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この章で取り出すもの:線形で因果的な応答関数

2026年10月15日11分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第12章 Kramers–Kronig の関係と総和則
目次
  1. モード・物質・結合の選び方
  2. 因果律と実数性
  3. 虚部は吸収
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第12章 §12.1 ★★★ 場のモードは平面波1つ、物質は「過去の電場にだけ線形に応答する」という性質だけを持つ箱。結合は時間についての畳み込み

第10章で、物質中の光は複素数の比誘電率 εr(ω)\varepsilon_{\mathrm r}(\omega) か複素屈折率 n~(ω)=n+iκ\tilde n(\omega)=n+\mathrm{i}\kappa で記述できることを見た。第11章では Lorentz 振動子を物質のモデルに選び、共鳴の近くで屈折率が大きく変わり(異常分散)、同じ場所で吸収が大きくなることを計算した。この2つが同じ場所で起きるのは Lorentz 振動子の特別な性質ではない。この章では、物質のモデルを選ぶ前に成り立つ一般の関係として、屈折率(分散)と吸収が互いに決め合うことを示す。

使う仮定は2つだけである。第一は線形性で、分極が電場に比例する。第二は因果律で、分極はそれより前の時刻の電場にしか応答しない。この2つから、感受率 χ(ω)\chi(\omega) を複素数の ω\omega に延長したとき上半面で正則になることが従い、Cauchy の積分定理によってχ\chi の実部と虚部が積分変換で結ばれる。これが Kramers–Kronig の関係(以下 KK の関係)である。この関係からは3種類の結果が出る。第一に、透明な振動数の領域では屈折率が振動数とともに必ず増える(正常分散)。第二に、吸収スペクトルの重み付きの面積が電子の数密度だけで決まる(ff 総和則)。高い振動数で電子が自由な粒子として振る舞うことが、その理由である。第三に、反射率だけを広い振動数範囲で測れば、反射の位相が決まり、屈折率と吸収係数を両方とも組み立てることができる。最後の結果は、固体の光学定数を実験で求める標準の方法になっている。

モード・物質・結合の選び方

この巻の各章は「どの場のモードを取り出し、物質をどうモデル化し、どう結合させ、何を近似したか」で読む(第1章の表)。この章の選び方は次のとおりである。

場のモードは第10章と同じく、角周波数 ω\omega の平面波1つである。ただしこの章では1つの ω\omega に注目するのでなく、すべての ω\omega を同時に見る。電場 E(t)E(t) を時間の関数として Fourier 成分に分け、各成分への応答を集めたものが感受率 χ(ω)\chi(\omega) である。偏光の向きは固定し、場は1成分のスカラーとして書く。

物質のモデルは選ばない。物質に要求するのは、時間的に一様(物質の性質が時間とともに変わらない)で、分極が電場に線形に応答し、しかもその応答が過去の電場だけで決まることである。第11章の Lorentz 振動子、第13章の Drude 模型、第4部の2準位系の線形応答は、どれもこの性質を持つ例として扱う。

結合は、分極 P(t)P(t) と電場の線形な関係

P(t)=ε0∫−∞∞χ(t−t′) E(t′) dt′(12.1)P(t)=\varepsilon_0\int_{-\infty}^{\infty}\chi(t-t')\,E(t')\,\mathrm{d} t'\tag{12.1}

である。関数 χ(t)\chi(t) を応答関数と呼ぶ。時刻 t′t' に E(t′)=E1 δ(t′−t1)E(t')=E_1\,\delta(t'-t_1) という撃力の電場を加えると P(t)=ε0E1χ(t−t1)P(t)=\varepsilon_0E_1\chi(t-t_1) になるので、χ(t)\chi(t) は「時間 tt だけ前に加えた単位の撃力に対する、いまの分極」を表す。時間的に一様なので、χ\chi は tt と t′t' の差だけの関数になる。

因果律と実数性

分極は未来の電場に応答しない。式 (12.1) でこれを言い換えると、

χ(t)=0(t<0)(12.2)\chi(t)=0\qquad(t<0)\tag{12.2}

である。これが因果律で、この章のすべての結果の出発点になる。

記法の正本の時間の Fourier 変換(f(t)=∫dω2πf~(ω)e−iωtf(t)=\int\frac{\mathrm{d}\omega}{2\pi}\tilde f(\omega)\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t})で式 (12.1) の両辺を変換すると、畳み込みは積になり

P~(ω)=ε0χ(ω)E~(ω),χ(ω)=∫0∞χ(t) eiωt dt(12.3)\tilde P(\omega)=\varepsilon_0\chi(\omega)\tilde E(\omega),\qquad \chi(\omega)=\int_0^\infty\chi(t)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega t}\,\mathrm{d} t\tag{12.3}

