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確率過程の定義とフィルトレーション

2026年10月15日18分で読めますAI生成教科書『基礎理論』第14章 確率過程とマルコフ連鎖
目次
  1. 確率過程と見本路
  2. 有限次元分布と Kolmogorov の拡張定理
  3. フィルトレーションと適合
  4. 停止時刻
  5. 確認テスト
  6. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

確率論入門 第14章 §14.1 ★★★ 確率過程は同じ確率空間の上の確率変数の族。時刻 tt までの情報は σ加法族の増大列で表す

第13章までは、確率変数を1つずつ、あるいは独立な列としてまとめて扱ってきた。大数の法則と中心極限定理は、独立な確率変数の和 Sn=X1+⋯+XnS_n=X_1+\cdots+X_n が、項の数を増やしたときにどう振る舞うかを述べる定理だった。この章では、添字 nn を「時刻」と読み、時刻とともに値が変わっていく偶然の対象そのもの、すなわち確率過程を扱う。

この章で作るものは3つある。

  1. 確率過程の一般的な枠組み(§14.1)。確率変数の族、有限次元分布、時刻 tt までに得られる情報を表す σ加法族の増大列(フィルトレーション)、未来を見ずに決められる時刻(停止時刻)を定義する。
  2. 独立増分過程(§14.2・§14.3)。重なりのない時間区間での増え方が互いに独立な過程で、Poisson 過程と Brown 運動がその代表である。Poisson 過程については、到着の間隔・間引き・重ね合わせを証明する。
  3. マルコフ連鎖(§14.4・§14.5)。「現在の状態が分かれば、過去は未来の予測に役立たない」という性質を持つ離散時間の過程で、遷移確率行列で記述される。状態のあいだの到達可能性で状態空間をクラスに分け、閉集合と周期を定義する。

前の章から借りる結果を式の形で先に書いておく。第4章 §4.1 の乗法公式

P(A0∩A1∩⋯∩An)=P(A0) P(A1∣A0) P(A2∣A0∩A1)⋯P(An∣A0∩⋯∩An−1)(14.1)P(A_0\cap A_1\cap\cdots\cap A_n)=P(A_0)\,P(A_1\mid A_0)\,P(A_2\mid A_0\cap A_1)\cdots P(A_n\mid A_0\cap\cdots\cap A_{n-1})\tag{14.1}

と全確率の公式は、マルコフ連鎖の同時分布を計算するときの基本の道具になる。第4章 §4.2 の「重ならない組の σ加法族は独立」(まとめ方の補題)は、独立増分を扱うときに繰り返し使う。

第6章の分布の名前とパラメータはそのまま使う。とくに次の4つを使う。

  • Poisson 分布 Po(λ)\mathrm{Po}(\lambda)。
  • 指数分布 Ex(λ)\mathrm{Ex}(\lambda)。密度は λe−λx\lambda\mathrm{e}^{-\lambda x} である。
  • ガンマ分布 Ga(n,λ)\mathrm{Ga}(n,\lambda)。nn が自然数のときは Erlang 分布と呼ぶ。
  • 多変量正規分布 Nd(μ,Σ)\mathrm N_d(\bm\mu,\Sigma)。

第7章 §7.4 からは、Poisson 個の Bernoulli 試行の成功数と失敗数が独立な Poisson 分布に従うこと(間引き)を借りる。Lebesgue 測度は第2章にならって Leb\mathrm{Leb} と書く。

この章の結果は第15章で直接使う。第15章では、マルコフ連鎖が長い時間のあとにどう振る舞うか(再帰と過渡・定常分布・エルゴード定理)を調べる。その議論は、この章で定める遷移確率行列、Chapman–Kolmogorov 方程式、強マルコフ性、クラス分け、周期の上に組み立てられる。

