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マルコフ連鎖

2026年10月15日18分で読めますAI生成教科書『資格試験』第12章 発展的トピック:確率過程
目次
  1. 定義と Chapman–Kolmogorov の等式
  2. 定常分布と極限定理
  3. 到達確率と到達時間
  4. 推移確率の最尤推定
  5. 独立性の尤度比検定
  6. 確認テスト
  7. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

数理統計 第12章 §12.5 ★★★ 推移確率行列・定常分布・推移確率の最尤推定と尤度比検定。1級で大問として出た唯一の確率過程

定義と Chapman–Kolmogorov の等式

定義 12.16(マルコフ連鎖)

有限集合 {1,…,m}\{1,\dots,m\} に値をとる確率変数の列 X0,X1,…X_0,X_1,\dots を考える。すべての時刻と状態 i0,…,in−1,i,ji_0,\dots,i_{n-1},i,j について

P(Xn+1=j∣Xn=i, Xn−1=in−1,…,X0=i0)=P(Xn+1=j∣Xn=i)=pijP(X_{n+1}=j\mid X_n=i,\ X_{n-1}=i_{n-1},\dots,X_0=i_0)=P(X_{n+1}=j\mid X_n=i)=p_{ij}

を満たし、右辺が時刻によらないとする。このとき {Xn}\{X_n\} を(斉時的な)マルコフ連鎖と呼ぶ。

pijp_{ij} を推移確率と呼ぶ。それを並べた m×mm\times m 行列 P=(pij)\bm P=(p_{ij}) を推移確率行列と呼ぶ。各行は確率分布なので、pij≥0p_{ij}\ge0 と ∑jpij=1\sum_jp_{ij}=1 が成り立つ。

条件は「次の状態の分布は、現在の状態だけで決まり、それ以前の履歴によらない」という意味である。乗法定理を繰り返すと、経路の確率は

P(X0=i0,X1=i1,…,Xn=in)=P(X0=i0) pi0i1pi1i2⋯pin−1in(12.17)P(X_0=i_0,X_1=i_1,\dots,X_n=i_n)=P(X_0=i_0)\,p_{i_0i_1}p_{i_1i_2}\cdots p_{i_{n-1}i_n}\tag{12.17}

と推移確率の積になる。この式から、この節の後半で推移確率の尤度を書く。

nn 歩後の推移確率 pij(n)=P(Xn=j∣X0=i)p^{(n)}_{ij}=P(X_{n}=j\mid X_0=i) を考える。途中の時刻 kk にいる状態で場合を分けると

pij(n)=∑l=1mpil(k) plj(n−k)(12.18)p^{(n)}_{ij}=\sum_{l=1}^mp^{(k)}_{il}\,p^{(n-k)}_{lj}\tag{12.18}

を得る(Chapman–Kolmogorov の等式)。これは行列の積の成分の式そのものなので、nn 歩の推移確率行列は Pn\bm P^n である。初期分布を行ベクトル π0\bm\pi_0 で表す。すると XnX_n の分布は π0Pn\bm\pi_0\bm P^n になる。

定常分布と極限定理

定義 12.17(定常分布)

確率ベクトル π=(π1,…,πm)\bm\pi=(\pi_1,\dots,\pi_m) が πP=π\bm\pi\bm P=\bm\pi を満たすとき、これを定常分布と呼ぶ。ここで確率ベクトルとは、成分が非負で和が 1 のベクトルである。

初期分布が定常分布なら、X1X_1 の分布は πP=π\bm\pi\bm P=\bm\pi で、以後ずっと同じままである。

すべての状態が互いに行き来できる連鎖を既約と呼ぶ。任意の i,ji,j に対して、pij(n)>0p^{(n)}_{ij}>0 となる歩数がある、ということである。状態 ii に戻れる歩数 {n:pii(n)>0}\{n:p^{(n)}_{ii}>0\} の最大公約数を、その状態の周期と呼ぶ。周期が 1 のとき非周期的という。

有限状態で既約かつ非周期的な連鎖では、ある NN について PN\bm P^N のすべての成分が正になることが知られている。次の定理はこの条件から出発する。

定理 12.18(マルコフ連鎖の極限定理 ★★★)

ある NN について、PN\bm P^N のすべての成分が正の定数以上だとする。その定数を ε\varepsilon とおく。このとき定常分布 π\bm\pi がただ1つ存在する。任意の初期分布 π0\bm\pi_0 について、次が成り立つ。

π0Pn→π(n→∞).\bm\pi_0\bm P^n\to\bm\pi\qquad(n\to\infty).

