数理統計 第8章 §8.3 ★★ 最短の区間の条件、検出力と結びつく一様最精密性、予測区間、工程能力指数の区間。応用・理工学でも使う
この節では、1級の範囲で使う4つの話題を選んだ。最短の区間を与える分位点の条件、一様最精密な信頼限界と最強力検定の関係、将来の観測値に対する予測区間、品質管理で使う工程能力指数 Cp の信頼区間である。
最短の信頼区間
枢軸量 Q の分布が決まっても、確率 1−α の区間の取り方は1通りでない。分布の両裾に α/2 ずつ残す等裾の取り方が慣例だが、長さが最短になるとは限らない。
定理 8.6(単峰な密度での最短区間 ★★)
f を単峰な確率密度とする。すなわち、ある m があって、f はその左で非減少、右で非増加である。区間 [a,b] が次の3条件を満たすとする。
∫abf=1−α,f(a)=f(b)>0,a≤m≤b
このとき、∫a′b′f=1−α を満たす任意の区間について b′−a′≥b−a が成り立つ。
証明
単峰性から、区間 [a,b] の上では f≥f(a) である。その外側では密度が f(a) 以下である。
b′−a′<b−a となる [a′,b′] があったとして矛盾を導く。a′≤a の場合を考える(逆の場合は左右を入れ替えて同じ議論になる)。このとき b′<b である。
- (i) b′≤a の場合。区間 [a′,b′] は a の左側にある。そこでは密度が f(a) 以下なので次の矛盾が出る。
∫a′b′f≤f(a)(b′−a′)<f(a)(b−a)≤∫abf=1−α
2. (ii) a<b′<b の場合。積分を次のように分ける。
∫a′b′f=∫abf+∫a′af−∫b′bf
右辺の2つの積分を評価する。
∫a′af≤f(a)(a−a′)<f(a)(b−b′)≤∫b′bf([a′,a] は [a,b] の外)(b′−a′<b−a と b−b′>a−a′ は同値)([b′,b]⊂[a,b])
よって ∫a′b′f<1−α となり矛盾する。
この定理によれば、長さを最小にする条件は両端で密度が等しいことである。Lagrange の未定乗数法でも同じ条件が出る。次の関数を a,b で微分すればよい。
b−a−λ{F(b)−F(a)−(1−α)}
停留条件 1=λf(b), 1=λf(a) から f(a)=f(b) を得る。t 分布や標準正規分布のように 0 について対称な単峰の密度なら、この条件は a=−b を意味する。よって等裾の区間が最短である。
最短にしたいのが Q の区間でなく母数の区間である場合は、条件が変わる。χn−12 の下端・上端を a,b とする。正規分散の区間 (8.5) の長さは (n−1)S2(1/a−1/b) である。次の関数を微分する。
1/a−1/b−λ{F(b)−F(a)−(1−α)}
停留条件は a−2=λf(a), b−2=λf(b) なので
a2f(a)=b2f(b),F(b)−F(a)=1−α(8.11)
が最短の条件になる(f,F は χn−12 の密度と分布関数)。
分散の区間の最短化
n=10, 1−α=0.95 とする。2つの取り方で長さの係数 1/a−1/b を比べる。
- 等裾:a=χ92(0.975)=2.700, b=χ92(0.025)=19.023 で、係数は 1/2.700−1/19.023=0.3177。
- 最短:条件 (8.11) を数値的に解くと a=3.284, b=26.077 で、係数は 1/3.284−1/26.077=0.2662。
最短の区間は等裾より約 16% 短い。右の裾に多く(P(χ92>26.077)=0.0020)、左の裾に少なく残している。
試験では等裾の区間を答えれば足りる。「最短の区間を求めよ」と問われたら、条件 (8.11) を導くところまでが答案になる。
一様最精密な信頼限界
§8.1 の2番目の物差し「誤った値を含む確率」を、検定の反転(定理 8.4)と組み合わせる。
定理 8.7(一様最精密な下側信頼限界 ★★)
各 θ0 について、次の検定問題に有意水準 α の一様最強力検定があるとする。
H0:θ=θ0対H1:θ>θ0
その受容域を A(θ0) とし、C(x)={θ0:x∈A(θ0)} とおく。このとき C は信頼係数 1−α の信頼集合である。さらに、同じ信頼係数の任意の信頼集合 C∗ に対して
Pθ(θ0∈C(X))≤Pθ(θ0∈C∗(X))(すべての θ0<θ)
が成り立つ。この性質を持つ C を一様最精密(uniformly most accurate)であるという。
証明
C の信頼係数は定理 8.4 から従う。次に A∗(θ0)={x:θ0∈C∗(x)} とおく。定理 8.4 の後半から、これを受容域とする検定は有意水準 α である。
真の値 θ>θ0 では、一様最強力検定の検出力がこの検定の検出力以上なので
1−Pθ(X∈A(θ0))≥1−Pθ(X∈A∗(θ0)).
