光学と量子エレクトロニクス 第14章 §14.1 ★★★ 境界が x x x , y y y と時間の並進で変わらないので、3つの波の周波数と境界に沿った波数が一致する。これが反射の法則と Snell の法則で、残る未知数は反射と透過の振幅だけになる
第10章から第13章(第10章 〜第13章 )では、一様な媒質の中を進む平面波を考え、物質の応答を誘電関数 ε r ( ω ) \varepsilon_{\mathrm r}(\omega) ε r ( ω ) にまとめた。絶縁体では Lorentz 振動子が、金属では Drude の自由電子が ε r ( ω ) \varepsilon_{\mathrm r}(\omega) ε r ( ω ) を決めていた。実際の光学素子では、光はほとんどいつも媒質と媒質の境目を通る。レンズの表面、鏡、光ファイバーの芯と被覆の境、金属の薄膜がその例である。この章では、境目で光がどう分かれるかを、第3部の振動子のモデルの上に組み立てる。
この章で取り出すモードは、境界の両側の平面波である。媒質1から来る入射波、媒質1へ戻る反射波、媒質2へ進む透過波の3つで、周波数 ω \omega ω と境界に沿った波数がそろう。物質のモデルは、平面 z = 0 z=0 z = 0 で接する2つの半無限の一様な媒質で、それぞれを誘電関数 ε r 1 \varepsilon_{\mathrm r1} ε r 1 , ε r 2 \varepsilon_{\mathrm r2} ε r 2 (複素数でよい)で表す。光と物質の結合は、Maxwell 方程式から出る境界条件だけである。14.1節で3つの波と境界条件を書き、境界に沿った波数の保存から反射の法則と Snell の法則を出す。14.2 節で、偏光を s と p に分けて境界条件を解き、Fresnel の係数を境界に垂直な波数 k z k_z k z で書く。その零点が Brewster 角で、媒質2の双極子が自分の軸の向きへ光を出さないことの帰結であることを示す。14.3 節では k z k_z k z が純虚数になる場合を読み、全反射とエバネッセント波を出す。14.4 節では反射係数の極を読み、金属と誘電体の境界を伝わる表面プラズモンを出す。14.5 節で置いた近似と測る量(Brewster 角・臨界角・偏光解析)を述べ、14.6 節で学部の電磁気学で習う Fresnel の式と並べる。
この章では、時間の因子を記法の正本どおり e − i ω t \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t} e − i ω t にとり、物理量はその複素振幅の実部とする。媒質はどちらも磁化しない(μ = μ 0 \mu=\mu_0 μ = μ 0 )とする。誘電率は ε j = ε 0 ε r j \varepsilon_j=\varepsilon_0\varepsilon_{\mathrm rj} ε j = ε 0 ε r j (j = 1 , 2 j=1,2 j = 1 , 2 )と書き、真空の波数を k 0 = ω / c k_0=\omega/c k 0 = ω / c とする。
3つの平面波
境界を z = 0 z=0 z = 0 の平面にとり、z < 0 z<0 z < 0 を媒質1、z > 0 z>0 z > 0 を媒質2とする。入射波の波数ベクトルが x z xz x z 面にあるように座標を選び、この面を入射面 と呼ぶ。媒質 j j j の中の平面波は e i ( k ⋅ r − ω t ) \mathrm{e}^{\mathrm{i}(\bm{k}\cdot\bm{r}-\omega t)} e i ( k ⋅ r − ω t ) の形で、Maxwell 方程式から ∣ k ∣ 2 = ε r j k 0 2 \lvert \bm{k}\rvert ^2=\varepsilon_{\mathrm rj}k_0^2 ∣ k ∣ 2 = ε r j k 0 2 を満たす(第10章 )。境界に沿った成分を k x k_x k x 、垂直な成分を k j z k_{jz} k j z と書くと、
