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出てくるもの1:平面波の基底と擬ポテンシャル(カットオフと k\bm{k} 点の収束)

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2部 第10章 実際のバンド計算:密度汎関数理論
目次
  1. 平面波の基底とカットオフ
  2. なぜ擬ポテンシャルが要るか
  3. 点の数
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第10章 §2.10.2 ★★★ 結晶の計算は平面波で展開するのが自然だが、内殻の電子の急な振動は平面波で書けないので擬ポテンシャルで消す。精度はカットオフと k\bm{k} 点の数の2つで決まる

平面波の基底とカットオフ

Bloch 関数 ψnk=eik⋅runk(r)\psi_{n\bm{k}}=\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot\bm{r}}u_{n\bm{k}}(\bm{r}) の周期部分 unku_{n\bm{k}} は格子の周期を持つので、逆格子ベクトル G\bm{G} の平面波で Fourier 展開できる。

ψnk(r)=1Ω∑Gcnk(G) ei(k+G)⋅r,ℏ2∣k+G∣22m≤Ecut(2.10.7)\psi_{n\bm{k}}(\bm{r})=\frac{1}{\sqrt{\Omega}}\sum_{\bm{G}}c_{n\bm{k}}(\bm{G})\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}(\bm{k}+\bm{G})\cdot\bm{r}},\qquad \frac{\hbar^2\lvert \bm{k}+\bm{G}\rvert ^2}{2m}\le E_{\mathrm{cut}}\tag{2.10.7}

Ω\Omega は基本単位胞の体積である。第2部第5章のほぼ自由な電子でギャップを求めたときの平面波の展開と同じもので、違いは平面波の数を数個でなく数百から数千個とり、行列を数値で対角化することである。運動エネルギーは対角で ℏ2∣k+G∣2/(2m)\hbar^2\lvert \bm{k}+\bm{G}\rvert ^2/(2m)、ポテンシャルは G−G′\bm{G}-\bm{G}' の Fourier 成分 veff(G−G′)v_{\mathrm{eff}}(\bm{G}-\bm{G}') が非対角に並ぶ。展開を打ち切る基準は、平面波の運動エネルギーが カットオフ EcutE_{\mathrm{cut}} 以下のものを残すことである。半径 kc=2mEcut/ℏk_{\mathrm c}=\sqrt{2mE_{\mathrm{cut}}}/\hbar の球の中の逆格子点の数は、1点が体積 (2π)3/Ω(2\pi)^3/\Omega を占めるので

NPW≈Ω(2π)3⋅4π3kc3=Ωkc36π2(2.10.8)N_{\mathrm{PW}}\approx\frac{\Omega}{(2\pi)^3}\cdot\frac{4\pi}{3}k_{\mathrm c}^3=\frac{\Omega k_{\mathrm c}^3}{6\pi^2}\tag{2.10.8}

になる。平面波の基底は、原子の位置によらない、カットオフ1つで精度を系統的に上げられる、Fourier 変換で運動エネルギーとポテンシャルの掛け算を行き来できる、という利点を持つ。汎関数と擬ポテンシャルを固定すれば、Kohn–Sham のエネルギーの最小化はカットオフで決まる部分空間の上の変分なので、カットオフを上げると全エネルギーは上から単調に下がる(近似の数理 第4章の Rayleigh–Ritz の上界性)。

なぜ擬ポテンシャルが要るか

平面波には弱点が1つある。原子核の近くでは vext∝−Z/rv_{\mathrm{ext}}\propto-Z/r が深く、内殻の電子の軌道は原子核から a0/Za_0/Z 程度の小さな範囲に縮んでいる(a0a_0 は Bohr 半径)。価電子の軌道もこの内殻の軌道と直交しなければならないので、原子核の近くで細かく振動する。こうした短い長さの構造を平面波で書くには、大きな波数まで要る(例題 2.10.3)。

しかし固体の結合やバンドを決めるのは、原子と原子の間の価電子の振る舞いで、内殻の電子は原子の中に閉じこもってほとんど変わらない。そこで次の置き換えをする。内殻の電子を原子核と一体の「イオン」として固定し(frozen core)、その外側の半径 rcr_{\mathrm c} より遠くでは本物の価電子の軌道と一致し、内側では振動しない滑らかな擬波動関数を作る。その擬波動関数を固有状態に持つように決めたポテンシャルが擬ポテンシャルである。原子核の −Z/r-Z/r の代わりに、内側では浅く外側では −Zve2/(4πϵ0r)-Z_{\mathrm v}e^2/(4\pi\epsilon_0r)(ZvZ_{\mathrm v} は価電子の数)になる、角運動量ごとに違う(非局所な)ポテンシャルになる。