特に Pn\bm P^n の各行は π\bm\pi に収束する。

証明

行ベクトル d\bm d の大きさを ∥d∥1=∑j∣dj∣\lVert \bm d\rVert _1=\sum_j\lvert d_j\rvert で測る。Q=PN\bm Q=\bm P^N とおく。成分の和が 0 の行ベクトル d\bm d について、次を示す(2つの確率ベクトルの差がこれに当たる)。

∥dQ∥1≤(1−mε)∥d∥1.\lVert \bm d\bm Q\rVert _1\le(1-m\varepsilon)\lVert \bm d\rVert _1.

∑idi=0\sum_id_i=0 なので、∑idiqij=∑idi(qij−ε)\sum_id_iq_{ij}=\sum_id_i(q_{ij}-\varepsilon) と書ける。qij−ε≥0q_{ij}-\varepsilon\ge0 だから

∥dQ∥1=∑j∣∑idi(qij−ε)∣≤∑i∣di∣∑j(qij−ε)=(1−mε)∥d∥1.\lVert \bm d\bm Q\rVert _1=\sum_j\Bigl\lvert\sum_id_i(q_{ij}-\varepsilon)\Bigr\rvert\le\sum_i\lvert d_i\rvert \sum_j(q_{ij}-\varepsilon)=(1-m\varepsilon)\lVert \bm d\rVert _1.

また推移確率行列自身についても、同じ計算で ε=0\varepsilon=0 とした ∥dP∥1≤∥d∥1\lVert \bm d\bm P\rVert _1\le\lVert \bm d\rVert _1 が成り立つ。

  1. 一意性。π,π′\bm\pi,\bm\pi' がともに定常分布なら、その差は dQ=d\bm d\bm Q=\bm d を満たす。よって ∥d∥1≤(1−mε)∥d∥1\lVert \bm d\rVert _1\le(1-m\varepsilon)\lVert \bm d\rVert _1 である。mε>0m\varepsilon>0 より d=0\bm d=\bm 0。
  2. 存在と収束。μn=π0Pn\bm\mu_n=\bm\pi_0\bm P^n とおく。n=kN+rn=kN+r(0≤r<N0\le r<N)と書く。番号 ℓ≥n\ell\ge n に対して

∥μℓ−μn∥1=∥(μℓ−n−π0)PrQk∥1≤2(1−mε)k\lVert \bm\mu_\ell-\bm\mu_n\rVert _1=\lVert (\bm\mu_{\ell-n}-\bm\pi_0)\bm P^r\bm Q^k\rVert _1\le2(1-m\varepsilon)^k

なので、{μn}\{\bm\mu_n\} は Cauchy 列であり、極限 π\bm\pi を持つ。μn+1=μnP\bm\mu_{n+1}=\bm\mu_n\bm P で極限をとると π=πP\bm\pi=\bm\pi\bm P で、極限は定常分布である。初期分布によらず同じ極限になることは、2つの初期分布の差に上の縮小を使えば分かる。

この証明から、π0Pn\bm\pi_0\bm P^n は π\bm\pi に指数関数的な速さで近づくことも分かる。実際の速さは、推移確率行列の2番目に大きい固有値の絶対値で決まる(例題 12.7)。既約だが周期的な連鎖では、定常分布は1つだが Pn\bm P^n は収束しない(確認テスト 12.5-3)。

既約な有限状態の連鎖では、さらに次が成り立つ(証明は省く)。

  • 状態 ii から出発して初めて同じ状態に戻るまでの歩数の期待値は、1/πi1/\pi_i である。
  • 関数 gg について、次の時間平均は確率1で ∑jπjg(j)\sum_j\pi_jg(j) に収束する(エルゴード定理)。

1n∑k=1ng(Xk).\frac1n\sum_{k=1}^ng(X_k).

