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出てくるもの(3):光線追跡の実際と何を近似したか

2026年10月15日8分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第2章 つなぎ:光線の解析力学
目次
  1. 厳密な光線追跡の手順
  2. 球面1つの厳密な結像
  3. 平凸レンズの向き
  4. 何を近似したか
  5. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第2章 §2.5 ★★ 近軸を使わずに Snell の法則を1面ずつ厳密に当てると、光軸から離れた光線は手前で軸を横切る。ずれは高さの2乗から始まり、レンズの向きで4倍近く変わる

厳密な光線追跡の手順

近軸の行列は、面の上の点を面の頂点の平面で代用し、sin⁡θ\sin\theta を θ\theta で代用した。実際のレンズを設計するときは、この2つの代用をせずに光線を1面ずつ追う。手順は2つの操作の繰り返しである。

移行:光線を直線 r=r0+s t\bm{r}=\bm{r}_0+s\,\bm{t}(t\bm{t} は単位の向きベクトル)として、次の面との交点を求める。中心 c\bm{c}、半径 ∣R∣\lvert R\rvert の球面なら ∣r0+st−c∣2=R2\lvert \bm{r}_0+s\bm{t}-\bm{c}\rvert ^2=R^2 の2次方程式で、2つの根のうち頂点に近いほうをとる。

屈折:交点での面の単位法線 N\bm{N} を光の進む側に向けてとり、cos⁡i=t⋅N\cos i=\bm{t}\cdot\bm{N} とする。面に沿った運動量 nt−(nt⋅N)Nn\bm{t}-(n\bm{t}\cdot\bm{N})\bm{N} が保存する(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第10章の Snell の法則のベクトル形)ことと、t′\bm{t}' が単位ベクトルであることから

n′t′=nt+(n′cos⁡i′−ncos⁡i)N,n′sin⁡i′=nsin⁡i(2.17)n'\bm{t}'=n\bm{t}+\bigl(n'\cos i'-n\cos i\bigr)\bm{N},\qquad n'\sin i'=n\sin i\tag{2.17}

になる。N\bm{N} の成分だけが変わり、変わり方は屈折角 i′i' の余弦で決まる。

この2つの操作は近軸の行列の伝搬 TT と屈折の行列に対応し、どちらも正準変換である(屈折は面に沿った運動量を保つ写像、移行は自由な流れ)。したがって近軸を使わない光線追跡でも、相空間の体積は保たれる。近軸との違いは写像が線形でなくなることだけで、その非線形性が収差である。

球面1つの厳密な結像

屈折率 11 の空気から屈折率 nn のガラスへの、曲率半径 R>0R>0 の球面に、光軸に平行な光線が高さ hh で入るとする。法線は球の中心を通るので、入射角は sin⁡i=h/R\sin i=h/R、屈折角は sin⁡i′=h/(nR)\sin i'=h/(nR) で、屈折した光線は光軸と i−i′i-i' の角をなす。球の中心・入射点・光軸との交点が作る三角形に正弦定理を当てると、中心から交点までの距離は Rsin⁡i′/sin⁡(i−i′)R\sin i'/\sin(i-i') なので、面の頂点から交点までの距離は

L(h)=R+Rsin⁡i′sin⁡(i−i′)=nRn−1−h22nR(n−1)+O(h4)(2.18)L(h)=R+\frac{R\sin i'}{\sin(i-i')}=\frac{nR}{n-1}-\frac{h^2}{2nR(n-1)}+\mathcal{O}(h^4)\tag{2.18}

になる。展開の第1項は近軸の焦点(屈折力 (n−1)/R(n-1)/R、後ろが屈折率 nn なので f′=nR/(n−1)f'=nR/(n-1))で、第2項から先が厳密な交点のずれである。光軸から離れた光線ほど手前で軸を横切り、ずれは h2h^2 に比例して始まる。このずれ L(0)−L(h)L(0)-L(h) を縦の球面収差と呼ぶ。

例題 2.5 球面1つを手で追う ★★

オリジナル空気(n=1n=1)からガラス(n=1.5n=1.5)への曲率半径 R=50 mmR=50\,\mathrm{mm} の球面に、光軸に平行な光線が高さ h=10 mmh=10\,\mathrm{mm} で入る。

  1. (1) 入射角 ii、屈折角 i′i'、屈折後の光線が光軸となす角、入射点の zz 座標(頂点から)、光軸との交点の位置を求めよ。
  2. (2) 近軸の焦点との差(縦の球面収差)を求め、式 (2.18) の h2h^2 の項だけの見積もりと比べよ。
  3. (3) h=5 mmh=5\,\mathrm{mm} では縦の球面収差はいくらか。h=10 mmh=10\,\mathrm{mm} との比から、ずれが h2h^2 に比例することを確かめよ。
解答

(1) sin⁡i=10/50=0.2\sin i=10/50=0.2 で i=11.537∘i=11.537^\circ。sin⁡i′=0.2/1.5=0.1333\sin i'=0.2/1.5=0.1333 で i′=7.662∘i'=7.662^\circ。光線は光軸と i−i′=3.875∘i-i'=3.875^\circ をなして軸へ向かう。入射点は球面の上なので、頂点からの zz 座標は R−R2−h2=50−48.990=1.010 mmR-\sqrt{R^2-h^2}=50-48.990=1.010\,\mathrm{mm}。交点は式 (2.18) から 50+50×0.13333/sin⁡3.875∘=148.656 mm50+50\times0.13333/\sin3.875^\circ=148.656\,\mathrm{mm}。