擬ポテンシャルの作り方にはいくつかの流儀がある。rcr_{\mathrm c} の内側での擬波動関数のノルムを本物と一致させるノルム保存型は、参照にしたエネルギーのまわりで散乱の性質が1次まで原子と一致することを作り方で保証する(D. R. Hamann, M. Schlüter and C. Chiang (1979), Phys. Rev. Lett. 43, 1494)。ノルムの条件を外して必要なカットオフを下げたウルトラソフト型(D. Vanderbilt (1990), Phys. Rev. B 41, 7892)や、擬波動関数から本物の波動関数を変換で復元できる PAW 法(P. E. Blöchl (1994), Phys. Rev. B 50, 17953)が、今の計算で広く使われている。どの流儀も、原子1個の計算で作ったポテンシャルを、結合した固体の中でもそのまま使えると仮定している。この性質を移植性と呼び、作った擬ポテンシャルは格子定数や他の原子との組で確かめてから使う。

例題 2.10.3 Si の平面波の数:価電子と内殻 ★★

オリジナルSi はダイヤモンド構造で、立方格子の格子定数は a=0.5431 nma=0.5431\,\mathrm{nm}、基本単位胞は面心立方の a3/4a^3/4 に原子2個を含む。a0=0.0529 nma_0=0.0529\,\mathrm{nm} を長さの単位、Rydberg(1 Ry=ℏ2/(2ma02)=13.6 eV1\,\mathrm{Ry}=\hbar^2/(2ma_0^2)=13.6\,\mathrm{eV})をエネルギーの単位とする。

  1. (1) この単位では kc=Ecut/Ry a0−1k_{\mathrm c}=\sqrt{E_{\mathrm{cut}}/\mathrm{Ry}}\ a_0^{-1} となることを示し、擬ポテンシャルで価電子だけを扱うときの典型的な Ecut=12 RyE_{\mathrm{cut}}=12\,\mathrm{Ry} での平面波の数を式 (2.10.8) で求めよ。
  2. (2) 擬ポテンシャルを使わず、Si の 1s1s 軌道(e−Zr/a0\mathrm{e}^{-Zr/a_0}、Z=14Z=14)まで平面波で書くとする。e−Zr/a0\mathrm{e}^{-Zr/a_0} の Fourier 変換は ∝1/(k2+Z2/a02)2\propto1/(k^2+Z^2/a_0^2)^2 である。運動量の分布のうち k>kck>k_{\mathrm c} にある割合を 10−410^{-4} 以下にする kck_{\mathrm c} を求め、必要な EcutE_{\mathrm{cut}} と平面波の数を見積もれ。
解答

(1) Ecut=ℏ2kc2/(2m)=Ry×(kca0)2E_{\mathrm{cut}}=\hbar^2k_{\mathrm c}^2/(2m)=\mathrm{Ry}\times(k_{\mathrm c}a_0)^2 なので kca0=Ecut/Ryk_{\mathrm c}a_0=\sqrt{E_{\mathrm{cut}}/\mathrm{Ry}}。a=10.26 a0a=10.26\,a_0 で Ω=a3/4=270 a03\Omega=a^3/4=270\,a_0^3。Ecut=12 RyE_{\mathrm{cut}}=12\,\mathrm{Ry} では kc=3.46 a0−1k_{\mathrm c}=3.46\,a_0^{-1} で、NPW=270×3.463/(6π2)≈190N_{\mathrm{PW}}=270\times3.46^3/(6\pi^2)\approx190。逆格子点を直接数えると 181181 個で、球の体積で数えた見積もりと 5% で一致する。1つの k\bm{k} で 190×190190\times190 程度の行列を対角化すればよく、これは手元の計算機で一瞬で終わる。

(2) 運動量の分布は ∣ϕ~∣2k2 dk∝t2/(1+t2)4 dt\lvert \tilde\phi\rvert ^2k^2\,\mathrm{d} k\propto t^2/(1+t^2)^4\,\mathrm{d} t(t=ka0/Zt=ka_0/Z)で、全体の積分は π/32\pi/32。t>xt>x の割合は xx が大きいと 32π⋅15x5\frac{32}{\pi}\cdot\frac{1}{5x^5} となり、数値で 10−410^{-4} を切るのは x≈7.2x\approx7.2。したがって kc≈7.2×14=101 a0−1k_{\mathrm c}\approx7.2\times14=101\,a_0^{-1}、Ecut≈1.0×104 RyE_{\mathrm{cut}}\approx1.0\times10^4\,\mathrm{Ry} で、平面波の数は 270×1013/(6π2)≈4.7×106270\times101^3/(6\pi^2)\approx4.7\times10^6 になる。価電子だけのときの 190190 の約 2.5×1042.5\times10^4 倍で、行列の対角化の手間はその3乗に比例して増える。内殻の電子は Si のバンドにほとんど関わらないのに、その軌道の細かさが平面波の数を決めてしまう。擬ポテンシャルは、この不釣り合いを取り除くための道具である。

