統計学の復習 第15章 §15.4 ★★★ 平方和を群間 SA と群内 Se に分解し(交差項は群ごとの偏差の和が 0 なので消える)、自由度 k−1 と N−k で割った平均平方の比を Fk−1,N−k の上側の点と比べる
データの構造式
1つの要因 A に k 個の水準 A1,…,Ak があり、水準 Ai で ni 個のデータ xi1,…,xini を取る。データの総数を N=n1+⋯+nk とする。このような実験を一元配置と呼ぶ。データは
xij=μ+ai+εij,i=1∑kniai=0,εij∼N(0,σ2) 独立(15.9)
に従うとする。水準 Ai の母平均は μi=μ+ai で、μ は全体の平均、ai は水準 Ai の効果(全体の平均からのずれ)である。∑niai=0 は μ を μi の重みつき平均と決める約束で、各水準の繰り返し数が等しい(ni=r)ときは ∑ai=0 になる。帰無仮説 H0:μ1=⋯=μk は H0:a1=⋯=ak=0 と同じである。誤差の分散 σ2 がすべての水準で等しいことを、モデルの仮定に含めている。
水準ごとの平均を xˉi⋅=ni1∑jxij、全体の平均を xˉ=N1∑i∑jxij と書く。添字の点は、その添字について平均したことを表す。
平方和の分解
各データの全体の平均からの偏差を、群の平均の偏差と群の中の偏差に分ける。
xij−xˉ=(xˉi⋅−xˉ)+(xij−xˉi⋅).
定理 15.7(一元配置の平方和の分解)
STi=1∑kj=1∑ni(xij−xˉ)2=SAi=1∑kni(xˉi⋅−xˉ)2+Sei=1∑kj=1∑ni(xij−xˉi⋅)2(15.10)
が成り立つ。ST を総平方和、SA を要因 A の平方和(群間平方和)、Se を誤差平方和(群内平方和)と呼ぶ。
証明
右辺の和を2乗して展開すると、2乗の項の和と交差項 2∑i∑j(xˉi⋅−xˉ)(xij−xˉi⋅) が出る。交差項で (xˉi⋅−xˉ) は j によらないので、j についての和の外に出すことができ
i=1∑k(xˉi⋅−xˉ)j=1∑ni(xij−xˉi⋅)
となる。内側の和は、群 i のデータの自分の群の平均からの偏差の和なので、∑jxij−nixˉi⋅=0 である。したがって交差項は 0 である。1つ目の2乗の項は j によらないので、j について和をとると ni 倍になり SA になる。
交差項が消えるのは、群の中の偏差が群ごとに和 0 になるという性質による。第9章で ∑(Xi−μ)2 を ∑(Xi−Xˉ)2+n(Xˉ−μ)2 に分けたときと同じ形の議論である。自由度は、ST が N 個の偏差に1本の制約(総和が 0)があるので ϕT=N−1、SA が k 個の値 xˉi⋅−xˉ に1本の制約(∑ni(xˉi⋅−xˉ)=0)があるので ϕA=k−1、Se が N 個の偏差に群ごとの k 本の制約があるので ϕe=N−k である。ϕT=ϕA+ϕe が成り立つ。

図 15.2 例題 15.4 のデータ。点が各データ、実線の短い横線が群の平均 xˉi⋅、破線が全体の平均 xˉ。SA は矢印(群の平均の全体の平均からのずれ)の2乗を群の大きさで重みづけた和、Se は各点と自分の群の横線との距離の2乗和である。
平均平方の期待値
平方和を自由度で割ったものを平均平方と呼び、VA=SA/ϕA、Ve=Se/ϕe と書く。2つの期待値を求める。
定理 15.8(一元配置の平均平方の期待値)
モデル (15.9) のもとで
E[Ve]=σ2,E[VA]=σ2+k−11i=1∑kniai2(15.11)
である。
証明
Se:群 i の ni 個のデータは独立に N(μi,σ2) に従うので、第9章の不偏分散の結果から E[∑j(xij−xˉi⋅)2]=(ni−1)σ2 である。i について足すと E[Se]=(N−k)σ2 で、E[Ve]=σ2 である。
SA:誤差の平均を εˉi⋅=ni1∑jεij、εˉ=N1∑i∑jεij と書くと、xˉi⋅=μ+ai+εˉi⋅ であり、∑niai=0 から xˉ=μ+εˉ である。したがって xˉi⋅−xˉ=ai+(εˉi⋅−εˉ) で
SA=i∑niai2+2i∑niai(εˉi⋅−εˉ)+i∑ni(εˉi⋅−εˉ)2
となる。中央の項は期待値が 0 である。最後の項は、∑iniεˉi⋅=Nεˉ を使って展開すると
i∑ni(εˉi⋅−εˉ)2=i∑niεˉi⋅2−2εˉi∑niεˉi⋅+Nεˉ2=i∑niεˉi⋅2−Nεˉ2
である。E[εˉi⋅2]=V[εˉi⋅]=σ2/ni、E[εˉ2]=σ2/N なので、期待値は ∑ini⋅σ2/ni−N⋅σ2/N=(k−1)σ2 である。以上から E[SA]=(k−1)σ2+∑niai2 で、k−1 で割ると式 (15.11) になる。
