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当てる道具:Fourier 変換と時間帯域幅積

2026年10月15日10分で読めますAI生成教科書『虎の巻』第23章 モード同期と光周波数コム
目次
  1. 不確定性関係
  2. 時間帯域幅積
  3. チャープと群速度分散
  4. 木下の層

AI 生成・木下が未勉強

光学と量子エレクトロニクス 第23章 §23.2 ★★★ パルスの包絡線とスペクトルは Fourier 変換の対で、時間の幅と周波数の幅の積には下限がある。下限に達するのはチャープの無いパルスだけで、群速度分散はチャープを足してパルスを広げる

不確定性関係

1つのパルスの包絡線 E(t)\mathcal E(t) のスペクトルを、記法の正本の流儀で E~(ω)=∫E(t) eiωt dt\tilde{\mathcal E}(\omega)=\int\mathcal E(t)\,\mathrm{e}^{\mathrm{i}\omega t}\,\mathrm{d} t と書く(ω\omega は搬送波 ωc\omega_{\mathrm c} から測った角周波数)。時間と周波数の広がりを、強度の重みによる2乗平均の幅

σt2=∫(t−tˉ)2∣E∣2 dt∫∣E∣2 dt,σω2=∫(ω−ωˉ)2∣E~∣2 dω∫∣E~∣2 dω\sigma_t^2=\frac{\int(t-\bar t)^2\lvert \mathcal E\rvert ^2\,\mathrm{d} t}{\int\lvert \mathcal E\rvert ^2\,\mathrm{d} t},\qquad \sigma_\omega^2=\frac{\int(\omega-\bar\omega)^2\lvert \tilde{\mathcal E}\rvert ^2\,\mathrm{d}\omega}{\int\lvert \tilde{\mathcal E}\rvert ^2\,\mathrm{d}\omega}

で測る(tˉ\bar t, ωˉ\bar\omega は同じ重みの平均)。

定理 23.1(時間と周波数の不確定性関係)

E\mathcal E と tEt\mathcal E と E′\mathcal E' が2乗可積分なら σtσω≥12\sigma_t\sigma_\omega\ge\tfrac12 が成り立つ。等号は E(t)=Cexp⁡[−(t−tˉ)2/(2τ02)−iωˉt]\mathcal E(t)=C\exp[-(t-\bar t)^2/(2\tau_0^2)-\mathrm{i}\bar\omega t](CC は複素定数、τ0>0\tau_0>0)のときに限る。

証明

E(t)\mathcal E(t) に eiωˉt\mathrm{e}^{\mathrm{i}\bar\omega t} をかけ、時刻を tˉ\bar t だけずらしても σt\sigma_t, σω\sigma_\omega は変わらないので、tˉ=ωˉ=0\bar t=\bar\omega=0 としてよい。Parseval の等式 ∫∣E~∣2dω/(2π)=∫∣E∣2dt\int\lvert \tilde{\mathcal E}\rvert ^2\mathrm{d}\omega/(2\pi)=\int\lvert \mathcal E\rvert ^2\mathrm{d} t と、E′\mathcal E' の変換が −iωE~-\mathrm{i}\omega\tilde{\mathcal E} であることから、∫ω2∣E~∣2dω/(2π)=∫∣E′∣2dt\int\omega^2\lvert \tilde{\mathcal E}\rvert ^2\mathrm{d}\omega/(2\pi)=\int\lvert \mathcal E'\rvert ^2\mathrm{d} t である。したがって W=∫∣E∣2dtW=\int\lvert \mathcal E\rvert ^2\mathrm{d} t として σt2σω2W2=∫∣tE∣2dt∫∣E′∣2dt\sigma_t^2\sigma_\omega^2W^2=\int\lvert t\mathcal E\rvert ^2\mathrm{d} t\int\lvert \mathcal E'\rvert ^2\mathrm{d} t になる。Cauchy–Schwarz の不等式から、これは ∣∫tE∗E′dt∣2\lvert \int t\mathcal E^*\mathcal E'\mathrm{d} t\rvert ^2 以上である。一方、部分積分により 2Re⁡∫tE∗E′dt=∫t (∣E∣2)′dt=−W2\operatorname{Re}\int t\mathcal E^*\mathcal E'\mathrm{d} t=\int t\,(\lvert \mathcal E\rvert ^2)'\mathrm{d} t=-W なので、∣∫tE∗E′dt∣≥W/2\lvert \int t\mathcal E^*\mathcal E'\mathrm{d} t\rvert \ge W/2 である。合わせて σtσω≥1/2\sigma_t\sigma_\omega\ge1/2 を得る。等号には、Cauchy–Schwarz の等号 E′=λtE\mathcal E'=\lambda t\mathcal E と、∫tE∗E′dt=λ∫t2∣E∣2dt\int t\mathcal E^*\mathcal E'\mathrm{d} t=\lambda\int t^2\lvert \mathcal E\rvert ^2\mathrm{d} t が実数であること(λ\lambda が実数)の両方が要る。E′=λtE\mathcal E'=\lambda t\mathcal E の解は E=Ceλt2/2\mathcal E=C\mathrm{e}^{\lambda t^2/2} で、2乗可積分なので λ=−1/τ02<0\lambda=-1/\tau_0^2<0 である。

