光学と量子エレクトロニクス 第14章 §14.2 ★★★ s は電場、p は磁場の振幅の比で書くと、反射係数は kz と ε だけの形になる。p の反射の零点が Brewster 角で、反射の向きが媒質2の双極子の軸と重なる角である
s 偏光
s 偏光では、入射・反射・透過の電場を Ey=eik1zz+rse−ik1zz(z<0)、Ey=tseik2zz(z>0)と書く(入射の振幅を 1 にとり、共通の因子 ei(kxx−ωt) を省いた)。磁場の接線成分は Faraday の法則 ∇×E=iωμ0H の x 成分から Hx=−∂zEy/(iωμ0) で、平面波 e±ikzz では Hx=∓kzEy/(ωμ0) になる。Ey と Hx の連続から
1+rs=ts,k1z(1−rs)=k2zts
を得て、これを解くと
rs=k1z+k2zk1z−k2z,ts=k1z+k2z2k1z(14.4)
となる。
p 偏光
p 偏光では磁場を Hy=eik1zz+rpe−ik1zz(z<0)、Hy=tpeik2zz(z>0)と書く。電場の接線成分は Ampère–Maxwell の法則 ∇×H=−iωεE の x 成分から Ex=∂zHy/(iωε) で、e±ikzz では Ex=±kzHy/(ωε) になる。Hy と Ex の連続から
1+rp=tp,ε1k1z(1−rp)=ε2k2ztp
で、
rp=ε2k1z+ε1k2zε2k1z−ε1k2z,tp=ε2k1z+ε1k2z2ε2k1z(14.5)
を得る。εj は比でしか入らないので、εrj に置き換えてよい。
式 (14.4) と (14.5) を Fresnel の係数と呼ぶ。2つの式は、s 偏光の kz を p 偏光では kz/ε に置き換えた形をしている。s 偏光で Ey と組になる量が kzEy(磁場)、p 偏光で Hy と組になる量が kzHy/ε(電場)だからである。
p 偏光の係数の符号(この本の流儀)
この本では rp, tp を磁場 Hy の振幅の比で定義する。電場で言い換えると、各ビームの進む向きを k^ として ep=ey×k^ の向きの電場の成分の比である。(ep,ey,k^) は各ビームについて右手系になる。垂直入射では入射波の ep が +ex、反射波の ep が −ex を向くので、rp=−rs になる(例題 14.2)。学部の教科書の中には rp の符号を逆にとるものがある。反射率 ∣rp∣2 はどちらでも同じで、位相を比べるときだけ流儀をそろえる必要がある(14.6節)。
エネルギーの流れ
反射率と透過率は、境界に垂直なエネルギーの流れ(Poynting ベクトルの z 成分の時間平均)の比で定義する。時間平均は ⟨Sz⟩=21Re(E×H∗)z で、s 偏光では ⟨Sz⟩=Re(kz)∣Ey∣2/(2ωμ0)、p 偏光では ⟨Sz⟩=Re(kz/ε)∣Hy∣2/(2ω) になる。媒質1が透明なとき、
Rs=∣rs∣2,Ts=k1zRek2z∣ts∣2,Rp=∣rp∣2,Tp=k1z/ε1Re(k2z/ε2)∣tp∣2(14.6)
で、どちらの偏光でも R+T=1 が成り立つ(媒質2が吸収するときは、T が境界を通って媒質2へ入り、そこで吸収されるエネルギーの割合になる)。T の前の因子は、2つの媒質で波の進む向きと電場と磁場の比が違うことを表す。∣t∣2 だけでは透過率にならない。
例題 14.2 垂直入射とガラス板1枚の透過 ★★
オリジナル
- (1) 垂直入射で rs と rp を n1, n2 で表し、空気からガラス(n2=1.5)への反射率を求めよ。
- (2) 厚いガラス板(両面とも空気)に垂直に光を当てる。板の中の多重反射を強度で足し合わせ(干渉しないとする)、板全体の透過率を求めよ。
解答
(1) θ1=0 では kjz=njk0 なので、式 (14.4), (14.5) から
rs=n1+n2n1−n2,rp=n22n1+n12n2n22n1−n12n2=n2+n1n2−n1=−rs.
