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出てくるもの1:中性子がフォノンを1個作る・吸収する

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第3部 第3章 中性子・ラマンでフォノンを見る
目次
  1. 時間相関を調和近似で計算する
  2. 強度の4つの因子
  3. 三軸分光器と散乱の三角形
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第3部 第3章 §3.3.2 ★★★ 1フォノン散乱は κ=±k+G\bm{\kappa}=\pm\bm{k}+\bm{G}、ℏω=±ℏωs(k)\hbar\omega=\pm\hbar\omega_s(\bm{k}) の点にだけ現れ、強さは (nB+1)(n_{\mathrm B}+1) または nBn_{\mathrm B}、(κ⋅es)2/ωs(\bm{\kappa}\cdot\bm{e}_s)^2/\omega_s、Debye–Waller 因子の積になる

時間相関を調和近似で計算する

式 (3.3.5) の相関関数で r^j=Rj+u^j\hat{\bm{r}}_j=\bm{R}_j+\hat{\bm{u}}_j とすると、格子点の位相 e−iκ⋅(Rj−Rj′)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{\kappa}\cdot(\bm{R}_j-\bm{R}_{j'})} がくくり出せ、残るのは⟨e−iκ⋅u^j(t)eiκ⋅u^j′(0)⟩\langle \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_j(t)}\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_{j'}(0)} \rangle である。調和近似では κ⋅u^\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}} が生成消滅演算子の1次式で、熱平衡の状態はそれについて Gauss 型なので、第1部第3章の Debye–Waller 因子と同じ理由で

⟨e−iκ⋅u^j(t) eiκ⋅u^j′(0)⟩=e−2Wexp⁡⟨(κ⋅u^j(t))(κ⋅u^j′(0))⟩,2W≔⟨(κ⋅u^)2⟩(3.3.8)\langle \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_j(t)}\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_{j'}(0)} \rangle =\mathrm{e}^{-2W}\exp\langle \bigl(\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_j(t)\bigr)\bigl(\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_{j'}(0)\bigr) \rangle ,\qquad 2W\coloneqq\langle (\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}})^2 \rangle\tag{3.3.8}

が成り立つ(Bloch の等式。調和振動子の熱平衡では厳密)。右側の指数関数を展開すると、0次の項 11 は Debye–Waller 因子つきの Bragg ピーク(第1部第3章)に当たり、1次の項はフォノン1個の出入り、ℓ\ell 次の項はフォノン ℓ\ell 個の出入りに当たる。

1次の項を計算する。式 (3.3.1) の展開を入れ、⟨a^a^†⟩=nB+1\langle \hat a\hat a^\dagger \rangle =n_{\mathrm B}+1、⟨a^†a^⟩=nB\langle \hat a^\dagger\hat a \rangle =n_{\mathrm B}(nB(ω)=1/(eβℏω−1)n_{\mathrm B}(\omega)=1/(\mathrm{e}^{\beta\hbar\omega}-1)、a^(t)=a^ e−iωst\hat a(t)=\hat a\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega_st})を使うと

⟨(κ⋅u^j(t))(κ⋅u^j′(0))⟩=1N∑k,sℏ(κ⋅es)22Mωs[(nB+1) eik⋅(Rj−Rj′)−iωst+nB e−ik⋅(Rj−Rj′)+iωst]\langle \bigl(\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_j(t)\bigr)\bigl(\bm{\kappa}\cdot\hat{\bm{u}}_{j'}(0)\bigr) \rangle =\frac1N\sum_{\bm{k},s}\frac{\hbar(\bm{\kappa}\cdot\bm{e}_s)^2}{2M\omega_s} \Bigl[(n_{\mathrm B}+1)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bm{k}\cdot(\bm{R}_j-\bm{R}_{j'})-\mathrm{i}\omega_st}+n_{\mathrm B}\,\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bm{k}\cdot(\bm{R}_j-\bm{R}_{j'})+\mathrm{i}\omega_st}\Bigr]

である。格子点の和 ∑j,j′e−i(κ∓k)⋅(Rj−Rj′)\sum_{j,j'}\mathrm{e}^{-\mathrm{i}(\bm{\kappa}\mp\bm{k})\cdot(\bm{R}_j-\bm{R}_{j'})} は、κ∓k\bm{\kappa}\mp\bm{k} が逆格子ベクトルのときだけ N2N^2 で、それ以外は 0 になる。時間の積分が δ\delta 関数を作り、結果は次のようにまとまる。

命題 3.3.1(1フォノン散乱の動的構造因子 ★★★)

