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出てくるもの2:光で見る(Brillouin 散乱と Raman 散乱)

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第3章 中性子・ラマンでフォノンを見る
目次
  1. 光の散乱を分極率で書く
  2. 運動量の保存と2種類の光散乱
  3. 選択則:反転対称と相互排他
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部 第3章 §3.3.3 ★★★ 光は波数が小さいので Brillouin 域の中心 k≈0\bm{k}\approx\bm{0} だけを見る。音響の枝の傾き(音速)を Brillouin 散乱、光学の枝の Γ\Gamma 点を Raman 散乱で測る

光の散乱を分極率で書く

光の電場 E\bm{E} は電子を揺らし、結晶に双極子モーメント p=αE\bm{p}=\alpha\bm{E} を誘起する(α\alpha は分極率で、一般には2階のテンソル)。原子がずれると電子の雲の形が変わるので、分極率は基準振動の座標 QQ の関数で、α(Q)=α0+(∂α/∂Q)0 Q+⋯\alpha(Q)=\alpha_0+(\partial\alpha/\partial Q)_0\,Q+\cdots と展開することができる。電場を E0cos⁡ωitE_0\cos\omega_{\mathrm i}t、振動を Q0cos⁡ΩtQ_0\cos\Omega t とすると

p(t)=α0E0cos⁡ωit+12(∂α∂Q) ⁣0Q0E0[cos⁡(ωi−Ω)t+cos⁡(ωi+Ω)t](3.3.10)p(t)=\alpha_0E_0\cos\omega_{\mathrm i}t+\frac12\Bigl(\frac{\partial\alpha}{\partial Q}\Bigr)_{\!0}Q_0E_0\bigl[\cos(\omega_{\mathrm i}-\Omega)t+\cos(\omega_{\mathrm i}+\Omega)t\bigr]\tag{3.3.10}

となる。第1項は周波数の変わらない Rayleigh 散乱、第2項は振動の周波数だけずれた散乱で、低い側 ωi−Ω\omega_{\mathrm i}-\Omega を Stokes 線、高い側を anti-Stokes 線と呼ぶ。C. V. Raman と K. S. Krishnan は液体の散乱光にこのずれた線を見いだした(C. V. Raman and K. S. Krishnan (1928), Nature 121, 501)。

量子力学では QQ を Q^=ℏ/(2Ω)(a^+a^†)\hat Q=\sqrt{\hbar/(2\Omega)}(\hat a+\hat a^\dagger)(質量を含めた基準座標)に置き換える。Stokes 線はフォノンを1個作る過程で行列要素の2乗が nB+1n_{\mathrm B}+1 に、anti-Stokes 線は1個吸収する過程で nBn_{\mathrm B} に比例する。中性子の式 (3.3.9) と同じ温度の因子が現れ、光でも k\bm{k} 一定・反転対称の結晶なら、Stokes と anti-Stokes の強度比から詳細つり合いによって温度が分かる。

運動量の保存と2種類の光散乱

結晶の中で光の波数は nω/cn\omega/c(nn は屈折率)である。入射光 ki\bm{k}_{\mathrm i} が散乱光 ks\bm{k}_{\mathrm s} になり、フォノン kph\bm{k}_{\mathrm{ph}} を作るとき、ki=ks+kph\bm{k}_{\mathrm i}=\bm{k}_{\mathrm s}+\bm{k}_{\mathrm{ph}} である(光の波数は G\bm{G} よりはるかに小さいので、G=0\bm{G}=\bm{0} の場合しか起きない)。フォノンのエネルギーは光のエネルギーの数 % 以下なので ∣ks∣≈∣ki∣\lvert \bm{k}_{\mathrm s}\rvert \approx\lvert \bm{k}_{\mathrm i}\rvert とおけ、散乱角を θ\theta とすると

∣kph∣=2 nωic sin⁡θ2(3.3.11)\lvert \bm{k}_{\mathrm{ph}}\rvert =2\,\frac{n\omega_{\mathrm i}}{c}\,\sin\frac\theta2\tag{3.3.11}

である。例題 3.3.1 で見たように、これは Brillouin 域の大きさの 10−310^{-3} の程度しかない。光が見るのは kph≈0\bm{k}_{\mathrm{ph}}\approx\bm{0} のフォノンだけである。

k≈0\bm{k}\approx\bm{0} には2種類のフォノンがある。音響の枝は ω=v∣k∣\omega=v\lvert \bm{k}\rvert(vv は音速)で 0 に近づくので、ずれは