後者は、長い時系列で状態 jj にいた時間の割合が πj\pi_j に近づくことを意味する。第11章のマルコフ連鎖モンテカルロ法は、これを使って定常分布からの標本を作る。

詳細つり合い

すべての i,ji,j について πipij=πjpji\pi_ip_{ij}=\pi_jp_{ji} を満たす確率ベクトルは、定常分布である。jj を固定して ii について和をとると、

∑iπipij=πj∑ipji=πj\sum_i\pi_ip_{ij}=\pi_j\sum_ip_{ji}=\pi_j

となるからである。この条件を詳細つり合いと呼び、満たす連鎖を可逆と呼ぶ。隣どうしにしか移らない連鎖(出生死滅型)では、隣り合う2状態の間の式だけで定常分布が順に決まる。

図

図 12.2 例題 12.7 の3状態マルコフ連鎖の推移図。矢印の数字は1日後の推移確率

例題 12.7 3状態の天気の連鎖 ★★★

オリジナル天気を晴・曇・雨(状態 1, 2, 3)の3状態とし、翌日の天気が今日の天気だけで決まるマルコフ連鎖で表す(図 12.2)。推移確率行列を

P=(0.60.30.10.30.40.30.20.30.5)\bm P=\begin{pmatrix}0.6&0.3&0.1\\0.3&0.4&0.3\\0.2&0.3&0.5\end{pmatrix}

とする。

  1. 今日が晴のとき、2日後が雨である確率を求めよ。
  2. 定常分布を求めよ。
  3. 晴の日から次の晴の日までの日数の期待値を求めよ。
  4. 推移確率行列の固有値が 1, 0.4, 0.11,\ 0.4,\ 0.1 であることを確かめよ。Pn\bm P^n が極限に近づく速さを述べよ。
解答

(1) Chapman–Kolmogorov の等式から

p13(2)=∑lp1lpl3=0.6×0.1+0.3×0.3+0.1×0.5=0.06+0.09+0.05=0.20.p^{(2)}_{13}=\sum_lp_{1l}p_{l3}=0.6\times0.1+0.3\times0.3+0.1\times0.5=0.06+0.09+0.05=0.20.

(2) πP=π\bm\pi\bm P=\bm\pi を成分で書くと

π1=0.6π1+0.3π2+0.2π3,π2=0.3π1+0.4π2+0.3π3,π3=0.1π1+0.3π2+0.5π3.\pi_1=0.6\pi_1+0.3\pi_2+0.2\pi_3,\qquad \pi_2=0.3\pi_1+0.4\pi_2+0.3\pi_3,\qquad \pi_3=0.1\pi_1+0.3\pi_2+0.5\pi_3.

3式の和は恒等式になるので、2式と規格化 π1+π2+π3=1\pi_1+\pi_2+\pi_3=1 を使う。

0.6π2=0.3(π1+π3)=0.3(1−π2)(第2式)π2=1/3,0.4π1=0.3π2+0.2π3=0.1+0.2π3(第1式)=0.1+0.2(2/3−π1)(π1+π3=2/3 を使った)0.6π1=0.1+0.4/3=0.7/3,π1=7/18,π3=2/3−7/18=5/18.\begin{aligned}0.6\pi_2&=0.3(\pi_1+\pi_3)=0.3(1-\pi_2)&&\text{(第2式)}\\ \pi_2&=1/3,\\ 0.4\pi_1&=0.3\pi_2+0.2\pi_3=0.1+0.2\pi_3&&\text{(第1式)}\\ &=0.1+0.2(2/3-\pi_1)&&\text{(}{\pi_1+\pi_3=2/3}\text{ を使った)}\\ 0.6\pi_1&=0.1+0.4/3=0.7/3,\qquad \pi_1=7/18,\\ \pi_3&=2/3-7/18=5/18.\end{aligned}

よって π=(7/18, 1/3, 5/18)=(0.389, 0.333, 0.278)\bm\pi=(7/18,\ 1/3,\ 5/18)=(0.389,\ 0.333,\ 0.278)。

(3) 平均再帰時間は 1/π1=18/7=2.571/\pi_1=18/7=2.57(日)。

(4) 固有多項式 det⁡(xI−P)\det(x\bm I-\bm P) を展開すると、次のように因数分解と一致する。

x3−1.5x2+0.54x−0.04=(x−1)(x−0.4)(x−0.1).x^3-1.5x^2+0.54x-0.04=(x-1)(x-0.4)(x-0.1).