(2) 近軸の焦点は nR/(n−1)=150 mmnR/(n-1)=150\,\mathrm{mm} なので、縦の球面収差は 150−148.656=1.344 mm150-148.656=1.344\,\mathrm{mm}。h2h^2 の項は h2/(2nR(n−1))=100/(2×1.5×50×0.5)=1.333 mmh^2/(2nR(n-1))=100/(2\times1.5\times50\times0.5)=1.333\,\mathrm{mm} で、残りの 0.011 mm0.011\,\mathrm{mm} が h4h^4 以上の項である。

(3) 同じ計算で h=5 mmh=5\,\mathrm{mm} では交点が 149.666 mm149.666\,\mathrm{mm}、縦の球面収差は 0.334 mm0.334\,\mathrm{mm}。1.344/0.334=4.021.344/0.334=4.02 で、高さを2倍にするとずれはほぼ4倍になる。

平凸レンズの向き

屈折率 1.51.5、曲率半径 50 mm50\,\mathrm{mm}、中心の厚さ 5 mm5\,\mathrm{mm} の平凸レンズを考える。近軸の焦点距離は、凸面を光の来る側に向けても平面を向けても f′=R/(n−1)=100 mmf'=R/(n-1)=100\,\mathrm{mm} で同じである(後側焦点距離は、凸面が先なら後面から 96.667 mm96.667\,\mathrm{mm}、平面が先なら 100 mm100\,\mathrm{mm})。光軸に平行な光線の束を、2つの向きのそれぞれで厳密に追跡した結果が図 2.2 と図 2.3 である。

図

図 2.2 平面を光の来る側に向けた平凸レンズ(n=1.5n=1.5、R=50 mmR=50\,\mathrm{mm}、厚さ 5 mm5\,\mathrm{mm})を出たあとの光線。入射の高さは h=2,4,6,8,10 mmh=2,4,6,8,10\,\mathrm{mm}。点線は厳密な光線追跡、実線は h=10 mmh=10\,\mathrm{mm} の光線を近軸の行列で追ったもの。近軸ではすべての光線が z=105 mmz=105\,\mathrm{mm} で軸を横切るが、厳密には h=10 mmh=10\,\mathrm{mm} の光線が z=100.4 mmz=100.4\,\mathrm{mm} で横切り、焦点が光軸に沿ってぼける

図

図 2.3 平凸レンズの縦の球面収差(近軸の焦点と、厳密な光線が軸を横切る点の差)。点線と印は厳密な光線追跡、実線は小さい hh で求めた h2h^2 の項だけの近似(平面が先 0.0450 h20.0450\,h^2、凸面が先 0.01157 h20.01157\,h^2。単位は mm)。凸面を平行光の側に向けると収差は約 1/3.91/3.9 になる

平面を先に向けた場合は、光線はガラスの中を光軸に平行なまま進み、後面の球面1つで屈折する。式 (2.18) と同じ計算をガラスから空気への屈折について行うと、h2h^2 の係数はn2/(2R(n−1))=0.045 mm−1n^2/\bigl(2R(n-1)\bigr)=0.045\,\mathrm{mm^{-1}} になり、光線追跡の結果と一致する。空気からガラスへの球面1つの係数 1/(2nR(n−1))1/\bigl(2nR(n-1)\bigr) の n3=3.4n^3=3.4 倍である。凸面を先に向けると、光線は凸面で一度曲がり、平面でもう一度曲がる。どちらの面でも入射角が小さく、係数は 0.01157 mm−10.01157\,\mathrm{mm^{-1}} と、平面を先に向けた場合の約 1/3.91/3.9 になる。同じ屈折力を1つの面で大きく曲げて得るより、2つの面に分けて少しずつ曲げたほうが球面収差は小さい。平凸レンズを平行光の側に凸面を向けて使うのは、この理由による。球面収差の大きさがレンズの形(2つの面への曲げ方の配分)でどう変わるかを、Hamiltonian を4次まで展開して一般に扱うのが第3章である。

何を近似したか

この章は2段の近似を重ねた。1段目は幾何光学そのもので、波長を構造の長さに比べて 00 に送った。2段目は近軸近似で、光線の高さと傾きを小さいとして HH を2次で打ち切った。

1段目の近似は、解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第10章で示したように、波動方程式に a eik0Sa\,\mathrm{e}^{\mathrm{i} k_0\mathcal S} を入れたときの k0→∞k_0\to\infty の極限で、量子力学の WKB 近似と同じ構造をしている。この近似は、光線が1点に集まる焦点や光線の包絡線(火線)の近くで破れる。近軸の結像は「すべての光線が1点に集まる」ことを要求するので、その1点の近傍こそ幾何光学が使えない場所である。焦点の大きさを決めるのは回折で、第6章で扱う。

2段目の近似の誤差は、図 2.3 で見たとおり高さの2乗から始まる。式 (2.18) の展開の係数は面の曲率と屈折率だけで決まり、その全体の分類が Seidel の収差である(第3章)。

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの λ/a→0\lambda/a\to0(波長と、レンズの大きさや曲率半径 aa の比) | 証明 条件付き(焦点と火線から離れた所。焦点の近くは回折に置き換わる) | 行き先 近似の数理 第7章

近似の裏付け

型 B(極限) | 小さいもの h/R→0h/R\to0 と ∣p∣/n→0\lvert p\rvert /n\to0(光線の高さと面の曲率半径の比・光線の傾き) | 証明 条件付き(面が滑らかで、光線が面と交わり全反射しない範囲。ずれは (h/R)2(h/R)^2 から始まり、その係数が第3章の収差) | 行き先 近似の数理 第2章

木下の勉強ステータス

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