を得る。積分の下限が 00 なのは式 (12.2) による。比誘電率は εr(ω)=1+χ(ω)\varepsilon_{\mathrm r}(\omega)=1+\chi(\omega) で、その実部と虚部を

εr(ω)=ε1(ω)+iε2(ω),ε1=1+Re⁡χ,ε2=Im⁡χ(12.4)\varepsilon_{\mathrm r}(\omega)=\varepsilon_1(\omega)+\mathrm{i}\varepsilon_2(\omega),\qquad \varepsilon_1=1+\operatorname{Re}\chi,\quad\varepsilon_2=\operatorname{Im}\chi\tag{12.4}

と書く。第10章と同じ書き方である(式 (10.17))。複素屈折率 n~=n+iκ=εr\tilde n=n+\mathrm{i}\kappa=\sqrt{\varepsilon_{\mathrm r}} との関係は ε1=n2−κ2\varepsilon_1=n^2-\kappa^2、ε2=2nκ\varepsilon_2=2n\kappa である(同じ式)。

応答関数 χ(t)\chi(t) は実数である。実数の電場は実数の分極しか作らないからである。式 (12.3) の複素共役をとると、実数の ω\omega について

χ(−ω)=χ(ω)∗,すなわちRe⁡χ(−ω)=Re⁡χ(ω),Im⁡χ(−ω)=−Im⁡χ(ω)(12.5)\chi(-\omega)=\chi(\omega)^*,\qquad\text{すなわち}\quad \operatorname{Re}\chi(-\omega)=\operatorname{Re}\chi(\omega),\quad \operatorname{Im}\chi(-\omega)=-\operatorname{Im}\chi(\omega)\tag{12.5}

が成り立つ。実部は ω\omega の偶関数、虚部は奇関数である。この性質を実数性と呼ぶ。この章の結果のうち、負の振動数を消して正の振動数だけで書く形(12.3節)はこの実数性を使い、因果律だけから出る形(12.2節)とは使う仮定が1つ違う。この違いは総合問題で回転波近似の感受率を調べるときに表に出る。

虚部は吸収

電場 E(t)=Re⁡[E0e−iωt]E(t)=\operatorname{Re}[E_0\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] をかけると、分極は P(t)=Re⁡[ε0χ(ω)E0e−iωt]P(t)=\operatorname{Re}[\varepsilon_0\chi(\omega)E_0\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}] で振動する。分極の時間変化は電流密度 J=P˙J=\dot P で、電場が単位時間・単位体積あたりに物質へする仕事の時間平均は、記法の正本の公式 Re⁡[ae−iωt] Re⁡[be−iωt]‾=12Re⁡(ab∗)\overline{\operatorname{Re}[a\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}]\,\operatorname{Re}[b\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t}]}=\frac12\operatorname{Re}(ab^*) から

JE‾=12Re⁡[(−iωε0χE0)E0∗]=ω2 ε0 ε2(ω) ∣E0∣2(12.6)\overline{J E}=\frac12\operatorname{Re}\bigl[(-\mathrm{i}\omega\varepsilon_0\chi E_0)E_0^*\bigr]=\frac{\omega}{2}\,\varepsilon_0\,\varepsilon_2(\omega)\,\lvert E_0\rvert ^2\tag{12.6}

になる。物質が光からエネルギーを受け取るだけで光へ返さない(受動的な物質)なら、ω>0\omega>0 で ε2(ω)≥0\varepsilon_2(\omega)\ge0 である。ε2\varepsilon_2 が「どれだけ吸うか」、ε1\varepsilon_1 が「どれだけ位相を遅らせるか」を表す。KK の関係は、この2つが独立に選べないことを主張する。反転分布を持つ媒質(第21章)では ε2<0\varepsilon_2<0 になりうるが、因果律と線形性はそのまま成り立つので、KK の関係も成り立つ。正の符号は KK の関係の仮定に含まれない。

例題 12.1 Lorentz 振動子の応答関数 ★★

オリジナル数密度 NN の電子がそれぞれ固有角周波数 ω0\omega_0、減衰率 γ\gamma の調和な束縛を受けて、運動方程式 mx¨+mγx˙+mω02x=−eE(t)m\ddot x+m\gamma\dot x+m\omega_0^2x=-eE(t) に従う。分極は P=−NexP=-Nex である。γ<2ω0\gamma<2\omega_0 とし、ωˉ=ω02−γ2/4\bar\omega=\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2/4}、ωp2=Ne2/(ε0m)\omega_{\mathrm p}^2=Ne^2/(\varepsilon_0m) とおく。

