統計学の復習 第11章 §11.3 ★★ 独立な2標本で V[p^1−p^2]=p1q1/n1+p2q2/n2。区間では p^1,p^2 を別々に代入し、プールしない
差の分布と区間
2つの母集団の母比率 p1,p2 の差を推定する。母集団1から n1 個、母集団2から n2 個を互いに独立に抽出し、標本比率を p^1=X1/n1、p^2=X2/n2 とする。qi=1−pi と書く。期待値の線形性から E[p^1−p^2]=p1−p2 である。分散は、第7章の V[X−Y]=V[X]+V[Y]−2Cov(X,Y) で、2つの標本が独立なので Cov(p^1,p^2)=0 となり、
V[p^1−p^2]=V[p^1]+V[p^2]=n1p1q1+n2p2q2(11.7)
である。差の分散でも符号は + になる。p^2 に −1 を掛けると分散は (−1)2=1 倍になるからで、差をとっても2つのばらつきは打ち消し合わず、足し合わされる。
n1,n2 がともに大きければ、p^1 と p^2 はそれぞれ近似的に正規分布に従い、独立な正規確率変数の差は正規分布に従う(第6章の再生性)。したがって
p1q1/n1+p2q2/n2(p^1−p^2)−(p1−p2)
は近似的に N(0,1) に従う。§11.1 と同じく分母の pi を p^i で置き換えて不等式を解くと、次の区間を得る。
命題 11.3(母比率の差の信頼区間)
p1−p2 の信頼係数 1−α の近似的な信頼区間は
(p^1−p^2)±zα/2n1p^1(1−p^1)+n2p^2(1−p^2)(11.8)
である。
検定ではプールし、区間ではプールしない理由
第13章の母比率の差の検定では、帰無仮説 H0:p1=p2 の下で標準誤差を計算するために、2つの標本を合わせた比率 p^=(x1+x2)/(n1+n2) を使う(プールした比率)。検定統計量は「H0 が正しいと仮定したら、この差はどれほど珍しいか」を測るものなので、H0 の下での分散を使うのが筋であり、p1=p2=p なら分散は p(1−p)(1/n1+1/n2) で、共通の p を推定するには全データを合わせるのが最もよい。
区間推定には仮定すべき帰無仮説が無い。推定したいのは p1 と p2 の差そのもので、p1=p2 かもしれない状況で差の大きさを見積もっている。そこで p1=p2 を前提にした p^ を使う理由はなく、それぞれの母比率をそれぞれの標本で推定して (11.7) に代入する。まとめると、検定は H0 の世界での計算なのでプールし、区間は H0 を置かない計算なのでプールしない。
この違いのため、「95% 区間が 0 を含まない」ことと「有意水準5% の両側検定で H0:p1=p2 が棄却される」ことは、母比率の差では厳密には一致しない(標準誤差の値が少し違うから)。n1,n2 が大きく、2つの比率が近ければ、ほとんどの場合に結論は一致する。
例題 11.4 2つの広告の反応率の差 ★★
オリジナル広告Aを見せた240人のうち84人、広告Bを見せた300人のうち75人が商品に興味を示した。2群は独立とする。
- 反応率の差 pA−pB の95% 信頼区間を求めよ。
- 同じデータでプールした比率を使った標準誤差を計算し、(1) の標準誤差と比べよ。
解答
(1) p^A=84/240=0.35、p^B=75/300=0.25 で、差は 0.10 である。(11.8) の標準誤差は
2400.35×0.65+3000.25×0.75=0.00094792+0.000625=0.00157292=0.039660
で、半幅は 1.960×0.039660=0.07773 だから
[0.10−0.0777, 0.10+0.0777]=[0.0223, 0.1777].
区間全体が正の側にあるので、広告Aの方が反応率が高いと読むことができる。
(2) プールした比率は p^=(84+75)/(240+300)=159/540=0.29444 で、標準誤差は
0.29444×0.70556×(2401+3001)=0.207747×0.0075=0.039473
である。(1) の 0.039660 とは小数第4位で違う。この差は小さいが、2つの式は別の問いに答えているので、検定には (2)、区間には (1) を使う。
確認テスト
オリジナル
- 11.3-1 独立な2標本について V[p^1−p^2]=p1q1/n1+p2q2/n2 を導け。差の分散なのに + になる理由を1文で述べよ。
- 11.3-2 地区Aで150世帯中90世帯、地区Bで200世帯中100世帯がある制度を利用していた。利用率の差 pA−pB の90% 信頼区間を求めよ(z0.05=1.645)。
- 11.3-3 11.3-2 のデータで、プールした比率による標準誤差を計算せよ。H0:pA=pB の検定と差の区間推定のどちらでどちらの標準誤差を使うかを答えよ。
- 11.3-4 2群の大きさを等しく n1=n2=n とし、母比率の見当が無いとき、差の95% 区間の半幅を 0.05 以下にするのに必要な各群の n を求めよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com