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Liouville の定理

2026年10月22日10分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第14章 シンプレクティック幾何と解析力学
目次
  1. 流れは正準2形式を保つ
  2. 相空間の体積
  3. 分布関数の時間発展と物理の例
  4. 確認テスト
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

物理のための微分幾何入門 第14章 §14.3 ★★★ Hamilton の流れは ω\omega を保ち、したがって相空間の体積を保つ

流れは正準2形式を保つ

定理 14.15(正準2形式の保存)

Hamilton ベクトル場の流れ Φt\Phi_t について、次が成り立つ。

LXHω=0,Φt∗ω=ω\mathcal L_{X_H}\omega=0,\qquad \Phi_t^*\omega=\omega

証明

Cartan の公式 (14.1) に、dω=0\mathrm{d}\omega=0 と (14.8) を入れる。

LXHω=ιXHdω+d ιXHω=0+d(−dH)=−d2H=0\mathcal L_{X_H}\omega=\iota_{X_H}\mathrm{d}\omega+\mathrm{d}\,\iota_{X_H}\omega=0+\mathrm{d}(-\mathrm{d} H)=-\mathrm{d}^2H=0

(14.1) の2つ目の式から、引き戻しの時間微分は次のとおりである。

ddtΦt∗ω=Φt∗LXHω=0\frac{d }{d t}\Phi_t^*\omega=\Phi_t^*\mathcal L_{X_H}\omega=0

時刻0では Φ0∗ω=ω\Phi_0^*\omega=\omega なので、どの時刻でも Φt∗ω=ω\Phi_t^*\omega=\omega である。

証明に使ったのは、ω\omega が閉であることと、ιXHω\iota_{X_H}\omega が完全形式であることの2つだけである。逆向きの命題も成り立つ。

命題 14.16(局所 Hamilton ベクトル場)

ベクトル場 XX が LXω=0\mathcal L_X\omega=0 を満たすとする。このとき、各点の可縮な近傍で ιXω=−dH\iota_X\omega=-\mathrm{d} H となる関数が存在する。

証明

Cartan の公式から LXω=d ιXω\mathcal L_X\omega=\mathrm{d}\,\iota_X\omega なので、1形式 ιXω\iota_X\omega は閉である。Poincaré の補題により、可縮な近傍ではある関数 HH で ιXω=−dH\iota_X\omega=-\mathrm{d} H と書ける。

この関数は相空間全体で1価とは限らない。単振り子の相空間の円柱で X=∂pX=\partial_p をとると、ιXω=dq\iota_X\omega=\mathrm{d} q である。したがって局所には H=−qH=-q と書けるが、qq は円の角度なので、円柱全体では1価の関数にならない。局所と大域の食い違いは、§14.4 の正準変換と §14.6 の保存量でもう一度現れる。

相空間の体積

補題 14.17(正準2形式の冪)

正準2形式のウェッジ積を nn 回とったものは、次の形の 2n2n 形式である。

ωn=n!  dp1∧dq1∧dp2∧dq2∧⋯∧dpn∧dqn(14.15)\omega^n=n!\;\mathrm{d} p_1\wedge\mathrm{d} q^1\wedge\mathrm{d} p_2\wedge\mathrm{d} q^2\wedge\dots\wedge\mathrm{d} p_n\wedge\mathrm{d} q^n\tag{14.15}

とくに ωn\omega^n はどこでも0にならない。

証明

σi=dpi∧dqi\sigma_i=\mathrm{d} p_i\wedge\mathrm{d} q^i と置く。2形式どうしは可換なので、ωn=(σ1+⋯+σn)n\omega^n=(\sigma_1+\dots+\sigma_n)^n は多項式のように展開できる。同じ σi\sigma_i を2回含む項は、dqi∧dqi=0\mathrm{d} q^i\wedge\mathrm{d} q^i=0 を含むので消える。

残るのは、σ1,…,σn\sigma_1,\dots,\sigma_n を1回ずつ含む項である。その数は n!n! 個で、可換性からどれも σ1∧⋯∧σn\sigma_1\wedge\dots\wedge\sigma_n に等しい。

定理 14.18(Liouville)