推移確率行列は相異なる固有値を持つので対角化でき、次の形に書ける(A,B\bm A,\bm B は定数行列、1\bm 1 は成分がすべて1の列ベクトル)。

Pn=1π+0.4nA+0.1nB.\bm P^n=\bm 1\bm\pi+0.4^n\bm A+0.1^n\bm B.

したがって極限 1π\bm 1\bm\pi との差は、指数関数 0.4n0.4^n の速さで縮む。n=10n=10 では 0.410≈1.0×10−40.4^{10}\approx1.0\times10^{-4} である。たとえば p11(10)=0.38894p^{(10)}_{11}=0.38894 と π1=0.38889\pi_1=0.38889 の差は、0.00005 ほどである。

到達確率と到達時間

吸収状態(pii=1p_{ii}=1 の状態)を含む連鎖では、§12.2 の第一歩解析がそのまま使える。吸収状態の集合を AA とする。状態 ii から出発して吸収されるまでの歩数の期待値を、μi\mu_i とする。最初の1歩で場合を分けて

μi=1+∑j∉Apijμj(i∉A),μi=0(i∈A)(12.19)\mu_i=1+\sum_{j\notin A}p_{ij}\mu_j\qquad(i\notin A),\qquad \mu_i=0\quad(i\in A)\tag{12.19}

を得る。特定の吸収状態 aa に吸収される確率 hih_i も、次の連立一次方程式の解になる。

hi=∑jpijhj(i∉A),ha=1,hb=0(b∈A, b≠a).h_i=\sum_jp_{ij}h_j\quad(i\notin A),\qquad h_a=1,\qquad h_b=0\quad(b\in A,\ b\ne a).

推移確率の最尤推定

1本の観測列 x0,x1,…,xnx_0,x_1,\dots,x_n から推移確率を推定する。記号を次のように定める。

  • nijn_{ij}:推移 i→ji\to j の回数。つまり「状態 ii の直後に状態 jj が来た回数」。
  • ni⋅=∑jnijn_{i\cdot}=\sum_jn_{ij}:状態 ii から出た推移の回数。

経路の確率 (12.17) を、初期状態 X0=x0X_0=x_0 で条件付けた尤度は

L(P)=∏k=1npxk−1xk=∏i=1m∏j=1mpij nij(12.20)L(\bm P)=\prod_{k=1}^np_{x_{k-1}x_k}=\prod_{i=1}^m\prod_{j=1}^mp_{ij}^{\,n_{ij}}\tag{12.20}

である(同じ推移 i→ji\to j が nijn_{ij} 回現れるので、その数だけ推移確率が掛かる)。

定理 12.19(推移確率の最尤推定量 ★★★)

ni⋅>0n_{i\cdot}>0 とする。尤度 (12.20) を、各行の制約 ∑jpij=1\sum_jp_{ij}=1 のもとで最大にする推移確率は

p^ij=nijni⋅(12.21)\hat p_{ij}=\frac{n_{ij}}{n_{i\cdot}}\tag{12.21}

である。

証明

対数尤度は ℓ(P)=∑i∑jnijlog⁡pij\ell(\bm P)=\sum_i\sum_jn_{ij}\log p_{ij} で、行ごとの和 ℓi=∑jnijlog⁡pij\ell_i=\sum_jn_{ij}\log p_{ij} に分かれる。制約も行ごとに独立なので、行ごとに最大化すればよい。Lagrange 乗数 λi\lambda_i を使って次の関数を作る。

Gi=∑jnijlog⁡pij−λi(∑jpij−1).G_i=\sum_jn_{ij}\log p_{ij}-\lambda_i\Bigl(\sum_jp_{ij}-1\Bigr).