両辺を書き直すと Pθ(θ0∈C(X))≤Pθ(θ0∈C∗(X)) である。
真の値より小さい θ0 を含む確率を最小にするので、得られる区間は [L(X),∞) の形の下側信頼限界になる。例として正規平均(分散既知)を考える。第7章の Neyman–Pearson の補題から、対立仮説 H1:μ>μ0 の一様最強力検定は次のとき棄却する。
Xˉ>μ0+zασ/n
これを反転した [Xˉ−zασ/n, ∞) が、一様最精密な下側信頼限界である。
両側の区間については、一様最精密なものは一般に存在しない。そこで不偏性(誤った値を含む確率が真の値を含む確率以下)の制約を課した中で、最精密なものを考える。
例題 8.4 指数分布の最強力検定を反転した信頼限界 ★★
オリジナルX1,…,Xn を Ex(λ) からの標本とする。
- λ1>λ0 を固定する。H0:λ=λ0 対 H1:λ=λ1 の最強力検定を、Neyman–Pearson の補題で求めよ。有意水準は α とする。それが H1:λ>λ0 に対する一様最強力検定でもあることを示せ。
- (1) の検定を反転して、λ の一様最精密な信頼限界を作れ。
- n=10, ∑xi=23.5, α=0.05 のとき、その信頼限界と、対応する平均 μ=1/λ の信頼限界を求めよ。
解答
(1) T=∑Xi とおく。尤度比は
L(λ0)L(λ1)=(λ0λ1)nexp{−(λ1−λ0)T}
で、λ1>λ0 なので T の狭義減少関数である。Neyman–Pearson の補題から、最強力検定は尤度比が大きいとき、すなわち T≤k のとき棄却する。式 (8.7) から、帰無仮説のもとで 2λ0T∼χ2n2 である。よって Pλ0(T≤k)=α から
2λ0k=χ2n2(1−α),k=2λ0χ2n2(1−α).
この棄却域は λ0 と α だけで決まり、対立仮説の値によらない。したがって λ0 より大きいどの λ1 に対しても同じ検定が最強力である。つまり片側の対立仮説 H1:λ>λ0 に対して一様最強力である。
(2) 受容域は A(λ0)={2λ0T>χ2n2(1−α)} である。受容の条件を λ0 について解くと
λ0>2Tχ2n2(1−α)
なので、定理 8.7 から
(2Tχ2n2(1−α), ∞)
が λ の一様最精密な下側信頼限界による区間である(端点を含めても被覆確率は変わらない)。
(3) χ202(0.95)=10.851, 2T=47 から λ≥10.851/47=0.2309。μ=1/λ は狭義減少な変換なので、μ≤47/10.851=4.331 が平均寿命の上側信頼限界になる。誤りの確率 0.05 を片側だけに置いたので、例題 8.2 の両側区間の上端 4.901 より小さい。
予測区間
ここまでの区間は母数を対象にしていた。品質管理や回帰では、次に観測される値 Xn+1 が入る区間がほしい場面がある。
X1,…,Xn,Xn+1 を N(μ,σ2) からの独立な標本とする。前の n 個から標本平均と不偏分散 S2 を作る。最後の1個が予測の対象である。すると
Xn+1−Xˉ∼N(0, σ2(1+1/n))
であり、これは S2 と独立である。新しい観測値も標本平均も、不偏分散と独立だからである。したがって
S1+1/nXn+1−Xˉ∼tn−1,
である。よって
P(∣Xn+1−Xˉ∣≤tn−1(α/2)S1+1/n)=1−α
から、Xn+1 の 100(1−α)% 予測区間
Xˉ±tn−1(α/2)S1+n1(8.12)
を得る。信頼区間 (8.4) との違いは根号の中の 1 である。標本を増やしても半幅は 0 にならず、zα/2σ に近づく。母数の不確かさは標本を増やせば消えるが、次の観測値そのもののばらつき σ2 は消えないからである。
ここで確率 1−α は、X1,…,Xn+1 の同時分布について計算したものである。標本平均と新しい観測値の両方が動くことを含んでいる。
工程能力指数の信頼区間
製品の特性値が規格の下限 Ls と上限 Us の間に入るべきとき、工程のばらつきの小ささを
Cp=6σUs−Ls
で測り、工程能力指数と呼ぶ。Cp=1 は規格幅がちょうど ±3σ に当たることを意味する。母標準偏差を S で推定した推定量 C^p=(Us−Ls)/(6S) を使う。C^p/Cp=σ/S なので、