単位胞に原子が1個の調和結晶で、SS のうちフォノン1個の出入りの部分は

S(1)(κ,ω)=e−2W∑sℏ(κ⋅es)22Mωs(k)[(nB(ωs)+1) δ(ℏω−ℏωs(k))+nB(ωs) δ(ℏω+ℏωs(k))](3.3.9)S^{(1)}(\bm{\kappa},\omega)=\mathrm{e}^{-2W}\sum_s\frac{\hbar(\bm{\kappa}\cdot\bm{e}_s)^2}{2M\omega_s(\bm{k})} \Bigl[\bigl(n_{\mathrm B}(\omega_s)+1\bigr)\,\delta\bigl(\hbar\omega-\hbar\omega_s(\bm{k})\bigr)+n_{\mathrm B}(\omega_s)\,\delta\bigl(\hbar\omega+\hbar\omega_s(\bm{k})\bigr)\Bigr]\tag{3.3.9}

である。ここで k\bm{k} は κ\bm{\kappa} から逆格子ベクトルを引いて第1 Brillouin 域に戻した波数で、κ=k+G\bm{\kappa}=\bm{k}+\bm{G} によって一意に決まる。

κ=k+G\bm{\kappa}=\bm{k}+\bm{G} は、中性子が失った運動量が「フォノンの結晶運動量 ℏk\hbar\bm{k}」と「結晶全体の運動量 ℏG\hbar\bm{G}」に分かれることを表す。結晶運動量が逆格子ベクトルの分だけずれて保存するのは、格子の並進対称性が離散的であることの帰結で(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第10章)、連続な並進対称性なら G=0\bm{G}=\bm{0} に限られる。

強度の4つの因子

式 (3.3.9) の強度には4つの因子が掛かっている。どれも実験の計画に直結する。

第一は温度の因子 nB+1n_{\mathrm B}+1 と nBn_{\mathrm B} である。フォノンを作る散乱(ω>0\omega>0)は絶対零度でも起きるが、吸収する散乱(ω<0\omega<0)は熱で励起されたフォノンがあるときにしか起きない。比 nB/(nB+1)=e−βℏωsn_{\mathrm B}/(n_{\mathrm B}+1)=\mathrm{e}^{-\beta\hbar\omega_s} は、詳細つり合い (3.3.6) そのものである。

第二は偏りの因子 (κ⋅es)2(\bm{\kappa}\cdot\bm{e}_s)^2 である。中性子が原子を押す向きは κ\bm{\kappa} の向きなので、原子が κ\bm{\kappa} に垂直に揺れる枝は見えない。κ\bm{\kappa} を k\bm{k} に平行に取れば縦波だけが、k\bm{k} に垂直な成分を持たせれば横波が見える。G\bm{G} を選び直すと、同じ k\bm{k} のフォノンを違う κ\bm{\kappa} の向きで測れるので、枝を見分けるには測る Brillouin 域を変えればよい。

第三は 1/ωs1/\omega_s の因子で、振幅の2乗平均 ℏ/(2Mωs)\hbar/(2M\omega_s) から出る。低いエネルギーのフォノンほど揺れが大きく、強く見える。

第四は Debye–Waller 因子 e−2W\mathrm{e}^{-2W} と κ2\kappa^2 の競合である。(κ⋅es)2(\bm{\kappa}\cdot\bm{e}_s)^2 は κ2\kappa^2 に比例して大きくなるが、e−2W\mathrm{e}^{-2W} は κ2\kappa^2 の指数で小さくなるので、1フォノンの強度は 2W≈12W\approx1 あたりで最大になる。大きすぎる κ\kappa では強度が多フォノンの散乱へ移る(3.3.5 節)。

図

図 3.3.1 κ\bm{\kappa} を固定したときの1フォノン散乱のスペクトルの形(βℏωs=1\beta\hbar\omega_s=1)。δ\delta 関数を幅 0.08 ℏωs0.08\,\hbar\omega_s の Lorentz 関数に広げて描いた(広げる理由は 3.3.5 節の有限の寿命)。左右のピークの面積比は nB/(nB+1)=e−1=0.368n_{\mathrm B}/(n_{\mathrm B}+1)=\mathrm{e}^{-1}=0.368 で、温度だけで決まる。