k j z = ε r j k 0 2 − k x 2 , Im k j z ≥ 0 ( Im k j z = 0 のときは Re k j z ≥ 0 ) (14.1) k_{jz}=\sqrt{\varepsilon_{\mathrm rj}k_0^2-k_x^2},\qquad \operatorname{Im} k_{jz}\ge0\quad(\operatorname{Im} k_{jz}=0\ \text{のときは}\ \operatorname{Re} k_{jz}\ge0)\tag{14.1} k j z = ε r j k 0 2 − k x 2 , Im k j z ≥ 0 ( Im k j z = 0 のときは Re k j z ≥ 0 ) ( 14.1 )
である。平方根の枝の選び方は、媒質2で透過波が境界から遠ざかる向きへ進むか、遠ざかるにつれて減衰するように決めた。媒質1で入射波は e i ( k x x + k 1 z z ) \mathrm{e}^{\mathrm{i}(k_xx+k_{1z}z)} e i ( k x x + k 1 z z ) 、反射波は e i ( k x x − k 1 z z ) \mathrm{e}^{\mathrm{i}(k_xx-k_{1z}z)} e i ( k x x − k 1 z z ) 、媒質2で透過波は e i ( k x x + k 2 z z ) \mathrm{e}^{\mathrm{i}(k_xx+k_{2z}z)} e i ( k x x + k 2 z z ) の空間依存を持つ(時間の因子 e − i ω t \mathrm{e}^{-\mathrm{i}\omega t} e − i ω t は省く)。入射角を θ 1 \theta_1 θ 1 とすると、媒質1が透明なら k x = n 1 k 0 sin θ 1 k_x=n_1k_0\sin\theta_1 k x = n 1 k 0 sin θ 1 , k 1 z = n 1 k 0 cos θ 1 k_{1z}=n_1k_0\cos\theta_1 k 1 z = n 1 k 0 cos θ 1 である(n 1 = ε r 1 n_1=\sqrt{\varepsilon_{\mathrm r1}} n 1 = ε r 1 )。
境界条件
境界に自由電荷と自由電流が無いとき、Maxwell 方程式の積分形を境界をまたぐ薄い箱と細い輪に当てると、次の4つが成り立つ(第10章 ):
E ∥ , H ∥ が連続 , D z , B z が連続 . (14.2) \bm{E}_{\parallel},\ \bm{H}_{\parallel}\ \text{が連続},\qquad D_z,\ B_z\ \text{が連続}.\tag{14.2} E ∥ , H ∥ が連続 , D z , B z が連続 . ( 14.2 )
添字 ∥ \parallel ∥ は境界に沿った成分である。磁化しない媒質では H = B / μ 0 \bm{H}=\bm{B}/\mu_0 H = B / μ 0 なので、H ∥ \bm{H}_\parallel H ∥ の連続は B ∥ \bm{B}_\parallel B ∥ の連続と同じである。この4つのうち独立なのは接線成分の2つで、法線成分の2つは接線成分の連続と Maxwell 方程式から従う。したがって反射と透過の振幅を決めるには、接線成分の2つの条件で足りる。
位相の一致:反射の法則と Snell の法則
境界条件 (14.2) は、境界の上のすべての点 ( x , y , 0 ) (x,y,0) ( x , y , 0 ) とすべての時刻 t t t で成り立たなければならない。3つの波の和が e i ( k x x − ω t ) \mathrm{e}^{\mathrm{i}(k_xx-\omega t)} e i ( k x x − ω t ) の形でそろわないと、ある x x x や t t t で成り立った等式が別の x x x , t t t では崩れる。したがって3つの波は同じ ω \omega ω と同じ k x k_x k x を持ち、k y = 0 k_y=0 k y = 0 もそろう。反射波は媒質1の中にあるので ∣ k ∣ \lvert \bm{k}\rvert ∣ k ∣ も入射波と同じで、反射角は入射角に等しい(反射の法則 )。透過波は k x = n 2 k 0 sin θ 2 k_x=n_2k_0\sin\theta_2 k x = n 2 k 0 sin θ 2 を満たすので、
n 1 sin θ 1 = n 2 sin θ 2 (14.3) n_1\sin\theta_1=n_2\sin\theta_2\tag{14.3} n 1 sin θ 1 = n 2 sin θ 2 ( 14.3 )
となる。これが Snell の法則 である。
