統計学の復習 第13章 §13.4 ★★★ 期待度数は(行の和)×(列の和)÷(総数)。自由度 (r−1)(c−1) は、行の和と列の和を固定したときに自由に決められるセルの数である
分割表と帰無仮説
n 人を2つの属性で分類する。属性 A は r 個の値(行)、属性 B は c 個の値(列)をとり、r×c 個のセルのうち (i,j) のセルに入った人数を Oij とする。これを分割表(クロス集計表、第1章)と呼ぶ。行の和を Oi⋅=∑jOij、列の和を O⋅j=∑iOij と書く。
各人が独立にセル (i,j) に確率 pij で入るとし、行の周辺確率を pi⋅=∑jpij、列の周辺確率を p⋅j=∑ipij とする。属性 A と B が独立であるとは、第3章・第7章の独立の定義どおり、すべてのセルで同時確率が周辺確率の積になることである。帰無仮説は
H0: pij=pi⋅p⋅j(i=1,…,r; j=1,…,c)
である。
期待度数
H0 の下でセル (i,j) の期待度数は npij=npi⋅p⋅j だが、周辺確率は未知なので、データから推定する。行 i に入る確率 pi⋅ は、行 i に入った人の割合 Oi⋅/n で、列 j に入る確率 p⋅j は O⋅j/n で推定するのが自然である。これを代入して
Eij=n⋅nOi⋅⋅nO⋅j=nOi⋅O⋅j(13.6)
を期待度数とする。言葉で書けば「(行の和)×(列の和)÷(総数)」である。
落とし穴
(13.6) の割り算は n で1回だけである。周辺確率を2つ掛けたので n2 で割った後、総数 n を掛け戻して n になる。n2 で割ったまま止めると期待度数が 1/n 倍になり、X2 が n 倍に膨らむ。検算として、期待度数の表の行の和と列の和は、観測度数の表の行の和と列の和に一致する(確認テスト 13.4-3)。これが合わなければ期待度数の計算が誤っている。
統計量は適合度検定と同じ形で、全セルについて足す。
X2=i=1∑rj=1∑cEij(Oij−Eij)2.(13.7)
自由度が (r−1)(c−1) になる理由
定理 13.6(独立性検定の自由度)
H0 の下で n が大きいとき、(13.7) の X2 の分布は χ(r−1)(c−1)2 で近似できる。棄却域は X2≥χ(r−1)(c−1)2(α) である。
この自由度は、§13.3 の適合度検定の数え方(カテゴリ数 −1− 推定した母数の数)で、そのまま出てくる。カテゴリはセルの rc 個である。推定した母数は、行の周辺確率 p1⋅,…,pr⋅ と列の周辺確率 p⋅1,…,p⋅c だが、それぞれ和が 1 なので、実際に推定した独立な母数は (r−1)+(c−1) 個である。したがって
自由度=rc−1−(r−1)−(c−1)=rc−r−c+1=(r−1)(c−1)
である。適合度検定も独立性検定も、自由度は引き算で数えていて、独立性検定の引き算の結果がたまたま積の形に因数分解できる、というのが2つの公式の関係である。
同じ自由度は、ずれの表に入る拘束からも数えられる。(13.6) の期待度数の行の和は観測度数の行の和に等しく、列の和も等しいので、ずれ Oij−Eij の表は、どの行の和もどの列の和も 0 になる。このとき、左上の (r−1)×(c−1) 個のセルのずれを決めると、各行の最後のセルは行の和が 0 になるように、各列の最後のセルは列の和が 0 になるように決まり、右下の1個のセルも矛盾なく決まる。自由に決められるずれは (r−1)(c−1) 個で、これが自由度である。
2×2 表の公式とプールした Z との一致
2×2 表のセルを次のように書く(n=a+b+c+d)。
| B1 | B2 | 計 |
| A1 | a | b | a+b |
| A2 | c | d | c+d |
| 計 | a+c | b+d | n |
定理 13.7(2×2 表の X2)
2×2 表の独立性検定の統計量は
X2=(a+b)(c+d)(a+c)(b+d)n(ad−bc)2(13.8)
