光学と量子エレクトロニクス 第14章 §14.6 ★★ 学部の電磁気学の Fresnel の式(ncosθ の形と角度の形)は、この章の kz の形を透明な媒質に限って書き直したもので、インピーダンスの不整合の式とも同じものである
学部の電磁気学や光学の授業では、Fresnel の式を屈折率と角度で
rs=n1cosθ1+n2cosθ2n1cosθ1−n2cosθ2,rp=n2cosθ1+n1cosθ2n2cosθ1−n1cosθ2(14.17)
と書くことが多い。透明な媒質では kjz=njk0cosθj, εrj=nj2 なので、式 (14.4), (14.5) の分子と分母を k0(p では n1n2k0)で割ればこの形になる。Snell の法則で n1/n2=sinθ2/sinθ1 と書き換えると、角度だけで書いた形
rs=−sin(θ1+θ2)sin(θ1−θ2),rp=tan(θ1+θ2)tan(θ1−θ2)(14.18)
になる。rp の分母 tan(θ1+θ2) が θ1+θ2=π/2 で無限大になることが Brewster 角である。
透過係数は、授業では電場の比で tp(E)=2n1cosθ1/(n2cosθ1+n1cosθ2) と書くことが多い。各媒質で電場と磁場の比は ∣E∣/∣H∣=1/(nε0c) なので、この章の磁場の比 tp とは tp(E)=(n1/n2)tp の関係にある。透過率は授業では T=(n2cosθ2/(n1cosθ1))∣t(E)∣2 と書き、これは式 (14.6) と同じ値になる。rp の符号は、授業によっては式 (14.17) と逆にとる(反射波の電場の向きの約束が違う)。その流儀では垂直入射で rp=rs になり、Brewster 角を境に rp の符号が変わる点は同じである。
もう1つの書き方は、伝送線路のインピーダンスの不整合の式である。s 偏光では Z=ωμ0/kz(Ey と Hx の比)、p 偏光では Z=kz/(ωε)(Ex と Hy の比)を各媒質の波のインピーダンスとすると、
rs=Z2+Z1Z2−Z1,rp=Z1+Z2Z1−Z2(14.19)
となる(p の符号が逆なのは、この本の rp が電流に当たる磁場の比だからである)。境界での反射は、インピーダンスの違う2本の線路のつなぎ目での反射と同じ式で、反射防止膜は線路の整合器(1/4 波長の変成器)と同じ設計になる。Stokes の関係 r21=−r12, t12t21=1−r122 も、式 (14.4), (14.5) で添字を入れ替えるだけで確かめられ、第9章の Fabry–Perot の計算で使った(第9章)。
例題 14.8 1/4 波長の反射防止膜 ★★
オリジナル空気(n1=1)とガラス(n2=1.5)の間に、屈折率 nc、厚さ d の薄膜を付ける。垂直入射とする。
- (1) 膜の中の往復の位相が 2kcd=π(光学的な厚さ ncd=λ0/4)のとき、式 (14.11) の反射係数が r=(n1n2−nc2)/(n1n2+nc2) になることを示せ。
- (2) 反射が 0 になる nc を求めよ。また nc=1.38(フッ化マグネシウムの屈折率に近い値)の膜の反射率を求め、膜の無いときの 4% と比べよ。
- (3) λ0=550nm に合わせた nc=1.38 の膜の厚さを求めよ。
解答
(1) e2ikcd=−1 なので r=(r12−r23)/(1−r12r23)。垂直入射の r12=(n1−nc)/(n1+nc), r23=(nc−n2)/(nc+n2) を入れて分母を払うと
r=(n1+nc)(nc+n2)−(n1−nc)(nc−n2)(n1−nc)(nc+n2)−(nc−n2)(n1+nc)=2n1n2+2nc22n1n2−2nc2.
(2) nc=n1n2=1.5=1.225 で r=0 になる。膜の上面と下面の反射が同じ大きさで逆位相になり、打ち消し合う条件である。インピーダンスの言葉では、Zc=Z1Z2 の1/4 波長の線路が2つのインピーダンスを整合させる条件と同じである。nc=1.38 では r=(1.5−1.904)/(1.5+1.904)=−0.119、R=0.0141 で、反射は膜の無い 4% の3分の1ほどになる。1.225 の屈折率で丈夫な膜の材料が少ないので、実際には 1.38 前後の膜を使うか、膜を何層も重ねる。
(3) d=λ0/(4nc)=550/(4×1.38)=99.6nm。条件が λ0 に依るので、膜1層では緑の光で反射が最も小さく、青と赤ではいくらか残る。反射防止膜を付けたレンズが紫がかって見えるのはこのためである。
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