相空間の体積要素を、正準座標で dnq dnp\mathrm{d}^nq\,\mathrm{d}^np とする。Hamilton の流れ Φt\Phi_t は体積を保つ。すなわち相空間の有界な領域 DD について

∫Φt(D)dnq dnp=∫Ddnq dnp(14.16)\int_{\Phi_t(D)}\mathrm{d}^nq\,\mathrm{d}^np=\int_D\mathrm{d}^nq\,\mathrm{d}^np\tag{14.16}

が成り立つ。

証明

定理 14.15 と、引き戻しがウェッジ積と可換であることから

Φt∗(ωn)=(Φt∗ω)n=ωn\Phi_t^*(\omega^n)=(\Phi_t^*\omega)^n=\omega^n

である。Φt\Phi_t は恒等写像から連続につながっているので、向きを保つ。積分の変数変換(第12章 §12.3)から次を得る。

∫Φt(D)ωnn!=∫DΦt∗ωnn!=∫Dωnn!\int_{\Phi_t(D)}\frac{\omega^n}{n!}=\int_D\Phi_t^*\frac{\omega^n}{n!}=\int_D\frac{\omega^n}{n!}

補題 14.17 から、ωn/n!\omega^n/n! の積分は符号を除いて dnq dnp\mathrm{d}^nq\,\mathrm{d}^np の積分に等しい。

座標で書くと、Liouville の定理は XHX_H の発散が0であることに当たる。

div⁡XH=∑i(∂∂qi∂H∂pi+∂∂pi(−∂H∂qi))=0\operatorname{div}X_H=\sum_i\Bigl(\frac{\partial }{\partial q^i}\frac{\partial H}{\partial p_i}+\frac{\partial }{\partial p_i}\Bigl(-\frac{\partial H}{\partial q^i}\Bigr)\Bigr)=0

2階偏微分の順序を入れ替えると打ち消し合うので、この計算に Hamiltonian の具体形は要らない。

図 14.3 は、単振り子の相空間で初期値を円板に並べて流したものである。円板は時間とともに大きく引き伸ばされて曲がるが、面積は変わらない。振れの大きい軌道ほど周期が長いので、外側の点が内側の点より遅れ、領域は渦状に巻き込まれていく。

図

図 14.3 単振り子 H=p2/2−cos⁡qH=p^2/2-\cos q の相空間で、中心 (0, 1.3)(0,\,1.3)・半径 0.40.4 の円板の初期値を流した様子(数値積分)。灰色の破線はセパラトリクス p=±2cos⁡(q/2)p=\pm2\cos(q/2) である。t=0,2,4t=0,2,4 の3つの領域の面積は、どれも π×0.42≈0.503\pi\times0.4^2\approx0.503 に等しい。

分布関数の時間発展と物理の例

相空間に多数の系を、初期値を変えて並べる。その密度を ρ(q,p,t)\rho(q,p,t) とする。各系は流れに乗って動き、系の数は増えも減りもしない。Liouville の定理から体積も保たれるので、流れに乗って見た密度は一定である。

0=dρdt=∂ρ∂t+{ρ,H}0=\frac{d \rho}{d t}=\frac{\partial \rho}{\partial t}+\{\rho,H\}

したがって密度は、次の Liouville 方程式に従う。

∂ρ∂t={H,ρ}(14.17)\frac{\partial \rho}{\partial t}=\{H,\rho\}\tag{14.17}

統計力学の平衡分布は、この方程式の時間によらない解である。

1変数関数 ff について {H,f(H)}=f′(H){H,H}=0\{H,f(H)\}=f'(H)\{H,H\}=0 である。したがって、密度が ρ=f(H)\rho=f(H) の形なら右辺は0になる。小正準分布(等エネルギー面に一様な分布)と正準分布 ρ∝e−βH\rho\propto\mathrm{e}^{-\beta H} は、どちらもこの形である。等エネルギー面の上で「一様」という言い方が座標によらない意味を持つのは、流れが保つ体積があるからである。

