数理統計 第9章 §9.3 ★★ 変数を増やすと Se は必ず減る。予測誤差の不偏推定として Cp・AIC・交差検証を導く
なぜ Se だけで選べないか
説明変数の候補が多いとき、どれを使うかを決めたい。Se や R2 はこの目的に使えない。
X に列を1本足したモデルの残差平方和を Se′ とする。これは、もとのモデルの係数に新しい列の係数0を加えたものも候補に含む最小化の結果である。したがって Se′≤Se が必ず成り立つ。
つまり Se は変数を足すほど下がり、Se 最小を規準にすると常に全部入りのモデルが選ばれる。しかし不要な変数を入れると推定量の分散が増え、将来のデータに対する予測は悪くなる。そこで規準は「手元のデータへの当てはまり」ではなく、「同じ計画で取り直したデータへの予測誤差」を推定するように作る。
Mallows の Cp
真の平均を μ=E[Y] とする。これは候補モデルの列空間に入っているとは限らない。候補モデルの射影行列を H(階数 p)とする。
同じ計画で独立に取り直したデータを Y∗ とする(分布は Y と同じ)。その予測誤差の期待値を求める。
定理 9.8(予測誤差と残差平方和の差 ★★)
E[ε]=0、Cov(ε)=σ2I とする。Y^=HY に対して
E∥Y∗−Y^∥2=(n+p)σ2+∥(I−H)μ∥2,E[Se]=(n−p)σ2+∥(I−H)μ∥2.
したがって E∥Y∗−Y^∥2=E[Se]+2pσ2。
証明
予測の誤差を3項に分ける。
Y∗−Y^=(Y∗−μ)+(μ−Hμ)−H(Y−μ).
第1項は Y と独立で、平均は 0 である。第3項も平均 0、第2項は定数である。よって交差項の期待値はすべて0になり、
E∥Y∗−Y^∥2=nσ2+∥(I−H)μ∥2+E∥Hε∥2,E∥Hε∥2=Tr(Hσ2IH⊤)=pσ2.
E[Se] は E[Y⊤(I−H)Y]=σ2Tr(I−H)+μ⊤(I−H)μ から出る。
予測誤差を σ2 で割って n を引いた量は、次のとおりである。
σ2E[Se]−n+2p.
この σ2 に、全変数を入れたモデルの σ^full2 を代入して推定したもの
Cp=σ^full2Se−n+2p(9.11)
を Mallows の Cp と呼び、これが最小のモデルを選ぶ。偏りのないモデル((I−H)μ=0)では E[Se]=(n−p)σ2 である。よって Cp≈p となる。Cp が p より大きく離れたモデルは、必要な変数が抜けていることを示す。
AIC
第6章 §6.4 で導入した赤池情報量規準は、k 個の母数をもつモデルの最大対数尤度 ℓ(θ^) を使って次で定義される。
AIC=−2ℓ(θ^)+2k.
将来のデータに対する期待対数尤度を ℓ(θ^) だけで推定すると、k だけ上に偏る。AIC はこれを補正したものである。
正規線形モデルの母数は、係数ベクトルの p 個と σ2 の1個である。よって k=p+1 である。最大対数尤度は、命題 9.1 の式に σ^ML2=Se/n を入れて
ℓ(β^,σ^ML2)=−2nlog(2πnSe)−2(Se/n)1Se=−2nlog(2πnSe)−2n.
よって
AIC=nlognSe+n(log2π+1)+2(p+1).(9.12)
同じデータでモデルを比べるときは n(log2π+1) は共通なので、nlog(Se/n)+2(p+1) を比べれば足りる。logn を罰則に使う BIC は −2ℓ(θ^)+klogn である。n≥8 では AIC より強く変数の追加を罰する。
落とし穴
AIC の比較で定数を省いてよいのは、n と応答 Y が全モデルで同じときだけである。応答を logY に変換したモデルと Y のままのモデルを比べるときは、変換のヤコビアンの分まで尤度が変わる。このとき定数を省いた式を並べても比較にならない。
交差検証
観測 i を除いた n−1 個で当てはめる。その当てはめで観測 i を予測した誤差を、次のように書く。
e(i)=Yi−xi⊤β^(i).