推移確率で偏微分して 0 とおくと、nij/pij=λin_{ij}/p_{ij}=\lambda_i、すなわち pij=nij/λip_{ij}=n_{ij}/\lambda_i。制約に代入して λi=∑jnij=ni⋅\lambda_i=\sum_jn_{ij}=n_{i\cdot} を得る。

これが最大であることは、次のことから従う。ℓi\ell_i は推移確率の凹関数(対数の非負結合)であり、制約が線形なので停留点が最大値を与える。

行 ii の推移の回数 (ni1,…,nim)(n_{i1},\dots,n_{im}) を考える。これは行和を与えたもとで、多項分布 Mult(ni⋅;pi1,…,pim)\mathrm{Mult}(n_{i\cdot};p_{i1},\dots,p_{im}) と同じ形の尤度を持つ。したがって推定量 (12.21) は、多項分布の割合の最尤推定量と同じ形である。観測列が長いとき、近似的に次が成り立つ。

p^ij≈N(pij, pij(1−pij)ni⋅)(ni⋅ は約 nπi).\hat p_{ij}\approx\mathrm{N}\Bigl(p_{ij},\ \frac{p_{ij}(1-p_{ij})}{n_{i\cdot}}\Bigr)\qquad(n_{i\cdot}\text{ は約 }n\pi_i).

独立性の尤度比検定

観測列が実はマルコフ性を持たず、各時刻に独立に同じ分布 (p1,…,pm)(p_1,\dots,p_m) から出ているのではないか、という仮説を考える。

H0:pij=pj(すべての行が等しい)H_0:p_{ij}=p_j\quad(\text{すべての行が等しい})

を、一般のマルコフ連鎖 H1H_1 に対して検定する。

帰無仮説のもとでは、尤度が ∏jpj n⋅j\prod_jp_j^{\,n_{\cdot j}}(n⋅j=∑inijn_{\cdot j}=\sum_in_{ij})となる。最尤推定量は p^j=n⋅j/n\hat p_j=n_{\cdot j}/n である。対立仮説のもとでは (12.21) である。最大対数尤度の差の2倍は

G2=2∑i,jnijlog⁡nijni⋅−2∑i,jnijlog⁡n⋅jn=2∑i,jnijlog⁡nij nni⋅ n⋅j(12.22)G^2=2\sum_{i,j}n_{ij}\log\frac{n_{ij}}{n_{i\cdot}}-2\sum_{i,j}n_{ij}\log\frac{n_{\cdot j}}{n}=2\sum_{i,j}n_{ij}\log\frac{n_{ij}\,n}{n_{i\cdot}\,n_{\cdot j}}\tag{12.22}

となる。自由パラメータの数は、対立仮説で m(m−1)m(m-1)、帰無仮説で m−1m-1 である。第7章の尤度比検定の漸近理論から、帰無仮説のもとで G2G^2 は近似的にカイ二乗分布に従う。その自由度は次のとおりである。

m(m−1)−(m−1)=(m−1)2.m(m-1)-(m-1)=(m-1)^2.

G2>χ(m−1)22(α)G^2>\chi^2_{(m-1)^2}(\alpha) なら、帰無仮説を棄却する。

式 (12.22) は、分割表の独立性の検定の G2G^2 統計量と同じ形である。推移の回数の表を「前の状態 × 次の状態」の分割表とみなしたものになっている。

例題 12.8 推移の回数からの推定と検定 ★★★

オリジナル3状態の過程を91時点観測し、90回の推移を数えたところ、次の表を得た(行が前の状態、列が次の状態)。

(nij)=(2082614104818)(n_{ij})=\begin{pmatrix}20&8&2\\6&14&10\\4&8&18\end{pmatrix}

  1. 推移確率の最尤推定値を求めよ。
  2. p^11\hat p_{11} の標準誤差を近似的に求めよ。
  3. 推定した推移確率行列の定常分布を求めよ。
  4. 各時刻に独立に同じ分布から出るという帰無仮説を、有意水準 5%5\% の尤度比検定で検定せよ。
解答

(1) 行和はすべて 30 なので、(12.21) から

P^=(2/34/151/151/57/151/32/154/153/5)=(0.6670.2670.0670.2000.4670.3330.1330.2670.600).\hat{\bm P}=\begin{pmatrix}2/3&4/15&1/15\\1/5&7/15&1/3\\2/15&4/15&3/5\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0.667&0.267&0.067\\0.200&0.467&0.333\\0.133&0.267&0.600\end{pmatrix}.