この一致は並進の対称性の帰結である。境界は x x x 方向に並進しても変わらないので、x x x 方向の運動量 ℏ k x \hbar k_x ℏ k x が保存し、時間の並進で変わらないので周波数 ω \omega ω が保存する。光線の言葉では、k x / k 0 = n sin θ k_x/k_0=n\sin\theta k x / k 0 = n sin θ は光線の Hamiltonian の運動量(解析力学から様々な理論分野を組み立てる 第2部第10章 ・第2章 )そのもので、屈折率が x x x によらない系でこの運動量が保存することを、光線の Snell の法則として第2章で使った。波の言葉でも同じ量が同じ理由で保存する。
s 偏光と p 偏光
入射面を鏡とする鏡映 y → − y y\to-y y → − y でも、2つの媒質と境界は変わらない。そのため、場を鏡映で符号を変えない部分と変える部分に分けると、2つは境界でまざらない。電場が入射面に垂直(E = E y e y \bm{E}=E_y\bm{e}_y E = E y e y )な波を s 偏光 、磁場が入射面に垂直(H = H y e y \bm{H}=H_y\bm{e}_y H = H y e y )な波を p 偏光 と呼ぶ。s は電場が y y y だけ、p は磁場が y y y だけを持つので、それぞれを1成分のスカラーの波として扱うことができる。任意の偏光は s と p の重ね合わせで、それぞれに別の反射係数が付く。
例題 14.1 空気から水へ入る光の波数 ★★
オリジナル 真空の波長 λ 0 = 633 n m \lambda_0=633\,\mathrm{nm} λ 0 = 633 nm の光が、空気(n 1 = 1 n_1=1 n 1 = 1 )から水(n 2 = 1.333 n_2=1.333 n 2 = 1.333 )へ入射角 30 ∘ 30^\circ 3 0 ∘ で入る。
(1) k x k_x k x , k 1 z k_{1z} k 1 z , k 2 z k_{2z} k 2 z を k 0 k_0 k 0 を単位として求め、屈折角を出せ。
(2) 水の中の波長と、境界に沿って測った縞の間隔 2 π / k x 2\pi/k_x 2 π / k x を求め、境界に沿った縞の間隔が両側で同じであることを確かめよ。
解答 (1) k x / k 0 = sin 30 ∘ = 0.500 k_x/k_0=\sin30^\circ=0.500 k x / k 0 = sin 3 0 ∘ = 0.500 、k 1 z / k 0 = cos 30 ∘ = 0.866 k_{1z}/k_0=\cos30^\circ=0.866 k 1 z / k 0 = cos 3 0 ∘ = 0.866 。水の側は式 (14.1) から k 2 z / k 0 = 1.333 2 − 0.25 = 1.236 k_{2z}/k_0=\sqrt{1.333^2-0.25}=1.236 k 2 z / k 0 = 1.33 3 2 − 0.25 = 1.236 である。屈折角は tan θ 2 = k x / k 2 z \tan\theta_2=k_x/k_{2z} tan θ 2 = k x / k 2 z から、または Snell の法則 sin θ 2 = 0.5 / 1.333 \sin\theta_2=0.5/1.333 sin θ 2 = 0.5/1.333 から θ 2 = 22.0 ∘ \theta_2=22.0^\circ θ 2 = 22. 0 ∘ になる。
(2) 水の中の波長は λ 0 / n 2 = 475 n m \lambda_0/n_2=475\,\mathrm{nm} λ 0 / n 2 = 475 nm で、空気中より短い。境界に沿った縞の間隔は 2 π / k x = λ 0 / sin 30 ∘ = 1266 n m 2\pi/k_x=\lambda_0/\sin30^\circ=1266\,\mathrm{nm} 2 π / k x = λ 0 / sin 3 0 ∘ = 1266 nm で、k x k_x k x が両側で共通なので両側で同じになる。空気の側では長い波長を斜めに切り、水の側では短い波長をより立てて切って、境界の上で同じ間隔の縞を作っている。この縞の一致が式 (14.3) の中身である。
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