統計学の復習 第10章 §10.2 ★★★ 確率 0.95 は区間を作る手続きの性質で、出来上がった1本の区間についての確率ではない。信頼係数・片側・両側で臨界値の引き方が変わる
確率 0.95 は何についての確率か
例題 10.1 で得た [48.34,52.26] について、「この区間が μ を含む確率は 0.95 である」と述べるのは誤りである。理由は、式 (10.1) の確率が確率変数 L,U についての確率だからである。標本を取る前には Xˉ は確率変数で、区間 [Xˉ−1.96, Xˉ+1.96] は標本ごとに位置を変える。この確率変数の区間が μ を含む確率が 0.95 である。標本を取ったあとでは xˉ=50.3 は数で、区間も数の区間 [48.34,52.26] に確定する。母平均 μ も未知ではあるが定数なので、「48.34≤μ≤52.26」は正しいか誤りかのどちらかに決まっていて、確率 0.95 で成り立つ事象ではない。
したがって「95% 信頼区間」の意味は次のように言い表す。同じ手続きで標本を取り直して区間を作ることを何度も繰り返すと、作った区間のうち約 95% が μ を含む。0.95 は、1本の区間の性質でなく、区間を作る手続きの性質である。母数そのものを確率変数とみて「μ がこの区間にある確率」を計算する立場は Bayes 統計の考え方で、第3章の Bayes の定理を分布に広げたものになる。この巻では扱わず、数理統計の解説 第10章で扱う。
図 10.1 は、N(50,102) から大きさ 10 の標本を20回取り、そのたびに §10.4 の t 分布による 95% 区間を作った結果である。20本のうち19本が μ=50 を含み、1本(18回目)が含まない。区間の位置は標本ごとに変わり、母分散を標本から推定しているので幅も標本ごとに変わる。

図 10.1 N(50,102) から大きさ 10 の標本を20回取って作った μ の 95% 信頼区間(t 分布による区間。乱数の種を固定したシミュレーション)。縦軸は回の番号、点は標本平均。18回目の区間だけが μ=50 を含まない。
例題 10.3 20本の区間のうち母平均を含む本数 ★★
オリジナル同じ母集団から独立に20回標本を取り、そのたびに μ の 95% 信頼区間を作る。μ を含む区間の本数を K とする。
- K の分布を答え、E[K] を求めよ。
- 20本すべてが μ を含む確率と、ちょうど19本が含む確率を求めよ。
解答
(1) 各回の区間が μ を含む事象の確率は、式 (10.1) から 0.95 である。20回の標本は独立なので、これは成功確率 0.95 のベルヌーイ試行を20回行うことにあたり、K∼Bin(20,0.95) である(第5章)。E[K]=20×0.95=19。
(2) P(K=20)=0.9520=0.3585、P(K=19)=(1920)0.9519×0.05=20×0.37735×0.05=0.3774 である。少なくとも1本が μ を含まない確率は 1−0.3585=0.6415 で、20本も作れば外れる区間が1本以上あるのが普通である。図 10.1 の結果は K=19 で、これはこの分布の最頻値(第5章の (n+1)p=19.95 を超えない最大の整数)である。
信頼係数を変える
信頼係数を 1−α にするには、臨界値を zα/2 に取り替えるだけでよい。信頼係数を上げると臨界値が大きくなり、区間は広がる。μ を含む確率を上げることと区間を狭くすることは、同じ n のもとでは両立しない。両方を求めるなら、式 (10.5) のように n を増やす。
片側の信頼限界
「母平均は少なくともいくらか」だけを知りたいときは、片側にだけ限界を持つ区間を作る。P(Z≤zα)=1−α の不等式を μ について解くと
σ/nXˉ−μ≤zα⟺μ≥Xˉ−zαnσ
なので、
P(μ≥Xˉ−zαnσ)=1−α(10.6)
である。Xˉ−zασ/n を信頼係数 1−α の下側信頼限界と呼ぶ。上側信頼限界 Xˉ+zασ/n も同じように作る。片側では捨てる確率 α を片方にまとめて置くので、臨界値は zα であり、α を2で割らない。
α を2で割るか割らないか
両側の区間は左右に α/2 ずつ残すので zα/2、片側の限界は片方に α を残すので zα を引く。95% の両側区間で z0.05=1.645 を引くと、得られるのは 90% の区間で、区間は必ず狭くなる側へずれる。t 分布でも同じで、両側 95% には tn−1(0.025) を引く。例題 10.4 のように、片側 95% の限界は両側 90% の区間の端と一致する。
例題 10.4 電池の寿命の下側信頼限界 ★★
オリジナルある電池の寿命は標準偏差 40 時間の正規分布に従う。64本を試験したところ、平均寿命は 512 時間であった。
- 母平均の信頼係数 95% の下側信頼限界を求めよ。
- 母平均の両側 90% 信頼区間と両側 95% 信頼区間を求め、(1) と比べよ。
解答
(1) 標準誤差は 40/64=5 である。片側なので臨界値は z0.05=1.645 で、式 (10.6) から下側信頼限界は
512−1.645×5=512−8.225=503.78
である。「母平均は 503.78 時間以上」が信頼係数 95% の主張になる。
(2) 両側 90% は α=0.10、α/2=0.05 なので臨界値は同じ z0.05=1.645 で、区間は [503.78, 520.23] である。下端は (1) の下側限界と一致する。両側 90% 区間は上下に 5% ずつ捨て、片側 95% の限界は下にだけ 5% を捨てるので、下端が同じになる。両側 95% は z0.025=1.960 で [502.20, 521.80] であり、下端は片側の限界より低い。下にだけ 2.5% を捨てる両側区間より、下に 5% を捨てる片側の限界の方が高い位置に来る。
確認テスト
オリジナル
- 10.2-1 例題 10.1 の区間 [48.34,52.26] について、次の (a)〜(c) のうち正しいものを選べ。(a) μ がこの区間に入る確率は 0.95 である。(b) 同じ手続きで区間を作ることを繰り返すと、作った区間の約 95% が μ を含む。(c) 今後取る標本の標本平均の 95% がこの区間に入る。
- 10.2-2 独立に50回標本を取り、そのたびに 90% 信頼区間を作る。μ を含まない区間の本数の期待値と、50本すべてが μ を含む確率を求めよ。
- 10.2-3 標準偏差 2 が既知の正規母集団から大きさ 25 の標本を取り、標本平均 20.4 を得た。母平均の信頼係数 99% の上側信頼限界を求めよ(z0.01=2.326)。
- 10.2-4 (i) 上側信頼限界 U=Xˉ+zασ/n について P(μ≤U)=1−α を示せ。(ii) 同じ標本から作った μ の 95% 区間と 99% 区間について、95% 区間が 99% 区間に含まれることを示せ。
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