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物質の2つのモデル:Lorentz 振動子と2準位系

2026年10月15日7分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第1章 序章:モードと2準位系で光を読む
目次
  1. Lorentz 振動子
  2. 2準位系
  3. 振動子強度で2つのモデルがつながる
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第1章 §1.2 ★★★ 物質の光への応答は、古典の振動子か量子の2準位系で書く。弱い光に対しては2つが同じ分極率を与え、振動子強度でつながる

Lorentz 振動子

物質の光への応答を表す最も古いモデルでは、原子の中の電子を、ばねで原子核につながれた質点とみなす。電子(質量 mm、電荷 −e-e)の変位を xx、ばねの固有角周波数を ω0\omega_0、減衰率を γ\gamma とすると、電場 E(t)=Re⁡[E0e−iωt]E(t)=\operatorname{Re}[E_0\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] の下で

m(d2xdt2+γdxdt+ω02x)=−eE(t)(1.6)m\Bigl(\frac{\mathrm{d}^2x}{\mathrm{d} t^2}+\gamma\frac{\mathrm{d} x}{\mathrm{d} t}+\omega_0^2x\Bigr)=-eE(t)\tag{1.6}

が成り立つ。これが Lorentz 振動子である。定常解を x=Re⁡[x0e−iωt]x=\operatorname{Re}[x_0\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] とおくと x0=−(e/m)E0/(ω02−ω2−iγω)x_0=-(e/m)E_0/(\omega_0^2-\omega^2-\mathrm{i}\gamma\omega) で、誘起される双極子モーメント d=−exd=-ex の複素振幅はα(ω)E0\alpha(\omega)E_0 の形になる。比例係数

αL(ω)=e2/mω02−ω2−iγω(1.7)\alpha_{\mathrm L}(\omega)=\frac{e^2/m}{\omega_0^2-\omega^2-\mathrm{i}\gamma\omega}\tag{1.7}

を分極率と呼ぶ。ω<ω0\omega<\omega_0 では Re⁡αL>0\operatorname{Re}\alpha_{\mathrm L}>0 で双極子は電場と同じ向きに振動し、ω>ω0\omega>\omega_0 では逆向きに振動する。Im⁡αL>0\operatorname{Im}\alpha_{\mathrm L}>0 の部分は電場から振動子へエネルギーが移る分で、吸収にあたる。分極率から屈折率と吸収係数を出すのは第3部の仕事である(第10章・第11章)。

古典の電子が原子核のまわりにばねでつながれているという描像は、原子の実際の姿とは違う。次に述べるとおり、量子力学の2準位系が弱い光に対して同じ形の応答を与えるので、このモデルは屈折率の周波数依存性をよく表す。

2準位系

原子には多くの準位があるが、光の周波数がある1つの遷移の周波数 ω0\omega_0 に近いとき、その遷移の下の準位 ∣g⟩| g \rangle と上の準位 ∣e⟩| e \rangle だけを残す。これが2準位系で、Hamiltonian はエネルギーの原点を2つの準位の中点に取って

H^A=ℏω02σz,σz∣e⟩=+∣e⟩,σz∣g⟩=−∣g⟩(1.8)\hat H_{\mathrm A}=\frac{\hbar\omega_0}{2}\sigma_z,\qquad\sigma_z| e \rangle =+| e \rangle ,\quad\sigma_z| g \rangle =-| g \rangle\tag{1.8}

と書ける。原子の状態に偶奇性があれば ⟨g∣d^∣g⟩=⟨e∣d^∣e⟩=0\langle g | \hat{\bm{d}} | g \rangle =\langle e | \hat{\bm{d}} | e \rangle =0 なので、双極子の演算子は ∣g⟩| g \rangle と ∣e⟩| e \rangle をつなぐ成分だけを持ち、行列要素 deg=⟨e∣d^∣g⟩\bm{d}_{eg}=\langle e | \hat{\bm{d}} | g \rangle を位相の選び方で実数にすると d^=deg(σ++σ−)\hat{\bm{d}}=\bm{d}_{eg}(\sigma_++\sigma_-)、σ+=∣e⟩⟨g∣\sigma_+=| e \rangle \langle g | となる。

弱い電場 E(t)=E0cos⁡ωtE(t)=E_0\cos\omega t(E0E_0 は実数、向きは deg\bm{d}_{eg} と平行、d=∣deg∣d=\lvert \bm{d}_{eg}\rvert)を当てたときの応答を1次の摂動で求める。基底のエネルギーを 00 に取り直し、状態を cg∣g⟩+ce∣e⟩c_g| g \rangle +c_e| e \rangle と書いて cg≈1c_g\approx1 とおくと、iℏ dce/dt=ℏω0ce−dE0cos⁡ωt\mathrm{i}\hbar\,\mathrm{d} c_e/\mathrm{d} t=\hbar\omega_0c_e-dE_0\cos\omega t である。ce=ae−iωt+beiωtc_e=a\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}+b\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega t} を入れると a=dE0/[2ℏ(ω0−ω)]a=dE_0/[2\hbar(\omega_0-\omega)]、b=dE0/[2ℏ(ω0+ω)]b=dE_0/[2\hbar(\omega_0+\omega)] を得る。双極子の期待値は ⟨d^⟩=d(cg∗ce+cgce∗)=2dRe⁡ce\langle \hat d \rangle =d(c_g^*c_e+c_gc_e^*)=2d\operatorname{Re} c_e で