摩擦のある系は Hamilton 系でない。この違いは体積の振る舞いに出る。

例題 14.4 自由落下と減衰振動の相空間の面積 ★★

オリジナル

  1. (1) 一様な重力のもとの鉛直運動 H=p2/2m+mgqH=p^2/2m+mgq を考える。時刻0に正方形 [0,a]×[0,b][0,a]\times[0,b] にある初期値の集まりは、時刻 tt にどんな形になるか。その面積も求めよ。
  2. (2) 減衰振動の方程式を次のように置く(γ>0\gamma>0)。右辺のベクトル場の発散を求め、相空間の領域の面積が e−γt\mathrm{e}^{-\gamma t} 倍になることを示せ。

q˙=pm,p˙=−mω02q−γp\dot q=\frac pm,\qquad \dot p=-m\omega_0^2q-\gamma p 3. (3) (2) の系が Hamilton 系でないことを説明せよ。

解答

(1) Hamilton 方程式 q˙=p/m\dot q=p/m、p˙=−mg\dot p=-mg を解く。

q(t)=q0+p0mt−12gt2,p(t)=p0−mgtq(t)=q_0+\frac{p_0}{m}t-\frac12gt^2,\qquad p(t)=p_0-mgt

初期値への依存は1次式で、行列は次のとおりである。

∂(q,p)∂(q0,p0)=(1t/m01)\frac{\partial (q,p)}{\partial (q_0,p_0)}=\begin{pmatrix}1&t/m\\0&1\end{pmatrix}

正方形は、全体が (−gt2/2, −mgt)(-gt^2/2,\,-mgt) だけ平行移動する。そのうえで、運動量の大きい点ほど qq の正の向きへずれる平行四辺形になる。行列式が1なので、面積は abab のまま変わらない。

(2) 発散は次のとおりである。

div⁡X=∂∂qpm+∂∂p(−mω02q−γp)=−γ\operatorname{div}X=\frac{\partial }{\partial q}\frac pm+\frac{\partial }{\partial p}\bigl(-m\omega_0^2q-\gamma p\bigr)=-\gamma

領域 D(t)D(t) の面積を A(t)A(t) とする。その変化率は、境界で流れが外へ押し出す割合、すなわち発散の積分に等しい(Gauss の定理、第12章 §12.4)。

dAdt=∫D(t)div⁡X dq dp=−γA\frac{d A}{d t}=\int_{D(t)}\operatorname{div}X\,\mathrm{d} q\,\mathrm{d} p=-\gamma A

これを解いて A(t)=A(0)e−γtA(t)=A(0)\mathrm{e}^{-\gamma t} を得る。

(3) Hamilton ベクトル場の発散は必ず0である。(2) の発散は −γ≠0-\gamma\ne0 なので、どんな関数を選んでもこの系を Hamilton ベクトル場として書くことはできない。相空間の点はすべて原点へ吸い込まれ、面積は0へ向かう。

確認テスト

オリジナル

  1. 14.3-1 自由度1の H=p2/2m+V(q)H=p^2/2m+V(q) について、div⁡XH=0\operatorname{div}X_H=0 を直接確かめよ。
  2. 14.3-2 H=qpH=qp の流れを求めよ。時刻0に正方形 [1,2]×[1,2][1,2]\times[1,2] にある領域が時刻 tt に移る先を求め、その面積が1であることを確かめよ。
  3. 14.3-3 n=2n=2 の等方的な調和振動子を考える。

H=∑i=12(pi22m+mω02qi22)H=\sum_{i=1}^2\Bigl(\frac{p_i^2}{2m}+\frac{m\omega_0^2q_i^2}{2}\Bigr)

エネルギーが EE と E+ΔEE+\Delta E の間にある殻の体積を、幅の1次まで求めよ。半径 RR の4次元の球の体積は π2R4/2\pi^2R^4/2 である。4. 14.3-4 Hamilton 系には漸近安定な平衡点(近くのすべての初期値がそこへ近づく点)が無いことを、Liouville の定理を使って示せ。5. 14.3-5 正準分布 ρ=e−βH/Z\rho=\mathrm{e}^{-\beta H}/Z が Liouville 方程式 (14.17) の時間によらない解であることを、(14.11) から直接確かめよ。

木下の勉強ステータス

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