確率過程と見本路

時間とともに変わる偶然の量を、例を2つ挙げて考える。

  • 公正な硬貨を繰り返し投げ、表なら1歩進み、裏なら1歩戻る点を考える。時刻 n=0,1,2,…n=0,1,2,\dots での位置 SnS_n は、各時刻ごとに確率変数である。
  • ある窓口に客が来た回数を、時刻 t≥0t\ge0 まで数えた値を NtN_t とする。これは連続な時刻ごとに確率変数である。

どちらの例でも、1つの標本点 ω\omega を固定すると、時刻の関数が1本決まる。

n↦Sn(ω),t↦Nt(ω)n\mapsto S_n(\omega),\qquad t\mapsto N_t(\omega)

偶然によって「関数が1本選ばれる」と見ることもできる。

定義 14.1(確率過程)

(Ω,F,P)(\Omega,\mathcal F,P) を確率空間、TT を添字の集合とする。この章では TT は次のどちらかで、元を時刻と呼ぶ。

N0={0,1,2,… }(離散時間),[0,∞)(連続時間)\mathbb{N}_0=\{0,1,2,\dots\}\quad(\text{離散時間}),\qquad[0,\infty)\quad(\text{連続時間})

(S,S)(S,\mathcal S) を可測空間とし、状態空間と呼ぶ。各時刻 tt について、写像 Xt:Ω→SX_t:\Omega\to S が可測であるとする。ここで可測とは F/S\mathcal F/\mathcal S-可測の意味である。このとき族 X=(Xt)t∈TX=(X_t)_{t\in T} を確率過程と呼ぶ。

ω\omega を固定して得られる関数 t↦Xt(ω)t\mapsto X_t(\omega) を、その標本点に対応する見本路(標本路)と呼ぶ。

この章の状態空間は次のどちらかである。

  • 実数全体 R\mathbb{R}。σ加法族は B(R)\mathcal B(\mathbb{R}) をとる。
  • 整数の集合のような可算集合 SS。σ加法族は SS のすべての部分集合をとる。

可算集合の場合は、すべての i∈Si\in S で {Xt=i}∈F\{X_t=i\}\in\mathcal F が成り立てば可測になる。どの部分集合 B⊂SB\subset S についても、次のように可算和で書けるからである。

{Xt∈B}=⋃i∈B{Xt=i}\{X_t\in B\}=\bigcup_{i\in B}\{X_t=i\}

代表的な確率過程

  1. 独立同分布の列。X0,X1,…X_0,X_1,\dots が独立で同じ分布に従うとき、これは離散時間の過程である。時刻のあいだに何の関係も無い、最も単純な過程である。
  2. ランダムウォーク。ξ1,ξ2,…\xi_1,\xi_2,\dots を独立同分布の整数値の確率変数とし、次のように置く。

S0=0,Sn=ξ1+⋯+ξnS_0=0,\qquad S_n=\xi_1+\cdots+\xi_n

とくに P(ξk=1)=pP(\xi_k=1)=p、P(ξk=−1)=1−pP(\xi_k=-1)=1-p のとき、単純ランダムウォークと呼ぶ。さらに p=12p=\frac12 のとき対称単純ランダムウォークと呼ぶ。3. 連続時間の例。Y∼N(0,1)Y\sim\mathrm N(0,1) を1つ用意し Xt=tYX_t=tY と置くと、見本路はすべて原点を通る直線である。偶然性は傾き YY の1つだけにある。

有限次元分布と Kolmogorov の拡張定理

1つの時刻 tt の分布 PXtP_{X_t} だけでは、過程の性質はほとんど分からない。たとえば次の2つの過程を比べる。

  • Xt=tYX_t=tY(上の例)。
  • 各時刻で独立に N(0,t2)\mathrm N(0,t^2) に従う値をとる過程。

2つはどの時刻でも同じ分布を持つが、見本路の形はまったく異なる。そこで、有限個の時刻での値を同時に見る。

定義 14.2(有限次元分布)

状態空間が R\mathbb{R} の過程 XX を考える。相異なる時刻 t1,…,tn∈Tt_1,\dots,t_n\in T について、確率ベクトル (Xt1,…,Xtn)(X_{t_1},\dots,X_{t_n}) の同時分布

