光学と量子エレクトロニクス 第2章 §2.6 ★ 焦点距離は主面の位置を知らなくても Bessel の方法で測ることができる。授業のレンズの公式・鏡の式・符号の流儀を、この章の式と並べる
焦点距離を測る
この章で確かめられる量の中心は焦点距離である。物体と像の位置を測って式 (2.12) に入れる方法は、厚いレンズでは主面の位置が分からないと距離 s, s′ が決まらないので使いにくい。主面の位置を知らずに測る方法として、Bessel の方法がある。物体(光る格子など)とスクリーンを距離 L だけ離して固定し、その間でレンズを動かすと、L>4f ならスクリーンに像が映るレンズの位置が2か所ある。空気中の薄いレンズで、物体からレンズまでを a とすると a1+L−a1=f1、つまり a2−La+Lf=0 の2つの根で、その差 e は
e2=L2−4Lf,f=4LL2−e2(2.19)
を満たす。測るのは物体とスクリーンの間隔 L と、レンズを動かした距離 e だけで、どちらもレンズのどこを基準にとっても同じ値になる。
2つの位置は互いに物体と像の距離を入れ替えたもので、倍率はそれぞれ −(L−a)/a と −a/(L−a)、積は 1 である。厚いレンズでは、H と H′ の間の区間だけ光線は「進まずに」次の主面へ移るので、式 (2.19) の L を主面の間隔 Δ だけ引いた L−Δ に置き換える。Δ を無視した分だけ、得られる焦点距離はわずかに大きく出る。
ほかに、レンズの後ろに平面鏡を置き、物体を前の焦点面に置くと反射光が物体の面に戻って像を結ぶこと(自己視準)を使う方法もある。いずれも、光線の幾何(近軸の結像)だけを使って焦点距離という1つの数を取り出している。結像の質(どれだけ鋭い点に集まるか)は、収差と回折の章で別の量として測る。
例題 2.6 Bessel の方法 ★
オリジナル
- (1) 物体とスクリーンの間隔を L=100cm にとると、像が映るレンズの位置が e=20cm 離れた2か所にあった。焦点距離と、物体から2つのレンズの位置までの距離を求めよ(薄いレンズとする)。
- (2) 2つの位置での倍率を求め、その積が 1 になることを確かめよ。
- (3) 焦点距離 20.168cm、主面の間隔 Δ=0.328cm の厚いレンズを、主面の間隔を除いた距離が 90cm になるように置いた。実際に測る物体とスクリーンの間隔 L と2つの位置の差 e を求め、Δ を無視して式 (2.19) に入れると焦点距離をどれだけ大きく見積もるかを求めよ。
解答
(1) f=(1002−202)/(4×100)=9600/400=24cm。2つの位置は a=(L±e)/2 で、物体から 60cm と 40cm。確かめると 401+601=1203+2=241。
(2) a=40cm では像は 60cm 先で倍率 −60/40=−1.5、a=60cm では倍率 −40/60=−2/3。積は 1。2つの位置は物体と像の役を入れ替えた配置である。
(3) 主面の間隔を除いた距離 L−Δ=90cm について式 (2.19) が成り立つので、e=902−4×90×20.168=28.97cm。実際に測る間隔は L=90+0.328=90.33cm。Δ を無視して (L2−e2)/(4L) を計算すると 20.258cm になり、真の値より 0.09cm 大きい。焦点距離の 0.4% にあたり、精密な測定では主面の間隔の補正が要る。
式の対応
学部の光学の授業では、レンズの公式を「物体と像の距離をどちらも実在する側で正にとる」流儀で書くことが多い。この章では距離を z の向きに沿った位置で決め、主面と焦点から測る量を区別した。2つの書き方の対応は次のとおりである。
| 授業での書き方 | この章での形 | 式 |
| レンズの公式 a1+b1=f1 | 主面から測った sn1+s′n2=Φ | (2.12) |
| 直交座標の流儀 −so1+si1=f′1(物体の位置 so<0) | s=−so と置いたもの | (2.12) |
| 倍率 m=−b/a | m=A=−ζ′/f′=−f/ζ | (2.10) |
| Newton の式 xx′=f2 | ζζ′=ff′(両側の屈折率が違えば f=f′) | (2.9) |
| 鏡の式 a1+b1=R2 | 展開した光路で焦点距離 R/2 のレンズ | (2.1) |
| 組レンズの合成 f1=f11+f21−f1f2d | 行列の積の −C | (2.7) |
| 主点・焦点・節点の作図 | ABCD の4成分から読む | (2.5) |
| Lagrange–Helmholtz の不変量 | 2本の光線の行列式 | (2.13) |
| F 値と明るさ E∝1/N2 | 放射輝度の保存と開口数 | (2.16) |
授業の作図では、主面に平行な光線・焦点を通る光線・主点を通る光線の3本を引いて像を求める。この3本は、行列の言葉では p1=0 の光線、F を通る光線、節点(両側が同じ媒質なら主点)を通る光線で、主面から主面への行列 (2.6) の下ではそれぞれ F′ を通る、平行に出る、向きを変えない、と行列の1つの成分だけで振る舞いが決まる3本である。2本で像の位置は決まり、3本目は作図の確かめになる。
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