三軸分光器と散乱の三角形

実験では、入射の k\bm{k} を単結晶のモノクロメータの Bragg 反射で選び、試料で散乱された中性子の k′\bm{k}' をもう1つの単結晶(アナライザ)の Bragg 反射で選ぶ。モノクロメータ・試料・アナライザの3つの回転軸を持つので、三軸分光器と呼ぶ。κ\bm{\kappa} を逆格子の1点に固定したまま ℏω\hbar\omega を動かす測り方(κ\bm{\kappa} 一定の走査)で、ピークの出る ℏω\hbar\omega を読めば、その k\bm{k} での ℏωs(k)\hbar\omega_s(\bm{k}) が1点決まる。B. N. Brockhouse と A. T. Stewart はこの方法でアルミニウムの単結晶のフォノンの分散関係を初めて測った(B. N. Brockhouse and A. T. Stewart (1955), Phys. Rev. 100, 756)。

図

図 3.3.2 散乱の三角形(逆格子の2次元の断面)。κ=k−k′\bm{\kappa}=\bm{k}-\bm{k}' を、最も近い逆格子点 G\bm{G} と第1 Brillouin 域の中の波数 kph\bm{k}_{\mathrm{ph}}(本文の k\bm{k})に分ける。フォノンを作る散乱では ∣k′∣<∣k∣\lvert \bm{k}'\rvert <\lvert \bm{k}\rvert で、その差のエネルギー ℏ2(k2−k′2)/2mn\hbar^2(k^2-k'^2)/2m_{\mathrm n} が ℏωs(kph)\hbar\omega_s(\bm{k}_{\mathrm{ph}}) に等しい。

例題 3.3.2 三軸分光器の設定を決める ★★

オリジナル散乱後の中性子のエネルギーを E′=14.7 meVE'=14.7\,\mathrm{meV} に固定する三軸分光器で、∣κ∣=3.0 A˚−1\lvert \bm{\kappa}\rvert =3.0\,\text{\AA}^{-1} の点の ℏω=8.0 meV\hbar\omega=8.0\,\mathrm{meV} のフォノンを測る。試料は反転対称を持ち、温度は 300 K300\,\mathrm K とする。

  1. (1) フォノンを作る散乱(ℏω=+8.0 meV\hbar\omega=+8.0\,\mathrm{meV})で、入射と散乱の波数 kk、k′k' と散乱角 2θs2\theta_{\mathrm s}(k\bm{k} と k′\bm{k}' のなす角)を求めよ。
  2. (2) 同じ ∣κ∣\lvert \bm{\kappa}\rvert でフォノンを吸収する散乱(ℏω=−8.0 meV\hbar\omega=-8.0\,\mathrm{meV})も測る。入射のエネルギーと cos⁡2θs\cos2\theta_{\mathrm s} を求めよ。
  3. (3) (1) と (2) で数えられる中性子の数の比(吸収/生成)を、断面積 (3.3.4) の k′/kk'/k も含めて求めよ。
解答

(1) E=E′+ℏω=22.7 meVE=E'+\hbar\omega=22.7\,\mathrm{meV}。k=2mnE/ℏ=3.310 A˚−1k=\sqrt{2m_{\mathrm n}E}/\hbar=3.310\,\text{\AA}^{-1}、k′=2.663 A˚−1k'=2.663\,\text{\AA}^{-1}。κ2=k2+k′2−2kk′cos⁡2θs\kappa^2=k^2+k'^2-2kk'\cos2\theta_{\mathrm s} から cos⁡2θs=(k2+k′2−κ2)/(2kk′)\cos2\theta_{\mathrm s}=(k^2+k'^2-\kappa^2)/(2kk')、2θs=59.1∘2\theta_{\mathrm s}=59.1^\circ。

(2) E=E′−8.0 meV=6.7 meVE=E'-8.0\,\mathrm{meV}=6.7\,\mathrm{meV}、k=1.798 A˚−1k=1.798\,\text{\AA}^{-1}。∣k−k′∣=0.865≤κ=3.0≤k+k′=4.46\lvert k-k'\rvert =0.865\le\kappa=3.0\le k+k'=4.46 なので三角形は閉じ、cos⁡2θs=0.139\cos2\theta_{\mathrm s}=0.139(2θs=82.0∘2\theta_{\mathrm s}=82.0^\circ)。

(3) βℏω=0.3095\beta\hbar\omega=0.3095 で nB=2.757n_{\mathrm B}=2.757、nB/(nB+1)=0.734n_{\mathrm B}/(n_{\mathrm B}+1)=0.734。k′/kk'/k は生成で 0.8050.805、吸収で 1.4811.481。比は (1.481/0.805)×0.734=1.35(1.481/0.805)\times0.734=1.35 である。E′E' を固定して測ると、フォノンを吸収する側のほうが数えられる中性子が多くなる。SS の比 0.7340.734 は温度だけで決まるが、測る数には探り針の因子 k′/kk'/k が掛かるので、温度を読むときはこの因子で割り戻す必要がある。

ほかの巻では

木下の勉強ステータス

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