q)1-\alpha\varepsilon _{\mathrm r}(q) で、εr\varepsilon _{\mathrm r} は 11 から εmax⁡\varepsilon _{\max} までの値をとる。∣1−αε∣\lvert 1-\alpha\varepsilon \rvert の最大は両端 ε=1\varepsilon =1 と ε=εmax⁡\varepsilon =\varepsilon _{\max} のどちらかでとられるので、両端の絶対値をそろえる 1−α=−(1−αεmax⁡)1-\alpha=-(1-\alpha\varepsilon _{\max}) が最適で、α∗=2/(εmax⁡+1)\alpha^*=2/(\varepsilon _{\max}+1)、r=(εmax⁡−1)/(εmax⁡+1)r=(\varepsilon _{\max}-1)/(\varepsilon _{\max}+1) となる。

(2) L=1 nmL=1\,\mathrm{nm} では 2π/L=6.28×109 m−12\pi/L=6.28\times10^9\,\mathrm{m^{-1}}、εmax⁡=1+(1.81/0.628)2=9.30\varepsilon _{\max}=1+(1.81/0.628)^2=9.30、α∗=0.194\alpha^*=0.194、r=0.806r=0.806。反復の数は ln⁡10−6/ln⁡0.806≈64\ln10^{-6}/\ln0.806\approx64。L=4 nmL=4\,\mathrm{nm} では εmax⁡=134\varepsilon _{\max}=134、r=0.985r=0.985 で、反復は約 920920 になる。εmax⁡−1\varepsilon _{\max}-1 は L2L^2 に比例し、rr が 11 に近いとき反復の数は εmax⁡/2\varepsilon _{\max}/2 に比例するので、単位胞を大きくするほど反復の数が L2L^2 に比例して増える。長い波長の密度のずれが単位胞の端から端へ行き来して収まらないこの現象を、計算の現場では charge sloshing と呼ぶ。

(3) α(q)εr(q)=αq2q2+qTF2⋅q2+qTF2q2=α\alpha(q)\varepsilon _{\mathrm r}(q)=\alpha\frac{q^2}{q^2+q_{\mathrm{TF}}^2}\cdot\frac{q^2+q_{\mathrm{TF}}^2}{q^2}=\alpha なので、倍率はすべての qq で 1−α1-\alpha になる。α=1\alpha=1 なら Thomas–Fermi の模型の中では1回で収束する。長い波長の成分ほど混合を弱め、誘電関数の大きさをちょうど打ち消すことが前処理の考え方である(G. P. Kerker (1981), Phys. Rev. B 23, 3082)。実際の計算では εr\varepsilon _{\mathrm r} が Thomas–Fermi の形からずれるので1回では終わらないが、反復の数が LL によらなくなる。

例題 2.10.2 1次元の模型で Kohn–Sham を回す ★★★

オリジナル長さを格子定数 aa、エネルギーを ℏ2/(ma2)\hbar^2/(ma^2) で測る1次元の結晶を考える。外部ポテンシャルを vext(x)=−2V0cos⁡(2πx)v_{\mathrm{ext}}(x)=-2V_0\cos(2\pi x)(V0=1V_0=1)、単位胞あたりの電子を2個(いちばん下のバンドがスピン2重に満ちる)とする。電子どうしは接触型の反発 g δ(x−x′)g\,\delta(x-x')(g=2g=2)をし、Hartree ポテンシャルは vH=gnv_{\mathrm H}=gn、交換は局所形 ex(n)=−gn/4e_{\mathrm x}(n)=-gn/4(1電子あたり)で近似する。

  1. (1) 交換相関ポテンシャル vxv_{\mathrm x} と、vH+vxv_{\mathrm H}+v_{\mathrm x} を求めよ。接触型の反発で交換が Hartree の半分を打ち消す理由を述べよ。
  2. (2) 平面波 ei(k+2πm)x\mathrm{e}^{\mathrm{i}(k+2\pi m)x}(∣m∣≤10\lvert m\rvert \le10)で H^KS\hat H_{\mathrm{KS}} を行列にし、k\bm{k} 点 16 個でループを回すと、残差 max⁡∣vout−vin∣\max\lvert v_{\mathrm{out}}-v_{\mathrm{in}}\rvert が 10−1110^{-11} を切るまでの反復の数は α=0.2, 0.5, 0.8, 1.0, 1.2\alpha=0.2,\,0.5,\,0.8,\,1.0,\,1.2 で 91, 30, 13, 23, 4691,\,30,\,13,\,23,\,46 になった。α=1\alpha=1 のときの残差の比が約 0.310.31 であることから応答の固有値 λ\lambda を推定し、最適な α\alpha を予想せよ。
  3. (3) 収束した有効ポテンシャルの cos⁡(2πx)\cos(2\pi x) の成分は −2×0.711-2\times0.711 になった。k=πk=\pi でのギャップを、第2部第5章のほぼ自由な電子の式で見積もり、数値の値(g=0g=0 で 1.9991.999、g=2g=2 で 1.4211.421)と比べよ。
解答