(2) 近似の標準誤差は

p^11(1−p^11)n1⋅=(2/3)(1/3)30=0.007407=0.0861.\sqrt{\frac{\hat p_{11}(1-\hat p_{11})}{n_{1\cdot}}}=\sqrt{\frac{(2/3)(1/3)}{30}}=\sqrt{0.007407}=0.0861.

(3) 列和も 30 ですべて等しい。このとき推定した行列の各列の和は ∑inij/30=1\sum_in_{ij}/30=1 となる。π=(1/3,1/3,1/3)\bm\pi=(1/3,1/3,1/3) について

(πP^)j=13∑ip^ij=13(\bm\pi\hat{\bm P})_j=\frac13\sum_i\hat p_{ij}=\frac13

なので、一様分布が定常分布である。推定した行列の成分はすべて正なので、定理 12.18 からこれが唯一の定常分布である。

(4) 推移は 90 回で、行和・列和はすべて 30 なので、nijn/(ni⋅n⋅j)=nij/10n_{ij}n/(n_{i\cdot}n_{\cdot j})=n_{ij}/10 である。よって

G2=2∑i,jnijlog⁡nij10.G^2=2\sum_{i,j}n_{ij}\log\frac{n_{ij}}{10}.

各項 nijlog⁡(nij/10)n_{ij}\log(n_{ij}/10) は次の表のとおりである。

20log⁡220\log28log⁡0.88\log0.8(2か所)2log⁡0.22\log0.26log⁡0.66\log0.614log⁡1.414\log1.410log⁡110\log14log⁡0.44\log0.418log⁡1.818\log1.8
13.86313.863−1.785-1.785−3.219-3.219−3.065-3.0654.7114.71100−3.665-3.66510.58010.580

合計は

13.863−3.570−3.219−3.065+4.711+0−3.665+10.580=15.63413.863-3.570-3.219-3.065+4.711+0-3.665+10.580=15.634

で、G2=31.27G^2=31.27 である。自由度は (3−1)2=4(3-1)^2=4 である。χ42(0.05)=9.488\chi^2_4(0.05)=9.488 を大きく超えるので、帰無仮説を棄却する(p 値は約 3×10−63\times10^{-6})。対角の回数が大きく、同じ状態が続きやすいという依存がデータに表れている。

確認テスト

オリジナル

  1. 12.5-1 2状態の連鎖(0<a,b<10<a,b<1)

P=(1−aab1−b)\bm P=\begin{pmatrix}1-a&a\\b&1-b\end{pmatrix}

について、定常分布を求めよ。また次の式を数学的帰納法で示せ。

Pn=1a+b(baba)+(1−a−b)na+b(a−a−bb).\bm P^n=\frac{1}{a+b}\begin{pmatrix}b&a\\b&a\end{pmatrix}+\frac{(1-a-b)^n}{a+b}\begin{pmatrix}a&-a\\-b&b\end{pmatrix}. 2. 12.5-2 状態 {1,2,3}\{1,2,3\} の連鎖で、状態3は吸収状態とする。ほかの推移確率は次のとおりである。

p11=0.5,p12=0.5,p21=0.3,p22=0.2,p23=0.5.p_{11}=0.5,\quad p_{12}=0.5,\quad p_{21}=0.3,\quad p_{22}=0.2,\quad p_{23}=0.5.

状態1から出発して状態3に吸収されるまでの歩数の期待値を求めよ。3. 12.5-3 状態 {0,1,2,3}\{0,1,2,3\} の連鎖で、推移確率を次のように定める(3個の玉が2つの箱を行き来する模型)。

pi,i−1=i3,pi,i+1=3−i3.p_{i,i-1}=\frac i3,\qquad p_{i,i+1}=\frac{3-i}{3}.

詳細つり合いを使って定常分布を求めよ。また p00(n)p^{(n)}_{00} が n→∞n\to\infty で収束しない理由を述べよ。4. 12.5-4 2状態の観測列 1,1,2,1,2,2,2,1,1,21,1,2,1,2,2,2,1,1,2 から推移の回数 nijn_{ij} を数え、推移確率の最尤推定値を求めよ。

木下の勉強ステータス

木下はまだこの記事を勉強していません。

AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com

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