量子力学の位置と運動量の不確定性関係と同じ証明で、tt と ω\omega が Fourier 変換で結ばれた共役な変数であることだけを使っている。

時間帯域幅積

実験では2乗平均の幅でなく、強度の半値全幅 τp\tau_{\mathrm p} と、スペクトルの強度 ∣E~∣2\lvert \tilde{\mathcal E}\rvert ^2 の周波数で測った半値全幅 Δνp\Delta\nu_{\mathrm p} を使う。積 τpΔνp\tau_{\mathrm p}\Delta\nu_{\mathrm p} を時間帯域幅積と呼ぶ。その値はパルスの形で決まる。Gauss 型 E=exp⁡(−t2/(2τ02))\mathcal E=\exp(-t^2/(2\tau_0^2)) では強度 e−t2/τ02\mathrm{e}^{-t^2/\tau_0^2} の半値全幅が τp=2ln⁡2 τ0\tau_{\mathrm p}=2\sqrt{\ln2}\,\tau_0、スペクトル e−ω2τ02\mathrm{e}^{-\omega^2\tau_0^2} の半値全幅が Δνp=ln⁡2/(πτ0)\Delta\nu_{\mathrm p}=\sqrt{\ln2}/(\pi\tau_0) で、

τpΔνp=2ln⁡2π=0.441(Gauss 型),τpΔνp=(2ln⁡(1+2)π)2=0.315(sech2 型)(23.6)\tau_{\mathrm p}\Delta\nu_{\mathrm p}=\frac{2\ln2}{\pi}=0.441\quad(\text{Gauss 型}),\qquad \tau_{\mathrm p}\Delta\nu_{\mathrm p}=\Bigl(\frac{2\ln(1+\sqrt2)}{\pi}\Bigr)^2=0.315\quad(\mathrm{sech}^2\ \text{型})\tag{23.6}

となる。sech2\mathrm{sech}^2 型は E=sech(t/τ)\mathcal E=\mathrm{sech}(t/\tau) で、強度の半値全幅が τp=2ln⁡(1+2) τ=1.763 τ\tau_{\mathrm p}=2\ln(1+\sqrt2)\,\tau=1.763\,\tau、スペクトルも sech(πωτ/2)\mathrm{sech}(\pi\omega\tau/2) の形になることから出る。23.4節のソリトンがこの形である。チャープの無いパルスがこれらの値をとり、その状態を変換限界と呼ぶ。

チャープと群速度分散

包絡線に時間の2次の位相をつけた E=exp⁡[−(1+iC)t2/(2τ02)]\mathcal E=\exp[-(1+\mathrm{i} C)t^2/(2\tau_0^2)] を考える。CC をチャープの大きさと呼ぶ。強度は CC によらず同じだが、位相 −Ct2/(2τ02)-Ct^2/(2\tau_0^2) を時間で微分した瞬間の角周波数のずれ Ct/τ02Ct/\tau_0^2 が時間とともに変わる。Gauss 積分から E~∝exp⁡[−ω2τ02/(2(1+iC))]\tilde{\mathcal E}\propto\exp[-\omega^2\tau_0^2/(2(1+\mathrm{i} C))] で、その強度は exp⁡[−ω2τ02/(1+C2)]\exp[-\omega^2\tau_0^2/(1+C^2)] なので、スペクトルの幅は 1+C2\sqrt{1+C^2} 倍になり、

τpΔνp=0.4411+C2(23.7)\tau_{\mathrm p}\Delta\nu_{\mathrm p}=0.441\sqrt{1+C^2}\tag{23.7}

となる。時間帯域幅積が変換限界の値より大きいことは、チャープがあることの目印である。

第11章(第11章)で、媒質の中を距離 zz 進む包絡線は、角周波数のずれ ω\omega ごとに位相 k′′zω2/2k''z\omega^2/2 を受けることを示した(k′′=d2k/dω2k''=\mathrm{d}^2k/\mathrm{d}\omega^2 は群速度分散)。チャープの無い Gauss 型のパルスから出発すると、E~∝exp⁡[−ω2(τ02−ik′′z)/2]\tilde{\mathcal E}\propto\exp[-\omega^2(\tau_0^2-\mathrm{i} k''z)/2] で、逆変換は exp⁡[−t2/(2(τ02−ik′′z))]\exp[-t^2/(2(\tau_0^2-\mathrm{i} k''z))] である。1/(τ02−ik′′z)=(τ02+ik′′z)/(τ04+k′′2z2)1/(\tau_0^2-\mathrm{i} k''z)=(\tau_0^2+\mathrm{i} k''z)/(\tau_0^4+k''^2z^2) と書き直すと、包絡線は幅 τ(z)\tau(z) とチャープ C(z)C(z) を持つ Gauss 型

