統計学の復習 第2章 §2.4 ★★ 成長率には幾何平均、速さと単価には調和平均。平均の取り方は「何を一定にして合計するか」で決まる
算術平均は「値を足し合わせた合計」を保つ平均である。データの値を全部 xˉ に置き換えても、合計 nxˉ は変わらない。ところが、合計でなく積を保ちたい量や、逆数の合計を保ちたい量もある。そのときは別の平均を使う。
定義 2.6(幾何平均・調和平均・加重平均)
正のデータ x1,…,xn について
G=(i=1∏nxi)1/n(幾何平均),H=∑i=1n1/xin(調和平均)
と定める。正の重み wi による ∑iwixi/∑iwi を加重平均と呼ぶ。度数分布表の平均 (2.2) は、度数を重みとする加重平均である。
幾何平均は「全部を G に置き換えても積が変わらない値」、調和平均は「全部を H に置き換えても逆数の和が変わらない値」である。logG=n1∑ilogxi なので、幾何平均は対数をとってから算術平均し、もとに戻したものでもある。
成長率と幾何平均
ある量が t 年目に rt の率で増える(減るときは rt<0)とすると、T 年後の量はもとの ∏t=1T(1+rt) 倍になる。毎年同じ率 rˉ で増えて同じ結果になるには (1+rˉ)T=∏t(1+rt) が必要なので
1+rˉ=(t=1∏T(1+rt))1/T,rˉ=G−1(2.5)
となる。年平均成長率は、成長率そのものでなく倍率 1+rt の幾何平均から1を引いたものである。成長率の算術平均は、倍率を掛け合わせるという計算の構造に合っていない。
速さ・単価と調和平均
同じ距離 d を速さ v1,…,vn で1回ずつ進むと、全体の距離は nd、かかる時間は ∑id/vi なので、全体の平均の速さは
∑id/vind=∑i1/vin=H
である。ここで一定なのは各区間の距離で、時間は区間ごとに違う。もし各区間の時間が同じなら、平均の速さは算術平均になる。どちらの平均を使うかは、「何を一定にして合計するか」で決まる。
定理 2.7(算術平均 ≥ 幾何平均 ≥ 調和平均 ★★)
正のデータについて xˉ≥G≥H。等号は x1=⋯=xn のときに限る。
証明
まず logx≤loga+ax−a(x,a>0)を示す。右辺は logx の x=a での接線である。φ(x)=loga+ax−a−logx とおくと φ′(x)=a1−x1 は x<a で負、x>a で正なので、φ は x=a で最小値 φ(a)=0 をとり、φ≥0 である。等号は x=a のときに限る。
a=xˉ としてこの不等式を x=x1,…,xn に使い、平均をとると
n1i∑logxi≤logxˉ+xˉ1⋅n1i∑(xi−xˉ)=logxˉ
(右辺の第2項は命題 2.2 により0)。左辺は logG なので G≤xˉ。等号はすべての xi が xˉ に等しいときに限る。
次に、正のデータ 1/x1,…,1/xn に今の結果を使うと、算術平均 n1∑i1/xi=1/H と幾何平均 (∏i1/xi)1/n=1/G について 1/G≤1/H、すなわち H≤G を得る。
データが2個 a,b のときは xˉ=2a+b、G=ab、H=a+b2ab で、xˉ⋅H=ab=G2 が成り立つ。幾何平均は算術平均と調和平均の幾何平均になっている。
注意
調和平均は2級の後半にも現れる。対応のない2標本の平均の差の標準誤差に出てくる n11+n21 は、n1,n2 の調和平均 H を使うと H2 と書ける(第10章)。
例題 2.4 年平均成長率 ★★
オリジナルある会社の売上は、4年間で順に +40%、−30%、+20%、+10% 変化した。
- (1) 4年間の売上の倍率を求めよ。
- (2) 年平均成長率を求めよ。
- (3) 成長率の算術平均 (40−30+20+10)/4=10% を年平均成長率として使うと、4年後の売上を何倍と見積もることになるか。(1) と比べよ。
解答
(1) 倍率は 1.4×0.7×1.2×1.1=1.2936 倍である。
(2) (2.5) から 1+rˉ=1.29361/4。log101.2936≈0.11180 を4で割って 0.02795、100.02795≈1.0665 なので、年平均成長率は約 6.65% である。検算として 1.06654≈1.2937 で (1) とほぼ一致する。
(3) 1.14=1.4641 倍と見積もることになり、(1) の 1.2936 倍より大きい。算術平均は幾何平均以上(定理 2.7)なので、倍率の算術平均で見積もると成長を過大に評価する。特に −30% のような大きな減少は、そのあと +30% 増えても 0.7×1.3=0.91 倍にしか戻らない。
例題 2.5 往復の平均の速さ ★
オリジナルある区間を行きは時速 60 km、帰りは時速 40 km で走った。
- (1) 往復の平均の速さを求めよ。
- (2) 行きと帰りで走った時間が等しかったとすると、平均の速さはいくらになるか。
解答
(1) 片道の距離を d とすると、時間は d/60+d/40=d/24 で、距離は 2d なので、平均の速さは 2d/(d/24)=48 km/時。これは 60 と 40 の調和平均 2/(1/60+1/40)=48 である。
(2) 各 t 時間ずつ走ったなら距離は 60t+40t=100t、時間は 2t で、平均の速さは 50 km/時(算術平均)。(1) では遅い帰りに長い時間を使うので、平均の速さは遅いほうへ寄って 48 になる。
確認テスト
オリジナル
- 2.4-1 2つの値 2,8 の算術平均・幾何平均・調和平均を求め、xˉ⋅H=G2 を確かめよ。
- 2.4-2 ある商品の価格が、1年目に 25% 上がり、2年目に 20% 下がった。2年間の年平均の変化率を求めよ。
- 2.4-3 a,b>0 について 2a+b≥ab を、(a−b)2≥0 から示し、等号条件を述べよ。
- 2.4-4 毎月 12000 円ずつ同じ商品を買う。3か月の単価は順に 100 円・120 円・150 円だった。買った商品1個あたりの平均単価を求め、それが単価の調和平均に等しいことを示せ。単価の算術平均と比べよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com