σ2(n−1)S2=(n−1)C^p2Cp2∼χn−12
が Cp の枢軸量になる。これは母数について狭義増加なので、次の不等式を解く。
χn−12(1−α/2)≤(n−1)C^p2Cp2≤χn−12(α/2)
すると
Cp∈[C^pn−1χn−12(1−α/2), C^pn−1χn−12(α/2)](8.13)
を得る。品質保証では「Cp が少なくともいくら以上か」を言いたいことが多いので、片側の下側信頼限界C^pχn−12(1−α)/(n−1) もよく使う。
デルタ法による近似も作っておく。logC^p=定数−21logS2 と V[S2]=2σ4/(n−1) から、順に次を得る。
V[logS2]V[logC^p]V[C^p]≈V[S2]/σ4=2/(n−1)≈1/{2(n−1)}≈Cp2/{2(n−1)}(デルタ法)(係数 −21 の2乗を掛けた)(もう一度デルタ法)
近似区間は C^p{1±zα/2/2(n−1)} である。
例題 8.5 工程能力指数の正確な区間と近似区間 ★★
オリジナル規格幅 Us−Ls=4.8 の特性値について、大きさ 25 の標本から標準偏差 s=0.6 を得た。特性値は正規分布に従うとする。
- C^p と、Cp の 95% 信頼区間を式 (8.13) で求めよ。
- デルタ法による近似区間を求めて (1) と比べよ。
- 「Cp≥1」を信頼係数 0.95 で主張できるかを、片側の下側信頼限界で判定せよ。
解答
(1) C^p=4.8/(6×0.6)=1.333。自由度 24 の分位点を使って計算する。
χ242(0.975)χ242(0.025)=12.401,=39.364,12.401/2439.364/24=0.7188,=1.2807.
区間は [1.333×0.7188, 1.333×1.2807]=[0.958, 1.708] である。
(2) z0.025/2×24=1.960/6.928=0.2829 なので、近似区間は 1.333×(1±0.2829)=[0.956, 1.711] である。n=25 では正確な区間とほぼ同じである。正確な区間の方が両端とも少し右にある。推定量が 1/S に比例して右に裾を引くためである。
(3) χ242(0.95)=13.848 から、下側信頼限界は
1.33313.848/24=1.333×0.7596=1.013.
これは 1 を上回るので、信頼係数 0.95 で Cp≥1 と言える。両側の区間 (1) の下端 0.958 が 1 を下回ることと矛盾はしない。片側では誤りの確率 0.05 を下側だけに置くので、同じ信頼係数でも下端が高くなる。
ベイズの信用区間との違い
母数に事前分布 π(θ) を置くと、事後分布 π(θ∣x) が求まる。次を満たす区間を信用区間と呼ぶ。
∫LUπ(θ∣x)dθ=1−α
これは第10章のベイズ推定と同じ枠組みである。信用区間では観測後の区間に対して「θ が入る確率 1−α」と言うことができる。
正規平均で分散既知・事前分布が平坦な場合は、事後分布が N(xˉ,σ2/n) になる。このとき信用区間と信頼区間 (8.2) は数値として一致する。ただし確率を計算している対象は異なる(母数の事後分布か、標本の分布か)。
確認テスト
オリジナル
- 8.3-1 正規平均(分散未知)の t 区間 (8.4) を考える。等裾の分位点 ±tn−1(α/2) が、確率 1−α の区間の中で最短である理由を1文で述べよ。
- 8.3-2 N(μ,σ2) からの大きさ 10 の標本で xˉ=20.0, s=1.5 を得た。次の観測値 X11 の 95% 予測区間と、μ の 95% 信頼区間を求めて長さを比べよ。
- 8.3-3 U(0,θ) の最大値 M から、次の条件で区間を作る。区間は [M/b, M/a] の形とする。
0<a<b≤1,bn−an=1−α
この中で長さ M(1/a−1/b) が最小になるのは b=1, a=α1/n であることを示せ。4. 8.3-4 規格幅 Us−Ls=6、大きさ 30 の標本から s=0.8 を得た。Cp の信頼係数 0.95 の下側信頼限界を求めよ。
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