μt1⋯tn(B)=P((Xt1,…,Xtn)∈B)(B∈B(Rn))\mu_{t_1\cdots t_n}(B)=P\bigl((X_{t_1},\dots,X_{t_n})\in B\bigr)\qquad(B\in\mathcal B(\mathbb{R}^n))

を XX の有限次元分布と呼ぶ。2つの過程の有限次元分布がすべて一致するとき、2つの過程は同じ法則を持つという。

有限次元分布の族は、次の2つの両立条件を自動的に満たす。

  1. (i) 並べ替え。(t1,…,tn)(t_1,\dots,t_n) を置換 σ\sigma で並べ替えると、分布も座標を同じように並べ替えたものになる。
  2. (ii) 周辺化。時刻を1つ増やしてから、その座標について全体を積分すると元に戻る。

μt1⋯tntn+1(B×R)=μt1⋯tn(B)\mu_{t_1\cdots t_n t_{n+1}}(B\times\mathbb{R})=\mu_{t_1\cdots t_n}(B)

(ii) は次の事象の等式から明らかである。

{(Xt1,…,Xtn)∈B}={(Xt1,…,Xtn+1)∈B×R}\{(X_{t_1},\dots,X_{t_n})\in B\}=\{(X_{t_1},\dots,X_{t_{n+1}})\in B\times\mathbb{R}\}

逆に、両立条件を満たす分布の族が与えられたとき、それを有限次元分布に持つ過程が存在するかが問題になる。これに答えるのが次の定理である。

定理 14.3(Kolmogorov の拡張定理(主張)★★)

TT を任意の添字集合とする。相異なる有限個の時刻 t1,…,tn∈Tt_1,\dots,t_n\in T ごとに、確率測度 μt1⋯tn\mu_{t_1\cdots t_n} が与えられているとする。これは nn 次元の空間の上の測度である。これらは両立条件 (i)(ii) を満たすとする。

標本空間・座標写像・σ加法族を次のように定める。

  • Ω=RT\Omega=\mathbb{R}^T は、添字集合から実数への関数全体である。
  • 座標写像を Xt(ω)=ω(t)X_t(\omega)=\omega(t) と置く。
  • F\mathcal F は、すべての座標写像を可測にする最小の σ加法族である。

このとき (Ω,F)(\Omega,\mathcal F) の上に、次を満たす確率測度 PP がただ1つ存在する。

  • 過程 (Xt)t∈T(X_t)_{t\in T} の有限次元分布が μt1⋯tn\mu_{t_1\cdots t_n} に一致する。

証明の筋を述べる。

  1. 筒集合。有限個の時刻での値だけで決まる次の形の集合を、筒集合と呼ぶ。

C={ω:(ω(t1),…,ω(tn))∈B}C=\{\omega:(\omega(t_1),\dots,\omega(t_n))\in B\}

筒集合の全体は有限加法族をなし、F\mathcal F を生成する。2. 値の割り当て。筒集合に P(C)=μt1⋯tn(B)P(C)=\mu_{t_1\cdots t_n}(B) と値を割り当てる。同じ筒集合を別の時刻の組で表しても、両立条件により値は変わらない。3. 拡張。この PP が筒集合の上で可算加法的であることを示せばよい。そうすれば第2章 §2.2 の Carathéodory の拡張定理から、F\mathcal F 上の確率測度に延びる。一意性は第2章 §2.3 の Dynkin の定理から従う。

可算加法性の証明には、Rn\mathbb{R}^n 上の確率測度がコンパクト集合で内側から近似できること(内部正則性)を使う。完全な証明は測度論の本に譲る。

拡張定理で作れないもの

  • 可算個の時刻で決まる事象しか入らない。RT\mathbb{R}^T 上の σ加法族 F\mathcal F の元は、どれも可算個の時刻の値だけで決まる。連続時間で「見本路が連続である」という事象は非可算個の時刻に依存するので、F\mathcal F に入らない。
  • 連続な見本路は別に作る。Brown 運動(§14.2)のように見本路の連続性を要求する過程は、拡張定理で有限次元分布を実現したうえで、見本路を連続なものに取り替える操作を加えて作る。