⟨d^⟩=α2(ω)E0cos⁡ωt,α2(ω)=d2ℏ(1ω0−ω+1ω0+ω)=2ω0d2ℏ(ω02−ω2)(1.9)\langle \hat d \rangle =\alpha_2(\omega)E_0\cos\omega t,\qquad\alpha_2(\omega)=\frac{d^2}{\hbar}\Bigl(\frac{1}{\omega_0-\omega}+\frac{1}{\omega_0+\omega}\Bigr)=\frac{2\omega_0d^2}{\hbar(\omega_0^2-\omega^2)}\tag{1.9}

になる。括弧の中の第1項は光の周波数が遷移に近いときに大きくなる共鳴の項、第2項は遠い反共鳴の項である(1.3節で回転波近似が捨てるのは第2項)。

振動子強度で2つのモデルがつながる

式 (1.9) を、減衰を落とした Lorentz の式 (1.7) と比べると、どちらも 1/(ω02−ω2)1/(\omega_0^2-\omega^2) に比例する。係数を合わせるには、Lorentz の式に無次元の数

f=2mω0d2ℏe2(1.10)f=\frac{2m\omega_0d^2}{\hbar e^2}\tag{1.10}

を掛ければよい:α2=f αL∣γ=0\alpha_2=f\,\alpha_{\mathrm L}|_{\gamma=0}。この ff を振動子強度と呼ぶ。2準位系は弱い光に対して「電荷 −e-e の電子 ff 個分の Lorentz 振動子」として応答する。1個の電子の基底状態から出る遷移の振動子強度は、すべての遷移について足すと 11 になる(Thomas–Reiche–Kuhn の総和則。解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第4部第12章)。このため1つの遷移の ff は 11 を超えない。古典の振動子は「振動子強度をすべて1つの遷移に集めた原子」にあたる。

2つのモデルが一致するのは弱い光に対してだけである。光が強くなると、2準位系は上の準位に移りきって応答が飽和し、Rabi 振動を始める(1.3節)。古典の振動子は振幅が電場に比例して大きくなり続け、飽和しない。この違いのため、この巻の第3部は Lorentz 振動子で、第4部以降は2準位系で書く。

例題 1.2 水素原子の 1s→2p1s\to2p 遷移の振動子強度 ★★

オリジナル水素原子の 1s1s と 2p2p(ml=0m_l=0)の間の双極子の行列要素は ⟨2p0∣z^∣1s⟩=1282243a0\langle 2p_0 | \hat z | 1s \rangle =\frac{128\sqrt2}{243}a_0(a0a_0 は Bohr 半径)、遷移のエネルギーは ℏω0=38Eh\hbar\omega_0=\frac38E_{\mathrm h}(Eh=ℏ2/(ma02)E_{\mathrm h}=\hbar^2/(ma_0^2) は Hartree エネルギー)である。これらを与えられた値として使い、zz 方向の偏光に対する振動子強度 (1.10) を求めよ(d=e∣⟨2p0∣z^∣1s⟩∣d=e\lvert \langle 2p_0 | \hat z | 1s \rangle \rvert)。また、この結果を総和則と比べて述べよ。

解答

式 (1.10) に d=e⋅1282243a0d=e\cdot\frac{128\sqrt2}{243}a_0 と ω0=38Eh/ℏ=38ℏ/(ma02)\omega_0=\frac38E_{\mathrm h}/\hbar=\frac38\hbar/(ma_0^2) を入れると、ee・mm・ℏ\hbar・a0a_0 がすべて消えて

f=2mℏe2⋅3ℏ8ma02⋅e2(1282243)2a02=34(1282243)2=34×0.5549≈0.416f=\frac{2m}{\hbar e^2}\cdot\frac{3\hbar}{8ma_0^2}\cdot e^2\Bigl(\frac{128\sqrt2}{243}\Bigr)^2a_0^2=\frac34\Bigl(\frac{128\sqrt2}{243}\Bigr)^2=\frac34\times0.5549\approx0.416

になる。振動子強度は原子の大きさにも電子の質量にも依らない純粋な数で、水素の基底状態から出る遷移の和 11 のうち約 42%42\% を 2p2p への遷移1つが占める。残りの約 58%58\% は 3p,4p,…3p,4p,\dots と電離した状態への遷移に分かれる。Lyman α\alpha 線の近くの周波数では、水素原子は「電子 0.4160.416 個分の Lorentz 振動子」として光に応答する。

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