τ(z)=τ01+(k′′zτ02)2,C(z)=k′′zτ02(23.8)\tau(z)=\tau_0\sqrt{1+\Bigl(\frac{k''z}{\tau_0^2}\Bigr)^2},\qquad C(z)=\frac{k''z}{\tau_0^2}\tag{23.8}

になる。スペクトルの強度は位相だけの変化では変わらないので、幅の増えた分がそのままチャープに入る。この幅の式は第11章の例題と同じものである。逆に、チャープを持つパルスに逆符号の k′′zk''z を与えればチャープが消え、変換限界まで縮む。短いパルスのレーザーでは、プリズムの対や、層の厚さを変えた多層膜の鏡(チャープ鏡)で負の群速度分散を足し、共振器を1周したときの分散 D=∑iki′′LiD=\sum_ik''_iL_i を打ち消すか、わずかに負にする。

分散は縦モードの間隔にも現れる。モード ℓ\ell の共鳴の条件は、1周の位相 Φ(ω)=∑iki(ω)Li\Phi(\omega)=\sum_ik_i(\omega)L_i が 2πℓ2\pi\ell に等しいことである。となりのモードとの間隔は Δω=2π/Φ′(ω)\Delta\omega=2\pi/\Phi'(\omega) で、Φ′=∑iLi/vg,i\Phi'=\sum_iL_i/v_{\mathrm g,i} は1周の群遅延である。したがって νrep\nu_{\mathrm{rep}} は位相速度でなく群速度で決まり、Φ′′=D≠0\Phi''=D\ne0 なら間隔は周波数とともに少しずつ変わる。自由に発振するモードは厳密には等間隔でない。モード同期が成り立つと、結合によってすべてのモードが等間隔に引き込まれ、パルスは1周ごとに同じ形に戻る。その間隔が 23.5節の櫛の歯の間隔 νrep\nu_{\mathrm{rep}} である。

例題 23.2 10 fs のパルスの帯域と、ガラス板によるチャープ ★★

オリジナル

  1. (1) 中心の波長 800 nm800\,\mathrm{nm}、半値全幅 10 fs10\,\mathrm{fs} の変換限界の sech2\mathrm{sech}^2 型のパルスのスペクトルの半値全幅を、周波数と波長で求めよ。
  2. (2) 半値全幅 10 fs10\,\mathrm{fs} の変換限界の Gauss 型のパルスが、厚さ 2 mm2\,\mathrm{mm} の N-BK7(k′′=44.7 fs2/mmk''=44.7\,\mathrm{fs^2/mm}、第11章)を通る。出てきたパルスの幅、チャープ CC、時間帯域幅積を求めよ。
  3. (3) (2) のパルスを変換限界に戻すには、どれだけの群速度分散を足せばよいか。
解答

(1) 式 (23.6) から Δνp=0.315/(10 fs)=31.5 THz\Delta\nu_{\mathrm p}=0.315/(10\,\mathrm{fs})=31.5\,\mathrm{THz}。ν=c/λ\nu=c/\lambda を微分した Δλ=λ2Δν/c\Delta\lambda=\lambda^2\Delta\nu/c から、Δλ=(800 nm)2×31.5 THz/c=67.2 nm\Delta\lambda=(800\,\mathrm{nm})^2\times31.5\,\mathrm{THz}/c=67.2\,\mathrm{nm} である。10 fs10\,\mathrm{fs} のパルスは、搬送波の周期 2.67 fs2.67\,\mathrm{fs} の4周期分ほどの長さしかなく、スペクトルは可視の赤から近赤外までの幅を持つ。

(2) τ0=τp/(2ln⁡2)=6.01 fs\tau_0=\tau_{\mathrm p}/(2\sqrt{\ln2})=6.01\,\mathrm{fs}、k′′z=89.4 fs2k''z=89.4\,\mathrm{fs^2} なので C=k′′z/τ02=2.48C=k''z/\tau_0^2=2.48。式 (23.8) から幅は 1+2.482=2.67\sqrt{1+2.48^2}=2.67 倍の 26.7 fs26.7\,\mathrm{fs} になる。スペクトルの幅は変わらないので、時間帯域幅積は 0.441×2.67=1.180.441\times2.67=1.18 で、式 (23.7) とも一致する。

(3) 位相 k′′zω2/2k''z\omega^2/2 を打ち消せばよいので、−89.4 fs2-89.4\,\mathrm{fs^2} の群速度分散を足す。チャープ鏡1枚が反射ごとに −40-40〜−60 fs2-60\,\mathrm{fs^2} ほどの分散を持つように作れば、2枚の間で2回反射させて打ち消すことができる。

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