で、自由度は (2−1)(2−1)=1 である。さらに、行 A1 を第1群(n1=a+b)、行 A2 を第2群(n2=c+d)、列 B1 を「性質 A を持つ」とみなすと、X2 は §13.2 のプールした比率の差の検定統計量 (13.4) の2乗に厳密に等しい。
証明
行の和を R1=a+b、R2=c+d、列の和を C1=a+c、C2=b+d とする。左上のセルのずれは
a−nR1C1=na(a+b+c+d)−(a+b)(a+c)=nad−bc
である。ずれの表は行の和も列の和も 0 なので、4つのセルのずれは ±(ad−bc)/n で、左上と右下が +、右上と左下が − である。したがって
X2=(nad−bc)2i,j∑Eij1=(nad−bc)2⋅n(R11+R21)(C11+C21)
である。1/Eij=n/(RiCj) を4つ足すと因数分解できることを使った。1/R1+1/R2=(R1+R2)/(R1R2)=n/(R1R2)、列も同様なので、
X2=n2(ad−bc)2⋅R1R2C1C2n⋅n⋅n=R1R2C1C2n(ad−bc)2
となり、(13.8) が出る。
次に、p^1=a/R1、p^2=c/R2 とすると
p^1−p^2=R1R2aR2−cR1=R1R2a(c+d)−c(a+b)=R1R2ad−bc
である。プールした比率は p^=C1/n、1−p^=C2/n なので、(13.4) の分母の2乗は
p^(1−p^)(R11+R21)=n2C1C2⋅R1R2n=nR1R2C1C2
である。よって
Z2=R12R22(ad−bc)2⋅C1C2nR1R2=R1R2C1C2n(ad−bc)2=X2.
この定理から、2×2 表の独立性の検定(有意水準 α、X2≥χ12(α))と、プールした比率の差の両側検定(∣Z∣≥zα/2)は、χ12(α)=zα/22 により同じ検定である。「2群で比率が等しい」と「群と性質が独立である」は、同じ H0 を2通りの言葉で述べたものだからである。非プールの標準誤差で作った Z の2乗は (13.8) に一致しない。§13.2 の注意で、記述ではプールした式を書くとしたのは、この一致を保つためでもある。
連続補正(Yates の補正)
2×2 表では、二項分布の正規近似の連続補正(第8章)にあたる補正として、(13.8) の (ad−bc)2 を (∣ad−bc∣−n/2)2 に置き換えることがある。これを Yates の補正と呼ぶ。補正すると X2 が小さくなり、棄却しにくくなる。2級で補正を使うときは問題文で指定されるので、指定が無ければ補正しない (13.8) で計算する。期待度数が小さいときは、行の和と列の和を固定したときの a の分布(超幾何分布、第5章)から直接 p 値を計算する方法があり、Fisher の正確検定と呼ばれる。
2×c 表を比率の比較として計算する
行が2つ、列が c 個の表は、「c 個の群で、ある性質を持つ人の割合が等しいか」を調べる表として読むことができる。このときは次の形で計算すると速く、どの列がずれているかも見やすい。
命題 13.8(2×c 表の X2)
2×c 表で、列 j の和を Cj、列 j のうち第1行に入った割合を p^j=O1j/Cj、全体のうち第1行に入った割合を pˉ=O1⋅/n とすると、
X2=pˉ(1−pˉ)1j=1∑cCj(p^j−pˉ)2(13.9)
が成り立つ。自由度は c−1 である。
証明
行の和を R1=O1⋅=npˉ、R2=n(1−pˉ) とする。列 j の第1行のずれは dj=O1j−R1Cj/n=Cjp^j−Cjpˉ=Cj(p^j−pˉ) で、列 j の和は 0 なので、第2行のずれは −dj である。したがって列 j の2つのセルの寄与は
dj2(E1j1+E2j1)=dj2⋅Cjn(R11+R21)=dj2⋅CjR1R2n2=Cjpˉ(1−pˉ)Cj2(p^j−pˉ)2
である。最後の等号で R1R2=n2pˉ(1−pˉ) を使った。j について足すと (13.9) が出る。