式 (15.11) から、H0 が正しければ VA と Ve はどちらも σ2 の不偏推定量で、比 F0=VA/Ve は 1 の近くの値をとる。H0 が誤りなら VA の期待値だけが ∑niai2/(k−1) だけ大きくなるので、F0 は大きくなる。F0 が小さくなる方向には H0 に反する情報が無い。分散分析の F 検定が右片側の検定になるのはこのためである。
F0 の分布
定理 15.9(一元配置の F 検定)
モデル (15.9) で H0:a1=⋯=ak=0 が正しいとき、
F0=VeVA=Se/(N−k)SA/(k−1)∼Fk−1,N−k(15.12)
である。有意水準 α の検定は、F0≥Fk−1,N−k(α) のとき H0 を棄却する。
証明(各水準の繰り返し数が等しい場合)
ni=r(N=kr)とする。第11章の定理(正規標本では ∑(Xi−Xˉ)2/σ2∼χn−12 で、Xˉ と S2 は独立)を2回使う。
まず群 i の中で使うと、∑j(xij−xˉi⋅)2/σ2∼χr−12 で、これは xˉi⋅ と独立である。群どうしは独立なので、χ2 分布の再生性から Se/σ2∼χk(r−1)2=χN−k2 である。さらに (xˉ1⋅,…,xˉk⋅) 全体が Se と独立である。
次に、H0 のもとで xˉ1⋅,…,xˉk⋅ は独立に N(μ,σ2/r) に従う大きさ k の正規標本で、その標本平均は xˉ である。もう一度第11章の定理を使うと
σ2/r∑i(xˉi⋅−xˉ)2=σ2SA∼χk−12
である(SA=r∑i(xˉi⋅−xˉ)2)。SA は群の平均だけの関数なので Se と独立である。F0={(SA/σ2)/(k−1)}/{(Se/σ2)/(N−k)} と書くと、定義 15.1 から F0∼Fk−1,N−k である。
繰り返し数が水準ごとに違う場合も定理は成り立つが、SA が χ2 に従うことを示すには、平方和を直交する方向の成分に分ける Cochran の定理が要る。証明は数理統計の解説 第9章 §9.5 で扱う。
計算の手順と分散分析表
手計算では、偏差を作らずに合計から平方和を出す。総合計を T=∑i∑jxij、水準 Ai の合計を Ti とし、修正項 CT=T2/N を作ると
ST=i∑j∑xij2−CT,SA=i∑niTi2−CT,Se=ST−SA(15.13)
である。1つ目は第2章の平行移動の公式 ∑(x−xˉ)2=∑x2−Nxˉ2 で Nxˉ2=T2/N としたもの、2つ目は SA=∑nixˉi⋅2−Nxˉ2 に xˉi⋅=Ti/ni を入れたものである。結果は次の分散分析表にまとめる。
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F0 | 期待平均平方 |
| A(群間) | SA | k−1 | VA=SA/(k−1) | VA/Ve | σ2+∑niai2/(k−1) |
| e(群内) | Se | N−k | Ve=Se/(N−k) | | σ2 |
| 計 | ST | N−1 | | | |
2級の分散分析表の穴埋めでは、平方和と自由度がそれぞれ縦に足し算になることと、F0 は群間を群内で割る(逆にしない)ことを使う。
2群の分散分析はプールした t 検定と同じである
命題 15.10(k=2 では F0=t2)
k=2 のとき、一元配置の F0 は、第10章のプールした分散 sp2 による2標本の t 統計量 t=(xˉ1⋅−xˉ2⋅)/(sp1/n1+1/n2) の2乗に等しい。
証明
k=2 では SA=n1+n2n1n2(xˉ1⋅−xˉ2⋅)2 である(確認テスト 15.4-3)。ϕA=1 なので VA=SA である。Se は2群の偏差平方和の合計、ϕe=n1+n2−2 なので、Ve は第10章のプールした分散 sp2 そのものである。したがって
F0=(n1+n2)sp2n1n2(xˉ1⋅−xˉ2⋅)2=sp2(1/n1+1/n2)(xˉ1⋅−xˉ2⋅)2=t2
である。
定理 15.3 (3) から tϕe(α/2)2=F1,ϕe(α) なので、2群の分散分析(右片側)と両側の t 検定は、同じデータに対して同じ結論を出す。分散分析は、プールした t 検定を3群以上へ広げたものである。
分散分析のあとの推定
H0 が棄却されたら、各水準の母平均を推定する。μi の点推定値は xˉi⋅ で、その分散 σ2/ni の σ2 は、群 i のデータだけでなく全部の群をまとめた Ve(自由度 ϕe=N−k)で推定する。第10章の t 区間と同じ手順で
μi: xˉi⋅±tϕe(α/2)niVe,μi−μi′: (xˉi⋅−xˉi′⋅)±tϕe(α/2)Ve(ni1+ni′1)(15.14)