  1. (1) 撃力の電場 E(t)=E1δ(t)E(t)=E_1\delta(t) を加えたときの分極を求め、応答関数 χ(t)\chi(t) を求めよ。χ(0+)\chi(0^+) と χ˙(0+)\dot\chi(0^+) の値を述べよ。
  2. (2) χ(t)\chi(t) を式 (12.3) で Fourier 変換し、χ(ω)=ωp2/(ω02−ω2−iγω)\chi(\omega)=\omega_{\mathrm p}^2/(\omega_0^2-\omega^2-\mathrm{i}\gamma\omega) になることを確かめよ。
  3. (3) χ(ω)\chi(\omega) の極を複素 ω\omega 平面に図示し、それが下半面にあることを述べよ。γ/ω0=0.1\gamma/\omega_0=0.1 のとき、撃力の後で分極の振幅が 1/e1/\mathrm{e} になるまでに何周期振動するか。
解答

(1) 撃力によって電子が受け取るのは t=0t=0 の一瞬の運動量 −eE1-eE_1 だけなので、t=0+t=0^+ で x=0x=0、x˙=−eE1/m\dot x=-eE_1/m から始まる減衰振動になる。t>0t>0 で x(t)=−(eE1/mωˉ)e−γt/2sin⁡ωˉtx(t)=-(eE_1/m\bar\omega)\mathrm{e}^{-\gamma t/2}\sin\bar\omega t、t<0t<0 で x=0x=0 である。P=−Nex=ε0E1χ(t)P=-Nex=\varepsilon_0E_1\chi(t) と比べて

χ(t)=ωp2ωˉ e−γt/2sin⁡(ωˉt) Θ(t)\chi(t)=\frac{\omega_{\mathrm p}^2}{\bar\omega}\,\mathrm{e}^{-\gamma t/2}\sin(\bar\omega t)\,\Theta(t)

を得る(Θ\Theta は Heaviside の階段関数)。χ(0+)=0\chi(0^+)=0 で、χ˙(0+)=ωp2\dot\chi(0^+)=\omega_{\mathrm p}^2 である。撃力の直後には位置がまだ動いておらず、速度だけが与えられている。この χ˙(0+)=ωp2\dot\chi(0^+)=\omega_{\mathrm p}^2 は束縛の強さ ω0\omega_0 にも減衰 γ\gamma にもよらない。12.4節の総和則はこの事実の言い換えになる。

(2) sin⁡ωˉt=(eiωˉt−e−iωˉt)/(2i)\sin\bar\omega t=(\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bar\omega t}-\mathrm{e}^{-\mathrm{i}\bar\omega t})/(2\mathrm{i}) と書き、∫0∞e(ia−γ/2)tdt=1/(γ/2−ia)\int_0^\infty\mathrm{e}^{(\mathrm{i} a-\gamma/2)t}\mathrm{d} t=1/(\gamma/2-\mathrm{i} a) を使うと

χ(ω)=ωp22iωˉ[1γ/2−i(ω+ωˉ)−1γ/2−i(ω−ωˉ)]=ωp2(γ/2−iω)2+ωˉ2=ωp2ω02−ω2−iγω.\chi(\omega)=\frac{\omega_{\mathrm p}^2}{2\mathrm{i}\bar\omega}\Bigl[\frac{1}{\gamma/2-\mathrm{i}(\omega+\bar\omega)}-\frac{1}{\gamma/2-\mathrm{i}(\omega-\bar\omega)}\Bigr] =\frac{\omega_{\mathrm p}^2}{(\gamma/2-\mathrm{i}\omega)^2+\bar\omega^2}=\frac{\omega_{\mathrm p}^2}{\omega_0^2-\omega^2-\mathrm{i}\gamma\omega}.

最後に (γ/2−iω)2+ωˉ2=γ2/4−iγω−ω2+ω02−γ2/4(\gamma/2-\mathrm{i}\omega)^2+\bar\omega^2=\gamma^2/4-\mathrm{i}\gamma\omega-\omega^2+\omega_0^2-\gamma^2/4 を使った。第11章で単振動の電場を仮定して求めた式と一致する。

(3) 分母 ω02−ω2−iγω=0\omega_0^2-\omega^2-\mathrm{i}\gamma\omega=0 を解くと ω=−iγ/2±ωˉ\omega=-\mathrm{i}\gamma/2\pm\bar\omega で、2つの極はどちらも虚部が −γ/2<0-\gamma/2<0 の下半面にあり、虚軸について左右対称に並ぶ。左右対称は実数性 (12.5) の表れで、極が下半面にあることは、撃力の後の応答が e−γt/2\mathrm{e}^{-\gamma t/2} で減衰することと同じ内容を持つ(12.2節)。振幅が 1/e1/\mathrm{e} になる時間は 2/γ2/\gamma、周期は 2π/ωˉ2\pi/\bar\omega なので、その間の周期の数は ωˉ/(πγ)=1−0.0025/(0.1π)=3.18\bar\omega/(\pi\gamma)=\sqrt{1-0.0025}/(0.1\pi)=3.18 である。

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