ΩB=v∣kph∣=2nv ωic sin⁡θ2(3.3.12)\Omega_{\mathrm B}=v\lvert \bm{k}_{\mathrm{ph}}\rvert =\frac{2nv\,\omega_{\mathrm i}}{c}\,\sin\frac\theta2\tag{3.3.12}

と GHz の程度で、散乱角とともに変わる。これを Brillouin 散乱と呼ぶ(L. Brillouin (1922), Ann. Phys. (Paris) 17, 88)。θ\theta を変えて ΩB\Omega_{\mathrm B} を測ると、音響の枝の原点の傾き=音速が分かる。光学の枝は k→0\bm{k}\to\bm{0} でも有限の ωTO\omega_{\mathrm{TO}} や ωLO\omega_{\mathrm{LO}} に近づくので、ずれは THz の程度で散乱角によらない。これが結晶の Raman 散乱で、これで光学の枝の Γ\Gamma 点(Brillouin 域の中心)の値が分かる。分光の慣習では、ずれを波長の逆数の差 νˉ≔1/λi−1/λs\bar\nu\coloneqq1/\lambda_{\mathrm i}-1/\lambda_{\mathrm s}(単位 cm−1\mathrm{cm^{-1}})で書き、Raman シフトと呼ぶ。ℏΩ=hcνˉ\hbar\Omega=hc\bar\nu で、1 meV1\,\mathrm{meV} は 8.07 cm−18.07\,\mathrm{cm^{-1}} に当たる。

選択則:反転対称と相互排他

分極率が振動で変わらなければ(∂α/∂Q=0\partial\alpha/\partial Q=0)、式 (3.3.10) の第2項は無く、その振動は Raman 散乱に現れない。一方、赤外線を直接吸収するには、振動で双極子モーメントが変わる必要がある(∂p/∂Q≠0\partial\bm{p}/\partial Q\ne\bm{0})。この2つの条件は、反転対称で整理することができる。

結晶(または分子)が反転中心を持つとき、k=0\bm{k}=\bm{0} の基準振動は反転で Q→+QQ\to+Q になるもの(偶)と Q→−QQ\to-Q になるもの(奇)に分かれる。双極子モーメントはベクトルで反転で符号を変え、分極率は2階のテンソルで反転で符号を変えない。奇の振動では、反転した配置は −Q-Q の配置と同じなのでα(−Q)=α(Q)\alpha(-Q)=\alpha(Q)、したがって ∂α/∂Q=0\partial\alpha/\partial Q=0 で Raman 散乱に現れない。偶の振動では、反転した配置が元の配置そのものなので p(Q)=−p(Q)\bm{p}(Q)=-\bm{p}(Q)、すなわち振動に沿って双極子は 0 のままで ∂p/∂Q=0\partial\bm{p}/\partial Q=\bm{0} となり、赤外吸収に現れない。反転中心のある系では、同じ振動が赤外と Raman の両方に現れることはない。これを相互排他律と呼ぶ。

ダイヤモンド構造の Si では、2つの原子の中点が反転中心で、Γ\Gamma 点の光学振動(2つの原子が逆向きに動く)は反転で原子が入れ替わって偶になる。したがって Si の Γ\Gamma 点の光学フォノンは Raman 散乱に現れ、1個のフォノンによる赤外吸収は無い。室温の Si の Raman 線は 520.2±0.5 cm−1520.2\pm0.5\,\mathrm{cm^{-1}} に観測されている(J. H. Parker, Jr., D. W. Feldman, and M. Ashkin (1967), Phys. Rev. 155, 712)。塩化ナトリウム型の結晶では各原子の位置が反転中心で、Γ\Gamma 点の光学振動は奇になる。こちらは赤外で強く吸収し、1個のフォノンの Raman 線は現れない。

例題 3.3.3 CO2_2 の振動の赤外・Raman 活性 ★★

オリジナル直線分子 O–C–O の4つの振動(対称伸縮、逆対称伸縮、2方向の曲げ)を考える(基準振動の求め方は 解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第1章)。C の位置が反転中心である。

  1. (1) 対称伸縮(2つの O が C から逆向きに同じだけ離れる)と逆対称伸縮(2つの O が同じ向きに動き、C が逆向きに動く)は、反転で偶か奇か。
  2. (2) 各振動が赤外・Raman のどちらに現れるかを述べよ。
  3. (3) O の電荷を −δ-\delta、C の電荷を +2δ+2\delta の点電荷とみなすと、逆対称伸縮で双極子が変わり、対称伸縮で変わらないことを式で確かめよ。
解答