が信頼係数 1−α の区間になる。自由度が ni−1 でなく N−k になる分だけ、群 i だけから作る区間より t の点が小さく、区間は短くなる。複数の差の区間を同時に主張するときは、§15.3 の Bonferroni の方法で α を組の数で割る。
例題 15.4 一元配置の分散分析表を作る ★★★
オリジナル3種類の肥料 A1,A2,A3 をそれぞれ5つの区画で使い、収量を測った。
| A1 | 12 | 15 | 14 | 11 | 13 |
| A2 | 16 | 18 | 15 | 17 | 19 |
| A3 | 14 | 13 | 16 | 15 | 12 |
分散分析表を作り、有意水準 5% と 1% で肥料の効果を検定せよ(F2,12(0.05)=3.885、F2,12(0.01)=6.927)。
解答
水準ごとの合計は T1=65、T2=85、T3=70、総合計は T=220、N=15 で、CT=2202/15=3226.67 である。データの2乗和は ∑xij2=3300 である。式 (15.13) から
ST=3300−3226.67=73.33,SA=5652+852+702−3226.67=3270−3226.67=43.33,
Se=73.33−43.33=30.00 である。検算として群の中の偏差を直接計算すると、A1 は −1,2,1,−2,0、A2 は −1,1,−2,0,2、A3 は 0,−1,2,1,−2 で、2乗和はどれも 10、合計 30 で一致する。
| 要因 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 | F0 |
| A | 43.33 | 2 | 21.67 | 8.67 |
| e | 30.00 | 12 | 2.50 | |
| 計 | 73.33 | 14 | | |
F0=21.67/2.50=8.67 は F2,12(0.05)=3.885 と F2,12(0.01)=6.927 のどちらよりも大きいので、有意水準 1% でも H0 を棄却し、肥料によって収量の母平均は異なると判断する。
例題 15.5 分散分析のあとの推定 ★★
オリジナル例題 15.4 のデータについて答えよ(t12(0.025)=2.179)。
- A2 の母平均 μ2 の 95% 信頼区間を求めよ。
- μ2−μ1 の 95% 信頼区間を求めよ。
- 母平均が標本平均 (13,17,14) にちょうど等しく、σ2=2.5 であるとしたとき、VA の期待値を求めよ。F0=8.67 と比べて何が言えるか。
解答
(1) 式 (15.14) で Ve=2.5、n2=5、自由度 12 なので、半幅は 2.1792.5/5=2.179×0.7071=1.541 で、[15.46, 18.54] である。A2 の5個だけから作ると不偏分散は 10/4=2.5 で同じだが、自由度 4 の t4(0.025)=2.776 を使うので半幅は 1.963 になる。Ve を使うと、ほかの群の情報で σ2 の推定が安定する分だけ区間が短い。
(2) 点推定値は 17−13=4、標準誤差は 2.5×(1/5+1/5)=1 なので、半幅は 2.179、区間は [1.82, 6.18] である。
(3) 全体の平均は μ=(13+17+14)/3=14.667 で、効果は a1=−1.667、a2=2.333、a3=−0.667 である。∑niai2=5×(2.778+5.444+0.444)=43.33 で、これは SA と同じ値である。式 (15.11) から
E[VA]=2.5+243.33=24.17
で、E[Ve]=2.5 との比は 9.7 である。観測された F0=8.67 はこの程度の効果があれば普通に出る大きさで、H0 のもとでの F の期待値 12/10=1.2(定理 15.3 (1))からは大きく離れている。
確認テスト
オリジナル
- 15.4-1 4つの水準でそれぞれ6個のデータを取った一元配置で、ST=120、SA=45 であった。分散分析表を完成させ、有意水準 5% で検定せよ(F3,20(0.05)=3.098)。
- 15.4-2 繰り返し数が異なる次のデータで一元配置の分散分析を行い、有意水準 5% と 1% で検定せよ(F2,7(0.05)=4.737、F2,7(0.01)=9.547)。A1:5, 7, 6 / A2:8, 9, 10, 9 / A3:6, 8, 7
- 15.4-3 k=2 のとき SA=n1+n2n1n2(xˉ1⋅−xˉ2⋅)2 を示せ。
- 15.4-4 モデル (15.9) で、H0 が正しいときの F0 の期待値を求めよ。N=15、k=3 のとき、それは 1 より大きいか。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com