光学と量子エレクトロニクス 第14章 §14.4 ★★★ p 偏光の反射係数の極は、入射波なしに境界にとどまる波で、誘電関数が負の金属と誘電体の境界に現れる。Drude の金属では表面プラズマ周波数 ωp/1+εr1 の下に分散曲線を持つ
反射係数の極は境界のモード
反射係数 r=(反射の振幅)/(入射の振幅) が無限大になる (ω,kx) では、入射波が無くても反射波と透過波だけで境界条件が満たされる。つまり外から何も来ないのに境界に場が立つ。これは境界そのものが持つモードである。このモードが境界にとどまるには、場が両側で境界から離れるにつれて減衰しなければならないので、媒質1の「反射波」e−ik1zz も z→−∞ で減衰する(k1z=iκ1、媒質2で k2z=iκ2、κ1,κ2>0)。
s 偏光の極は k1z+k2z=0、つまり κ1+κ2=0 で、正の κ では成り立たないので、s 偏光の境界のモードは無い。p 偏光の極は ε2k1z+ε1k2z=0、つまり
εr1κ1+εr2κ2=0(14.12)
で、εr1 と εr2 の符号が逆のときに限って解を持つ。媒質1を誘電体(εr1>0)、媒質2を誘電関数が負の金属(εr2=εm<0)とする。κj2=kx2−εrjk02 を入れて2乗し kx について解くと、
ksp=k0εr1+εmεr1εm(14.13)
を得る。ksp が εr1k0 より大きい実数になる(両側で減衰する)のは εm<−εr1 のときである。この境界を伝わる p 偏光の波を表面プラズモン(表面プラズモン・ポラリトン)と呼ぶ。
場の形を見ると、表面プラズモンが何であるかがわかる。p 偏光の電場は z 成分を持ち、境界で Dz は連続だが ε の符号が変わるので Ez の符号が両側で反転する。Ez の跳びは境界の表面電荷で、それが eikxx の形で並んで振動する。金属の自由電子が境界で疎と密を作って振動し、その電荷の作る場が両側に貼りついて一緒に進む。この巻の言葉で言えば、取り出すモードは境界に沿った波数 kx を持つ1つの場のモードで、物質のモデルは Drude の自由電子(第13章)、結合は境界条件である。電子の振動と光の場が一体になったモードなので、表面プラズモンは光とも電子の振動とも違う分散関係を持つ。
Drude の金属の分散関係
損失を無視した Drude の誘電関数 εm(ω)=1−ωp2/ω2(ωp はプラズマ周波数。第13章)を式 (14.13) に入れる。条件 εm<−εr1 は ω<ωsp で、
ωsp=1+εr1ωp(14.14)
を表面プラズマ周波数と呼ぶ。ω→ωsp で分母 εr1+εm が 0 に近づくので ksp→∞、ω→0 では εm→−∞ で ksp→εr1k0(誘電体の中の光の線)に近づく。分散曲線はいつも光の線の右(同じ ω でより大きい kx)にある。ωsp<ω<ωp では −εr1<εm<0 で、境界のモードも金属の中を進む波も無い。ω>ωp では εm>0 で、金属は透明になり、光は金属の中へ進む(金属がプラズマ周波数より上で透明になること。第13章)。

図 14.3 損失の無い Drude の金属と真空(εr1=1)の境界の分散関係(式 (14.13)。点線は厳密な値)。赤の表面プラズモンの枝はいつも光の線より右にあり、ωsp=ωp/2 に近づく。青は ω>ωp で金属の中を進む光 ω2=ωp2+c2k2
光を当てても表面プラズモンは立たない
分散曲線が光の線の右にあることは、媒質1から平面波を当てても表面プラズモンを励起できないことを意味する。媒質1から来る光の kx=εr1k0sinθ1 は、どの入射角でも εr1k0 を超えない。境界に沿った波数がそろわなければ、14.1節の位相の一致から2つの波は結合しない。足りない kx を補う方法の1つが、14.3節の全反射である。屈折率 np の大きいプリズムの中で全反射させると、エバネッセント波は kx=npk0sinθ1 を持ち、これは εr1k0 を超える。プリズムの底面に薄い金属膜を付け、膜を通り抜けたエバネッセント波を金属の裏側の境界の表面プラズモンにつなぐ配置を Kretschmann の配置と呼ぶ(章末の総合問題)。kx が Reksp に一致する入射角で光は表面プラズモンに移り、反射率が鋭く下がる。
金属に損失があると εm が複素数になり、ksp も複素数になる。境界に沿った強度は e−2Imkspx で減るので、表面プラズモンが進める距離(伝搬長)は L=1/(2Imksp) である。
例題 14.6 Drude の金属の表面プラズモン ★★
オリジナルDrude の誘電関数 εm(ω)=1−ωp2/(ω2+iγω) で、模型の数値として ℏωp=9.0eV, ℏγ=0.05eV とおく(実在の金属のバンド間遷移は入れていない)。金属と空気(εr1=1)の境界で、λ0=633nm の表面プラズモンを考える。
- (1) ℏω と εm を求めよ。
- (2) ksp/k0 と伝搬長 L を求めよ。
- (3) 損失を無視して、空気側と金属側で場の振幅が 1/e になる深さを求めよ。
- (4) この模型の表面プラズマ周波数 ℏωsp を求めよ。
解答
(1) ℏω=hc/λ0=1239.84/633=1.959eV。εm=1−81/(1.9592+i0.05×1.959)=−20.10+0.539i である。実部の大きさが虚部の約40倍で、可視の光に対してこの模型の金属はほぼ損失の無い負の誘電体として振る舞う。
(2) 式 (14.13) に入れて ksp/k0=1.0258+7.19×10−4i である。実部は光の線 k0 よりわずか 2.6% 右にある。k0=2π/633nm で L=1/(2Imksp)=70μm。波長の100倍ほど進むが、電子の衝突で少しずつ失われる。
(3) εm を実数 −20.1 とすると、κ12=ksp2−k02=−k02/(1+εm) から κ1/k0=1/19.1=0.229、式 (14.12) から κ2=−εmκ1=4.60k0 である。深さは空気側 1/κ1=440nm、金属側 1/κ2=21.9nm になる。場の大部分は空気の側にあり、金属の中へは表皮の深さ程度しか入らない。損失が金属の中の場だけから生じるので、このかたよりが (2) の長い伝搬長の理由である。
(4) 式 (14.14) から ℏωsp=9.0/2=6.36eV で、紫外にある。可視の 1.96eV は ωsp よりずっと下で、分散曲線の光の線に近い部分にいる。実在の銀や金では d 電子のバンド間遷移が εm を変え、ωsp はこの模型より低い(ハミルトニアンの選び方で固体を考える 第4部第6章)。
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