その2乗和 PRESS=∑e(i)2 を規準にするのが、1つ抜き交差検証である。n 回当てはめ直す必要はなく、次の公式で1回の当てはめから計算できる。
命題 9.9(1つ抜き残差の公式)
計画行列の第 i 行を xi⊤ とする。H の対角成分は hii=xi⊤(X⊤X)−1xi である。このとき
e(i)=1−hiiei.
証明
A=X⊤X とおく。第 i 行を除くと次のようになる。
X(i)⊤X(i)=A−xixi⊤,X(i)⊤Y(i)=X⊤Y−xiYi.
Sherman–Morrison の公式
(A−xx⊤)−1=A−1+1−x⊤A−1xA−1xx⊤A−1
を使うと
xi⊤(A−xixi⊤)−1=xi⊤A−1+1−hiihiixi⊤A−1=1−hiixi⊤A−1.
したがって
xi⊤β^(i)=1−hiixi⊤A−1(X⊤Y−xiYi)=1−hiiY^i−hiiYi,
e(i)=Yi−1−hiiY^i−hiiYi=1−hiiYi−Y^i=1−hiiei.
hii の平均は p/n なので、次の近似が成り立つ。
PRESS≈(1−p/n)2Se≈Se(1+n2p).
σ2 を Se/n で置き換えてみる。すると Cp と同じ罰則 2p が現れる。3つの規準は、予測誤差の推定という同じ考えを別の近似で実現したものである。
例題 9.4 AIC と Cp によるモデル選択 ★★
オリジナルn=20 のデータに、4つの入れ子のモデルを当てはめた。切片だけのモデルから、説明変数を1つずつ足したものである。次の残差平方和を得た(p は切片を含む係数の数)。
| p | 1 | 2 | 3 | 4 |
| Se | 50.0 | 30.0 | 27.5 | 27.0 |
- 各モデルの AIC(定数 n(log2π+1) を除いたもの)を求め、選ばれるモデルを答えよ。
- p=4 のモデルを全変数のモデルとして Cp を計算し、選ばれるモデルを答えよ。
解答
- 20log(Se/20)+2(p+1) を計算する。
pppp=1:=2:=3:=4:20log2.5+420log1.5+620log1.375+820log1.35+10=18.326+4=22.33,=8.109+6=14.11,=6.369+8=14.37,=6.002+10=16.00.
最小は p=2 で、このモデルが選ばれる。2. σ^full2=27.0/(20−4)=1.6875。Cp=Se/1.6875−20+2p は次のとおり。
pp=1:=3:29.63−20+216.30−20+6=11.63,=2.30,pp=2:=4:17.78−20+416.00−20+8=1.78,=4.00.
最小は p=2 で、AIC と同じモデルが選ばれる。選ばれたモデルの Cp=1.78 は p=2 に近い。これも、このモデルの偏りが小さいことと整合している。
確認テスト
オリジナル
- 9.3-1 自由度調整済み決定係数
Rˉ2=1−SYY/(n−1)Se/(n−p)
を考える。説明変数を1つ足したとき、Rˉ2 が増えるための必要十分条件は、足した変数の係数の F 統計量が1より大きいことである。これを示せ(F=t2 である)。2. 9.3-2 n=30 で、入れ子の3つのモデル(p=2,3,4)の残差平方和が 120、96、92 であった。定数を除いた AIC で選ばれるモデルを答えよ。3. 9.3-3 説明変数を1つ足して p から p+1 にしたとき、AIC(式 (9.12))が下がる条件を求めたい。足した変数の F 統計量 F=(Se−Se′)/{Se′/(n−p−1)} で表せ。また n が大きいとき、この条件がおよそ F>2 になることを示せ。4. 9.3-4 確認テスト 9.2-1 のてこ比を使い、単回帰で hii が最大になるのはどの観測か答えよ。また hii→1 のとき1つ抜き残差 e(i) がどうなるかを、命題 9.9 から説明せよ。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com