k\bm{k} 点の数

密度 (2.10.4) や全エネルギーは Brillouin 域の積分 Ω(2π)3∫BZd3k\frac{\Omega}{(2\pi)^3}\int_{\mathrm{BZ}}\mathrm{d}^3k を含む。実際の計算では、これを等間隔に並べた k\bm{k} 点の上の和で置き換える(H. J. Monkhorst and J. D. Pack (1976), Phys. Rev. B 13, 5188)。和の誤差は、被積分関数が k\bm{k} についてどれだけ滑らかかで決まる。絶縁体では満ちたバンドだけを足すので、被積分関数は k\bm{k} について周期的で解析的になり、等間隔の和の誤差は点の数について指数関数的に減る。金属では Fermi 面で占有数が 11 から 00 に跳ぶので、被積分関数に不連続があり、誤差は点の数の冪でしか減らない。実際の計算では、占有数の跳びを幅のある関数でぼかして収束を速めることが多い。

例題 2.10.4 カットオフと k\bm{k} 点の収束を数値で確かめる ★★

オリジナル例題 2.10.2 の1次元模型(V0=1V_0=1、g=2g=2)を使う。単位胞あたりの全エネルギーを、平面波 ∣m∣≤M\lvert m\rvert \le M と k\bm{k} 点 NkN_k 個で計算する。

  1. (1) Nk=64N_k=64 に固定して M=1,2,3M=1,2,3 とすると、M=12M=12 の値からの誤差は 7.6×10−47.6\times10^{-4}、5.6×10−95.6\times10^{-9}、1.1×10−111.1\times10^{-11} になった。この速い収束の理由を述べよ。
  2. (2) M=10M=10 に固定して NkN_k を変えたときの誤差と、比べるために電子を単位胞あたり1個にした金属(裸の vextv_{\mathrm{ext}} の中、∣k∣<π/2\lvert k\rvert <\pi/2 を満たす)のバンドの和の誤差を図 2.10.3 に示す。2つの減り方の違いを説明せよ。
解答

(1) 有効ポテンシャルは cos⁡(2πx)\cos(2\pi x) の成分が主で、高い Fourier 成分は密度を通して小さく入るだけである。滑らかなポテンシャルの中の波動関数の Fourier 係数は ∣m∣\lvert m\rvert について急に減るので、少ない平面波で足りる。カットオフを1段上げるごとに誤差が4桁以上減っており、全エネルギーの誤差は上から単調に減る(Rayleigh–Ritz の上界性)。本物の原子の −Z/r-Z/r のような尖ったポテンシャルでは、このような速さは得られない。擬ポテンシャルが滑らかに作られているのは、平面波の収束をこの模型の速さに近づけるためである。

(2) 絶縁体の誤差は片対数で直線に乗り、e−0.31Nk\mathrm{e}^{-0.31N_k} の形で指数関数的に減る。満ちたバンドだけを足すので被積分関数が kk について周期的で解析的であり、周期的な解析関数の等間隔の和の誤差は指数関数的に小さくなるからである。減り方の速さはギャップの大きさで決まり、ギャップの小さい絶縁体ほど遅い。金属の誤差は両対数で傾き −2-2 の直線、すなわち Nk−2N_k^{-2} に比例する。Fermi 点 k=±π/2k=\pm\pi/2 で占有数が跳ぶので、等間隔の和はその跳びを 1/Nk1/N_k の幅でしか捉えられず、誤差の主要項は跳びの位置のずれの2乗になる。Nk=32N_k=32 で比べると、絶縁体は 1.0×10−51.0\times10^{-5}、金属は 1.6×10−31.6\times10^{-3} と2桁違う。同じ精度を得るのに、金属は絶縁体よりはるかに多くの k\bm{k} 点を要する。

図

図 2.10.3 例題 2.10.4 の k\bm{k} 点の収束(両対数)。絶縁体(単位胞あたり電子2個、自己無撞着)は曲がりながら急に落ち、金属(電子1個、裸のポテンシャル)は傾き −2-2 の直線に乗る。

木下の勉強ステータス

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