(13.9) は、各群の比率 p^j が全体の比率 pˉ からどれだけ離れているかを、群の大きさ Cj で重み付けて足し、ベルヌーイ分布の分散 pˉ(1−pˉ) で割ったものである。c=2 なら定理 13.7 の比率の差の検定に戻り、一般の c では「c 個の母比率がすべて等しい」という H0 の検定になる。第15章の一元配置分散分析が平均の群間のばらつきを測るのと同じ形で、比率の群間のばらつきを測っている。
例題 13.6 学部と朝食の習慣 ★★★
オリジナルある大学の3つの学部から無作為に選んだ学生220人に、朝食を毎日とるかを尋ねた。
| 学部 P | 学部 Q | 学部 R | 計 |
| とる | 45 | 60 | 35 | 140 |
| とらない | 35 | 20 | 25 | 80 |
| 計 | 80 | 80 | 60 | 220 |
- 期待度数の表を作り、学部と朝食の習慣が独立かを有意水準 5% で検定せよ。
- 同じ X2 を (13.9) で計算し、どの学部がずれているかを述べよ。
解答
(1) (13.6) から、「とる」の行は 140×80/220=50.91、140×80/220=50.91、140×60/220=38.18、「とらない」の行は 80×80/220=29.09、29.09、80×60/220=21.82 である。行の和 140、80 と列の和 80、80、60 が観測の表と一致することを確かめておく。すべて 5 以上である。
X2=50.91(45−50.91)2+50.91(60−50.91)2+38.18(35−38.18)2+29.09(35−29.09)2+29.09(20−29.09)2+21.82(25−21.82)2
で、各項は 0.686、1.623、0.265、1.200、2.841、0.464、合計 X2=7.080 である。自由度は (2−1)(3−1)=2、棄却域は X2≥χ22(0.05)=5.991 で、7.080 はこれに入る。H0 は棄却され、学部と朝食の習慣は独立でないといえる(p 値 0.029)。
(2) pˉ=140/220=0.63636、pˉ(1−pˉ)=0.23140 である。各学部の「とる」の割合は p^=(0.5625, 0.75, 0.58333) で、
∑Cj(p^j−pˉ)2=80×0.073862+80×0.113642+60×0.053032=0.4364+1.0331+0.1687=1.6382
なので、X2=1.6382/0.23140=7.080 で (1) と一致する。寄与が最も大きいのは学部 Q(1.0331/0.23140=4.46)で、Q は朝食をとる割合が全体より高い。独立でないことは、学部に所属することが朝食の習慣の原因であることを意味しない。生活時間や通学距離のような別の要因が、学部と習慣の両方に関係している可能性がある(第14章の擬相関)。
確認テスト
オリジナル
- 13.4-1 3×4 の分割表で独立性を検定するときの自由度を、(a) 適合度検定の数え方(カテゴリ数 −1− 推定した母数の数)と、(b) ずれの表で自由に決められるセルの数え方の2通りで求めよ。
- 13.4-2 新しい教材を使った50人のうち30人、従来の教材を使った50人のうち18人が試験に合格した。2×2 表を作り、(13.8) で X2 を計算して、教材と合否が独立かを有意水準 5% で検定せよ。プールした比率の差の Z を計算し、Z2=X2 を確かめよ。
- 13.4-3 (13.6) の期待度数について、∑jEij=Oi⋅ と ∑iEij=O⋅j を示せ。これから、ずれの表の行の和と列の和がすべて 0 になることを導け。
- 13.4-4 3種類の製品 X・Y・Z の利用者にそれぞれ80人・90人・50人を選び、満足と答えた人数は40人・54人・26人であった。(13.9) を使って X2 を計算し、満足の割合が製品によって異なるかを有意水準 5% で検定せよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com