離散時間の過程では拡張定理を使わずに済むことが多い。独立同分布の列は第4章 §4.2 で [0,1)[0,1) 上に具体的に作った。§14.4 のマルコフ連鎖も、独立な一様乱数の列から具体的に作る。

フィルトレーションと適合

時刻が進むにつれて、観測者が知っている情報は増えていく。第1章と第3章で見たように、σ加法族は「その事象が起きたかどうかを判定できる事象の全体」と読むことができる。この読み方を時刻ごとに使う。

定義 14.4(フィルトレーション)

確率空間 (Ω,F,P)(\Omega,\mathcal F,P) 上の σ加法族の族 (Ft)t∈T(\mathcal F_t)_{t\in T} が次を満たすとき、これをフィルトレーションと呼ぶ。

s≤t ⟹ Fs⊂Ft⊂Fs\le t\ \Longrightarrow\ \mathcal F_s\subset\mathcal F_t\subset\mathcal F

過程 XX が (Ft)(\mathcal F_t) に適合しているとは、次が成り立つことをいう。

各時刻 t で Xt が Ft-可測\text{各時刻 }t\text{ で }X_t\text{ が }\mathcal F_t\text{-可測}

FtX=σ(Xs:s≤t, s∈T)\mathcal F^X_t=\sigma(X_s:s\le t,\ s\in T)

を XX の自然なフィルトレーションと呼ぶ。これは時刻 tt までの値の全体が生成する σ加法族で、過程を適合させる最小のフィルトレーションである。

Ft\mathcal F_t の元は「時刻 tt までの観測で、起きたかどうかが判定できる事象」である。包含 Fs⊂Ft\mathcal F_s\subset\mathcal F_t は、一度得た情報は失われないことを表す。ランダムウォークでは次のようになる(確認テスト 14.1-3)。

FnS=σ(S0,…,Sn)=σ(ξ1,…,ξn)\mathcal F^S_n=\sigma(S_0,\dots,S_n)=\sigma(\xi_1,\dots,\xi_n)

この σ加法族の元は、最初の nn 回の硬貨の結果だけで決まる事象の全体である。

停止時刻

第7章 §7.4 の Wald の等式では、次の性質をもつ回数 NN が現れた。

  • nn 回目を行うかどうかが、n−1n-1 回目までの結果だけで決まる。

これをフィルトレーションの言葉で定める。

定義 14.5(停止時刻)

離散時間のフィルトレーション (Fn)n∈N0(\mathcal F_n)_{n\in\mathbb{N}_0} を考える。写像 τ:Ω→N0∪{∞}\tau:\Omega\to\mathbb{N}_0\cup\{\infty\} が

{τ≤n}∈Fn(n=0,1,2,… )(14.2)\{\tau\le n\}\in\mathcal F_n\qquad(n=0,1,2,\dots)\tag{14.2}

を満たすとき、τ\tau を (Fn)(\mathcal F_n) の停止時刻と呼ぶ。連続時間では、すべての時刻 t≥0t\ge0 で {τ≤t}∈Ft\{\tau\le t\}\in\mathcal F_t を要求する。

(14.2) は「時刻 nn の時点で、もう止まったかどうかを、そこまでの情報だけで判定できる」ことを述べている。離散時間では、(14.2) は

{τ=n}∈Fn(n=0,1,2,… )(14.3)\{\tau=n\}\in\mathcal F_n\qquad(n=0,1,2,\dots)\tag{14.3}

と同値である。両向きを確かめる。

  • (14.2) を仮定すると、次の差の両方の項が Fn\mathcal F_n に入る(Fn−1⊂Fn\mathcal F_{n-1}\subset\mathcal F_n)。

