この章のまとめ
AI 生成・木下が未勉強
ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第2部 第10章 §2.10.7 ★★★ Kohn–Sham の書き換えは厳密で、近似は の選び方に集まる。計算の精度はカットオフと 点で系統的に上げられるが、ギャップは固有値の読み方そのものの問題として別に補正する
この章では、第2部で模型として与えてきた周期ポテンシャルを、全電子のハミルトニアンから決める手順を組み立てた。
近似の数理 第9章の Kohn–Sham の構成を結果として引き、全電子の問題を、密度に依存する有効ポテンシャル の中の1電子の問題 (2.10.3) に書き換えた。この方程式は、入力のポテンシャルから密度を作り、密度からポテンシャルを作り直す自己無撞着ループで解く。出力をそのまま入力にすると、電子の反発による応答の固有値 のために振動するか発散するので、混合の係数 で少しずつ近づける。金属の大きな単位胞では長い波長の誘電関数が大きく、反復の数が単位胞の一辺の2乗で増えるが、Kerker の前処理でこれを取り除くことができる。1次元の模型で実際にループを回し、反発のある電子が周期ポテンシャルを遮蔽して、ギャップが裸の値の約7割に縮むことを確かめた。
基底は平面波で、カットオフ 以下の平面波の数は になる。内殻の電子まで平面波で書くと Si で数百万個が要るが、擬ポテンシャルで内殻を消すと 200 個ほどで済む。Brillouin 域の積分は 点の和にし、その誤差は絶縁体では指数関数的に、金属では 程度で減る。交換相関は、一様電子気体の値を各点の密度で使う LDA から始め、勾配を入れた GGA、厳密交換を混ぜる混成汎関数へと進む。どれも C 型の閉じ方で、内部での誤差の評価は無い。
Kohn–Sham の固有値は準粒子のエネルギーでない。厳密な汎関数でも、基本ギャップ と Kohn–Sham のギャップの間には交換相関ポテンシャルの跳び があり、LDA・GGA はこれを落としたうえに のたわみも持つので、Si のギャップを実験の半分ほどに出す。補正には、遮蔽された相互作用で自己エネルギーを計算する GW 近似や、伝導帯を一様に持ち上げるはさみの補正を使う。
第2部はこれで終わる。第3部では、この章で止めた原子核の運動を戻して格子振動を扱い(第3部第1章)、全エネルギーの2階微分がばね定数になることを見る。相互作用の章(第5部第1章)では、この章で借りた一様電子気体の交換と遮蔽を正面から導く。
総合問題 Si のバンド計算を見積もる ★★★
オリジナルSi はダイヤモンド構造で、立方格子の格子定数は 、基本単位胞(体積 )に原子2個を含む。価電子は原子1個あたり4個である。
- (1) (使う道具:第1部第2章の fcc の基本単位胞・第5部第1章の )価電子の密度 と を求めよ。
- (2) (使う道具:2.10.3節)この密度の一様電子気体の 、、 を eV で求めよ。
- (3) (使う道具:2.10.2節) のときの平面波の数を求め、 点を にとったとき、1回の反復で対角化する行列の大きさと数を述べよ。Si は絶縁体なので、 点の数をこれ以上増やしたときの全エネルギーの収束はどうなると期待されるか。
- (4) (使う道具:2.10.6節・第2部第5章のギャップ ) での Thomas–Fermi の を求め、形状因子が遮蔽でどれだけ弱められるかを述べよ。
- (5) (使う道具:2.10.4節・第2部第7章の真性キャリア密度・第2部第9章の間接ギャップ)LDA のギャップ をそのまま使って の真性キャリア密度を見積もると、実験のギャップ を使った値の何倍になるか。GW のギャップ ならどうか。はさみの補正で伝導帯を持ち上げたとき、Si が間接ギャップの半導体であるという結論は変わるか。
解答
(1) 価電子は単位胞あたり 個で、。、。これは第5部第1章のナトリウム()より密で、アルミニウム()に近い。Si の価電子は共有結合の領域に偏って分布するが、平均の密度は単純な金属と同じ桁である。
(2) 。式 (2.10.11) の分母は で、。、 で、。相関は交換の約2割で、例題 2.10.5 のナトリウム(3割弱)より小さい。密度が高いほど交換に比べて相関が小さいという 依存のとおりである。 はギャップ( の桁)より1桁大きいので、その近似の細部でギャップの値が変わる。
(3) 例題 2.10.3 と同じく約 個。各 で の行列を対角化し、 点は 個ある(結晶の対称性で同じ値になる点をまとめると数十個に減る)。価電子のバンドは4本なので、各行列から下の4本の固有ベクトルだけを求めればよい。Si は絶縁体なので、被積分関数は について解析的で、 点を増やしたときの全エネルギーの誤差は指数関数的に減る(例題 2.10.4)。 で全エネルギーは実用上十分に収束していると期待される。
(4) 、、。 で、形状因子は裸のイオンの値の約半分に弱められる。第2部第5章のギャップ に入るのは、この遮蔽された値である。実際には Si は絶縁体なので、長い波長の極限での遮蔽は Thomas–Fermi(金属の式)ほど強くなく、 で は無限大でなく比誘電率(約 12)に近づく。 のような短い波長では価電子はほぼ金属の電子気体のように応答するので、この見積もりで桁は合う。
(5) 第2部第7章で (、ギャップ以外の因子は同じとする)。比は 倍になる。GW のギャップでは 倍。ギャップの誤差が でも、キャリアの数は1桁ずれる。ギャップは指数の肩に入るので、デバイスの特性を見積もるときに LDA の値をそのまま使うことはできない。はさみの補正は伝導帯全体を一定の幅だけ持ち上げるので、伝導帯の下端の位置(Γ から X へ向かう線の上、第2部第9章)と価電子帯の上端の位置(Γ)は変わらない。したがって Si が間接ギャップであるという結論はそのまま残り、ギャップの値だけが に合わせられる。バンドの形と極値の位置は LDA で信頼でき、ギャップの値だけが別の補正を要する、という 2.10.4節の観察の典型例である。
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