(1) Ex=∫n ex(n) dx=−g4∫n2 dxE_{\mathrm x}=\int n\,e_{\mathrm x}(n)\,\mathrm{d} x=-\frac g4\int n^2\,\mathrm{d} x を nn で汎関数微分して vx=−gn/2v_{\mathrm x}=-gn/2。したがって vH+vx=gn/2v_{\mathrm H}+v_{\mathrm x}=gn/2 である。Hartree の項は、電子が自分自身の作る電荷の雲とも反発する分を含む。接触型の反発では、同じ向きのスピンの電子は Pauli の原理で同じ点に来ないので、同じスピンどうしの反発はちょうど 00 になるはずである。密度の半分は同じスピンの電子が作るので、交換はその半分を打ち消し、残るのは反対のスピンの電子との反発だけになる。この模型では局所形の交換が Hartree–Fock の交換と一致する。

(2) α=1\alpha=1 では倍率が λ\lambda そのものなので、残差の比の大きさ 0.310.31 から ∣λ∣≈0.31\lvert \lambda\rvert \approx0.31、反発なので λ≈−0.31\lambda\approx-0.31。倍率 1−α(1−λ)1-\alpha(1-\lambda) を 00 にする α∗=1/(1−λ)≈0.76\alpha^*=1/(1-\lambda)\approx0.76 が最適で、表の中では 0.80.8 が最も速い(反復 13)。α=0.2\alpha=0.2 では倍率 1−0.2×1.31=0.741-0.2\times1.31=0.74 で遅く、α=1.2\alpha=1.2 では 1−1.2×1.31=−0.581-1.2\times1.31=-0.58 で符号を変えながら振動して遅い。この模型では ∣λ∣<1\lvert \lambda\rvert <1 なので α=1\alpha=1 でも収束するが、例題 2.10.1 の金属の大きな単位胞のように ∣λ∣\lvert \lambda\rvert の大きな向きがあると α=1\alpha=1 は発散する。

(3) 第2部第5章の式で、ギャップは有効ポテンシャルの Fourier 成分の2倍、2∣VG∣2\lvert V_{\bm{G}}\rvert である。g=0g=0 では VG=−V0=−1V_{\bm{G}}=-V_0=-1 でギャップ 22(数値は 1.9991.999)、g=2g=2 では ∣VG∣=0.711\lvert V_{\bm{G}}\rvert =0.711 でギャップ 1.421.42(数値は 1.4211.421)となり、よく一致する。反発のある電子は、ポテンシャルの谷に集まり、その密度の作る Hartree ポテンシャルが谷を浅くするので、電子が感じる周期ポテンシャルは裸のものより弱く、ギャップは小さくなる。これは 2.10.6節で扱う遮蔽そのもので、第2部第5章で外から与えた VGV_{\bm{G}} は、遮蔽された後の値と読むべきものである。数値の手順は、各 k\bm{k} で 21×2121\times21 の行列を対角化し、いちばん下の固有ベクトルの係数から密度の Fourier 成分を作り、ポテンシャルを作り直して混合するだけである(scripts/verify_ch2-10.py)。

図

図 2.10.2 例題 2.10.2 の1次元模型で、混合の係数 α\alpha を変えたときの残差(縦軸は対数)。直線の傾きが倍率 ∣1−α(1−λ)∣\lvert 1-\alpha(1-\lambda)\rvert の対数で、最適値 α∗≈0.76\alpha^*\approx0.76 に近い 0.80.8 が最も急に下がる。

全エネルギー

ループが収束したら全エネルギーを求める。固有値の和 ∑fε\sum f\varepsilon は、運動エネルギーと ∫veffn\int v_{\mathrm{eff}}n の和なので、式 (2.10.2) と比べると Hartree と交換相関を数え違えている。正しくは

E=∑nkσfnkεnk−∫(vH+vxc)n d3r+EH[n]+Exc[n]+EII(2.10.6)E=\sum_{n\bm{k}\sigma}f_{n\bm{k}}\varepsilon _{n\bm{k}}-\int\bigl(v_{\mathrm H}+v_{\mathrm{xc}}\bigr)n\,\mathrm{d}^3r+E_{\mathrm H}[n]+E_{\mathrm{xc}}[n]+E_{\mathrm{II}}\tag{2.10.6}

である(EIIE_{\mathrm{II}} は原子核どうしの反発)。固有値の和は電子どうしの反発を「各電子が他のすべての電子から受ける」形で2回数えているので、その分を引き戻している。この式から、Kohn–Sham の固有値の和は全エネルギーでなく、固有値そのものにも全エネルギーの差という意味は直ちには無いことが分かる。固有値の意味は 2.10.4節で改めて扱う。

ほかの巻では

  • 近似の数理 第9章:Hohenberg–Kohn・Levy–Lieb・Kohn–Sham の定理と、汎関数の近似に内部の評価が無い理由が読める

木下の勉強ステータス

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