五つのポテンシャルの一覧と対応表
AI 生成・木下が未勉強
統計熱力学入門 第2章 §2.3 ★★★ 「なぜ何種類もあるのか」への直接の答え。固定変数と極小量の対応表。
なぜ何種類もあるのか
答えを先に述べる。熱力学ポテンシャルが何種類もあるのは、実験条件(どの変数を固定するか)が何通りもあるからである。孤立系ならエネルギー と体積 が固定される。恒温槽に浸けた密閉容器なら温度 と体積 が固定される。大気に開放されたビーカーなら温度 と圧力 が固定される。固定される変数の組が変わるたびに「平衡でどの量が極値をとるか」も変わり、その極値をとる量として、固定変数を自然な独立変数に持つポテンシャルが1つずつ対応する。ポテンシャルの種類の数は、物理法則の数ではなく実験条件の場合の数である。
定義 (title=★★★ 定義:5つの熱力学ポテンシャル)
各行の全微分は、式(2.1)に 等を足し引きするだけで得られる。全微分に現れる微分の変数が、そのポテンシャルの自然な変数である(例: なら )。
どの示量変数を共役な示強変数へ付け替えたかで整理すると、5つは1つの系統樹に載る(図2.1)。
図 2.1 ルジャンドル変換の系統樹。矢印のラベルは付け替える変数の対。 には から2通りの経路があるが結果は同じ。
対応表:どの条件でどれが極小か
title=★★★ 固定条件と平衡判定量の対応表(この章の中心)
| 固定する変数 | 極値をとる量 | 向き | 代表的な状況 |
| エントロピー | 最大 | 孤立系(断熱剛体壁の容器) | |
| 内部エネルギー | 最小 | 断熱・定積(実質 の力学的平衡) | |
| エンタルピー | 最小 | 断熱・定圧 | |
| Helmholtz | 最小 | 恒温槽に浸けた密閉容器 | |
| Gibbs | 最小 | 大気に開放した実験・相転移・化学反応 | |
| グランドポテンシャル | 最小 | 粒子浴に接する系(吸着・量子気体) |
覚え方は機械的である。固定した変数を自然な変数に持つポテンシャルが、その条件下で最小になる(孤立系だけはエネルギーが動かせないので 最大で述べる)。
この表を天下りに覚える必要はない。第2.4節で示すように、どの行も「系+浴の全エントロピー最大」という1つの原理を、浴の分を系の変数で書き直しただけのものである。
Euler 関係式からの2つの簡約
示量変数 を一斉に 倍すると も 倍になる(系を 個並べる操作)から、 は一次同次関数であり、Euler の定理により
が成り立つ(導出は『ルジャンドル変換と統計力学の基礎』第2.3節)。これを と の定義に代入すると
を得る。前者は「 とは1粒子あたりの Gibbs 自由エネルギーである」と読め、第2.5節・第2.6節で相平衡・化学平衡を の言葉で書き直す根拠になる。後者は統計力学で大分配関数から状態方程式 を直接得る根拠になる(第2.7節)。理想気体について式(2.3)を記号計算で確かめたのが検算 [3] である(以下、[] は 検算スクリプト のチェック番号を指す)。
Maxwell 関係式:ポテンシャルが「表」から「辞書」になる
★★ 二階偏微分の交換から得られる関係式。測れない量を測れる量に翻訳する。
各ポテンシャルは滑らかな状態関数なので、二階偏微分の順序交換が使える。たとえば について を一階微分 、 で書き直すと
が得られる(Maxwell 関係式)。左辺は直接測りにくいが、右辺は定積で圧力の温度変化を測るだけでよい。ポテンシャルが1つ定まるごとに関係式が1組ずつ得られ、実験で測れる量と理論に現れる量を相互に翻訳する辞書になる。van der Waals 気体の からこの関係式が成り立つことを記号計算で確かめたのが検算 [4] である。
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