光学と量子エレクトロニクス 第25章 §25.6 ★★ 電磁気学の放射圧 I/c・2I/c、光ピンセットの勾配力と散乱力、量子エレクトロニクスの光シフトが、この章の2つの力のどこに当たるか
電磁気学の授業では、光の放射圧を、電磁場の運動量密度 S/c2(S は Poynting ベクトル)から次の形で習う。強度 I の平面波が面に垂直に当たるとき、単位面積あたりの力は
AF=cI(すべて吸収する面),AF=c2I(すべて反射する面)
である。この章の散乱力 (25.10) F=σI/c は、吸収する面の式で面積 A を吸収の断面積 σ に置き換えたものである。原子は光を吸収して全方向へ散乱し直すので、散乱光の運動量の平均は 0 で、反射でなく吸収の式になる。
光ピンセットの授業や解説では、波長より十分小さい誘電体の球(Rayleigh 粒子)に働く力を、勾配力と散乱力に分けて
Fgrad=c2πnma3(mr2+2mr2−1)∇I,Fscat=cnmI38π(ka)4a2(mr2+2mr2−1)2
と習う(a は球の半径、nm は周りの液体の屈折率、mr=np/nm は粒子と液体の屈折率の比、k=2πnm/λ。Y. Harada, T. Asakura (1996)、Opt. Commun. 124, 529 の形)。勾配力はこの章の双極子力 41α′∇∣E∣2 で、球の分極率に第11章(第11章)の Clausius–Mossotti の形 α=4πε0nm2a3(mr2−1)/(mr2+2) を入れ、媒質中の強度 I=21nmε0c∣E∣2 で書き直したものである。散乱力はこの章の σI/c で、透明な粒子では吸収の代わりに Rayleigh 散乱の断面積(a6/λ4 に比例)が入る。粒子が小さいほど散乱力は勾配力(a3 に比例)に比べて速く小さくなり、Rayleigh 粒子は捕まえやすい。
量子エレクトロニクスの授業では、遠い離調の光が原子の準位をずらすこと(光シフト、AC Stark シフト)を2次の摂動論で ΔEg=∣⟨e∣d^⋅e∣g⟩∣2∣E∣2/(4ℏΔ) と習う。これは式 (25.20) の ℏΩ2/(4Δ) と同じで、この章では、その準位のずれが位置で変わるとき、勾配が原子に働く力になると読む。
例題 25.6 光ピンセットの中のポリスチレンの微粒子 ★★
オリジナル水(nm=1.33)の中の半径 a=50nm のポリスチレン球(np=1.59)を、波長 1064nm・パワー 100mW の光をビーム半径 w0=0.5μm に絞った焦点で捕まえる。焦点の中心の強度は I0=2P/(πw02) とする。
- (1) (mr2−1)/(mr2+2) を求め、勾配力のポテンシャルの深さ U0=2πnma3(mr2−1)I0/[(mr2+2)c] を、室温 300K の kBT と比べよ。
- (2) 動径の向きの勾配力の最大値を求めよ(強度の形は I0e−2ρ2/w02)。
- (3) 焦点の中心の散乱力を求め、(2) と比べよ。
解答
(1) mr=1.59/1.33=1.195、(mr2−1)/(mr2+2)=0.125。I0=2×0.1/(π×(0.5×10−6)2)=2.55×1011Wm−2 で、U0=2π×1.33×(50×10−9)3×0.125×2.55×1011/(3.00×108)=1.11×10−19J。kBT=4.14×10−21J の 26.8 倍で、熱運動で逃げ出すことはほとんど無い。
(2) U(ρ)=−U0e−2ρ2/w02 の勾配 −dU/dρ=−(4U0ρ/w02)e−2ρ2/w02 の大きさは ρ=w0/2 で最大になり、その値は (2U0/w0)e−1/2=2×1.11×10−19/(0.5×10−6)×0.607=0.269pN である。
(3) k=2π×1.33/(1064×10−9)=7.85×106m−1、σ=38πk4a6×0.1252=7.8×10−18m2 で、Fscat=nmσI0/c=8.8×10−3pN。(2) の 1/30 なので、勾配力が散乱力に勝って粒子は焦点の近くに留まる。ただし散乱力の向きには引き戻す力が無いので、粒子の釣り合いの位置は焦点から光の進む向きに少しずれる。
AI(Claude)が書いた教材を、木下が勉強しながら公開しています。式と数値は検算していますが、誤りが残っているかもしれません。誤りのご指摘・削除のご依頼をいただければ直します。 連絡先:support@tecktom.com