符号は違うが、垂直入射では s と p の区別に物理的な意味が無いので、反射率は同じ R=((n2−n1)/(n2+n1))2=0.04 である。
(2) 1面あたりの反射率を R=0.04 とする。板に入った光は裏面で 1−R が出て R が戻り、戻った光は表面でまた R だけ戻る。出ていく光の強度を足すと
T板=(1−R)2(1+R2+R4+⋯)=1−R2(1−R)2=1+R1−R=0.923
となる。1面で 4% ずつ失うので、2面で 8% 弱が反射に回る。レンズを何枚も重ねる光学系で反射防止膜(14.6節の例題 14.8)が要るのはこのためである。
Brewster 角
rp=0 となるのは ε2k1z=ε1k2z のときである。2つの媒質が透明なら、これは n22n1cosθ1=n12n2cosθ2、つまり n2cosθ1=n1cosθ2 である。Snell の法則 n1sinθ1=n2sinθ2 と掛け合わせると sinθ1cosθ1=sinθ2cosθ2、すなわち sin2θ1=sin2θ2 で、n1=n2 なら
θ1+θ2=2π,tanθB=n1n2(14.7)
を得る(2つ目は1つ目を Snell の法則に入れたもの)。この入射角 θB を Brewster 角と呼ぶ。s 偏光では k1z=k2z が n1=n2 を要求するので、磁化しない媒質に s 偏光の Brewster 角は無い。
Brewster 角は双極子の放射の向き
式 (14.7) の条件 θ1+θ2=π/2 は、反射光と屈折光の向きが直交するということである。これを媒質の双極子の言葉で読む。第11章(第11章)のモデルでは、媒質2は Lorentz 振動子の集まりで、透過波の電場 E がそれぞれの振動子を揺らし、分極 P=ε0(εr2−1)E が光の周波数で振動する。反射波は、媒質1が真空なら、この振動する双極子が出した光を足し合わせたものである(Ewald と Oseen の消光定理:媒質の中で入射波を打ち消し透過波を作る双極子の放射が、外へ向かっては反射波になる)。
p 偏光の透過波の電場は入射面の中で透過の向き (sinθ2,0,cosθ2) に垂直なので、双極子の向きは (cosθ2,0,−sinθ2) である。反射波の向きは (sinθ1,0,−cosθ1) で、2つの単位ベクトルの内積は
cosθ2sinθ1+sinθ2cosθ1=sin(θ1+θ2)
になる。振動する双極子は自分の軸の向きへは光を出さない(放射の強度は軸からの角を ϑ として sin2ϑ に比例する)。θ1+θ2=π/2 では内積が 1 で、反射の向きがちょうど双極子の軸に重なるので、反射波の p の成分が消える。s 偏光では双極子は y を向き、入射面の中のどの向きに対しても軸と直交するので、反射が消える角は無い。Brewster 角が s と p で非対称になる理由は、こうして双極子の放射の向きの性質に帰着する。

図 14.1 空気からガラス(n2=1.5)への反射率。点線はどちらも式 (14.4), (14.5) による厳密な値で、青が s 偏光、赤が p 偏光。p 偏光の反射率は Brewster 角 θB=56.31∘ で 0 になる。90∘(すれすれの入射)では両方とも 1 に近づく
例題 14.3 Brewster 角で反射した光の偏光 ★★★
オリジナル
- (1) 空気からガラス(n=1.5)と、空気から水(n=1.333)への Brewster 角を求めよ。
- (2) 偏っていない光(s と p が同じ強度で、位相の関係がばらばらな光)が空気からガラスに Brewster 角で入る。反射光の強度は入射光の何倍で、どんな偏光か。
- (3) ガラスの中から空気へ出る光の Brewster 角を求め、(1) の屈折角と一致することを確かめよ。
解答
(1) 式 (14.7) から、ガラスで θB=arctan1.5=56.31∘、水で arctan1.333=53.1∘ である。
(2) Brewster 角では θ2=90∘−56.31∘=33.69∘ で、s 偏光の反射係数は、14.6節の角度の形 rs=−sin(θ1−θ2)/sin(θ1+θ2) を使うとrs=−sin22.62∘=−0.385、Rs=0.148 である(式 (14.4) に直接代入しても同じ)。p は反射しないので、反射光の強度は入射光の 21Rs=0.074 倍で、偏光は純粋な s 偏光(電場が入射面に垂直)になる。水面やガラスで反射したまぶしさを偏光板で消せるのは、この反射光がほぼ s 偏光にそろっているからである。
(3) ガラスから空気では tanθB′=1/1.5 で θB′=33.69∘ となり、(2) の屈折角に等しい。θ1+θ2=90∘ の関係は入射と透過を入れ替えても変わらないので、外から Brewster 角で入った光は、中から見ても Brewster 角で裏面に当たる。平行平板を Brewster 角に傾けると p 偏光が両面とも反射なしに通り抜けるのはこのためで、レーザーの共振器の窓(Brewster 窓)に使う。
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