(1) O の変位を u1u_1、u3u_3、C の変位を u2u_2(軸方向)とする。反転は位置 x→−xx\to-x と変位 u→−uu\to-u を同時に行い、2つの O を入れ替える:(u1,u2,u3)→(−u3,−u2,−u1)(u_1,u_2,u_3)\to(-u_3,-u_2,-u_1)。対称伸縮 (−d,0,d)(-d,0,d) はこれで (−d,0,d)(-d,0,d) に戻るので偶。逆対称伸縮 (d,−d′,d)(d,-d',d) は (−d,d′,−d)(-d,d',-d) になるので奇。曲げ(O が同じ向き、C が逆向きに軸と垂直に動く)も同じ形で奇である。

(2) 相互排他律から、偶の対称伸縮は Raman 散乱だけに、奇の逆対称伸縮と曲げは赤外吸収だけに現れる。

(3) 軸方向の双極子は p=∑jqjxjp=\sum_jq_jx_j の変化 Δp=−δu1+2δu2−δu3\Delta p=-\delta u_1+2\delta u_2-\delta u_3。対称伸縮 (−d,0,d)(-d,0,d) では Δp=δd−δd=0\Delta p=\delta d-\delta d=0。逆対称伸縮 (d,−d′,d)(d,-d',d) では Δp=−2δd−2δd′≠0\Delta p=-2\delta d-2\delta d'\ne0 で、双極子が振動とともに振れるので赤外を吸収する。

例題 3.3.4 Brillouin シフトと Raman 線で温度を読む ★★

オリジナル

  1. (1) 屈折率 n=1.5n=1.5、縦波の音速 v=6000 m s−1v=6000\,\mathrm{m\,s^{-1}} の透明な結晶に、真空中の波長 532 nm532\,\mathrm{nm} の光を当て、真後ろ(θ=π\theta=\pi)に散乱された光を測る。Brillouin シフト ΩB/2π\Omega_{\mathrm B}/2\pi と、関わるフォノンの波数を求めよ。
  2. (2) Si の Raman 線 520.2 cm−1520.2\,\mathrm{cm^{-1}} のフォノンのエネルギー(meV)と周波数を求め、波長 532 nm532\,\mathrm{nm} の光で測ったときの Stokes 線と anti-Stokes 線の波長を求めよ。
  3. (3) 300 K300\,\mathrm K で anti-Stokes 線と Stokes 線の光子の数の比を求めよ。双極子放射の出す光子の数が周波数の3乗に比例すること(放射の強さが4乗、光子1個が1乗)を含めよ。
解答

(1) 式 (3.3.11) で sin⁡(θ/2)=1\sin(\theta/2)=1、∣kph∣=2n⋅2π/λ=3.54×107 m−1\lvert \bm{k}_{\mathrm{ph}}\rvert =2n\cdot2\pi/\lambda=3.54\times10^{7}\,\mathrm{m^{-1}}。ΩB/2π=v∣kph∣/2π=2nv/λ=33.8 GHz\Omega_{\mathrm B}/2\pi=v\lvert \bm{k}_{\mathrm{ph}}\rvert /2\pi=2nv/\lambda=33.8\,\mathrm{GHz}。フォノンのエネルギーは 0.14 meV0.14\,\mathrm{meV} で、光の 2.3 eV2.3\,\mathrm{eV} の 6×10−56\times10^{-5} にすぎない。

(2) ℏΩ=hcνˉ=64.5 meV\hbar\Omega=hc\bar\nu=64.5\,\mathrm{meV}、Ω/2π=cνˉ=15.6 THz\Omega/2\pi=c\bar\nu=15.6\,\mathrm{THz}。1/λs=1/λi∓νˉ1/\lambda_{\mathrm s}=1/\lambda_{\mathrm i}\mp\bar\nu から、Stokes 線は 547.1 nm547.1\,\mathrm{nm}、anti-Stokes 線は 517.7 nm517.7\,\mathrm{nm}。

(3) βℏΩ=2.495\beta\hbar\Omega=2.495 で e−βℏΩ=0.0825\mathrm{e}^{-\beta\hbar\Omega}=0.0825。周波数の比 (ωAS/ωS)3=(547.1/517.7)3=1.181(\omega_{\mathrm{AS}}/\omega_{\mathrm S})^3=(547.1/517.7)^3=1.181 を掛けて、光子の数の比は 0.09740.0974。測った比から (ωAS/ωS)3(\omega_{\mathrm{AS}}/\omega_{\mathrm S})^3 を割り戻せば e−βℏΩ\mathrm{e}^{-\beta\hbar\Omega} が分かり、試料の温度を接触せずに読むことができる。

木下の勉強ステータス

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