{τ=n}={τ≤n}∖{τ≤n−1}\{\tau=n\}=\{\tau\le n\}\setminus\{\tau\le n-1\}

  • (14.3) を仮定すると、次の和の各項が Fk⊂Fn\mathcal F_k\subset\mathcal F_n に入る。

{τ≤n}=⋃k=0n{τ=k}\{\tau\le n\}=\bigcup_{k=0}^n\{\tau=k\}

停止時刻の最も重要な例は、ある集合に初めて入る時刻である。

命題 14.6(到達時刻は停止時刻 ★★★)

離散時間の過程 XX が (Fn)(\mathcal F_n) に適合しているとする。集合 A∈SA\in\mathcal S について

τA=inf⁡{n≥0:Xn∈A},TA=inf⁡{n≥1:Xn∈A}\tau_A=\inf\{n\ge0:X_n\in A\},\qquad T_A=\inf\{n\ge1:X_n\in A\}

(inf⁡∅=∞\inf\emptyset=\infty)は、どちらも停止時刻である。

証明

τA\tau_A については

{τA=n}={X0∉A}∩⋯∩{Xn−1∉A}∩{Xn∈A}\{\tau_A=n\}=\{X_0\notin A\}\cap\cdots\cap\{X_{n-1}\notin A\}\cap\{X_n\in A\}

である。時刻 k≤nk\le n の値 XkX_k は、その時刻の σ加法族について可測である。さらに Fk⊂Fn\mathcal F_k\subset\mathcal F_n なので、右辺の各事象は Fn\mathcal F_n に入る。

TAT_A も、上の式の共通部分を時刻 1 から始めれば同じである。時刻 0 では {TA=0}=∅\{T_A=0\}=\emptyset である。(14.3) により、どちらも停止時刻である。

TAT_A は時刻 0 を数えない到達時刻である。X0∈AX_0\in A のときは「いったん出てから戻ってくる時刻」になる。§14.5 と第15章では、1点 A={j}A=\{j\} への到達時刻 Tj=T{j}T_j=T_{\{j\}} を使う。

これに対し、「最後に AA にいた時刻」は一般に停止時刻ではない。最後かどうかは、その後の値を見なければ判定できないからである。例題 14.1 でこの違いを具体的に確かめる。

落とし穴

  • 停止時刻は値 ∞\infty をとってよい。対称単純ランダムウォークが +1+1 に達する時刻は確率 1 で有限である(第15章)。一方、偏りのあるランダムウォークが逆向きの点に達する時刻は、正の確率で ∞\infty になる。P(τ<∞)=1P(\tau<\infty)=1 は定義に含めない。
  • 定数も停止時刻。τ≡m\tau\equiv m なら、{τ≤n}\{\tau\le n\} は空集合か全体である。どちらも Fn\mathcal F_n に入る。

例題 14.1 ランダムウォークの到達時刻と最後の零 ★★

オリジナルSnS_n を対称単純ランダムウォーク(S0=0S_0=0)とする。自然なフィルトレーション Fn=σ(ξ1,…,ξn)\mathcal F_n=\sigma(\xi_1,\dots,\xi_n) を考える。

  1. 次の τ\tau が停止時刻であることを確かめ、τ=2,3,4\tau=2,3,4 となる確率をそれぞれ求めよ。

τ=inf⁡{n≥0:Sn=2}\tau=\inf\{n\ge0:S_n=2\} 2. 時刻 4 までに最後に原点にいた時刻を ρ\rho とする。ρ\rho が停止時刻でないことを示せ。

ρ=max⁡{n≤4:Sn=0}\rho=\max\{n\le4:S_n=0\}

解答

(1) τ\tau は集合 {2}\{2\} への到達時刻なので、命題 14.6 により停止時刻である。各時刻の確率は、次のように数える。長さ nn の符号の列は全部で 2n2^n 通りあり、どれも等確率である。

  1. (a) τ=2\tau=2 となるのは列 (+1,+1)(+1,+1) だけである。したがって P(τ=2)=14P(\tau=2)=\frac14 である。
  2. (b) 各歩で位置は1だけ変わるので、SnS_n と nn の偶奇は一致する。S3S_3 は奇数で 2 になれないので、P(τ=3)=0P(\tau=3)=0 である。
  3. (c) τ=4\tau=4 となるのは、S4=2S_4=2 で、それより前に一度も 2 に達していない列である。時刻 4 で 2 にいる列は、+1+1 が3個・−1-1 が1個の列である。−1-1 の位置で4通りある。

−1-1 が3番目か4番目にある列は (+1,+1,… )(+1,+1,\dots) で始まり、時刻 2 で既に 2 に達しているので除く。残るのは次の2通りである。

(−1,+1,+1,+1),(+1,−1,+1,+1)(-1,+1,+1,+1),\qquad(+1,-1,+1,+1)

したがって P(τ=4)=216=18P(\tau=4)=\frac2{16}=\frac18 である。

したがって P(τ≤4)=14+18=38P(\tau\le4)=\frac14+\frac18=\frac38 である。

(2) ρ\rho が停止時刻なら {ρ=2}∈F2\{\rho=2\}\in\mathcal F_2 である。F2\mathcal F_2 の元は、最初の2歩 (ξ1,ξ2)(\xi_1,\xi_2) だけで決まる事象である。したがって最初の2歩が同じ2つの標本点は、この事象に両方入るか両方入らないかのどちらかである。

ところが次の2つの列は、最初の2歩が同じで ρ\rho の値が異なる。

  • 列 ω=(+1,−1,+1,+1)\omega=(+1,-1,+1,+1) では、時刻 2 で原点にいて、その後は 1、2 と進む。したがって ρ(ω)=2\rho(\omega)=2 である。
  • 列 ω′=(+1,−1,+1,−1)\omega'=(+1,-1,+1,-1) では時刻 4 で原点に戻るので、ρ(ω′)=4\rho(\omega')=4 である。

一方だけが {ρ=2}\{\rho=2\} に入るので、この事象は F2\mathcal F_2 に入らない。したがって ρ\rho は停止時刻ではない。

確認テスト

オリジナル

  1. 14.1-1 例題 14.1 の SnS_n と Fn\mathcal F_n について、次のうち停止時刻であるものをすべて選び、理由を1行ずつ述べよ。τ\tau は例題の到達時刻である。

    1. (a) inf⁡{n≥0:Sn=−3}\inf\{n\ge0:S_n=-3\}
    2. (b) τ+2\tau+2
    3. (c) τ−1\tau-1(τ≥1\tau\ge1 である。したがって値は N0∪{∞}\mathbb{N}_0\cup\{\infty\} に入る)
    4. (d) min⁡{τ,5}\min\{\tau,5\}
  2. 14.1-2 対称単純ランダムウォークについて、確率 P(S2=0, S4=2)P(S_2=0,\ S_4=2) と共分散 Cov(S2,S4)\mathrm{Cov}(S_2,S_4) を求めよ。

  3. 14.1-3 ランダムウォーク Sn=ξ1+⋯+ξnS_n=\xi_1+\cdots+\xi_n について、次を示せ。

σ(S1,…,Sn)=σ(ξ1,…,ξn)\sigma(S_1,\dots,S_n)=\sigma(\xi_1,\dots,\xi_n) 4. 14.1-4 τ,σ\tau,\sigma を同じフィルトレーション (Fn)(\mathcal F_n) の停止時刻とする。次の3つがどれも停止時刻であることを示せ。

min⁡{τ,σ},max⁡{τ,σ},τ+σ\min\{\tau,\sigma\},\qquad\max\{\tau,\sigma\},\qquad\tau+\sigma 5. 14.1-5 U∼U(0,1)U\sim\mathrm U(0,1) とし、t∈[0,1]t\in[0,1] について次のように置く。

Xt=0,Yt=1{U=t}X_t=0,\qquad Y_t=\mathbf 1\{U=t\}

XX と YY の有限次元分布が一致することを示せ。しかし XX の見本路はすべて連続で、YY の見本路はすべて不連続であることも示せ。

木下の勉強ステータス

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